第四話 夏草や 兵どもが in the Sky
古の昔、彼の地は戦場であった。
男と男、兵と兵、その魂と魂が鬩ぎ合う、そんな場であった。
己の全てを賭け、己の誇りのために、また主の理想のために。男たちは戦っていた。
────そんな日が、月が、年が。数えられないほど続いた。
そしてある日。全てが変わった。
力と力、意地と誇りがぶつかりあう戦乱の世から一転。『皇』と言う名の絶対君主による支配が始まったのだ。
戦場に住み、戦場に生きる益荒男どもは嘆き悲しんだ。その涙と咆哮は天と地を揺るがすほどであった。
『皇』による支配は政治と名を変え、長い間続いた。こち亀とかそんなものよりも遥かに長く。
で、なんやかんやあって今日の味皇料理会があるのである。 (民明書房刊「味皇料理会・味覚の歴史」より)
一時限目は現代文の授業。このVIP_MMR学園では、国語は三つに分けられているのです。
一つ目は古文。日本の古典文学とか、漢文とか、文字通り古の文を学ぶわけですよね。助動詞とか大嫌いです。
二つ目がこの現代文。とはいってもぶっちゃけ現代の文で書かれたものなら何でもいいらしいんですよね。
三つ目はと言うとですね・・・、すいません。実は私もわからないんですよね。噂によると己の文章力を限界まで極めた者のみが修めることのできる幻の文芸らしいです。絶対眉唾ですよね。
担当は校長先生。学園の最高指導者自らが担当するなんて、物好きにもほどがありますよね。だがそれがいい。
国語は・・・あんまり得意じゃないです。だから自分に当てられるんじゃないかっていつもヒヤヒヤしています。・・・まあこのクラスにDIO様が居る限り当たりませんけど。授業中もはしゃいでいるので目立つんですよね。当然ながら当たる確立も高いです。
「神無月さん・・・。 神無月さん・・・」
「如何なさいました? 豆腐さん。 今は授業中、私語は慎んだほうがよろしいですよ?」
隣の席の神無月さんに声をかけます。『ある日』がいつのことを指しているのか、という問題があるのですが、まったくわかりません・・・。こういうときには、友人の力を借りるのが一番ですよね。
「ああ、そういうことですか。 それならココ、本文六行目の「支配が始まった」日のことです。 ・・・それと、私のことはエっちゃんと呼んでくださいと頼んだはずなのですが」
エスプレッソ神無月。頭をとって「エっちゃん」。そう呼んで欲しい、と入学式の日に言われたのを思い出しました。
「ああ、すいません>< 神無月さん! これからはちゃんとエっちゃんと呼びます! ごめんなさい神無月さん!」
「・・・もういいです・・・。」
ふと気がつくと、もう授業終了を告げるチャイムまであと5分をでした。
「いいのう・・・。 青春はァ~、青い檸檬のかほりィ~・・・か」
味皇先生はまた何か言っています。しょっちゅう話が脱線するんですよね。教え方は良いんですけど・・・。