第拾四話 - MMR－マガヅンミステリールポルタージュ－

第拾四話　豆乳と、絹ごしと、木綿豆腐と

時間軸は第壱拾二話と第拾三話の間。夢でサイクロプスに会った後ですよね。
その辺を踏まえて呼んでください。

（恋…か……。でもどうすればいいのか……わからないですよね………）

私は悩んでいました。なんせ人を好きになるのは初めての事だからです。
一体どうすればいいのか、どう行動を起こすべきなのか、まったくわからないんですよね。

「どうしました？　豆腐さん」
「あ、神無月さん……。　実は…かくかくしかじかで……」
「ああ、まるまるうまうまと言うわけなんですね。　わかりました。　不肖私エスプレッソ、
我が信頼なる友人豆腐の名誉のために！　我が友アブドゥルの心のやすらぎのために………
恋のイロハを伝授して差し上げましょう。　常識の範囲内で」
「あ、ありがとうございますですよね！　では早速ご教授のほどを……」
「いいですか？　『恋』において一番重要なもの。　それは『真実に向かおうとする意志』だと思っています。
向かおうとする意志さえあれば、たとえ今回は機会を逃したとしても、いつかは結果にたどり着けますよね？
私は『結果』だけを求めてはいません。『結果』だけを求めていると、人は近道をしたがるものなのです……」
「は…はあ…。　そうなんですか……」

まさか夢の中の奇妙な眼鏡、サイクロプスと同じ回答が帰ってくるとは思いもよりませんでしたですよね。
そんな事とは露知らず、エスプレッソさんは続けます。

「立派にやってるじゃないですか。『意志』は同じなのです……。　貴女がが豆腐になったばかりのときに
抱いていたその『意志』は……、今、貴女のその心の中に再び戻っているのですよ……豆腐さん。
まあ、これは好きだった漫画の受け売りなんですけどね。　『恋』には『意志』と『覚悟』が大事なんです。」
「そうなんですか……。　わかりました。　神無月さん。　ありがとうございましたですよね」
「いえいえ。　私が貴女の役に立てたなら幸いですわ。　では、頑張って下さいね」

そういうと、神無月さんはそそくさとその場を立ち去ってしまいましたですよね。これじゃあ…情報が足りません。
他にも誰かから……。あ、丁度いいところに社長さんがいますですよね。話を聞いてみることにしましょう。

「シャチョウさーん！　少し相談があるんですが、ちょっといいですか？」
「ば～～～っかじゃねえの！？　困ってる人を見捨てるようなオレじゃないぜ！　で、話ってなんだい？」
「ええと……、私にはその…好きな人がいるんですよね。　でも、どう行動すれば良いかわからなくて……」
「ああ。　簡単な事だ。　いいか？　大切なのは『真実に向かおうとする意志』だと思う。　オレは結果だけを
求めてはいない。『結果』だけ…『結果』だけを求めていると、人は近道をしたがるものだ。　わかるかな？　
近道したとき真実を見失うかもしれない。やる気もしだいに失せていってしまうだろう？　だから………ね。
オレは『結果』だけを求めはしない。　『結果』に至るまでの過程、『意志』が大事だと思っているんだよ。
ま、ガキのころ読んだ漫画だか本だかの受け売りだけどな。　今でもそれを信条に生きているってわけだ」
「意志……ですか…。　わかりました…。　ありがとうございましたですよね。　シャチョウさん。」
「まあ、アテにせんでくれたまえ。　オレも色恋沙汰は得意じゃないんでね。　結局は豆腐が頑張るんだ」
「できる限り頑張りますですよ……」

シャチョウさんの話も……結局のところ神無月さんと同じでしたですよね。意志…ですか…。
次は…えっと……ベネ影さん辺りなら…きっと…違った意見が…聞けるはずですよね……うん…。

「ベネ影サーン！　相談がァァー！」
「HEY！　どうしたのかな豆腐？」
「実は……好きなｈ」
「おーっとォッ！　OKOK！　そこまでで良し！　なるほど……ふぅん……へぇ……その顔は……。　ズヴァリ！
恋をしたが今まで恋愛経験が無いためどう行動すればいいかわからなくて悩み戸惑う甘酸っぱい乙女の顔だ！」
「な、なんだってー！　どうしてわかるデスカ！？　アレ？　私ってそんなにわかりやすい表情してますか？！」
「ま、長年鍛えたベネ影EYEのおかげってわけさ。　で、俺に教えを請いに来た……ってことだね。　OKOK！
この俺の恋愛観を伝授して進ぜよう！　えーと、恋愛について豆腐自身は何が大切だと思うよ？」
「………『真実に向かおうとする意志』？」
「イェァ！　そのとおり！　そう！　俺は『結果』だけは求めないのさ！」
「『結果』だけを求めていると、人は近道をしたがるものですよね。　近道したとき真実を見失うかもしれないです。
やる気もしだいに失せてしまいますですからね。」
「……そうだ！　そうなんだよ豆腐！　向かおうとする意志さえあれば、たとえ…」
「今回は機会を逃がしたとしても、いつかはたどり着く事ができるんですよね」
「うわああああああ！！！　なんで俺の言いたい事を先に言っちゃうんだよォォォオオオ！！！　エスパーか！？
豆腐！！　貴様ァッ！！　ESP能力保持者か！？　人の心が読めるのかァァァァァァァアアアア！！！！！？？」
「い、いえいえ！　そそそそそんなんじゃないですよね！　……そう！　昔読んだ漫画の受け売りで……」
「ぐあああああああ！！　貴様アアア！！！　人の過去も読む事がｋでｚｆきｒｍｓﾎﾟｵｵｵｵｵｵｵｵｵｵｵｵ！！！！！」
「ひゃああああ！！？　ご、ごめんなさいありがとうございましたですよねー！！」

………ベネ影さんはその後、スノーゴーレムさんによって丁重に保健室へと搬送されていきましたですよね。
…あれ？私のせいですか？ちがいますよね！？アレはただ……気の毒な事故だっただけですよね！！？
……次は誰に……。えっと…カズｙ…カズマさんにでも…

「実はｒｙ」
「大事なのは『真実に向かおうとする意志』だ。　『結果』だけを求めていると、人は近道をしたがるもの。今の豆腐、
お前に足りない物、それは情熱思想理念頭脳気品優雅さ勤勉さ！　そして何よりもーっ！　速さが足りないっ！！」
「は…はあ…（今度は何か違うパターンになってきましたですよね……）」
「ま、両方とも昔読んだ漫画とかからの受け売りなんだけどな。　頑張れ豆腐。　俺は応援するぜ」
「ありがとうございましたですよね！　カズマさん！」

四人中四人。100％。一体その『昔読んだ漫画』ってのはどれだけ絶大な影響力を誇っているんですかね…。
次は……………あれ？DIOｻﾏﾊﾄﾞｳｼﾃ歌ｲﾅｶﾞﾗモンキーダンスﾅﾝﾃ踊ｯﾃﾙﾝﾃﾞｽｶ？ｼｶﾓ何でｺｯﾁｦ睨ﾃﾞｽｶ？
………………。あーもうわかりましたわかりましたからこっちを眺めつつ淡々とモンキーダンスは止めてください！

「DIO様…実は…」
「大事なのは『真実に向かおうとする意志』なのさ。　『結果』だけ求めちゃうと、人ってのは近道をしたがるんよ。
近道したとき真実を見失うかもしれないじゃん？　やる気もしだいに失せちゃうしさー。　大変だねェー。　まったく」
「ま…また…。　で、結果だけを求めないんですよね？」
「だがこのぷりちーでキューティーな吸血少女DIO様ちゃんにそれは無いッ！　『結果』だけが全てなのよッ！！
過程や…方法なんて…どうでもよいのよォー！！　それは勿論『真実に向かおうとする意志』もおんなじね！！
人目とか気にしてちゃやりにくくてたまったもんじゃないわ！　面倒よ面倒！　無駄無駄無駄無駄無駄ァッ！！！」
「…………」

なんか…流石DIO様は違うなぁ…と思いましたですよね。なんていうか……思考回路とか、前頭葉とかが。
やっぱり骨針が打ち込まれた人の脳はちがいますよね。石仮面の力は偉大かつ強大です。

「そもそも悩んでたって何もはじまりゃしない！　案ずるより生むが易し！　石橋を叩いて渡る前に壊すってこと！
そこんとこOK？　豆腐君はその辺『言葉』ではなく『心』で理解できたかにゃー？」
「え、ええ…まあ……その…大まかには…」
「よーしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよしよし！
それだけ覚えときゃなんとかなるさー！　世界なんてなるようにしかならないように出来てんだからー！！」
「ありがとうございましたですよね！　…それで…その『意志』云々は好きだった漫画からの受け売りですか？」
「ふえ？　違いますよお客さん！　こいつは私のオリジナルって奴ですぜー？」
「あれ？　そうなんですか？」
「ExactlyだよExactly！　そのとおり！　いやーしかし豆腐が恋ねぇ…。　こいつは面白くなりそうだね！」
「あーっ！　人の純情で楽しまないで下さいよー！　セクハラですよ！？　訴えますですよ！！」
「へっへーん！　同性なんだからセクハラじゃないよ！　スキンシップって奴さー！」

ふう…。散々でした……。あの後DIO様他女子生徒たちから少年誌では言えない様な事を……ぅぅ……。
……もうお嫁に行けないかもしれないです…。

「豆腐。　おい、豆腐。　……聞こえてんのか？　おい！　そこの大豆食品！！」
「んあ？　……パ、パピヨンさん！　ひょ、ひょっとして今の…聞いてました？」
「いや。　全然何も聞こえなかったぞ？　『その内陳腐の状態を自由にする事ができるようになったらまず最初に
DIO様に仕返しをしてその後…』とかなんてまーったく耳に入らなかったから安心しな。」
「ひ…ひええ……　どうか！　どうかDIO様には御内密に…！　後生ですから！」
「ああ。　でもな、豆腐。　あいつら……あんなことやってるがな、なんだかんだいってお前の事が好きなんだよ。
心配してやってるつもりなんだ。　あいつらは……ただ上手く対応しきれて無いだけなんだ。　あいつらは……、
感情の表現が上手くできないだけなんだ。　だから、恨まないでやってくれ。　頼む」
「あ………」

そう。あのハイテンション。あの妙な団結力。あの……不自然さ。
あれらは全て照れ隠しだったのです。私を元気付けるための。応援するための、照れ隠し。多分DIO様以外。
支えられている。みんなに、私は。『真実に向かおうとする意志』。大切なモノ。『覚悟』。足りなかっただけ。

豆腐────『覚悟完了』。
もえニラ攻略作戦、始動。