SILENT HILL f

登録日:2025/10/04 Sat 21:57:00
更新日:2025/10/25 Sat 13:24:12NEW!
所要時間:約 24 分で読めます





美しいがゆえに、おぞましい


SILENT HILL fとは、コナミのフランチャイズ『サイレントヒル』シリーズの作品の一つ。
PS5、Xbox Series X|SおよびPC(SteamおよびEpic Gamesストア)向けに2025年9月25日に発売された。
ジャンルはサイコロジカルホラー兼サバイバルホラー。

デベロッパーは『デッドライジング デラックスリマスター』を始めとする数々の大型タイトルの「リマスター版」を製作してきた台湾のネオバーズ社、プロデューサーは岡本基、監督はアル・ヤン、脚本は『ひぐらしのなく頃に』で知られる竜騎士07、BGM等の楽曲はシリーズお馴染みの山岡晃と稲毛健介を始め、竜騎士07と縁がある二人の音楽家が担当している。
その他、各キャラクターのフェイスモデル及び声を担当した演者たちを始め、日本人スタッフが中心として開発されている。

家庭用ゲーム作品としては11作目、リメイクやリイマジネーションを除いた完全新作としては9作目に相当する。
また、日本人スタッフ中心で開発された作品としては『サイレントヒル4 ザ・ルーム』以来の5作目となる。




【概要】


本作における「サイレントヒル」は地名ではなく読んで字のごとく「静寂なる丘」という意味で、「f」には複数の意味が込められているとされる。

シリーズ過去作の舞台であったアメリカ合衆国メイン州サイレントヒルからは遠く離れた戎ヶ丘(えびすがおか)という寂れた街がメインの舞台となる。
モデルは岐阜県の街なので残念ながらリアルサイレントヒルではない*1。字が少し似ているし雰囲気にも合いそうだが「戒(いましめ)」でもない。
また、年代も80年代だった過去作よりも更に昔の1960年代が舞台となっている。

プレイヤーは主人公深水雛子を操作し、ゲーム側から提示される目標を達成していくことで物語が進行していく。
1周目は完全にリニア式でありエンディングは固定だが、2周目では条件を満たすことで3通りの新たなエンディングに分岐する。
また、3周目では最も円満に終わる新たなエンディングが追加される。
なお、竜騎士07曰く「トゥルーエンドがどれかはプレイヤーが決める」とのことであり、最も良いエンディングがプレイヤー間で便宜的に「トゥルーエンド」と称されてはいるものの実際には誤りである。

従来通りストーリー主導型作品である一方で、シリーズで最もアクション要素が強い作品でもあり、難易度「難関」以上ではフロムゲー並の死にゲーとなる。
一般的な他のゲームでは「ベリーイージー」扱いされることが多い難易度「物語重視」でも、本作では作中のテキストで「従来のSILENT HILLの難易度です」と表記されている。
「シリーズのファンだがアクションゲームは初心者」というプレイヤーは迷わず「物語重視」を選択することが推奨される。

ストーリーにおける特徴としては、過去作のように主人公に明確な行動目的(娘を探す、死んだ妻からの手紙の真相を究明する等)が提示されず、1周目の時点では主人公の行動目的自体が謎めいていることが挙げられる。
また、周回を重ねる度に各キャラクターの新たな側面がテキストや新規ムービーで判明するのも特徴*2
初代サイレントヒルのキャラクターがかなり象徴的に善と悪に区別できたことと比べると、本作のキャラクターはかなり多面的、多層的に描写されている。
竜騎士07が得意とする閉鎖的な環境での人間ドラマも見所と言える。

それぞれのルートでエンディング曲とタイトル画面が変化する。*3*4

また、1960年代当時の世相を反映した性差別描写や家庭内暴力の描写も多く、拷問などの残虐表現も多いため、CERO Zとなっている。



【難易度】


アクションと謎解きのそれぞれに難易度が設定されている。
「物語重視」<「難関」<「五里霧中」 の順に難しくなる。

なお、デフォルトではアクション難易度「物語重視」、謎解き難易度「難関」となっており、これが一番従来のシリーズに近い難易度である。
というか前述のとおり「難関」以上は死にゲーになる。



【ゲームシステム】


◆手帳
雛子が持ち歩く手帳。
ゲームの進行と共に、雛子の主観による新規情報がやたらと上手い絵と共に追加されていく。
入手した謎解きのヒントもまとめてくれるのでたすかる。


◆祠
あちこちにあるセーブポイント。
「お供え」をすることで「功徳ポイント」が溜まっていき、「祈願する」で専用アイテムの「祈願絵馬」を別途消費して雛子の能力を強化したり、「おみくじを引く」で効果付き装飾品の「お守り」を入手したりできる。
また、「心を鎮める」を選ぶと後述の「精神力」を功徳ポイントを使って回復できるが、戦闘難易度が物語重視の場合は祠を調べた時点で精神力だけでなく体力も無料で回復できる
なお、「お供え」はお供え物にしか使えないアイテムの他にも一部の強力な消費アイテムでも可能であり、取捨選択がプレイヤーに委ねられる。


◆体力、持久力、精神力
本作では敵との戦闘になると3つのゲージが画面端に表示される(普段は自動的に非表示になっている)。

「体力」ゲージは敵の攻撃を受けると減っていき、尽きると雛子が死にゲームオーバーとなる。
一部の消費アイテムや(戦闘難易度・物語重視のみ)祠で回復できる。

「精神力」ゲージは敵に掴まれたり集中状態で敵の攻撃を受けると減っていき、尽きた状態で精神攻撃を受けると体力も減る。
一部の消費アイテムや祠で精神力を回復できる。

「持久力」ゲージは「攻撃」や「回避」といったアクションや、敵との戦闘中に走ると減っていき、尽きると回復するまでアクションができなくなる。
時間経過で自動的に回復するが、一部の消費アイテムで一定時間持久力を無限にできる。


◆武器
本作は戦後の日本の岐阜県が舞台であるため銃火器は一切登場せず、鉄パイプを始めとする鈍器や刃物が武器となる。
本作は「サバイバルホラー」であるため武器には耐久度が設定され、耐久力が尽きると壊れてしまう。
消耗アイテムの工具袋で武器の耐久力を半分程度まで修復できるが、武器は3つまでしか持ち歩けない。

武器は大まかに「棒状武器」「軽量武器」「大型武器」に分類される。
「棒状武器」は武器を振る速度、威力共に平均的で使いやすく、武器の耐久度も比較的に高く長持ちする。鉄パイプ、バット、バールが該当する。
「軽量武器」は振りが速く威力も高いが、リーチの短さにくわえて耐久度が低く壊れやすい。鎌と包丁がこれに属する。
「大型武器」は振りが非常に遅く耐久度も低いが、一撃の威力が凄まじい。強攻撃は長押しで威力が強化されるほか、集中時は移動できなくなる代わりに、武器の柄で敵の攻撃をガードできる。斧とハンマーがこれに属する。
また闇の社殿にのみ使用可能な武器として「懐剣」と「薙刀」が存在し、これは上記のカテゴリとは違い独自のモーションを有する。


◆戦闘
シリーズお馴染みの敵に反応するラジオは所持品としては登場せず、代わりに恐怖を煽る程にけたたましい雅楽が、BGMとして敵に反応して流れる。

雛子は過去作のキャラクターよりもかなり機微に動ける。
敵の攻撃を軽やか且つ飛距離の長いスウェイ(通称ヤーナムステップ)で回避する「回避」、素早いが威力の低い「攻撃」と隙は大きいが威力の高い「強攻撃」が戦闘アクションのメインとなる。

敵の攻撃をギリギリで回避するとバレットタイムが発動する「見切り回避」となりスタミナが全快し、敵の特定の攻撃(敵の周囲に赤い残像が現れ本体に収束する様な特徴的なサインが表示される)に対して強攻撃を行うと、雛子が一瞬で間合いを詰めて敵の懐に入り込み強力な攻撃を叩き込む「見切り反撃」となり、大ダメージを与えつつ怯ませることができる。

精神力を消費する「集中」を行うと攻撃力が上昇し、集中ゲージが最大まで溜まった状態で攻撃を行うと精神力を消費して「渾身の一撃」が発動し、見切り反撃と同様に大ダメージと共に敵を怯ませることができる。
また、集中状態では見切り反撃可能な時間が伸びるほか、見切り反撃は精神力の上限を減らさずに攻撃出来るので、被弾を抑える自信があるなら見切り反撃起点のカウンター戦法がオススメ。
なお、集中を維持することでの精神力の消費は、掴み攻撃の被弾や渾身の一撃使用によるものとは違って、時間経過で回復可能である*5

渾身の一撃や見切り反撃で怯んでいる敵は与えられるダメージが大きくなるので、ここから持久力の消費に気を付けつつ追い討ちをかけて仕留めるのがセオリーとなる。

そしてシリーズお馴染みの「ダウンした敵への即死キック」は廃止され、代わりに雛子の「ふぅ…」「やったか......?」といった台詞が敵撃破のサインとなっている。

「難関」以上の難易度では通常攻撃や強攻撃では敵が殆ど怯まないため、見切り反撃や渾身の一撃で怯ませることが必須となる。


◆脱出
敵は死んでもアイテムをドロップせず、一定以上離れると雛子を見失うため、ゲーム中のテキストでも可能な限り戦闘は避けることが推奨されている。



【舞台】


「表世界」と「裏世界」を行き来していた過去作と同様に、本作でも2つの世界が登場する。

◆霧の街
霧に包まれた戎ヶ丘。
様々な建物が入り組んだ複雑な迷路の様相だが、岐阜県下呂市金山町という実在の街をモデルにしている。
最初は人気こそないが美しくも寂れた田舎町という印象だが、正体不明の「霧のバケモノ」により彼岸花と触手、肉腫に侵食されていき、様々なバケモノが闊歩する地獄と化していく。
全体的な印象としては明るく有機的


◆闇の社殿
星一つ見えない闇に包まれた、古めかしい迷宮の様な神殿。
青い狐火が浮かび、しめ縄がされ護符が無数に貼り付けられた鳥居をはじめ、神社のようにも見える。
阿吽の狛犬の代わりに配置された狐の像など「狐」の意匠のオブジェクトが多い。
この世界の武器は壊れないが、徘徊するバケモノも不死身であり、特定の条件を満たさないと倒しても復活する。
全体的な印象としては暗く無機的。



【ストーリー】


昭和の古い時代。とある地方の山間部にある寂れた田舎町、戎ヶ丘に住む高校生、深水雛子(しみず ひなこ)。
彼女の日常は、ぼんやりとした灰色ではあっても、思春期相応の平凡なものだった。

だが、そのいつもの日常は唐突に崩れ去る。
見慣れた町は霧に包まれ、おぞましく変貌していく。
人の気配は消え、代わって、霧の中に奇怪な何かが蠢く。

変貌していく町を探索し、謎を解き、身を守る為に戦い、生き残れ。

向かい合わなければならなかった選択と、向き合う為に。
そして、殺さなければならない者を、殺す為に。

彼女が選ぶのは、美しき選択か。
それとも、おぞましき選択か。

美しくも、おぞましい選択の、物語。

──公式サイトより抜粋



【登場人物】


深水(しみず) 雛子(ひなこ)
演:加藤小夏、境葵乃(幼少期)

「霧の街」でプレイヤーが操作する主人公。
紺色のセーラー服を着た女子高生。
男性的なぶっきらぼうな口調で、勇ましい台詞が多いが、それとは裏腹に常に陰りのある表情を浮かべている。
「自分で選択すること」を何よりも重視しており、運命を他人に決められることを嫌う。例え自分が選んだ道が地獄であったとしても。
男尊女卑の文化が根深く残り、「男/女はこうあるべき」という社会的押し付けが強かった1960年代当時の女性としては、かなり生き難い性格であったと言えよう。

「手帳」を見る限り、かなり絵が上手いことがわかる。あと、ちょっと厨二病の気がある。
また、元陸上部であったため身体能力は高い。いや高すぎ。
異様なまでに俊敏なスウェイとやたら殺意の高い攻撃モーションは素人の動きではなく、敵の一瞬の隙を見極めて懐に入り込み攻撃を叩き込むクソ度胸は歴代主人公のアクションを超越しており到底ホラーゲームのそれではない。陸上関係ねぇだろコレ。
そのあまりのタフさに前述の言動も合わさって雛子様」「雛子殿」「深水の姐御だの別ゲー由来の敬称で呼び始めるプレイヤーが続出し、終いには「陸上部って『陸上(自衛隊空挺)部(隊)のことでしょ?」などと経歴を深読みされたりする始末。
しかし精神力と持久力に制限があるため、さすがに無双はできない。

幼馴染の修とは互いに「相棒」と呼び合い、バケモノにも勇猛果敢に立ち向かう。
一見すると今で言うトランスジェンダーに見えるが、劣悪な家庭環境から女としての人生や結婚に対して絶望とトラウマを抱え、そのことから女扱いされるのを嫌っているだけであり、女として生まれたこと自体を拒絶しているわけではない。

因みに物語の進行と共に着ているセーラー服はボロボロになっていく。
最初にスカートの裾がボロボロになり、次に右袖が肩から喪失し、更に背中が剥き出しになる…のだが血塗れなのも相まって色気はほとんどなく、むしろ歴戦の勇士感が醸し出されている。
しかも公式ビジュアルで確認できる鉄パイプを握りしめ露出した右腕にはかなり筋肉が付いているのが見て取れ、セリフも妙に頼もしいものがあることも相まって完全に女傑、猛者である。

+ ネタバレ
その正体は、後述の「赤いカプセル」により分離した「"深水雛子"のままで居たい(結婚したくない)雛子」。
「霧の街」も地元の思い出に縋る彼女が生み出した余剰次元だと思われるが、完全な精神世界かと言われるとサイレントヒルシリーズの余剰次元なので別次元に物理的に実在していると思われる。

また、『サイレントヒル』のアレッサと同様に定期的に戎ヶ丘で生まれる「稀血」と呼ばれる神通力を持つ女性でもあり、彼女の異様な強さはそれが由来と思われる。

しかしそれ故に黒幕に目を付けられて思考誘導されており…。

なおゲーム内の各種描写*6からわかるように、現実世界での雛子と友人らは二十代であり、それこそ結婚当日であると推測できる。


雛子(ひなこ)/狐の雛子
「闇の社殿」でプレイヤーが操作する主人公。「深水雛子」のドッペルゲンガーらしき存在。
こちらは女性らしい言葉遣いであり、「狐面の男」に導かれて進んでいく。
字幕の話者表記をonにすると、「狐の雛子」や「雛子の影」というキャラクター名が表示される。

+ ネタバレ注意
「儀式」として「狐面の男」から様々な拷問を強いられるが、不思議なことに一切の悪感情を抱かずに従順に従う。

中盤、先述の儀式の一環で自身の右腕を自ら切り離すという仕打ちに耐え、獣の腕が移植される。
通常の武器は使えなくなるが、渾身の一撃で敵を倒すか倒した敵を「吸魂」することで復活を防げるようになる。
さらに、吸魂によりゲージが溜まると獣の腕が肥大化する「覚醒」状態となり、一定時間体力・持久力無限となり、攻撃力も増加する。
覚醒状態で倒した敵は復活が阻止される。

その正体は赤いカプセルにより分離した「結婚を受け入れ過去と決別した雛子」。
見知った場所である「霧の街」とは対象的に見知らぬ場所である「闇の社殿」は彼女のこれからの人生に対する不安が反映された余剰次元だと思われる。
右腕を切り離し、背中に焼印を押され、顔を剥がされ仮面を付けられるという拷問描写も、これまでの深水雛子を捨てて嫁ぎ先の家紋を背負うということのメタファーなのだろう。
嫁ぎ先から与えられた獣の腕が強力なのも、「家」の権力・財力を振るえるようになるからだろう。

物語の進行と共に自我が失われ、「狐面の男」に心酔していく。
現実を受け入れたとも解釈できるが、二周目以降で実は黒幕の誘導であったことが明かされる。


岩井(いわい) (しゅう)
演:大崎捺希

戎ヶ丘で薬師として知られる岩井家の息子。
雛子の幼馴染のイケメンで、「男の心を持つ女(もしくはその逆)」がいることを認知しており、雛子もそれだと思っていたため、成長に従い彼女に恋心を抱くようになった後も女扱いせず接していた。
1960年代当時としては「理解がありすぎる彼くん」と言えるが、実際には雛子はトランスジェンダーではなく、心の片隅で女として扱われたいという欲求も持っていた─即ち両想いだった─ことには気付けなかった。

幼少期は雛子と「宇宙戦争ごっこ」で遊んでいた。

物語冒頭で頭痛に悩む雛子に独自製法の解熱鎮痛剤「赤いカプセル」を渡すが…。

+ ネタバレ
赤いカプセルの正体は、『サイレントヒル』に登場した神秘的な薬草ホワイトクロジェアと同じものらしき「白黒草」を原料とした違法薬物であった。

内なる自分と対話できる効能があるとされており、雛子が分裂した原因である。
2周目以降にアンロックされるエンディングは、いずれも「赤いカプセル」を一度も使用しないことが条件となっている。

修は雛子に恋心を抱いていたが、彼女をトランスジェンダーだと思いこんでいたため告白できずにいた。
そんな最中に雛子に縁談が舞い込み結婚すると知った修は自暴自棄となり、赤いカプセルを自分で試した結果、(恐らく内なる自分に促されて)雛子に渡した。結婚を断り自分に振り向いてくれることを期待して…。
しかしそれら一連の行動は、黒幕によって操られてのものであった。
とあるEDではただの変態だったり、後述の狐面の男ファンから過剰にsageられたりと可哀想なキャラである。
狐面の男も黒幕に操られてヤバイ呪術で雛子を惚れさせようとしたり、そもそも人外の存在に乗っ取られていたりといった醜態を晒しており、客観的に見れば修も狐面の男も「黒幕に操られた被害者」なのだが、修の行動が「薬を盛る」というリアル寄りな行動であったが故に一部のプレイヤーからヘイトを集めてしまった模様。

なお、「白黒草」が実際にホワイトクロジェアだと仮定した場合、『サイレントヒル』で描写された通りガチで異界に取り込まれる薬であるため、そもそも自暴自棄になっていた修が黒幕の洗脳に抗うのはほぼ不可能であったと思われる。


西田(にしだ) 凜子(りんこ)
演:飯島優花

雛子の友人。真面目な優等生タイプだが融通が効かない。
修に片思いしているが相手にされておらず、修と宇宙戦争ごっこの話で盛り上がる雛子に嫉妬している。
また、裕福な家庭で何不自由なく生きてきたためか内心で他人を見下しており、根本的に性格が悪い。

+ ネタバレ
その雛子への嫉妬は憤怒の炎と言っても差し支えないものであったが、同時に雛子の存在は凛子にとっての初めての挫折の象徴でもあり、人生に必要な存在、感謝すべき相手であったと振り返っていた。
だが修と両想いになっておきながら名家の跡取りに嫁いだり*7、凛子の気持ちを知った上で結婚を前にしながら修とイチャイチャする雛子は客観的に見ても割とクソ女ムーブであるため、凛子の怒りにも一定の正当性はあるかもしれない。

内心では見下していたとは言え、学校で孤立していた雛子と咲子の友人になってあげる等行動自体は真っ当であり、事実2人からは好かれていた。
特に雛子は手帳曰く、凛子と何度も絶交と復縁を繰り返しているそうで、大量の悪口が書かれた日記や折り紙を見ても動じない等、彼女がそういう人間であることは概ね理解していた。
要するに学生時代から本音で喧嘩できるくらいには一周回って結婚式に呼ばれるくらいには仲が良かった。

なお、三周目で手に入るファイルでは現実世界で結婚式当日に思いっきり雛子と喧嘩をしたことが明かされており、そこで真の意味で「友達」になれたと独白している。


五十嵐(いがらし) 咲子(さくこ)
演 :滝瀬妃夏
声:合田絵利

雛子の友人。千年杉神社の神主の娘。
かつては人で賑わっていた神社を立て直すことを目標にしている。
戎ヶ丘の信仰の推移に詳しい。
新年には巫女のバイトをしている。

奇妙なことに、雛子を明るい口調で「裏切り者!」と呼ぶ。

いつもふわふわしている夢見がちの変わった子で、雛子から借りた500円を踏み倒そうとしてくる。
ちなみに1960年代の大卒初任給はざっくり20000円前後。所得倍増計画で急上昇した60年代終盤でも30000円程度。多少時代は遡るが1958年発売のチキンラーメンが35円の時代なので、500円も借りておいて踏み倒そうとする咲子はかなり図太い。

+ ネタバレ
雛子に次ぐ作中最強の人物
実は非常に強い霊感があり、日ごろから様々な神や幽霊からの訴えを聞いている。
後述する「稀血」の持ち主ではないにも関わらず、作中では黒幕の両方から接触を受け、それぞれに与しないように唆されていた。
果てはほとんど都市伝説となっている霊刀の存在、さらにそれにこびり付く怨念の払い方までも把握していると、能天気な外見から想像も付かないほどの知識を有する。

あまりにも強い霊感のせいで幼い頃から周囲と馴染めずにおり、小学校のウサギ以外に友達がいなかった。
しかし後に自分と同じく「男と遊ぶ」ことを理由に除け者にされていた雛子と仲良くなり、初めての友達として「ずっと一緒」と固い約束を結ぶ。
日記によれば見捨てられないかという不安から半ば依存状態にあったようだが、メンヘラではなく思春期特有の葛藤であり、実はとうの昔に克服している。
現在は廃れた神社の再建を考える等、目標に向かって自分の人生を歩んでいる。

物語では雛子の異変にいち早く気づき、結婚式前に手紙で不穏を伝えていたほか、雛子の分離が起こった後も事態を解決しようと現実世界から霧の町に干渉した。
しかしどちらの黒幕にとっても不都合な存在であったために、真っ先に霧の街から排除されてしまう。だがそれでも諦めず、何とか雛子を助けようと闇の社殿で二度目の干渉を試みる。
社殿二回目における咲子らしきバケモノは稲荷神側の力で歪められて強烈な見た目になっているが、正体は咲子本人であり、台詞に注目すると「味方」であることがわかる。
寿幸の加勢により再度追い出されてしまう。*8
因みに2周目以降は霧の街の旧千年杉神社でもシルエットのみ「咲子らしきもの」の姿を確認できる。
赤いカプセル=白黒草のような特殊な化学薬品に頼らなければ出入りできない空間に持ち前の才能だけで侵入している時点で、黒幕からすればとんでもない驚異である。
黒幕の力を持ってさえ居れば邪魔な現実の彼女くらい消せそうではあるがそれも出来ないくらいには相応の加護はある模様

雛子を「裏切り者ぉー!」と呼ぶのは約束を破って自分を見捨てたから……ではなく彼女なりの祝福の言葉である。要するに友人同士の軽口。
だが、黒幕のせいで捻じ曲げられて伝わってしまっていた。


なお彼女の古い神社にある朽ちた千年杉は九十九神の一部ではあるものの、騒動の元凶である二神とは微妙に異なる思惑で動いてた模様(但し、ラスボスとして登場する九十九神には朽ちた千年杉の意匠が胴体部分にある─つまり大部分を占めている─ため、完全に別なわけではなくあくまでも「微妙に思惑が違う」程度に留まる)。


深水(しみず) 寛太(かんた)
演:真砂豪

雛子の父で、絵に描いたような亭主関白。
酒癖が悪く癇癪持ちで、一度怒り出すと君江や雛子を怒鳴りつけて暴れていた。

雛子に結婚や男性に対するトラウマと不安を植え付けた張本人。

+ ネタバレ
元漁師で、漁で貯めた大金で料理屋を開くのが夢だったが、弟のように可愛がっていた友人に金を持ち逃げされて多額の負債を背負ってしまい、荒れてしまった。
ある時、雛子に名家の常喜家から縁談が舞い込み借金が返せると喜ぶも、雛子はそれを「借金返済のために売られた」と認識していた。

こうした経緯から雛子には強い嫌悪感を抱かれていたものの、若い頃はよく笑う真っ当で優しい男であった。
かつて妻の君江が産後の肥立ちの悪さから精神的に荒れた際にも、当たり散らす彼女をひたすら支え続けていた。
また、幼い雛子を遊園地に連れて行くなど、ちゃんと父親をやっていた時期もあった模様。

作中で度々見せた暴力的な態度は、友人の裏切りによる心の傷を隠して「強い父親」で在り続けようとした結果であり、「子供に恐れられる位が威厳ある父親」だと誤解していたためでもあった。
1960年代当時の「父親はこうあるべき」という社会的抑圧もあったかもしれない。

実は結婚式前に雛子にこれまでの仕打ちを土下座で詫びており、雛子は許すとは言わなかったものの謝罪自体は受け止めていた。
「他の父親は俺とは違う」「俺の呪縛から解放されて幸せに生きてくれ」「結婚するもしないもお前が決めていい」と、父親として雛子が抱える結婚や男に対する不安やトラウマを少しでも解消しようとしていた。
また、金を必要としていたのは君江の難病の治療費のためでもあった。

だがこれらの事実は黒幕にとって邪魔なものであり、2周目までは雛子の記憶から抹消されていた。


深水(しみず) 君江(きみえ)
演:平岡珠実

雛子の母。夫に従順で、罵声を浴びせられても宥めるばかりで抵抗しなかった。

情けない父親に反抗できないその様は、雛子に女性としての人生に絶望を植え付け、「お父さんは嫌いだったけど、お母さんも好きじゃなかった」と評された。

+ ネタバレ
実際には、雛子が居ない間の家庭内パワーバランスは君江が上であった。
大喧嘩した際には陰湿な嫌がらせをして寛太に土下座させるほど強かな面を持っていたが、友人の裏切りから立ち直れていない寛太を慮り、娘たちの前では宥め役に徹していた。

結婚前に雛子が抱える「女性としての人生」に対する不安を解消するため、自分たち夫婦の本当の姿を打ち明け、心配をかけたことを謝罪していた。

しかしその記憶は黒幕にとって邪魔だったため、2周目までは消されていた。


絹田(きぬた) 潤子(じゅんこ)
声:森なな子

絹田家に嫁いだ雛子の姉。
雛子曰くとても綺麗で優しくて、何でも出来て、何でも相談できる自慢のお姉ちゃん。

回想や手帳では顔が隠れている。

+ ネタバレ
物語冒頭で雛子と抱き合うシーンがあるが、彼女が絹田家に嫁いだのは雛子が小学生の頃でそれ以降会っていないため、恐らく(現実世界の)雛子の結婚式のため久方ぶりに帰ってきたものと思われる。

どうも咲子と同じで強い霊感があるらしく、雛子の精神が分離したことを察知すると、下記の姿で彼女の余剰次元(霧の街/闇の社殿)に干渉する。
物語の要所で雛子の前に現れ、答えを出せない彼女に、自分自身を殺し家族と友人を捨てて新しい生を掴むよう促す。

立場的には稲荷神の一族に与しており「深水雛子」とは敵対関係にある。狐面の男とも面識がある。
ただ婚姻を後押ししつつも「生はあなたが選びなさい」と、あくまで雛子自身の手で決断することを願っており、序盤の逃走劇ではあえて手助けしたほか、物語中盤までは中立を維持していた。
霧の街で両親や修たちが死んだ後は完全に「深水雛子」を見限り、闇の社殿で「雛子」に発破をかける等、その死を強く望むようになる。
しかし咲子と違い九十九神の介入までは感知できなかったようで、結局は「深水雛子」の進撃を許してしまうことに。

「霧の街」や「闇の神殿」では鴉天狗か河童のような奇妙な仮面を被っており、その肌も死人の様に青白く継ぎ接ぎだらけになっている。
ついでに結婚自体は恋愛結婚ではないことはちゃんと示唆されてるが当の本人はちゃんと「幸せ」と思っており、妹の結婚式に行かせてくれるくらいには嫁ぎ先も理解がある家だとわかる。*9
というか、常喜(つねき)家にまつわる存在の事を踏まえると、絹田(きぬた)家の背後にもそれの対と言うべき存在がいるのかもしれない。



◆狐面の男
演:泰江和明

闇の社殿に登場する狐の面を被った男。
未知の世界に迷い込んだ雛子を何処かへと導く。

あるシーンにおける 「急急に律令の如く行うが良い、去ね!」 のセリフと動きがカッコイイともっぱらの評判である。

+ ネタバレ
本名は常喜(つねき) 寿幸(ことゆき)。白髪だが純血の日本人である*10
名家常喜家の現当主で、現実世界の深水家に縁談を持ちかけた。
優しい雰囲気の人物ではあるが、一方で「儀式」と称して雛子を凄惨な拷問にかける等、狂気の一面も持つ。

実は雛子と修の幼馴染で、共に宇宙戦争ごっこをした仲である。
ただ本人も知らなかったが先代常喜家当主の愛人の子であり、小学生の時に前当主が亡くなったことで常喜家に呼び戻され、2人と離れ離れになった。
元々は藤鳥という名字だったが当主となるにあたって名を変えたため、彼の話を聞いた雛子や修は昔の友人とは気づかなかった。

事の発端は雛子と知り合う前の幼少期で、公園で遊んでいたところを街に迷い込んだ狐に噛まれてしまう。
その狐は稲荷神の御使いの末裔「七尾の狐」であり、このとき七尾に憑依されて「狐憑き」と化し、稀血の女である雛子への恋慕を植え付けられる(※)
以降、彼は人生の全てを雛子への求愛に捧げるようになった。

※「狐憑き」となった常喜家の人間は、常喜家の起源にして親玉である「九尾の狐」の呪いによって戎ヶ丘に生まれる神通力(稀血)を持つ女性に恋心を抱く様になる。
この稀血の女と子供を作ることで稲荷神の力は維持される。すなわちマッチポンプである。

作中では寿幸と七尾の狐の意識が混在しており、どちらが主人格だったのか、寿幸が本当に雛子との婚姻を望んでいたのかは不明瞭な部分がある。
雛子にしか読めない白紙の手紙を送るなどの奇行にも及んでおり、戎ヶ丘の住民には「狐憑き」と噂されていた。

ただ「狐その尾を濡らす」ルートの描写によれば、少なくとも「七尾の狐」の雛子に対する想いは本物であった模様。
ゆえに本来なら神隠しという形で強引に我が物にできるにもかかわらず、人間の作法に則って結ばれることを望み、人間として雛子や修と少年時代を過ごした。
離れた後も雛子に相応しい人物になるべくひたむきに勉強に励み、財を成し、人間社会のことも最大限理解しようと努力を惜しまなかった。
「君への愛は……酔狂な呪いによって生み出されたものではないと」

寿幸本人の自我が明確に出ていた場面は幼少期の過去回想と「静寂なる戎ヶ丘」エンディングのクライマックスシーン、エピローグの手紙くらいであるため、ある意味では一番描写が少ないキャラクターとも言える。


◆セルロイド人形
雛子が幼少期に持っていた赤い服の女の子を模した人形。
ある時期に捨ててしまったが、どういうわけか度々雛子の前に現れ、意味深なメッセージを残す。

+ ネタバレ
その正体は黒幕の片割れである九十九神の一部。
自身から人々の信仰を奪った稲荷神及び常喜家を恨んでおり、雛子と寿幸の結婚を邪魔しようとしていた。

捨てられたのは雛子が男の子と遊んでいることを理由に除け者にされ、女子らしい趣味を嫌うようになったため。

序盤は深水雛子と「雛子」の両方を導き助ける様子を見せるが、「狐その尾を濡らす」ルートの終盤では九十九神側が優位に立っている(=「雛子」を引き止めたり懐柔する必要がない)ためか、露骨に「雛子」を敵視し突き放す様なメッセージを見せるようになる。
また、物語終盤では霧の街に闇の社殿で「雛子」が遭遇したバケモノを出現させる描写があり、闇の社殿のバケモノを生み出している張本人であることのヒントとなっている。

【戎ヶ丘の神々・信仰】


◆水龍
須佐之男命がはねた八岐の大蛇の首の一つ。
硫化水素ガスやヒ素を含んだ地下水の噴出に畏怖した昔の戎ヶ丘の住人により、信仰が始まった。
若い女の命を求めているとされる。


◆付喪神/九十九神(つくもがみ)
あらゆる古いものには神が宿るというアニミズム信仰。
水龍を抑えるために信仰が始まり、これにより不思議なことに硫化水素ガスの流出が抑えられた。 
メイン州サイレントヒルもインディアンによる土地そのものを神聖視するアニミズム信仰が起源であるため似た部分がある。

元々は旧千年杉神社の御神木が御神体であったが、落雷により喪失したため、次に古い苔むした稲荷神像が御神体となった。
しかし時間の経過と共に稲荷神像や狐そのものを信仰する稲荷神信仰が主体となってしまい、付喪神信仰は廃れてしまった。

千年杉の次に古いものとして、実は「霊刀」が存在していたのだが、人々から忘れ去られたことから本来の新たな御神体になるはずだった霊刀には付喪神の怨念が宿っているとされる。


◆稲荷神
本来は豊穣、繁栄の神なのだが、戎ヶ丘の稲荷神信仰は付喪神信仰が変化したものであるため、稲荷像に使わなくなった古いものをお供えする文化が残っている。
また、狐そのものも稲荷神の御使いとして神聖視されており、稲荷神が狐に化けて鶏や干し柿を盗んだり親の言うことを聞かない子供にいたずらをしたりする逸話もある。

また、美しい娘に一目惚れして神隠しにしてしまう言い伝えもある。

こちらも水龍を抑えるために信仰が続いている。



【重要アイテム】


◆霊刀
平家の落ち武者の刀とされている、戎ヶ丘で御神木の次に古いもの。

忘れ去られた九十九神の怨念が宿る日本刀。
刀が勝手に動くため、雛子は習ったこともないはずの居合斬り等の技術を使えるようになる。
また、耐久力が尽きても壊れず、鞘にしまって他の武器を使うと耐久力が回復する。
怨念を祓うとただの刀になってしまう。

「九十九神」側の勝利に必要なアイテム


胡座(あぐら)布袋様(ほていそん)
常喜家が秘蔵していた霊薬。
名前から明らかな通り、『サイレントヒル』のアグラオフォティスと同じものらしき赤い液体。
戎ヶ丘で今なお愛用されている民間療法の万能薬。

古代の製法で作られた「本物」は神をも祓う力を持つとされる。

「稲荷神」側の勝利に必要なアイテム。



【バケモノ】


霧の街と闇の社殿を徘徊する、バケモノたち。
従来作では「モンスター」呼びであった。
なお作中で公式名称が不明なバケモノは便宜的に作中の雛子による呼称を記述する*11

【霧の街】

全体的に有機的なデザインのバケモノが多い。

◆カシマシ
女性をバラバラに切断して継ぎ接ぎしたかのような全裸のバケモノ。体表はピンク色で皮膚を剥がされた肉のようにも見える。
股関節部分は球体関節になっている。
全身に痛々しい傷があり、両目は焼き爛れたかのように潰れている。
よく見ると髪の長い個体、髪を結った個体、ザンバラ髪の個体の3種が存在する。
人型だが、ド素人が操演するマリオネットのような非常にギクシャクとした非人間的な動きが特徴的で、包丁を握りしめている。
跳躍力が驚異的で、段差を無視して追跡してくる。

最初の敵だけあって見切り反撃のタイミングは読みやすい。
花と肉腫に覆われた亜種や、見た目は同じだが行動パターンが違う亜種がいる。


◆アヤカカシ
動くカカシ、あるいはカカシに擬態したバケモノ。
ひび割れた木のような肌を持ち、セーラー服を着た女性型の個体と、学ランを着た男性型の個体が存在し、いずれも武器は鎌。
普段はカカシに擬態して静止しているが、雛子が後ろを向いている隙に走り寄り、目を合わせると動きを止める。
至近距離まで近付くと動き出し、カシマシよりも機微かつ攻撃的な動きで襲い掛かる。

また、ややこしいことに「アヤカカシの姿をした本物のカカシ」や、「目的地を指し示してくれる友好的なアヤカカシ」もいる。


◆イロヒヒ
挙動不審な四足歩行のバケモノ。
頭部の上半分が欠損し、代わりに光る植物の様なものが生えているが、雛子曰く「舐め回す視線」とのこと。
腹部が膨れており、肌は灰色で、手の平は脂ぎっている。
餓鬼の様にも見える。
俊敏な動きで襲い掛かり、雛子のスカートをめくる様な動作で攻撃したり、掴み攻撃では噛みつくのではなく顔面を舐め回すなどセクハラ親父LV.100みたいな存在。

因みに初代『サイレントヒル』にもアレッサの大人に対する恐怖が具現化した、姿がよく似たモンスターが登場していた。


◆ひしめく顔だらけのバケモノ
公式名称は不明なため雛子による作中の呼称を記述。
ズボンを履いた男性型とスカートを履いた女性型がいる。
下半身は人間的だが、上半身は肉塊に複数の見知らぬ顔がめり込んでいる。
雛子は彼らを知らないが、彼らは雛子を知っている。

口から次々に不快な何か(酸性の液体)を吐き出したり、雛子を絡め取ろうとする彼岸花を出現させ、安らげる場所を穢して回る。

攻撃性は低いが耐久力が高い。


◆嚢胞を無数に背負ったような醜悪なバケモノ
公式名称は不明なため雛子による呼称を記述。  
赤ん坊のシルエットの巨大な肉塊に背後から抱きつかれた母の様な姿の、無数の妊婦の腹を持つバケモノ。
女性のようなうめき声を発し、肉塊を産み落とす。
ピンクの肉塊からはバケモノが生まれ、紫の肉塊は近付くと爆発する。
また、本体もポッカリと穴が空いた顔から酸性の液体で攻撃する。


◆アラアバレ
巨大な球状の臓器と肉塊が彼岸花で覆われたかのような胴体に、短い足、触手のような左腕、巨大な包丁を持った右腕が生えており、腹部には巨大な口がある。
触手による掴み攻撃、咆哮によるスタン攻撃、巨大包丁による斬撃と多彩な攻撃を持ち、更に霧の街では唯一の不死身の敵で、倒しても復活する。
作中通して幾度も立ちはだかるため、三角頭やブギーマンをオマージュした敵と思われる。


【闇の社殿】

全体的に無機的なデザインのバケモノが多い。
また、特定の場所で倒すか一度倒してから吸魂しない限り、しばらくすると復活してしまう。

◆カムガラ
顔面と胸にぽっかりと穴が空き、手枷や足枷を嵌められた男性型のバケモノ。目が見えないため、聴力で雛子の位置を特定する。
シルエットはイロヒヒによく似ているが、セクハラのような攻撃ばかり繰り出すあちらとは対象的に、
殴打やマウントポジションなどとにかく暴力的な攻撃ばかりを繰り出す。
本質的にはいずれも「男性に対する恐怖」の象徴だろうか。


◆ハライカタシロ
小面の能面で顔を隠し、両足から鋭い刃が生えたバケモノ。
手に刀を持っている。
挙動はカシマシに似ているが、より機微で攻撃的。天井で待機してこちらが近付いたら急降下して奇襲を仕掛ける、アグレッシブな一面も見せる。
肉々しいカシマシとは対象的に、その質感は無機的。
後述の「口の中に大きな太鼓を呑み込んだバケモノ」に呼び出されること、刃物を手にした女性の人形というビジュアルから、
カシマシともども「夫に人形のようにこき使われる母親」が具現化した存在として捉えられる。


◆オイオモイ
無数のセルロイド人形の頭や手足が絡み合ったような上半身と、スカートを穿いた人形の下半身で構成されたバケモノ。
ケンケンパの動作で移動し、赤ん坊のような不気味な鳴き声を発しながら範囲の広いスタン攻撃や、体当たりを繰り出す。
シルエットは「ひしめく顔だらけのバケモノ」に似ており、それと同様に攻撃性は低いが耐久力が高い。


◆奇怪に膨れ上がった瘤だらけのバケモノ
公式名称は不明なため雛子による呼称を記述。
無数の手を持つ男性型のバケモノが無数の妊婦の腹を持つ女性型のバケモノを背負うかのような外見をしており、女性型の頭部は長髪が生えているが顔には穴が空いており、そこから酸性の液体を吐き出す。

次々と瘤を生みだし、ピンクの瘤からはバケモノが生まれ、紫の瘤は近付くと爆発する。

シルエットや行動は「嚢胞を無数に背負ったような醜悪なバケモノ」と酷似しており、いずれも「母親になることへの恐怖」の象徴と思われる。


◆口の中に大きな太鼓を呑み込んだバケモノ
公式名称は不明なため雛子による呼称を記述。
アラアバレに酷似したシルエットだが、肉々しい外見だったアラアバレとは対象的に苔むした木のような質感の体表で、しめ縄らしきものが身体に巻き付いている。
右腕からは巨大なバチが生え、口にハマった巨大な太鼓で音を鳴らしてハライカタシロを呼び出し、左手で糸を引いて操りけしかける。
自分では大きな音を出して威嚇するばかりで攻撃は女性型バケモノのハライカタシロ頼りなことから、アラアバレともども雛子にとっての「父親」という概念の具現化と言えるだろう。


【強敵】

◆咲子らしきもの
巫女の姿のバケモノ。咲子と同じ声で喋る。
ツインテールはそのままに、死人のような肌と長身、下顎が喪失した口を持ち、胸部には背中まで貫通した穴が空いている。
また、後光の意匠のオブジェを背負っている。
棘だらけの鉄槌と鎖を振り回し、その度に鈴の音が鳴る。
周囲を暗闇で包み、後光のオブジェから衝撃波を放つこともできる。
闇の社殿にて雛子と対峙する。

+ ネタバレ
一応最初のボスなのだが……設定上は今回の黒幕相手には流石に劣るが、本来なら雛子と狐面の男の2人がかりでも恐らく勝てないレベルの相手。
実は諸事情でかなり手を抜いている。

◆凜子らしきもの
斎主の姿のバケモノ。凛子と同じ声で喋る。
憤怒の炎(ザ・フューリー)」により顔が抉れ、その穴からはマグマのようなものが溢れ続けている。
赤熱した鎖のような大幣をふるい、炎やセーラー服姿の凛子に似た傀儡を操り攻撃する。
傀儡は身体が炎上すると発狂し、自爆攻撃を仕掛けてくる。
闇の社殿で対峙する。
なおこの時の凛子らしき物のセリフは雛子との言い合いの喧嘩の時の物だと考察されている。誰が言った女同士版スクライド


◆バケモノになったお父さん/父
バケモノに変化した深水寛太。アラアバレに酷似した姿。
アラアバレや「口の中に大きな太鼓を呑み込んだバケモノ」のイメージの根源である。
ボス戦では「バケモノになったお母さん」と共に立ちはだかる。
アラアバレとの違いは寛太の声で喋ること、寛太の服を着ていること、武器が巨大なマグロ包丁になっていること。


◆バケモノになったお母さん/母
バケモノに変化した深水君江。両目部分や左肩、右腕に彼岸花が生えていることを除けばあまり見た目の変化はない。
包丁を手に「バケモノになったお父さん」と共に立ちはだかる。
アラアバレの対となる「口の中に大きな太鼓を呑み込んだバケモノ」によってハライカタシロが呼び出されること、ハライカタシロの対となるカシマシが包丁を手にしている点から、カシマシ/ハライカタシロのイメージの根源と思われる。

両親とは霧の街で対峙する。


◆霧のバケモノ/白無垢
白無垢に綿帽子を被った花嫁姿の、強烈な威圧感を放つバケモノ。
顔面は鋭い刃物でお面の如く斬り落としたかの様に喪失しており、獣の腕と3m近くある異様な長身が特徴。
霧を発生させると同時に、彼岸花や触手・肉腫で周囲を侵食していく能力を持つ。獣の腕による殺傷力も高い。
霧の街では幾度も「深水雛子」を追い回す。

+ ネタバレ
1周目で必ず到達するエンディング「呪いは雛の如く舞い戻る」ルートのラスボス。

その正体は闇の社殿の「雛子」が黒幕により姿を歪められた存在。
もう1人の自分という意味では、『サイレントヒル2』の三角頭や『サイレントヒル ダウンプア』のブギーマンのオマージュと言えるかも知れない。*12
「狐その尾を濡らす」ルートでもラスボスの前座として「深水雛子」と対峙する。

ただし、三角頭やブギーマンが主人公が乗り越えるべき障害であるのに対し、白無垢は対立してしまった時点でバッドエンディング確定となる。

【2周目以降の強敵】

「呪いは雛の如く舞い戻る」以外のルートで戦うボスたち。

+ 以下、2周目以降のネタバレ注意
◆九十九神
阿修羅像のような巨体のバケモノ。
「狐の嫁入り」「静寂なる戎ヶ丘」ルートの最終ボス。

戎ヶ丘で信仰されていた付喪神で、かつての御神体であった千年杉の意匠を始め、様々なガラクタで継ぎ接ぎされた姿をしている。
また、頭部には5つの面がついている。
ロボットのような挙動で、複数の手にはそれぞれ武器を持ち、ホーミングする弓矢まで扱う。

+ ネタバレ
本作の黒幕その1で、戎ヶ丘の信仰対象が付喪神から稲荷神に変わったことを恨んでいる。
「赤いカプセル」には神と通じる副作用があり、自分で赤いカプセルを試した修に取り憑いて操り、雛子に服用させた。
分離した雛子の内、「深水雛子」に取り憑いて結婚を破談させようと目論んでいた。
また、闇の社殿に現れたバケモノを召喚していた犯人でもあり、「家族」「父親」「女としての生」に絶望感を与えて「雛子」を殺そうとしていた。
度々登場し「深水雛子」の背中を押していたセルロイド人形も九十九神の一部であった。

「狐の嫁入り」ルートでは修を取り込んだ姿(胸部に修の顔がある)で「雛子」と対峙し、稲荷神の御使い「九尾の狐」により与えられた獣の腕で倒された。

一方で「静寂なる戎ヶ丘」ルートでは胸部にセルロイド人形が埋め込まれ、中央の面が黄金に輝く「水龍」のものになっており*13、水龍に操られているかのような描写となっている。
「雛子」の抹殺に失敗して破れかぶれになったのか、「深水雛子」の悩みを嘲笑った結果怒りを買い、対峙することになった。
怨念が払われた状態とはいえ、稲荷神側への対抗武器であった霊刀が自分に向けられるという皮肉かつ因果応報の末路であり、同時進行で「雛子」と対峙していた九尾の狐よりもしぶとく戦っていたものの、倒されてしまった。

元々は水龍を抑える役割を果たしており、戎ヶ丘の住人の気の移ろいやすさの被害者とも言える。
九十九神が勝利する「狐その尾を濡らす」エンディングでは戎ヶ丘が毒ガスと地下水で壊滅しているが、これは後述の九尾の狐が雛子の稀血を得られずに水龍を抑えることができなくなった結果と思われる。
九十九神としては自分への信仰を捨てた住人たちへの復讐でもあったのかもしれない。

なお前述の通り千年杉は別の思惑で動いているようだが、それでも九十九神陣営の大部分を占めている存在ではあるため、ラスボスとして姿を現す九十九神の胴体部分には朽ちた千年杉の意匠が確認できる。

+ 余談
欧州文化では長年使われた道具に魂が宿るという概念的なニュアンス(古道具信仰)がほとんど浸透していない*14
そのため、海外勢の多くは付喪神が何なのか分からなかったらしい*15
その上、この九十九神の正体自体がストーリー上ではわりと唐突に登場するため、リリース直後、海外勢たちは九十九神が何者なのか分からず
  • 急に出てきた謎のデカブツ
  • 薬や雛子への執着で歪んだ修の精神の具現化?
  • 玩具=未熟な精神や過去の象徴? 幼い頃の思い出やトラウマのメタファー?
  • あのセルロイド人形が実はチャッキーのめちゃくちゃ強い版みたいな化け物だったのか?
  • 霊刀に宿ったスピリットが除霊されて、それが修やセルロイド人形に宿ったもの?(これはかなり正解に近いが、神霊というよりエクソシスト的なものと勘違いしていると思われる、そのため厳密には違う)
と認識がたいそう混乱していた模様。
ただ、ジャパニーズホラーに精通している人やゲーム内テキストを分析する海外考察班たちがこれらを「日本文化の深み」「稲荷信仰や水龍伝承と深くかかわる物語の重要な構成要素」と理解してYoutubeなどで認識を広めてくれているらしい。
また、キャラクターデザイン自体は日本の不気味な怪異として好意的に受け止める声が多いようである。


◆七尾の狐
7本の尾を持つ巨大な狐のバケモノ。
「狐その尾を濡らす」ルートの最終ボス。

美しい毛並みを持つが、全身を覆う赤黒い膿により醜悪な外見となっている。
一定のダメージを与えると人間体となり、自分が落とした膿を触媒としてカシマシ、イロヒヒ、アラアバレを召喚してくる。
召喚されたバケモノを倒すと再び狐形態となる。

形態変化のたびに体表の膿が消えていき、全ての膿が消えると力尽きる。

+ ネタバレ
その正体は幼少期の寿幸に取り憑き同化した、稲荷神の御使いの末裔(公園の回想シーンで登場する迷い込んだ狐)
黒幕である九尾の狐のために寿幸を傀儡化させ、彼が現実世界で深水雛子と結ばれるように仕向けた。

しかし「狐その尾を濡らす」ルートの終盤、九十九神により送られた深水雛子と修の妨害により人間体を保てなくなり、その正体を露わにする。

九尾の狐に使役される存在で、雛子を求めたのも自分たち一族のためだが、実は九尾の目論見とは関係なく本心から雛子に惚れていた。
対等な存在として雛子と結ばれるべく、同化した寿幸の立場を利用して人間社会に紛れ込み、女性にとっての幸せを彼なりに分析した。

しかし皮肉にも彼が学んだのは、深水雛子の苦しみの源流でもある「昭和の文化」であった。
そこに神の一族としての視点と独善的な思考が加わり、悪意なしに雛子の自由と権利を奪ってしまった。

「狐その尾を濡らす」のクライマックスでは「自由」を望む深水雛子に拒絶されるも、認めることができず、力づくで我が物にしようと襲い掛かってくる。
戦いの中で誰よりも愛情を注いだ自分が何故否定されるのか、何が足りないのかと酷く嘆くが、同時に自分では雛子を幸せにできないことも理解する。

最後は本当の意味で彼女の幸せを願い、修と共に逃げるよう促し、自分は崩壊する闇の社殿に「後始末」のために残った。
多くの被害を出したとは言え、彼の愛情と善意が本物であったことは雛子と修も理解しており、去り際に感謝と別れの言葉を告げられる。

その後の顛末は不明だが、エピローグでは現実の戎ヶ丘が毒ガスと地下水の噴出によって崩壊状態にあることが明かされ、物語が九十九神の勝利で終わったことが示唆されている。


◆九尾の狐
9本の尾を持つ、黒くて巨大な狐のバケモノ。
「静寂なる戎ヶ丘」ルートにのみ登場し、それ以外のルートでは存在が示唆されるのみ。

+ ネタバレ
稲荷神の御使いにして常喜一族の起源。黒幕その2。
九尾の狐の末裔である常喜一族の男に「稀血の女に惚れて求婚する呪い」をかけて子供を作らせ、四年に一度稀血を捧げさせることで力を保っていた。
寿幸に取り憑いていた七尾の狐の上司・親玉のような存在。
また、分裂した「雛子」にも取り憑き寿幸との結婚を急かしていた。
「白無垢/雛子」を操って霧の街にバケモノを送り込んだ犯人でもあり、「両親」「友人たち」への未練を断ち切らせるためトラウマを促進させ両親が謝罪した思い出も消し、「深水雛子」を弱らせて殺そうとしていた。

「静寂なる戎ヶ丘」ルートでは「深水雛子」の抹殺に失敗した上に寿幸(七尾の狐)が事実上振られたため、破れかぶれになったのか寿幸を「愚鈍」だと嘲笑った。
だがしかしそれが「雛子」の逆鱗に触れ、九十九神の前座として対峙することになる。
七尾の狐よりも攻撃が激しく、霧の街に現れるバケモノを召喚して操ることもできる。

九十九神よりも先にダウンし、「狐の嫁入り」ルートでは九十九神を倒す武器となった獣の腕が、あろうことか自分に向けられるという因果応報且つ皮肉な末路であった。

ただし、力を保ち続けようとするのは水龍を抑えるためでもあるため、一概に悪とも言い切れない。




【エンディング】


+ ネタバレ
◆呪いは雛の如く舞い戻る
【終わらぬ自問の沼にて溺れ死ね。】

1周目に必ず到達するエンディング。
ラスボスは白無垢。
自分の片割れと極限まで殺し合った結果、結婚を拒む意思が勝ったものの、そこで完全に発狂。
赤いカプセルを大量に飲み続けた雛子は、結婚当日に式場で大暴れし、花嫁衣装のまま式場から逃走。
式場での犠牲者数は不明で、県道では二人の成人男性が犠牲となった。
最悪なエンディングだが、雛子の強さが現実と据え置きであることがわかる。


◆狐の嫁入り
【愛されることこそ、人形の幸せ。】

赤いカプセルを飲まず、霊刀を入手しないか怨念を払い、胡座の布袋様を入手すると到達する。
胡座の布袋様を飲むことで取り憑いていた九十九神諸共「深水雛子」は消え、「雛子」は式場に殴り込んできた修から寿幸を庇うが、雛子に"捨てられた"修が赤いカプセル経由で九十九神に取り憑かれラスボスとなる。

九十九神を倒した後に修と寿幸は和解、雛子は寿幸と結婚し水龍は抑えられたままだが、「家族」「夫婦」「女としての生」に対する偏見や不安が解消されていないため幸福な印象はなく、白無垢が打ち捨てた「狐の雛子」としての顔が不安と恐怖に泣き叫ぶ *16という不穏な雰囲気で終わる。


◆狐その尾を濡らす
【自ら選んだ地獄。後は野となれ。】

赤いカプセルを飲まず、霊刀を入手すると到達する。
「雛子」は白無垢に変身するも「深水雛子」に倒され、その後式場に殴り込んできた修に襲撃された寿幸が七尾の狐に変身してラスボスとなる。

修に駆け落ちも同然に連れ出された「深水雛子」は満足気であり、はっきり言って全エンディングで一番清々しい表情を見せるが、代わりに稲荷神が水龍を抑えられなくなったことで硫化水素ガスとヒ素含有の地下水が噴出し、戎ヶ丘は全住民への避難指示が出されたことで事実上の崩壊を迎える。


◆静寂なる戎ヶ丘
【語り合おう、私と貴方の未来を。】

2種類以上のエンディングを見た上で、更に赤いカプセルを飲まず、霊刀の怨念を払い、常喜家から貰った胸飾りを奉納すると到達する。
両親の本当の姿を見た「雛子」と「深水雛子」は、自分たちを戦わせようとする黒幕に気付く。

そして「雛子」は自身を操る九尾の狐と、「深水雛子」は自身を操る「九十九神」と対峙する。
狐憑きから解放された寿幸は自分の恋心が本心かを見つめ直すことにし、二人の雛子もじっくり語り合って答えを決めることにした。
結婚が白紙となり、2体の神が殺された*17ことで水龍を抑えられなくなったためか、ラストシーンでは戎ヶ丘が水に沈んでいるのが見えるが、寿幸は狐憑きにより失われた子供時代を取り戻し、二人の雛子は「誰も居ない静かな戎ヶ丘」でこれからのことを考えるのだった。

なお、水龍復活については明言はされておらず、ラストシーンはあくまでも現実世界ではなく「霧の街」であり、誰も居ない(バケモノも存在しない)戎ヶ丘の光景は「雛子が誰にも邪魔されず自分自身と向き合う時間を手に入れたことのメタファー」という説もある。

エンディング後に見れる寿幸からの手紙を見る限り、雛子と彼の交流は結婚を取りやめた後も続いていることが分かる。
「雛子」は、今度は本心から寿幸を好きになれるように。「深水雛子」は、今度こそ自分がやりたいことを見つけるために。
まだ完全に求めるものが重なってはいない雛子たちだが、今までと違うのは「全てを理解し、自分の意思で進む道を『選択』する自由」を手に入れたことである。
寿幸は「深水雛子」と「雛子」に相応しい男になれるよう努力を続けるであろうし、EDには登場しないが他の面々の人生も続いていく。
修は雛子たちの背中を押せる立派な「相棒」になれるように、凛子はどんなことがあっても「友達」を支えられる良き友人になれるように、咲子は雛子たちにどんな「困難」が待ち受けようが駆けつけられるように、両親はどんな娘の「選択」も祝福できるように……雛子たちが最終的にどう言う選択を取るかは不明だが、姉である潤子も自分で「幸せ」だと思う選択が出来たように、きっと後悔のない選択は出来たのだろう。
決して平坦な道ではないし、まるで霧の町を歩いているような感覚だろうが、幸せになれたことは間違いない。
何故なら、彼女たちは本当の意味で強くなったのだから。


◆???
作中で非常にシリアスな雰囲気のムービーで破壊されていたことが判明した街の鉄橋。*18
唯一の脱出経路を破壊した犯人は、まさかの"アレ"であった…。
+ ???エンドの顛末を見届けた人向けの解説
◆奇怪!宇宙人大侵略!
【立ち上がれ!宇宙海兵隊参上!】

……要するに、𝑺𝑰𝑳𝑬𝑵𝑻 𝑯𝑰𝑳𝑳シリーズ恒例のUFOエンドである。
昭和のギャグ漫画っぽいビジュアルでおちゃらけた展開のエンディングシナリオが流れ、シリーズでは珍しいハッピーエンド?な結末を迎える。
ついでにUFOをよく見ると、シリーズお馴染みの真の黒幕である柴犬「ミラ」も乗っている。

このエンディングをクリアしたデータをロードすると、次の周回で隠し武器「PP-8001」を入手できる。

【どれが「正史」エンディング…?】

+ ネタバレ
前述の通り「エンディングの良悪はプレイヤーの判断に任されており、トゥルーエンドというものは存在しない」とされる本作だが、時系列的にエンディング後となる第四境界とのコラボ『SILENT HILL f 残置物展』は、「呪いは雛の如く舞い戻る」か「狐その尾を濡らす」のどちらかのエンディングから地続きであることが示唆されている。
ちなみに、一番良いエンディング(ベストエンド)が必ずしも正史として採用されるわけではないというのはシリーズの伝統だったり……。





追記、修正は全てを壊してからお願いします。

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最終更新:2025年10月25日 13:24

*1 ファミ通のインタビューによると開発当初は静岡県を舞台とする案もあったのだが、現地視察を行った際に「どこに居ても霊峰・富士山が見下ろしてきて霧の印象が薄れてしまう」という欠点が判明し、候補から外されることとなった。

*2 2週目以降で見られる新規ムービーでは、イベントスキップのコマンド名が「長押しで新規内容をスキップ」に変わり、スキップする際も「未確認の内容が含まれている」と再確認のメッセージが表示される。1週目との違いが分かりにくくてもコマンド名で新規イベントかどうかの判別自体は容易な点を含め、一度見たイベントと間違えてスキップするミスを防ぐ親切設計となっている。

*3 すべてのルートに専用曲があるようなもの。

*4 スタッフロールに変化はありません。

*5 集中による消費は花々で描かれたゲージが端から赤茶けた色に変わっていくが、掴み被弾などではゲージが丸ごと削られていく。

*6 「呪いは雛の如く舞い戻る」での警察の無線、異様に古びた通学鞄、「狐その尾を濡らす」にて雛子が(学生服姿のはずの)修に「ネクタイが似合わない」と言うなど。

*7 ついでに言うと雛子自体も寿幸自身に対しては満更でもない態度であるため余計に問題である。

*8 ただしどうにか弱らせた+あっちがある程度手加減してやっとである。

*9 時代背景の問題もあるが当時は嫁いだ女性は冠婚葬祭に行かせてもらえない事も普通にあった。

*10 現実世界の寿幸の姿は作中では確認できないが、コンセプトアートでは黒髪の青年として描かれている。

*11 ファンによる呼称ではなくあくまでも作中の呼称であるため、ある意味ではこれも公式名称と言える。

*12 「頭に被り物をしている」、「“レッド”ピラミッドシングと“白”無垢で色が名称に含まれている」という共通点もある。

*13 稀にバグにより通常の面のままのことがある

*14 欧州文化の土台であるキリスト教は基本的に一神教であることが大きな要因と思われ、日本では一般的である神道や八百万の神などの多神教という概念自体にも疎い。

*15 ゲーム内のテキストで「古い道具に魂が宿る」こと自体は説明されているのだが、それとゲームに登場する九十九神を結びつけることができなかった海外プレイヤーが多かったようである。

*16 吐露する内容が「深水雛子」のそれと一致しているが、話者名の表示はこちらになる。上記の通り偏見や不安が据え置きである中、それらに恐怖する本音の顔を表に出さないために捨てたという事だろう。

*17 実績「神殺し」からもわかる通り明確に神が倒されている。

*18 凛子と合流後に凛子の家の窓から見える鉄橋