真っ白な壁。
真っ白な床。
真っ白なシーツ。
真っ白なカーテン。
真っ白いこの世界だけが、あたしの世界だった。
腕には数本の点滴がつながれている。ポタリ、ポタリと規則的に落ちる水滴に、あたしは見惚れていた。
「月夜ちゃん、お見舞いに来たよ調子はどう?」
色鮮やかな小さな花束。
白い世界に、眩しく光る。
「ありがとう。今日は、いつもより調子いいよ」
作り笑い。
あたしも、この子も。
この白い世界は作り物であふれている。
真っ白な床。
真っ白なシーツ。
真っ白なカーテン。
真っ白いこの世界だけが、あたしの世界だった。
腕には数本の点滴がつながれている。ポタリ、ポタリと規則的に落ちる水滴に、あたしは見惚れていた。
「月夜ちゃん、お見舞いに来たよ調子はどう?」
色鮮やかな小さな花束。
白い世界に、眩しく光る。
「ありがとう。今日は、いつもより調子いいよ」
作り笑い。
あたしも、この子も。
この白い世界は作り物であふれている。
可愛い、と思う。
やや童顔ではあるが、目鼻立ちのはっきりした整った顔をしているし、細くて色も白い。多少身びいきが入っているかもしれないが、それでも、可愛い顔をしていると思う。
実際、何度かテレビに出たこともあるし、そのときにモデルをやらないかと声が掛かったこともあるくらいだ。まぁ丁重にお断りしたが。
「はい、出来た」
髪を結んでやり、ぽんと頭に手を置く。
「ん、ありがとー」
癖の強い髪をゆるいみつあみにするのがお気に入りらしく、いつもみつあみ作ってー、と言って来る。
全く、二十一歳にもなって自分の兄に髪を結んでもらう人間がはたしてどれだけいるのだろうか。そのくらい自分でやれと言った事もあるが、聞かなかったのだから仕方がない。
「あ、そうだ。つき、これ作ったから着てみて」
「うわー、ワンピースだぁーっ。ゆうちゃん、器用だねぇ」
小花柄の、水色のワンピース。
家事も裁縫も嫌いじゃない。むしろ好きだと言っても良いだろう。お前は母親かと友人に言われることもあるが、今ではもうそうだ悪いかと開き直っている。
俺が十五歳、つきが十歳の時に両親が死んで以来、俺がつきを養ってきたのだ。
頼れる人がいなかったし、つきも病気がちだったから、高校も辞めてバイトバイトの日々。ボロアパートの家賃やらつきの病院代やらのためにずっと働き詰めだったのだ、親ばかにも過保護にもなるってものだ。
もっとも、今ではもうほとんどつきの稼ぎに頼り切っているが。
こうして良いマンションに暮らせているのもつきのおかげだ。
ただ気に入ったものを撮る、というつきの写真はなかなか人気があって、最近では個展も開いたほどだ。客入りも良く、評判もかなり良い。
「ゆうちゃーん、着たよー」
「おー、似合うじゃん」
…レースでも付けるか。梯子レースを付けて、細いリボンで胸元をすこし締めるようにしたら可愛いかも。派手にならない程度に裾にもフリルを付けるかな。揃いのアクセサリーも作るか。
「それ、まだ仮縫いしただけだから脱いできて。今日中に仕上げるから」
「はーい」
やや童顔ではあるが、目鼻立ちのはっきりした整った顔をしているし、細くて色も白い。多少身びいきが入っているかもしれないが、それでも、可愛い顔をしていると思う。
実際、何度かテレビに出たこともあるし、そのときにモデルをやらないかと声が掛かったこともあるくらいだ。まぁ丁重にお断りしたが。
「はい、出来た」
髪を結んでやり、ぽんと頭に手を置く。
「ん、ありがとー」
癖の強い髪をゆるいみつあみにするのがお気に入りらしく、いつもみつあみ作ってー、と言って来る。
全く、二十一歳にもなって自分の兄に髪を結んでもらう人間がはたしてどれだけいるのだろうか。そのくらい自分でやれと言った事もあるが、聞かなかったのだから仕方がない。
「あ、そうだ。つき、これ作ったから着てみて」
「うわー、ワンピースだぁーっ。ゆうちゃん、器用だねぇ」
小花柄の、水色のワンピース。
家事も裁縫も嫌いじゃない。むしろ好きだと言っても良いだろう。お前は母親かと友人に言われることもあるが、今ではもうそうだ悪いかと開き直っている。
俺が十五歳、つきが十歳の時に両親が死んで以来、俺がつきを養ってきたのだ。
頼れる人がいなかったし、つきも病気がちだったから、高校も辞めてバイトバイトの日々。ボロアパートの家賃やらつきの病院代やらのためにずっと働き詰めだったのだ、親ばかにも過保護にもなるってものだ。
もっとも、今ではもうほとんどつきの稼ぎに頼り切っているが。
こうして良いマンションに暮らせているのもつきのおかげだ。
ただ気に入ったものを撮る、というつきの写真はなかなか人気があって、最近では個展も開いたほどだ。客入りも良く、評判もかなり良い。
「ゆうちゃーん、着たよー」
「おー、似合うじゃん」
…レースでも付けるか。梯子レースを付けて、細いリボンで胸元をすこし締めるようにしたら可愛いかも。派手にならない程度に裾にもフリルを付けるかな。揃いのアクセサリーも作るか。
「それ、まだ仮縫いしただけだから脱いできて。今日中に仕上げるから」
「はーい」
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