登録日:2025/10/04 Sat 21:57:00
更新日:2025/10/05 Sun 01:03:28NEW!
所要時間:約 24 分で読めます
SILENT HILL fとは、コナミのフランチャイズ『サイレントヒル』シリーズの作品の一つ。
PS5、Xbox Series X|SおよびPC(SteamおよびEpic Gamesストア)向けに2025年9月25日に発売された。
ジャンルはサイコロジカルホラー兼サバイバルホラー。
デベロッパーは『
デッドライジング デラックスリマスター』を始めとする数々の大型タイトルの「リマスター版」を製作してきた香港のネオバーズ社、プロデューサーは岡本基、監督はアル・ヤン、脚本は『
ひぐらしのなく頃に』で知られる
竜騎士07、BGM等の楽曲はシリーズお馴染みの山岡晃と稲毛健介を始め、竜騎士07と縁がある二人の音楽家が担当している。
その他、演者達を始め日本人スタッフが中心として開発されている。
家庭用ゲーム作品としては11作目、リメイクやリイマジネーションを除いた完全新作としては9作目に相当する。
また、
日本人スタッフ中心で開発された作品としては『
サイレントヒル4 ザ・ルーム』以来の5作目となる。
【概要】
本作における「サイレントヒル」は地名ではなく読んで字のごとく「静寂なる丘」という意味で、「f」には複数の意味が込められているとされる。
シリーズ過去作の舞台であったメイン州サイレントヒルからは遠く離れた岐阜県戎ヶ丘という寂れた街がメインの舞台となる。
また、年代も80年代だった過去作よりも更に昔の1960年代が舞台となっている。
プレイヤーは主人公深水雛子を操作し、ゲーム側から提示される目標を達成していくことで物語が進行していく。
1周目は完全にリニア式でありエンディングは固定だが、2周目では条件を満たすことで3通りの新たなエンディングに分岐する。
また、3周目では最も円満に終わる新たなエンディングが追加される。
なお、竜騎士07曰く「トゥルーエンドがどれかはプレイヤーが決める」とのことであり、最も良いエンディングがプレイヤー間で便宜的に「トゥルーエンド」と称されてはいるものの実際には誤りである。
従来通りストーリー主導型作品である一方で、シリーズで最もアクション要素が強い作品でもあり、難易度「難関」以上ではフロムゲー並の死にゲーとなる。
一般的な他のゲームでは「ベリーイージー」扱いされることが多い難易度「物語重視」でも、本作では作中のテキストで「従来のSILENT HILLの難易度です」と表記されている。
「シリーズのファンだがアクションゲームは初心者」というプレイヤーは迷わず「物語重視」を選択することが推奨される。
ストーリーにおける特徴としては、過去作のように主人公に明確な行動目的(娘を探す、死んだ妻からの手紙の真相を究明する等)が無く、1周目の時点では主人公の行動目的自体が謎めいていることが挙げられる。
また、周回を重ねる度に各キャラクターの新たな側面がテキストや新規ムービーで判明するのも特徴。
初代サイレントヒルのキャラクター達がかなり象徴的に善と悪に区別できたことと比べると、本作のキャラクター達はかなり多面的、多層的に描写されている。
竜騎士07が得意とする閉鎖的な環境での人間ドラマも見所と言える。
また、1960年代当時の世相を反映した性差別描写や家庭内暴力の描写も多く、拷問などの残虐表現も多いため、SERO Zとなっている。
【難易度】
アクションと謎解きのそれぞれに難易度が設定されている。
「物語重視」<「難関」<「五里霧中」 の順に難しくなる。
なお、デフォルトではアクション難易度「物語重視」、謎解き難易度「難関」となっており、これが一番従来のシリーズに近い難易度である。
というか前述のとおり「難関」以上は死にゲーになる。
【ゲームシステム】
雛子が持ち歩く手帳。
ゲームの進行と共に、雛子の主観による新規情報がやたらと上手い絵と共に追加されていく。
入手した謎解きのヒントもまとめてくれるのでたすかる。
あちこちにあるセーブポイント。
後述の「精神力」を回復できる。
また、「お供え」をすることで「功徳ポイント」が溜まっていき、ポイントを消費することで雛子の能力を強化したりパークである「お守り」を入手したりできる。
なお、「お供え」はお供え物にしか使えないアイテムの他にも一部の強力な消費アイテムでも可能であり、取捨選択がプレイヤーに委ねられる。
また、能力強化にはポイントの他にも「絵馬」というアイテムが必要になる。
本作では敵との戦闘になると3つのゲージが画面端に表示される(普段は自動的に非表示になっている)。
「体力」ゲージは敵の攻撃を受けると減っていき、尽きると雛子が死にゲームオーバーとなる。
一部の消費アイテムで回復できる。
「精神力」ゲージは敵に掴まれたり集中状態で敵の攻撃を受けると減っていき、尽きた状態で精神攻撃を受けると体力も減る。
一部の消費アイテムや祠で精神力を回復できる。
「持久力」ゲージは「攻撃」や「回避」といったアクションで減っていき、尽きると回復するまでアクションができなくなる。
時間経過で自動的に回復するが、一部の消費アイテムで一定時間持久力を無限にできる。
本作は戦後の日本の岐阜県が舞台であるため銃火器は一切登場せず、鉄パイプを始めとする鈍器や刃物が武器となる。
本作は「サバイバルホラー」であるため武器には耐久度が設定され、耐久力が尽きると壊れてしまう。
消耗アイテムである工具で武器をなおせるが、武器は3つまでしか持ち歩けない。
雛子は過去作のキャラクターよりもかなり機微に動ける。
敵の攻撃を軽やか且つ飛距離の長いスウェイ(通称
ヤーナムステップ)で回避する「回避」、素早いが威力の低い「攻撃」と隙は大きいが威力の高い「強攻撃」が戦闘アクションのメインとなる。
敵の攻撃をギリギリで回避するとバレットタイムが発動する「見切り回避」となりスタミナが全快し、敵の特定の攻撃(敵の輪郭がぼやけ特徴的なサインが表示される)に対して強攻撃を行うと雛子が一瞬で間合いを詰めて敵の懐に入り込み強力な攻撃を叩き込む「見切り反撃」となり、大ダメージを与えつつ怯ませることができる。
精神力を消費する「集中」を行うとバレットタイムが発動し、集中ゲージが溜まった状態で攻撃を行うと「渾身の一撃」となり敵を怯ませることができる。
また、集中状態では見切り反撃可能な時間が伸びる。
渾身の一撃や見切り反撃で怯んでいる敵は与えられるダメージが大きくなる。
「難関」以上の難易度では通常攻撃や強攻撃では敵が殆ど怯まないため、見切り反撃や渾身の一撃で怯ませることが必須となる。
敵は死んでもアイテムをドロップせず、一定以上離れると雛子を見失うため、ゲーム中のテキストでも可能な限り戦闘は避けることが推奨されている。
【舞台】
「表世界」と「裏世界」を行き来していた過去作と同様に、本作でも2つの世界が登場する。
霧に包まれた戎ヶ丘。
様々な建物が入り組んだ複雑な迷路の様相だが、実在の街をモデルにしている。
最初は人気こそ無いが美しくも寂れた田舎町という印象だが、正体不明の「霧のバケモノ」により彼岸花と触手、肉腫に侵食されていき、様々なバケモノが闊歩する地獄と化していく。
全体的な印象としては明るく有機的。
星一つ見えない闇に包まれた、古めかしい迷宮の様な神殿。
青い狐火が浮かび、しめ縄がされ護符が無数に貼り付けられた鳥居をはじめ、神社のようにも見える。
阿吽の狛犬の代わりに配置された狐の像など「狐」の意匠のオブジェクトが多い。
この世界の武器は壊れないが、徘徊するバケモノも不死身であり、倒しても復活する。
全体的な印象としては暗く無機的。
【ストーリー】
昭和の古い時代。とある地方の山間部にある寂れた田舎町、戎ヶ丘に住む高校生、深水雛子(しみず ひなこ)。
彼女の日常は、ぼんやりとした灰色ではあっても、思春期相応の平凡なものだった。
だが、そのいつもの日常は唐突に崩れ去る。
見慣れた町は霧に包まれ、おぞましく変貌していく。
人の気配は消え、代わって、霧の中に奇怪な何かが蠢く。
変貌していく町を探索し、謎を解き、身を守る為に戦い、生き残れ。
向かい合わなければならなかった選択と、向き合う為に。
そして、殺さなければならない者を、殺す為に。
彼女が選ぶのは、美しき選択か。
それとも、おぞましき選択か。
美しくも、おぞましい選択の、物語。
【登場人物】
演:加藤小夏、境葵乃(幼少期)
「霧の街」でプレイヤーが操作する主人公。
紺色のセーラー服を着た若い女性。
男口調で勇ましい台詞が多いが、それとは裏腹に常に陰りのある表情を浮かべている。
「自分で選択すること」を何よりも重視しており、運命を他人に決められることを嫌う。例え自分が選んだ道が地獄であったとしても。
男尊女卑の文化が根深く残り、「男/女はこうあるべき」という社会的押し付けが強かった1960年代当時の女性としては、かなり生き難い性格であったと言えよう。
「手帳」を見る限り、かなり絵が上手いことがわかる。あと、ちょっと厨二病の気がある。
また、元陸上部であったため身体能力は高い。
いや高すぎ。
異様なまでに俊敏なスウェイとやたら殺意の高い攻撃モーションは素人の動きではなく、敵の一瞬の隙を見極めて懐に入り込み攻撃を叩き込むクソ度胸は歴代主人公のアクションを超越している。陸上関係ねぇだろコレ。
そのあまりのタフさに
「雛子様」「雛子殿」「雛子の姐御」だの別ゲー由来の敬称で呼び始めるプレイヤーが続出する始末。
しかし精神力と持久力に制限があるため、無双はできない。
幼馴染の修とは互いに「相棒」と呼び合い、バケモノにも勇猛果敢に立ち向かう。
一見すると今で言うトランスジェンダーに見えるが、劣悪な家庭環境から女としての人生や結婚に対して絶望とトラウマを抱え、そのことから女扱いされるのを嫌っているだけであり、女として生まれた事自体を呪っているわけではない。
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ネタバレ |
その正体は、後述の「赤いカプセル」により分離した「"深水雛子"で有り続けたい(結婚したくない)雛子」。
「霧の街」も地元の思い出に縋る彼女が生み出した余剰次元だと思われるが、完全な精神世界かと言われるとサイレントヒルシリーズの余剰次元なので別次元に物理的に実在していると思われる。
しかし黒幕により思考誘導されており…。
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「闇の社殿」でプレイヤーが操作する主人公。
「深水雛子」のドッペルゲンガー。
こちらは女性らしい言葉遣いであり、「狐面の男」に導かれて進んでいく。
また、「儀式」として「狐面の男」から様々な拷問を強いられるが、不思議なことに「狐面の男」に悪感情を抱かずに従順に従う。
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ネタバレ注意 |
中盤で自身の右腕を自ら切り離すという拷問に耐え、獣の腕が移植される。
通常の武器は使えなくなるが、渾身の一撃で敵を倒すか倒した敵を「球魂」することで復活を防げるようになる。
さらに、球魂によりゲージが溜まると獣の腕が肥大化する「覚醒」状態となり、一定時間体力・持久力無限となり、攻撃力も増加する。
覚醒状態で倒した敵は復活が阻止される。
その正体は赤いカプセルにより分離した「結婚を受け入れ過去と決別した雛子」。
見知った場所である「霧の街」とは対象的に見知らぬ場所である「闇の神殿」は彼女のこれからの人生に対する不安が反映された余剰次元だと思われる。
右腕を切り離し、背中に焼印を押され、顔を剥がされ仮面を付けられるという拷問描写も、これまでの深水雛子を捨てて嫁ぎ先の家紋を背負うということのメタファーなのだろう。
嫁ぎ先から与えられた獣の腕が強力なのも、「家」の力を振るえるようになるからだろう。
苦痛に耐えながらも「狐面の男」に悪感情を抱かないことから、こちらの雛子はベタ惚れであることがわかる。
しかしそれも黒幕の誘導であった…。
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演:大崎捺希
戎ヶ丘で薬師として知られる岩井家の息子。
雛子の幼馴染のイケメンで、「心は男の女(もしくはその逆)」がいることを認知しており、雛子もそれだと思っていたため恋心を抱きながらも女扱いせず接していた。
1960年代当時としては「理解が有りすぎる彼くん」と言えるが、実際の雛子はトランスジェンダーではなく修から女として扱ってほしいと思われていた─即ち両想いだった─ことには気付けなかった。
幼少期は雛子と「宇宙戦争ごっこ」で遊んでいた。
物語冒頭で頭痛に悩む雛子に独自製法の解熱鎮痛剤「赤いカプセル」を渡すが…。
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ネタバレ |
赤いカプセルの正体は、『 サイレントヒル』に登場した神秘的な薬草ホワイトクロジェアと同じものらしき「白黒草」を原料とした違法薬物であった。
内なる自分と対話できる効能があるとされており、雛子が分裂した原因である。
2周目以降にアンロックされるエンディングは、いずれも「赤いカプセル」を一度も使用しないことが条件となっている。
修は雛子に恋心を抱いていたが、彼女をトランスジェンダーだと思いこんでいたため告白できずにいた。
そんな最中に雛子に縁談が舞い込み結婚すると知った修は自暴自棄となり、赤いカプセルを自分で試したあと、(恐らく内なる自分に促されて)雛子に渡した。結婚を断り自分に振り向いてくれることを期待して…。
しかしそれら一連の行動は、黒幕によって操られてのものであった。
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演:飯島優花
雛子の友人。真面目な優等生タイプだが融通が効かない。
修に片思いしているが相手にされておらず、修と宇宙戦争ごっこの話で盛り上がる雛子に嫉妬している。
また、裕福な家庭で何不自由なく生きてきたためか内心で他人を見下しており、根本的に性格が悪い。
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ネタバレ |
その雛子への嫉妬は憤怒の炎と言っても差し支えないものであったが、同時に雛子の存在は凛子にとっての初めての挫折の象徴でもあり、人生に必要な存在、感謝すべき相手であったと振り返っていた。
だが修と両想いになっておきながら名家の跡取りに嫁いだり、凛子の気持ちを知った上で結婚を前にしながら修とイチャイチャする雛子は客観的に見ても割とクソ女ムーブであるため、凛子の怒りにも一定の正当性はあるかもしれない。
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演 :滝瀬妃夏
声:合田絵利
雛子の友人。千年杉神社の神主の娘。
かつては人で賑わっていた神社を立て直すことを目標にしている。
戎ヶ丘の信仰の推移に詳しい。
新年には巫女のバイトをしている。
奇妙なことに、雛子を明るい口調で「裏切り者!」と呼ぶ。
いつもふわふわしている夢見がちの変わった子で、雛子から借りた500円を踏み倒そうとしてくる。
ちなみに1960年代当時はカップ麺50円の時代なので500円も借りておいて踏み倒そうとする咲子はかなり図太い。
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ネタバレ |
実は霊感があり、様々な神や幽霊からの訴えを聞いている。
そのため周囲と馴染めずにいたが、同じく「男と遊ぶ」ことを理由に他の女子と馴染めなかった雛子と友達となり、「ずっと一緒」と約束し、半ば依存していた。
雛子を「裏切り者」と呼ぶのはその約束を破り嫁ぐからだろう。
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演:真砂豪
雛子の父で、絵に描いたような亭主関白。
酒癖が悪く癇癪持ちで、一度怒り出すと君江や雛子を怒鳴りつけて暴れていた。
若い頃はよく笑う真っ当で優しい男であった。
元漁師で、漁で貯めた大金で料理屋を開くのが夢だったが、弟のようにかわいがっていた友人に裏切られて多額の負債を背負ってしまい、荒れてしまった。
雛子に結婚や男性に対するトラウマと不安を植え付けた張本人。
雛子に名家の常喜家からの縁談が舞い込み、借金が返せると喜ぶが、深水雛子はそれを「借金返済のために売られる」と認識していた。
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ネタバレ |
実はその暴力的な態度は「子供に恐れられる位が威厳ある父親」だと誤解していたため。
1960年代当時の「父親はこうあるべき」という社会的抑圧もあったかもしれない。
結婚前に雛子に対して土下座し、「他の父親は俺とは違う」「俺の呪縛から解放されて幸せに生きてくれ」「結婚するもしないもお前が決めていい」と謝罪しており、雛子が抱える結婚や男に対する不安やトラウマを少しでも解消しようと試みており、雛子は許すとは言わなかったものの、謝罪自体は受け止めていた。
また、金を必要としていたのは妻君江の難病の治療費のためでもあった。
だが、その記憶は黒幕にとって邪魔なものであったため、2周目までは消されていた。
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演:平岡珠実
雛子の母。夫に従順で、罵声を浴びせられても宥めるばかりで抵抗しなかった。
情けない父親に反抗できないその様は、雛子に女性としての人生に絶望を植え付け、「お父さんは嫌いだったけど、お母さんも好きじゃなかった」と評された。
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ネタバレ |
実際には、雛子が居ない間の家庭内パワーバランスは君江が上であった。
大喧嘩した際は陰湿な嫌がらせをして寛太に土下座させるほど強かな女性であった。
結婚前に雛子が抱える「女性としての人生」に対する不安を解消するため、自分達夫婦の本当の姿を打ち明け、心配をかけたことを謝罪していた。
しかしその記憶は黒幕にとって邪魔だったため2周目までは消されていた。
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声:森なな子
絹田家に嫁いだ雛子の姉。
とても綺麗で優しくて、何でも出来て、何でも相談できる自慢のお姉ちゃん。
回想では顔が隠れ、「霧の街」や「闇の神殿」では奇妙な仮面を被り死人の様な継ぎ接ぎだらけの白い皮膚になっている。
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ネタバレ |
彼女も霊感があり、雛子の幸せのために彼女の余剰次元に干渉し、結婚を促していた。
そのため「深水雛子」とは敵対している。
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演:泰江和明
狐の面を被った男。純血の日本人でありながら白髪。闇の神殿で雛子を導く反面、拷問じみた儀式を強いる。
名家常喜家の現当主だが、元々は藤鳥という名字で、先代当主の愛人の子であった。
現当主が亡くなったため、常喜家に呼び戻され当主となった。
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実は雛子や修と幼馴染で、宇宙戦争ごっこをしたことさえあった。
幼少期に街に迷い込んだ狐に噛まれ、狐の正体である稲荷神の御使いの末裔「七尾の狐」に憑かれてしまった。
「狐憑き」となった常喜家の人間は常喜家の起源にして親玉である「九尾の狐」の呪いにより、戎ヶ丘に生まれる神通力(稀血)を持つ女性に恋心を抱く様になり、その稀血の女と子供を作ることで稲荷神は力を保っていた。
寿幸は九尾の狐の呪いにより稀血の女である雛子に恋をし、人生の全てを初恋に捧げて求婚していた。
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雛子が幼少期に持っていたがある時期に捨ててしまった赤い服の女の子を模した人形。
二人の雛子の前に度々現れ、「深水雛子」に助言を与える一方で「雛子」を妨害するようなメッセージを残す。
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その正体は黒幕の片割れである九十九神の一部。
自身から人々の信仰を奪った稲荷神及び常喜家を恨んでおり、雛子と寿幸の結婚を邪魔しようとしていた。
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【戎ヶ丘の神々・信仰】
須佐之男命がはねた八岐の大蛇の首の一つ。
有毒ガスの地下水噴出に畏怖した昔の戎ヶ丘の住人達により信仰が始まった。
若い女の命を求めているとされる。
あらゆる古いものには神が宿るというアニミズム信仰。
水龍を抑えるために信仰が始まり、これにより不思議なことに硫化水素ガスの流出が抑えられた。
メイン州サイレントヒルもインディアンによる土地そのものを神聖視するアニミズム信仰が起源であるため似た部分がある。
元々は旧千年杉神社の御神木が御神体であったが、落雷により喪失したため、次に古い苔むした稲荷神像が御神体となった。
しかし時間の経過と共に稲荷神像や狐そのものを信仰する稲荷神信仰が主体となってしまい、付喪神信仰は廃れてしまった。
千年杉の次に古いものとして、実は「霊刀」が存在していたのだが、人々から忘れ去られたことから本来の新たな御神体になるはずだった霊刀には付喪神の怨念が宿っているとされる。
本来は豊穣、繁栄の神なのだが、戎ヶ丘の稲荷神信仰は付喪神信仰が変化したものであるため、稲荷像に使わなくなった古いものをお供えする文化が残っている。
また、狐そのものも稲荷神の御使いとして神聖視されており、稲荷神が狐に化けて鶏や干し柿を盗んだり親の言う事を聞かない子供にいたずらをしたりする逸話もある。
また、美しい娘に一目惚れして神隠しにしてしまう言い伝えもある。
こちらも水龍を抑えるために信仰が続いている。
【重要アイテム】
平家の落ち武者の刀とされている、戎ヶ丘で御神木の次に古いもの。
忘れ去られた九十九神の怨念が宿る日本刀。
刀が勝手に動くため、雛子は習ったことも無いはずの居合斬り等の技術を使えるようになる。
また、耐久力が尽きても壊れず、鞘にしまって他の武器を使うと耐久力が回復する。
怨念を祓うとただの刀になってしまう。
「九十九神」側の勝利に必要なアイテム
常喜家が秘蔵していた霊薬。
名前から明らかな通り、『サイレントヒル』のアグラオフォティスと同じものらしき赤い液体。
戎ヶ丘で今なお愛用されている民間療法の万能薬。
古代の製法で作られた「本物」は神をも祓う力を持つとされる。
「稲荷神」側の勝利に必要なアイテム。
【バケモノ】
霧の街と闇の神殿を徘徊する、バケモノ達。
従来作では「モンスター」呼びであった。
【霧の街】
全体的に有機的なデザインのバケモノが多い。
女性をバラバラに切断して継ぎ接ぎしたかのような全裸のバケモノ。体表はピンク色で皮膚を剥がされた肉のようにも見える。
股関節部分は球体関節になっている。
全身に痛々しい傷があり、両目は焼き爛れたかのように潰れている。
よく見ると髪の長い個体、髪を結った個体、ザンバラ髪の個体の3種が存在する。
人型だが、ド素人が操演するマリオネットのような非常にギクシャクとした非人間的な動きが特徴的で、包丁を握りしめている。
跳躍力が驚異的で、段差を無視して追跡してくる。
最初の敵だけあって見切り反撃のタイミングは読みやすい。
花と肉腫に覆われた亜種や、見た目は同じだが行動パターンが違う亜種がいる。
動くカカシ、あるいはカカシに擬態したバケモノ。
ひび割れた木のような肌を持ち、セーラー服を着た女性型の個体と、学ランを着た男性型の個体が存在し、いずれも武器は鎌。
普段はカカシに擬態して静止しているが、雛子が後ろを向いている隙に走り寄り、目を合わせると動きを止める。
至近距離まで近付くと動き出し、カシマシよりも機微かつ攻撃的な動きで襲い掛かる。
また、ややこしいことに「アヤカカシの姿をした本物のカカシ」や、「目的地を指し示してくれる友好的なアヤカカシ」もいる。
挙動不審な四足歩行のバケモノ。
頭部の上半分が欠損し、代わりに光る植物の様なものが生えているが、雛子曰く「舐め回す視線」とのこと。
腹部が膨れており、肌は灰色で、手の平は脂ぎっている。
餓鬼の様にも見える。
俊敏な動きで襲い掛かり、雛子のスカートをめくる様な動作で攻撃したり、掴み攻撃では噛みつくのではなく顔面を舐め回すなどセクハラ親父LV.100みたいな存在。
因みに初代『サイレントヒル』にもアレッサの大人に対する恐怖が具現化した、姿がよく似たモンスターが登場していた。
公式名称は不明なため雛子による作中の呼称を記述。
ズボンを履いた男性型とスカートを履いた女性型がいる。
下半身は人間的だが、上半身は肉塊に複数の見知らぬ顔がめり込んでいる。
雛子は彼らを知らないが、彼らは雛子を知っている。
口から次々に不快な何か(酸性の液体)を吐き出したり、雛子を絡め取ろうとする彼岸花を出現させ、安らげる場所を穢して回る。
攻撃性は低いが耐久力が高い。
公式名称は不明なため雛子による呼称を記述。
赤ん坊のシルエットの巨大な肉塊に背後から抱きつかれた母の様な姿の、無数の妊婦の腹を持つバケモノ。
女性のようなうめき声を発し、肉塊を産み落とす。
ピンクの肉塊からはバケモノが生まれ、紫の肉塊は近付くと爆発する。
また、本体もポッカリと穴が空いた顔から酸性の液体で攻撃する。
巨大な球状の臓器と肉塊が彼岸花で覆われたかのような胴体に、短い足、触手のような左腕、巨大な包丁を持った右腕が生えており、腹部には巨大な口がある。
触手による掴み攻撃、咆哮によるスタン攻撃、巨大包丁による斬撃と多彩な攻撃を持ち、更に霧の街では唯一の不死身の敵で、倒しても復活する。
作中通して幾度も立ちはだかるため、三角頭やブギーマンをオマージュした敵と思われる。
【闇の社殿】
全体的に無機的なデザインのバケモノが多い。
また、一度倒しても球魂しない限りはしばらくすると復活する。
顔面と胸にぽっかりと穴が空き、手枷や足枷を嵌められた男性型のバケモノ。
シルエットはイロヒヒによく似ている。
目が見えないため、聴力で雛子の位置を特定する。
セクハラのような攻撃ばかり繰り出すイロヒヒとは対象的に、とにかく暴力的な攻撃ばかりを繰り出す。
本質的にはいずれも「男性に対する恐怖」の象徴だろうか。
小面のような顔を持ち、両足から鋭い刃が生えたバケモノ。
手に刀を持っている。
挙動はカシマシに似ているが、より機微で攻撃的。
肉々しいカシマシとは対象的に、その質感は無機的。
無数のセルロイド人形の頭や手足が絡み合ったような上半身と、スカートを穿いた人形の下半身で構成されたバケモノ。
ケンケンパの動作で移動し、赤ん坊のような不気味な鳴き声を発しながら範囲の広いスタン攻撃や、体当たりを繰り出す。
シルエットは「ひしめく顔だらけのバケモノ」に似ており、それと同様に攻撃性は低いが耐久力が高い
公式名称は不明なため雛子による呼称を記述。
無数の手を持つ男性型のバケモノが無数の妊婦の腹を持つ女性型のバケモノを背負うかのような外見をしており、女性型の頭部は長髪が生えているが顔には穴が空いており、そこから酸性の液体を吐き出す。
次々と瘤を生みだし、ピンクの瘤からはバケモノが生まれ、紫の瘤は近付くと爆発する。
シルエットや行動は「嚢胞を無数に背負ったような醜悪なバケモノ」と酷似しており、いずれも「母親になることへの恐怖」の象徴と思われる。
公式名称は不明なため雛子による呼称を記述。
アラアバレに酷似したシルエットだが、肉々しい外見だったアラアバレとは対象的に苔むした木のような質感の体表で、しめ縄らしきものが身体に巻き付いている。
右腕からは巨大なバチが生え、口にハマった巨大な太鼓で音を鳴らして他のバケモノを操りけしかける。
【強敵】
巫女の姿のバケモノ。咲子と同じ声で喋る。
ツインテールはそのままに、死人のような肌と長身、下顎が喪失した口を持ち、胸部には背中まで貫通した穴が空いている。
また、後光の意匠のオブジェを背負っている。
棘だらけの鉄槌と鎖を振り回し、その度に鈴の音が鳴る。
周囲を暗闇で包み、後光のオブジェから衝撃波を放つこともできる。
闇の社殿にて雛子と対峙する。
斎主の姿のバケモノ。凛子と同じ声で喋る。
「憤怒の炎」により顔が抉れ、その穴からはマグマのようなものが溢れ続けている。
赤熱した鎖のような大幣をふるい、炎やセーラー服姿の凛子に似た傀儡を操り攻撃する。
傀儡は身体が炎上すると発狂し、自爆攻撃を仕掛けてくる。
闇の社殿で対峙する。
バケモノに変化した深水寛太。アラアバレの正体。
ボス戦では「バケモノになったお母さん」と共に立ちはだかり、今までとは異なり寛太の声で喋る。また、寛太の服を着ている。
バケモノに変化した深水君江。両目部分や左肩、右腕に彼岸花が生えてる以外はあまり見た目の変化は無い。
包丁を手に「バケモノになったお父さん」と共に立ちはだかる。
両親とは霧の街で対峙する。
白無垢姿の威圧感のあるバケモノ。
獣の腕を持ち、顔は抉れて喪失し、異様なまでの長身(3メートル近くある。)。
1周目で必ず到達するエンディング「呪いは雛の如く舞い戻る」のラスボス。
周囲に霧を発生させると同時に彼岸花と触手、肉腫で侵食させる能力を持ち、その獣の腕による殺傷力も高い。
霧の街では幾度も「深水雛子」を追い回した。
その正体は闇の社殿の「雛子」が黒幕により姿を歪められた存在。
もう1人の自分という意味では、サイレントヒル2の
三角頭のオマージュと言えるかも知れない。
阿修羅像のような巨体のバケモノ。
「狐の嫁入り」「静寂なる戎ヶ丘」の最終ボス。
戎ヶ丘で信仰されていた付喪神で、かつての御神体であった千年杉の意匠を始め、様々なガラクタで継ぎ接ぎされた姿をしている。
また、頭部には3つの面がついている。
ロボットのような挙動で、複数の手にはそれぞれ武器を持ち、ホーミングする弓矢まで扱う。
本作の黒幕その1で、戎ヶ丘の信仰対象が付喪神から稲荷神に変わったことを恨んでいる。
「赤いカプセル」には神と通じる副作用があり、自分で赤いカプセルを試した修に取り憑いて操り、雛子に服用させた。
分離した雛子の内、「深水雛子」に取り憑いて結婚を破談させようと目論んでいた。
また、闇の社殿に現れたバケモノを召喚していた犯人でもあり、「家族」「父親」「女としての生」に絶望感を与えて「雛子」を殺そうとしていた。
度々登場し「深水雛子」の背中を押していたセルロイド人形も九十九神の一部であった。
「狐の嫁入り」ルートでは修を取り込んだ姿(胸部に修の顔がある)で「雛子」と対峙し、「静寂なる戎ヶ丘」ルートでは胸部にセルロイド人形が埋め込まれ、3つの面の中央の面が「水龍」のものになった姿で「深水雛子」と対峙する。
元々は水龍を抑える役割だったものの、戎ヶ丘の住人達の気の移ろいやすさの被害者とも言える。
九十九神が勝利する「狐その尾を濡らす」では戎ヶ丘が毒ガスと地下水で壊滅しているが、これは後述の九尾の狐が雛子の稀血を得られずに水龍を抑えることができなくなった結果と思われる。
九十九神としては自分への信仰を捨てた住人達への復讐でもあったのかもしれない。
余談だが、欧州文化では
長年使われた道具に魂が宿るという概念的なニュアンス(古道具信仰)がほとんど浸透していない。
そのため、ジャパニーズホラーに精通している人やゲーム内テキストを分析・考察する人でもない限りは付喪神が何なのか説明なしでは分からなかったらしい。
その上、この九十九神の正体自体がストーリー上ではわりと唐突に登場するため、リリース直後には九十九神が何者なのか分からず「急に出てきた謎のデカブツ」「修の具現化した精神? 歪みがやばすぎる」「あのセルロイド人形が実は
チャッキーのめちゃくちゃ強い版みたいな化け物だったのか?」と認識がたいそう混乱していた模様。
ただ、海外考察班はこれらを「日本文化の深み」「稲荷信仰や水龍伝承と深くかかわる物語の重要な構成要素」と理解してYoutubeなどで認識を広めてくれているらしい。
また、キャラクターデザイン自体は
日本の不気味な怪異として好意的に受け止める声が多いようである。
婚姻の儀を乱入してきた修に邪魔された寿幸が変異したバケモノ。
「狐その尾を濡らす」の最終ボス。
7本の尾を持つ巨大な狐の姿で、全身が赤黒い膿で覆われている。
一定のダメージを受けると人間の姿に戻り、自身の身体を覆う膿でカシマシ、イロヒヒ、アラアバレを生み出してけしかけてくる。
生み出されたバケモノを倒すと体表の膿が無くなっていき、美しい毛並みが露わになる。
全ての膿が無くなると力尽きる。
稲荷神の御使いにして常喜一族の起源。黒幕その2。
九尾の狐の末裔である常喜一族の男に「稀血の女に惚れて求婚する呪い」をかけて子供を作らせ、四年に一度稀血を捧げさせることで力を保っていた。
寿幸に取り憑いていた七尾の狐の上司・親玉のような存在。
また、分裂した「雛子」にも取り憑き寿幸との結婚を急かしていた。
一方で霧の街にバケモノを送り込んだ犯人でもあり、「両親」「友人達」への未練を断ち切らせるためトラウマを促進させ両親が謝罪した思い出も消していた。
「静寂なる戎ヶ丘」ルートでは九十九神の前座のボスとして「雛子」と対峙する。
力を保ち続けようとするのは水龍を抑えるためでもあるため、一概に悪とも言い切れない。
【エンディング】
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ネタバレ |
終わらぬ自問の沼にて溺れ死ね。
1周目に必ず到達するエンディング。
ラスボスは白無垢。
自分の片割れと極限まで殺し合った結果、発狂し、結婚当日に式場で大暴れして虐殺し、花嫁衣装のまま逃走。
式場での犠牲者数は不明で、県道では二人の成人男性が犠牲となった。
最悪なエンディングだが、雛子の強さが現実と据え置きであることがわかる。
愛されることこそ、人形の幸せ。
赤いカプセルを飲まず、霊刀を入手しないか怨念を払い、胡座の布袋様を入手すると到達する。
胡座の布袋様を飲むことで取り憑いていた九十九神諸共「深水雛子」は消えるが、雛子に"捨てられた"修が赤いカプセル経由で九十九神に取り憑かれラスボスとなる。
寿幸と結婚し水龍は抑えられたままだが、「家族」「夫婦」「女としての生」に対する偏見や不安が解消されていないため、幸福な印象は無く不穏な雰囲気で終わる。
自ら選んだ地獄。後は野となれ。
赤いカプセルを飲まず、霊刀を入手すると到達する。
「雛子」は白無垢に変身するも「深水雛子」に倒され、その後式場に殴り込んできた修に襲撃された寿幸が七尾の狐に変身してラスボスとなる。
修に駆け落ちも同然に連れ出された「深水雛子」は満足気であり、はっきり言って全エンディングで一番清々しい表情を見せるが、代わりに稲荷神が水龍を抑えられなくなり戎ヶ丘は硫化水素ガスと地下水噴出により滅ぶ。
語り合おう、私と貴方の未来を。
2種類以上のエンディングを見た上で、更に赤いカプセルを飲まず、霊刀の怨念を払い、常喜家から貰った胸飾りを奉納すると到達する。
両親の本当の姿を見た「雛子」と「深水雛子」は、自分達を戦わせようとする黒幕に気付く。
そして「雛子」は自身を操る九尾の狐と、「深水雛子」は自身を操る「九十九神」と対峙する。
狐憑きから解放された寿幸は自分の恋心が本心かを見つめ直すことにし、二人の雛子もじっくり語り合って答えを決めることにした。
結婚は破談となり、2体の神が殺されたことで水龍を抑えられなくなり、ラストシーンで戎ヶ丘が水に沈んでいるのが見えるが、寿幸は狐憑きにより失われた子供時代を取り戻し、二人の雛子は静かな戎ヶ丘でこれからのことを考えるのだった。
なお、水龍復活については明言はされておらず、ラストシーンはあくまでも「霧の街」だから現実では無いという説もある。
作中で非常にシリアスな雰囲気のムービーで破壊されていたことが判明した街の鉄橋。
唯一の脱出経路を破壊した犯人は、まさかの"アレ"であった…。
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追記、修正は全てを壊してからお願いします。
- つまり2体の神々による権力闘争に、主人公達が巻き込まれた感じか。 -- 名無しさん (2025-10-04 23:16:43)
- カタギとは思えない刃物捌きが話題になった -- 名無しさん (2025-10-04 23:24:20)
- アクションホラーでなおかつ「バケモノの懐に飛び込んで殴り合ういろんな意味でのクソ度胸」「やたら強力なステップ移動」「パッケージの逞しい後ろ姿」まで揃ったらそらブラッドボーンだよなって。またその勇ましい、諧謔にも満ちた言い回しから和風DmCとも。 -- 名無しさん (2025-10-04 23:41:12)
- 嫁入り儀式がどれもマジで痛そうなうえにじっくりたっぷり描写されてて「おごごごごご……」ってこっちまで痛みに耐えさせられる -- 名無しさん (2025-10-04 23:58:54)
最終更新:2025年10月05日 01:03