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VIPロックマンまとめ

ロックマンX -5-

最終更新:

匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集
224 名前:Irregular's Elegy[] 投稿日:2006/10/08(日) 00:18:35.21 ID:Hh3oKoTN0
「こいつがイレギュラーになったって、聞いてな。信じられなくて、本人のとこまで行った訳よ」
ゼロはクッキーを投げて、口で受け取ると、鷲型のレプリロイドを指差す。
「そしたら、なんだよ。脅迫されてるって言うじゃないか」
テーブルに置かれる菓子をもう一つ口にし、呆れたように肩を竦める。
イーグリードは口を挟まず、黙々とクッキーを食べ、一つをエックスに薦めた。
「イレギュラーに、お前の仲間を殺されたくなかったら、手伝えてっていうチープな脅し」
エックスは、アイの泣き顔とヴァヴァの狂笑を思い出した。

「イーグリードも馬鹿だぜ。用は、全部のイレギュラーを破壊すれば良い話じゃねぇか」
友を守ろうとする決意を目に宿しながら、朗らかに笑うゼロ。

だが、エックスは笑えない。マンドリラーやカメリーオは耳を貸さないのは、先ので解っているし。
ペンギーゴという悲劇もある。
ゼロの言っている、全部のイレギュラーは『どこまでなのか』。
イーグリードの言っている、仲間とは『どこまでなのか』。

親友でありながら、実は思惑が全く違うのではないか、そんな考えがエックスの頭をよぎる。

「ま、俺とエックスがいるんだ。安心しな」
自分に配られたクッキーを全て食べ、ゼロはソファから立ち上がり、目を線にして背伸びをする。
「ここって、風呂あったよな? 借りるぜ」
イーグリードは、親指で左の扉を指し示し、ゼロは頷き、扉に向かった。

「………イーグリードさん」
自分の考えを彼女に言おうとするが、草原からずっと悲嘆にくれるレプリロイドは、その言葉を遮るように立ち上がる。
「あいつは………良い奴だ」
「…………えぇ」
「………クッキー、食べてくれ。私のお手製なんだ」
イーグリードは遊覧室から、エックスから、『何か』から逃げた。


230 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2006/10/08(日) 00:38:34.38 ID:Hh3oKoTN0
「アルマージ………カメリーオ……ナウマンダー……クワンガー……マンドリラー……オクトパルド……」
船長室で声が、部屋の照明と同じ様に暗く響く。
「…………ペンギーゴ」
イーグリードの手の中で、簡素な電磁書類が大きく揺れる。

<第13極地部隊所属の元特A級ハンター、アイシー・ペンギーゴ 極地基地で死亡>
簡潔に書かれた情報。しかし、彼女にとっては簡単に受け止められるものではない。
「すまない……すまない……本当にすまない! みんなを助けると言ったのに! 助けると言ったのに!」

――ウソツキ

「私を許してくれ! すまない………私は!!」

――俺がお前を助けてやる。お前の仲間も皆、全員助けてやるよ。

「ゼロ……」

――だから、イレギュラーに手を貸すのをやめて、一緒に来い!!

「ゼロ……」

――その前に、俺達。親友……だろ?
「あぁ、そうだな……」
はにかんだ様に笑う赤いレプリロイドの事を思い出しながら、その親友はもう一つの書類を見た。
<特A級イレギュラーハンター、ZEROを処分すれば、破壊されたイレギュラーは全て復活してやる>
「誰かの為に誰かを殺す……仕事上、慣れてはいたが。………親友か」

――俺がお前を助けてやる。お前の仲間も皆、全員助けてやるよ。
「ペンギーゴ達は私を許さないだろう……だが、お前なら私を許してくれる――親友だからな」
悲嘆にくれる鷲型レプリロイド、ストーム・イーグリード。彼女が、初めて笑った。


236 名前:Irregular's Elegy[] 投稿日:2006/10/08(日) 00:58:51.82 ID:Hh3oKoTN0
「泣けるぜ」
故障中と札が貼られた浴場の門を前に、ゼロが途方にくれた。
「あーあ。エックスに背中流してもらおうと、思ったのにぃ」
「残念でした。馬鹿いわないで、部屋にもどろ」
ニヒヒと笑う少女に、エックスはため息を吐いた。

「ねぇ……良いの?」
「ん? 何が?」
遊覧室での一件を言おうとするが、エックスはなかなか言葉に出来ない。
どう言えば良いのか、あまりに難しい事でエックスは途方にくれた。

「いいね……ゼロは。悩みなんかなくて。あぁ! だからゼロなのか」
結局、言葉に出来たのは憎まれ口だ。
「おいおい、俺にだって悩みぐらいあるぞ」
「へぇ。どんな事だろ? ボクは力になれる?」
むー、と悩む彼女を見て、意外そうにエックスは問うた。
「そうだなぁ……微妙だな」
悩んだ後、自分の薄い胸に視線を落とし、ゼロは言った。
「もうちょっと、胸があれば良いなぁって思ってたんだが……おい、エックス。ちょっと、俺の胸を」
「では、失礼」
エックスは微笑み、自分に与えられた部屋へとダッシュした。

「おい! おい、エックス!! おーい! ちっ……何だよ、貧乳は嫌いってか」
廊下を駆け抜けるエックスの背中を見ながら、ゼロはこれからどうするか悩んだ。
「俺も部屋に戻りましょうかね……」
自らも部屋に戻ろうとした時に、平坦な声がかけられる。
「ゼロ……少し、良いか」
「何だよ、イーグリード。お前が俺の悩みを解決してくれるのか」
親友――ストーム・イーグリードが廊下に立っていた。
「甲板まで来てくれ………大事な、話がある」



242 名前:Irregular's Elegy[] 投稿日:2006/10/08(日) 01:23:59.42 ID:Hh3oKoTN0
「博士に連絡した方が、良いのかな」
自分の部屋に逃げ込んだエックスは、長いことライトに連絡を取っていない事に気付く。
胸から無線機を取り外し、エックスはライトの研究所にコールした。

「もしもしー、エックスです。ライト博士?」
『32時間と41分27秒ぶりだな、エックス君』
地獄に通信してしまったのかと、エックスは番号を確認したが、打ち間違いは無い。
「こんばんはー、エックスですー」
『32時間と41分27秒ぶりだな、エックス君』
混線したという可能性を考えたが、無線に異常は無い。

「こ、こんばんはー」
『32時間と41分27秒ぶりだな、エックス君』
留守番電話という可能性も考えたが、どうやらそうではなさそうだ。
「は、博士?」
『32時間と41分27秒ぶりだな、エックス君』
「ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさーい!!」

『解れば良いんだ………全く。この事態で定期的に連絡をよこさないとは、君もなかなかやるね』
「……す、すみません。って、また泣いてるんですか?」
心なしか、ライトの声色は涙声になっていた。
『な、泣いてなんかいない!』
「じゃあ、連絡したんで、切りますね。おやすみなさい、博士。良い夢を」
疲れたような顔をして、エックスはベッドに飛び込もうとする。
『切らないでー。丁度良いし、ヘッドパーツあげるから』
「…………何言ってるんですか、あなた」


博士との会話を終え。ベッドに潜り込むエックス。疲れのため、直ぐにでも眠れる事ができそうだ。
ゼロとイーグリードの事を思い、エックスは意識を落とした。



251 名前:Irregular's Elegy[] 投稿日:2006/10/08(日) 01:58:59.14 ID:Hh3oKoTN0
眠りに落ちるエックスを叩き起こしたのは、目覚ましでも悪夢でも無い。
爆音、風切り音、そして旗艦デスログマーを揺らす衝撃だった。
「な、なにが………」
驚き、毛布を跳ね除けながら起きるエックス。衝撃は断続的に起き、今もなお機体を揺らす。

「まさか……!」
ゼロとイーグリードの事を思い出し、そして最悪の可能性に気付く。
責任強く、最後までマンドリラー等を説得した彼女。
仲間を思い、イレギュラーに一度は落ちた彼女。
「ゼロ……! イーグリードさん!!」

二人の考えは違っていた。全く、違っていた。
ゼロは、イレギュラーを『イーグリードの仲間』として数えていない。
イーグリードは、全てを『仲間』として数えている。

エックスは、寝室の扉を蹴破るように出て、轟音の発生場所に向かう。
走る最中、廊下の丸窓の景色を見る。上空に黒い雲。激しく降り注ぐ雨粒。
デスログマーは高度を落としているのか、窓と船体を雨が叩いてた。
急いで、二人の居場所を探すエックス。
またもや、大きな衝撃がデスログマーと足元を震わせた。

廊下の先にあった船長室に飛び込む。しかし、二人は居ない。
「……………これ……」
装飾品で飾らないがしかし美しさを魅せる――高価な机の上にある無造作に置かれた二枚の書類。
「アイちゃん、と…………これ……は」
書類の内容を流し読みしたエックスは、読み終わったと同時にその部屋を飛び出した。

「イーグリードさん!!」



405 名前:Irregular`s Elegy[] 投稿日:2006/10/08(日) 18:42:02.68 ID:Hh3oKoTN0
船内であるはずなのに、突風が吹き荒れる。
「いったい何処に……!」
二人の姿を探し続けるエックスは、デッキに上がる為の屈強な扉が、削岩機に抉られたように空けられているのを見とめた。

デスログマーの甲板。通常の戦艦よりも数倍ある広い空間を持ち、それを挟むように巨大な対空砲が並んでいる。
そこで二つの影が、対峙する。
デッキ中心に居るのは、片膝を落とす赤きレプリロイド。左腕から濃赤の液体で、床を濡らし、身体中に擦傷を作っていた。
それに対するのは暴風。巨大な薄い赤の竜巻を纏った、鷲型の悪魔が羽ばたきながら空中に浮かぶ。

「………ゼロ!」
エックスが扉――であった物から飛び出し、仲間の元に駆け寄る。
ゼロは険しい顔を空とぶイレギュラーから離さず、横目だけでエックスを見た。
「……エックス」
いつ何時でも、冷静沈着、周囲から凄腕と恐れられていたハンターの声は、悲しみの感情でひび割れていた。
「イーグーリード……が……」
男のエックスより、男らしい物言いと態度を取る、あのゼロが少女の顔をする。絶望を突きつけられた――少女の顔で。

金色の髪が雨に濡れて顔に張り付き、突風がそれを散らす光景は、整った顔に似合っていたが、エックスはこんな形で見たくはなかった。
青いレプリロイドは隣の少女の肩を叩き、華奢な身体を後ろに押しやると、代わりにイーグリードと対峙した。

「イーグリードさん………」
「邪魔をするな……エックス。これは――親友との問題だ……」
呟きは、迸る突風で遮られる。鷲型のイレギュラーは背中に持つ大きな羽、それを羽ばたくだけで、エックスを後ろに吹き飛ばした。
イーグリードの顔は、日中のような悲嘆ではなく侮蔑の笑みに染まっていた。

親友という単語で、ゼロの身体が電撃を受けたように震える。
「………もうやめて下さい。ゼロは、ゼロは悪気があったんじゃないんです! ゼロはあなたを……!」
一瞬、空が光り、轟音。一筋の雷が落ちる。



407 名前:Irregular`s Elegy[] 投稿日:2006/10/08(日) 18:43:08.63 ID:Hh3oKoTN0
「幼くして命を奪われたアイ君と、その他の仲間達………その埋め合わせ――貴様の死で償え!!」
そして、滑空した。
火花と散らし、聞き障りな鈍い音をたててゼロが宙に浮く。

エックスが声を上げるまもなく、甲板に叩きつけられた身体は、見るも無残だった。
猫の耳のようなメットは半分まで破壊されており、機能はほとんど使えない状態だろう。
胸部の装甲も毟り取られたように引き剥がされ、薄い乳房が露出する。

「はっはぁ!!」
イーグリードが両手をどうだとばかりに掲げ、勝ち誇る笑み。
先ほど気付いた事だが、ゼロは攻撃も防御も一切していないようだ。
それほどまでに、精神的なダメージが大きいのか。エックスは、やりきれないとばかりに首を振る。

「あの世で詫びろ……ゼロぉ!!」
そんな二人の思いなどお構い無しに、イーグリードは攻撃を放つ。
全ての物体を貫通する赤き竜巻――ストームトルネードだ。

エックスは自分の下で小さくなる身体を抱きしめ、受身も考えずに横に跳ぶ。
間一髪で、自然の削岩機の猛威から避ける事が出来た。
「くっ………どうすれば……!」
呻くエックスに、またも迫る小型の竜巻。
イーグリードのバスターから放たれる、ストームトルネードは鋼という障害物を知らない。

「さぁ、私を許せ! ゼロ! 私もお前を許してやる!!」
言いざま、荒れ狂う竜巻を放ち、エックス達をデッキの端まで追いやる。
雨はさらに激しさを増し、三者を雨粒で冷たくさせる。また、雷が鳴った。

「後が無いぞ、ゼロ! 貴様の生と同じ、後が無いぞ!」
自分の言葉に酔ってるのか、ケタケタと笑いながら空を舞うイレギュラー。



415 名前:Irregular`s Elegy[] 投稿日:2006/10/08(日) 19:11:18.95 ID:Hh3oKoTN0
「ゼロぉ……しっているか……? 私の『仲間』のアイシー・ペンギーゴはなぁ、破壊されてしまったんだよ……!」
エックスの叫びなど聞こえなかったように、イーグリードは薄桃の唇から呪いの言葉を吐き出した。
ポニーテールが愉快そうに揺れる。
「お前が守るといったのにな……お前が全てを守ってくれると言ったのにな!」
全てを見下した笑みとは別に、彼女の言葉は悲しげに、そして全てを憎悪したかのように吼えた。

「イーグリード……俺は……」
エックスに抱きかかえながら、少女は空を見上げる。
どこまでも黒く。どこまでも暗かった。強い雨はやまない。
「ゼロ……大丈夫?」
少し強く抱きしめる。少女のボディは小刻みに震えていた。

「畜生……俺、オレは……何のために……こんなの、こんなのって……ないよ……」
雨と同じく、頬をゼロの涙が流れる。
イーグリードが拘るペンギーゴの事を。自分が極地基地で起こった事をエックスは思い起こしていた。
「ゼロ……このまま、イーグリードさんの復讐に身を任せる……?」
青きレプリロイドは、彼女の目尻をぬぐってやり、そんな事を言いながら微笑んだ。

「エックス……?」
「いいよ、ボクは……それでも。『親友』であるゼロが望むのなら」
震える身体をさらに強く抱きしめてやり、エックスはそう優しく囁いた。

「あはははははははっ!! ひゃはははははははははは!!」
イーグリードは、ストームトルネードを放ちまくり、デスログマー自体を破壊しようとしている。
鷲型のメットの下の顔には、分別と理解という言葉が消えていた。
「全てを還してやる!! 全て、破壊してやる!! そうすれば、みんなは戻るんだ!!」

「だめ……だ。それは……だめなんだ」
「オレには、まだ……やらなきゃならない事がある。お前は、まだ死ぬには早すぎる……!」
やらなきゃならない事とは何かと、疑問に思ったが、そんな些細な事は二の次だとエックスは考えた。



421 名前:Irregular`s Elegy[] 投稿日:2006/10/08(日) 19:37:13.90 ID:Hh3oKoTN0
「そ………う。じゃあ、どうする?」
「止めよう……あいつを。あいつの悪夢を………手伝ってくれ……頼めた義理じゃないが……あいつを」
暴走する『親友』を涙を流しながら、ゼロは言った。
小爆発が度々起こる。放ち続けられる赤き竜巻が、巨大な船の動力部に当たってしまったようだ。

「ゼロは動けない。――僕がやろう」
エックスの決意は固い。女性的な顔であったが、やっと男らしさが滲み出たようであった。
「良いのか……?」
頷くエックス。立ち上がり、空中で暴れまわるイレギュラーを見据える。

「オレのフットパーツを使ってくれ……」
カシュッ、と駆動音がしたかと思うと、ゼロの脚部の装甲が脱着する。
小さな眩い光が放たれると、赤き装甲がエックスの脚に装着された。
「エックス………本当にすまない」

二人は気付いているのだろうか。
ゼロは、オレと言うように。
エックスは、僕と言うようにと。発音は同じであれ、危機的状況が二人の心構えを変えた。

「イーグリート!!」
荒れ狂う竜巻で操舵室を破壊したイレギュラーに、エックスは迫りながら叫ぶ。
「アイちゃんを破壊したのは、僕だ! 償いをさせるなら、先ず、僕にしろ!!」
宙で舞うイーグリートが、一瞬、停止し、そしてアームパーツをエックスに向けた。
「あはは………そうかそうか……そうかそうかそうかそうか、そうかぁぁぁ!!」
喜悦。怒りを通り越して、イレギュラーの顔は喜びに満ち溢れていた。復讐できる喜びに。断罪できる喜びに。
デスログマーの降下はかなり速度が上がっているようだ。まだ星のようにみえるが、小さな光の正体は街の命だろう。

「お前が!! あの子を!! 破壊したんだな!!」
デッキを縦横無尽に走り抜けるエックスの道筋を、ストームトルネードがなぞる様に破壊する。
しかし、一発たりとて捉える事は出来なかった。



428 名前:Irregular`s Elegy[] 投稿日:2006/10/08(日) 20:16:40.31 ID:Hh3oKoTN0
「あんな良い子を!! お前は破壊したんだな!!」
「言い訳するつもりなんか無い……でも、アイちゃんが望んだ事であり、あぁするしか無かった!!」
エックスはイーグリードの間合いに突っ込むと同時に、射撃。
エネルギー弾は真っ直ぐボディに向かうが、身体は急降下、簡単に避けられる。

「死んで、償え!! だが、お前はあの子の所には行けんぞ!!」
着地と同時に、死を進呈する風の牙が放たれる。エックスは真横にダッシュ。床板と射線上にあった対空砲を破壊するだけに止まった。
「イーグリードさん! あなたなら解るでしょう!? これが、どれだけ無意味な戦いか!!」
敵を中心に円移動しながら射撃し続けるが、踊るように舞うイーグリードには当たらない。
雨がいよいよ勢いを増し、激突する雨粒で二人の姿を景色に淡く浮かび上がらせる。

「無意味ではない!! 貴様等の死で、みんな生き返らせてくれるのだ!!」
ストームトルネードが腕を掠めるが、構わずバスターにチャージを命じる。
直ぐに発射。豪風を放った体勢だった、イーグリードの左腕を吹き飛ばす。

「それならば、私はどこにだって堕ちてやる!! 異端になってやる!! 私は、私は約束したのだから!!」
宙に舞う腕の事を尻目に、責任感と優しさ故に堕ちた異端が竜巻を放った。
回避は――出来きれなかった。
脇腹を抉られながら、船頭部分まで吹き飛ばされるエックス。

「…………なんで、こんなに良い人が……こうなっちゃうんだろうね……。間違ってるよ……」
悲しさから、破損箇所の痛みすら忘れ、自嘲するように呟く。
絶対的に不利な状況に諦めたのか、自らの死を受け入れるべく、目をつぶった。

「堕ちろ………お前は地獄へな」
仰向けになるエックスに、ジリジリと歩み寄る。片腕を失いながらも、鬼気迫る表情で進むその姿は、異端そのものだった。
そして、バスターを向ける。



431 名前:Irregular`s Elegy[] 投稿日:2006/10/08(日) 20:34:15.70 ID:Hh3oKoTN0
嵐の如き猛打。それに伴う銃撃音。
無論、イーグリードのバスターから放たれたものでは無い。
大量の銃弾がイレギュラーに突き刺さる。

「イーグリードォォォォォ!!」
振り向き、驚愕した少女の金色の瞳が映ったのは、対空砲に乗るゼロだった。
射撃。射撃。射撃。発射。
赤々と光る火線が、羽を、胸を、全てを貫通する。

ゼロは――涙を流しながら、巨大な引き金を引きまくった。

――親友……?
――そっ、親友だ。同じ戦場で生き抜き、お互いの気持ちが解り合える仲……これを親友って呼ばなくて、なんて呼ぶんだよ
――な、なんだか、照れくさいぞ………
――そうかぁ? 俺は嬉しいな。あんたみたいに思いやりがあって、責任感のある奴と親友になれて
――そうか……。親友……か。うん、私も嬉しいぞ
――そっか。なら、困った事があれば、なんでも相談しろよ? 絶対に一人で抱え込まないで。必ず、俺が助けるからな
――あぁ、解った。必ず…………相談するよ。ゼロ、ありがとう、だ

――ゼロ……みんなを……みんなを助けてくれ! 私の『仲間』を助けてやってくれ!!

ばら撒かれる銃弾。迸る砲火。やまない轟音。
「畜生! 畜生! ………なにが、お互いの気持ちが解り合える仲だよ!! オレは……オレは……オレはぁぁぁぁ!!」
巨大な羽が吹き飛び、右腕も左と同じく宙を舞う。
メットの端を抉り、左脚が消失する。

そこで、銃撃は止まった。
「許してくれ………イーグリード………オレは、お前も仲間も助ける事が出来なかった……!」
損傷から半裸の状態であったゼロは、対空砲の座席から滑り落ち、甲板に身を落とす。



442 名前:Irregular`s Elegy[] 投稿日:2006/10/08(日) 21:16:05.96 ID:Hh3oKoTN0
『警告。警告。操舵室、エンジン損傷の為、本機は操縦不能。降下速度が危険値に達しています』
今頃になって、デスログマーが不調の叫びを訴えだす。
その放送にエックスは意識を取り戻した。
「………生きてる? どうして……」
自分の身体を確認しながら、立ち上がる。
銃撃によって解体されたイレギュラーと、倒れ伏すゼロの姿が瞳に飛び込んだ。

「ゼロ……!」
エックスは慌てて少女の下に向かう。走り抜ける甲板は、銃弾や竜巻で酷い有様だった。
「…………無事……かよ………?」
駆けつけてきた少年に胸を苦しげに上下させながら、ゼロは言った。
「……………うん」
エックスは二人のレプリロイドを見比べ、事態を悟る。――自分と同じく最悪な結果だった。
『警告。警告――』
「でも………生き残るのは………無理そうだな……」
急降下する船体を見つめ、自嘲しながら呟いた。
「ごめんな………お前すら守れない………なんて……」
堪えきれなくなり、またも泣き出すゼロ。
「ううん………もう、良いよ……僕は、大丈夫」

微かな呻きに、二人は驚く。
「ゼ………ロ……」
バラバラになり、甲板の一部になるイーグリードが絶望する少女の名を呼んだ。
「イーグリード……?」
「すまな………かった……な」
――暴走したイレギュラーは、今際の時に敵のはずの者に謝罪した
「お前が……悪いわけではないのに……。お前は……私を……救おうとして……くれたのに……」
嵐は力を失い、呟きに近い声も聞こえるようになっていた。
「違う……! オレは!!」
エックスの腕の中で、自分の怪我など関係ないかのように叫ぶ。



443 名前:Irregular`s Elegy[] 投稿日:2006/10/08(日) 21:18:19.41 ID:Hh3oKoTN0
「親友……失格だな……私は……。お前に………何も打ち明けなかった………」
乾いた笑みを浮かべる、そこには底知れない後悔が浮かんでいた。
金色の瞳から涙がこぼれる。
「仲間のイレギュラーも救って欲しい、と……。お前を殺せば……仲間を生き返らせる事を……」
イーグリードは告白する。自分にもある罪を。話す事が出来なかった、自分の罪を。

「お前に……打ち明ければ……きっと……きっと」
一つの可能性を呟いた。もし、の世界。絶対に行き着く事の出来ない世界を。
「私の親友である……お前なら……きっと」

鷲型のレプリロイドは、二人に微笑みかけ、船体の後部を指差した。
「行ってくれ……船尾に脱出ポッドがある……」
エックスとゼロの瞳が驚きに揺れる。
いつのまにか雨も止んでいた。

「私は一足先に……アイ君達の所へ……行くよ……」
「イーグリート!!」
時が経過する度に、残された力が消費される。彼女はもう二人を見てはいなかった。
「エックス……君にも……すまなかった……」
「いえ……」
エックスは力強く否定した。彼女の罪の意識が、少しでも軽くなるように。
「さらばだ……ゼロ……私の親友……」
最期にそういって、イーグリートは静かになった。



「行こう………ここで死ぬ訳には、いかなくなった」
「…………………あぁ、解ってるよ」
二人は、確かめ合うように言い、デッキから立ち去った。

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