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VIPロックマンまとめ

Short StoriesX -9-

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匿名ユーザー

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だれでも歓迎! 編集

異端☆天使

「さぁて、みんな。アニメごっこでもするか」
「また、異常者がおかしな事を言い出したよ!!」
ハンター組織――本部に存在する施設の一つ会議室。

珍しい事で、いつも閑散とした部屋に、数人のレプリロイドと一人の人間が居た。

「いい加減にしてくれ、イーグリード。お願いだから」
広い額を押さえる老体――Dr.ケイン。
別の手には、白い錠剤が詰まった瓶が握られている。

「会議中に妙な発言はやめてくれ。非番時に暴れるのはやめてくれ」
「――断る」
老人の必死の懇願を一蹴するのは、鷲型のレプリロイド――イーグリードだ。
長い髪を一房垂らした女が、腕を組み、ケインの発言に鼻を鳴らす。

会議室の空気が凍る。
だが、健気な事に今日のケインは諦めなかった。

「幼いレプリロイドに手を出すのは、やめてくれ。ハンターの評価を下げるのは、やめてくれ」
「――断る」
イーグリードの取り付く島もない態度に、他のレプリロイドの顔がひきつる。

そうか、とケインは呟き、隣に座る少女から注連縄を奪う。
丁寧に編まれた茶褐色の縄を、天井の照明の梁に引っ掛けた。

「ケイン博士、死なないでー!!」
縄を取られた少女――マックが、円形の机に立とうとする上司を引き止める。
後ろからの抱擁を、ケインは奇声をあげながら振りほどこうとした。

「さっ、老人は放っておいて……アニメごっこだ」
暴れる二人から視線を剥がし、イーグリードが拳を掲げながら熱弁する。

「キャラクターに感情移入し、なおかつその役に成りきる……これほどの精神鍛錬はあるまい!!」
「どこが……だよ……」
鳥型の狂気に、小柄な少女が常に物憂げな顔を歪ませる。

「ハンターにとって、アニメごっこは謂わば必要不可欠な訓練なのだよ、みんな!!」
「……おい、どっから話が飛んだ」
机に肘をつく、桃色の髪を生やした女が頬を引き攣らせた。
だが、イーグリードに異見するつもりはない。付き合った経験が、彼女を傍観させる。

「アニメとか観ないのですよー。――下らない」
組んだ両足をデスクに載せる、ベレー帽をかぶった態度の悪い少女が鼻を鳴らす。

「ふるめたるぱにっく……? ってDVDを!! 家で!! 見つけました!!」
「あれは別なのですよ。って、何で知ってんだよ、バカメレオン」
「バカメレオン!? ひ、ひどすぎる!!」
頭から湯気を出しながら抗議する少女と、それを蹴りつけるベレー帽の少女。

「今日のアニメはこれだぁああ!!」
いつもながら協調性がなく、思い思いに行動する同僚にひるまず、イーグリードが叫ぶ。
彼女の手には、四角いフォルムを持つパッケージが握られていた。

<ギャラクシーエンジェル>

「――これは酷い」
会議室に居る全てが異口同音。
バカメレオンと呼ばれた少女――カメリーオですら、自分の捉えどころの無い性格を変更した。

「アルちゃんから紹介されてねぇ、私は感動したんだ……!!」
「感動と、私たちがそれに成りきる理屈は何だ」
全身から力を抜けるのを感じながら、桃色の髪の女が嘆息する。

「理由? ――私のためだよー」
「死ねばいいのに、アルマージ」
名をオクトパルドというベレー帽の少女が、この場に居ない同僚の死を願った。

「マンドリラーは、フォルテ役ね」
「意味が解らん」
マンドリラーと呼ばれた女が、拳を机に叩きつける。
白い円形のデスクは鈍い音をたて、ひしゃげた。

「はい、拳銃」
「はぁ? だから、何で私がやらなきゃならないんだよ!」
椅子を跳ね飛ばしながら、立ち上がる。
抗議は無視された上に、黒の凶器を手渡され、青筋を立てるマンドリラーは声を荒げた。

「それだよ、マンドリラー。もっと女を捨てて、吼えてくれ!!」
奇声をあげて喜ぶイーグリード。

「オクトパルドは、ミントな」
「意味が解らないので、死にやがれなのですよー。この、クソ鳥!」
両手を振り上げての抗議。
オクトパルドは、かろじて丁寧な言葉を使いながらも、唾を飛ばすほどの勢いで罵声を吐いた。

「清純さに隠れた、腹黒さ……これだよ!!」
「ファック!! 素晴らしく大きなお世話なのですよー、畜生」
汚い言葉ですら、イーグリードの趣向の糧となる。

会議室のレプリロイド達は、もう全てを諦める事にした。

「アイちゃんは、ヴァニラね」
「ばにら……? アイスの……事?」
少女は小首を傾げ、イーグリードの言葉を反芻する。

「もう、キャラに成り切っている!? その調子で、どんどんユニークなセリフを言うんだ、アイちゃん!!」
顔をしかめ、不快感を露にするアイこと、アイシー・ペンギーゴ。

「うざい……。神に誓って……いつか……お前を……殺すからね……」
「きゃー、可愛い!!」
自分の身をかき抱き、イーグリードが全身で喜びを表した。

「カメリーオは、ミルフィーユだ。空気読めないあたりとか、最適な役すぎて、怖すぎるぞ!! いぇい」
「はーい!! リオちん頑張ります!! ラッキー!! ラッキー!!」
プライドという言葉を持たない、カメリーオが安産型の尻を振った。
タイトルを見た時と態度が違うのから、彼女が一番、環境に対する適応能力が高いのかも知れない。

「おぉケイン、お前はウォルコット中佐だからな」
「あぁ、良いよ。…………部下に振り回される上司――完全に私だろうな」
疲れた顔をしたケインが首肯し、了承した。
そして再度、自殺を敢行する。

「ぎゃー!! ケイン博士、死なないでー!!」
悲鳴をあげ、それを止めるマック。

「さぁて、イレギュラーエンジェル隊出動だ!!」

■辞任
2週間前から、先日までのハンター職員の暴走について。

  • ハンターの予算で、意味不明な部隊を作り上げる。
  • F-2戦闘機を『紋章機』と落書き。
  • 命令無しに、遺産の発掘。
  • 命令無しに、遺産の使用。
  • 遺産を暴走させる。

これらに対して、それ相応の罰則を処す。
対象者に減棒と降格。
書類が届き次第、本部に報告せよ。

追伸:ふざけるな

                         ハンター本部


「あれ? ランファは何処だ?」
「知るか!!」
イーグリードの問いに、〝全員〟が書類を破りながら叫んだ。

その数日後、辞令の恨みをエックスを引き金に、イーグリードがパンドラスイッチ事件を引き起こす。

<了>


65 :アンラッキー・ヒッキー :佐賀暦2006年,2006/11/04(佐賀県と談合) 19:43:21.20 ID:5ZnbllJn0
アンラッキー・ヒッキー



「アールちゃん! あーそーぼー」
削りだされた横穴。
周りの光景すべてが茶色の岩壁となる通路に、不自然に扉が設えている。
ハンター職員――イーグリードが、鉄で出来たドア越しに声を張り上げた。

鈍色の戸が、ぎぎ、と音をたて開く。
通路に吊るされる粗末なランプが、出てきた人物を淡く縁取らせた。

「あ、イーお姉ちゃん……こ、こんにちは」
覇気の無い顔をする小柄な少女が、身長のため見上げなら現れる。
その姿にイーグリードは片手をあげ挨拶し、微笑んだ。

「すばらしいアニメだったよ。ヴァニラちゃんとかミントさんとか」
少女の頭を優しく撫で、肩に下げたトートバッグから取り出したのは、角ばったケース。

「そ、そう……? よ、良かった、楽しんでもらえて」
少女は撫でられる感触に目を細めながら、それを受け取る。
パッケージには宇宙を背景に、五人の少女達が笑みを浮かべていた。


66 :アンラッキー・ヒッキー :佐賀暦2006年,2006/11/04(佐賀県と談合) 19:44:09.61 ID:5ZnbllJn0

「あはは。オ、オープニングは嫌いじゃないんだけどね、今期」
笑みに肩を揺らし、少女は人差し指を立てた。
イーグリードは苦笑気味に口元を歪ませると、両手を軽く広げる。

「今日も電気街を回ろうじゃないか」
貸し借りをしたアニメーションの話は、一旦切られる。
次に提示された話題は、買い物への誘いだった。

「新作で〝ペンギン姫の虜~極地部隊の制服幼女~〟ってゲームが出るんだ」
イーグリードが鼻息荒く、己の欲望を満たす存在に想いを馳せる。
汚れを纏うイーグリードに嗜好と、ゲームの名称だが、それに対して少女は特に気にした風もない。

だが、別の何かに顔を曇らせる。

「ご、ごめんね……きょ、きょうはお仕事があるんだ……」
可愛らしい唇から出たのは、誘いへの断り。
そうなんだ、と呟くイーグリードも顔を翳らせて、それが少女を慌てさせた。

「ご、ごめんね……あ、あたし……ぐ、愚図で、あんまりお仕事回されないから……」
両手をせわしくなく振りながら、言い訳を紡ぐ少女。
申し訳ない思いを、顔いっぱいに広げ、頭を上下に振り続けて謝罪をする。


67 :アンラッキー・ヒッキー :佐賀暦2006年,2006/11/04(佐賀県と談合) 19:45:54.89 ID:5ZnbllJn0
「……こ、こんな時に仕事しなきゃ、解雇されちゃうんだ」
とうとう涙まで溜め、少女はイーグリードを見上げ、許しを請うた。

謝罪に返されるのは抱擁。
背の高い身体から生える両腕が、小柄な少女を抱きしめる。

「あ……。ご、ごめんね……イーお姉ちゃん。ほんと、ごめんね……」
安堵し身を任せる少女が、顔をイーグリードの胸に強く押し付けた。

イーグリードは微笑み、
「死ねばいいのに、ケイン」
上司を呪った。

――少女の名は、アーマー・アルマージ。
イーグリードの唯一の理解者だ。



「よ、よろしくお願い……し、します!」
真昼の都市。
冬の太陽が、アスファルトを弱く照りつける。


68 :アンラッキー・ヒッキー :佐賀暦2006年,2006/11/04(佐賀県と談合) 19:48:12.58 ID:5ZnbllJn0
「誰だこの子」
十字路の真ん中で展開する、ハンターの職員がアルマージを見つけ、隣へ耳打ちした。

「第9機甲部隊隊長だよ」
細長いフォルムを持った銃の調子を確認するハンターが、ちらりと少女を見やり、簡潔に答えた。
ほう、と職員の男が感動したような声をあげる。

赤く光る単眼の視線は、無遠慮にアルマージの股間へ。
装甲の下は半裸。――白いテープが一枚だけ宛がわれた股間に、卑猥な目が集中する。

「なるほど、確かに隊長の貫禄があるな!!」
アルマージの装いに、ハンターは大仰に頷いた。

「アルマージ隊長、今回の任務は制圧です」
それを尻目に、真面目なハンター等は任務への準備を着々とこなしていた。
他のハンターが携帯型の端末を手にしながら、少女に近づく。

「地下水路に、大量のアメンホッパーが出現。エリア7まで、水道に異常が発生しています」
小さな頭を、見下ろす形になる職員。
階級は少女が上なのだが、背丈だけをみると、彼らは親子と呼べる差がある。

「暴走しているのでしょう。アメンホッパーは、目に付くもの全てを破壊しており、事態は深刻です」
ハンターは端末の画面をアルマージに向け、真新しいマンホールを映す。


70 :アンラッキー・ヒッキー :佐賀暦2006年,2006/11/04(佐賀県と談合) 19:50:27.87 ID:5ZnbllJn0

それは鼻先にある物と同じだった。
数体の黒いボディが円形の蓋を取り囲み、様々な器具を設置したり、各々の装備を点検していた。

そして、状況を聞いていたアルマージが口を開く。

「――ち、地下怖い……」
任務の了解は、恐怖にかられた声。

場が沈黙する。
けして大きい声ではなかったのだが、全てのハンターの動きを止めるには十分だった。

「なんかゆってる!!」
ハンターの一人が器用な事に、メットから冷や汗を垂らすと、後ずさった。

「た、隊長? あの何か言いましたが、大丈夫なんですか?」
説明をしていたハンターが何とか硬直から解け、部隊長である筈の少女に問う。

「あ、あたりまえだよ……! お、お誘いを断ってまで、はるばる来たのに……」
両腕を振り回し憤慨するが、怒りは言葉のみ。
アルマージの顔は青ざめていた。

とても任務を遂行できるものではない心理状態だと、その場に居る全員が感じた。


71 :アンラッキー・ヒッキー :佐賀暦2006年,2006/11/04(佐賀県と談合) 19:51:46.27 ID:5ZnbllJn0

「で、でも……こ、怖かったら許さないんだからぁ……!」
理不尽が周囲を襲う。

「なんかゆってる!!」
「駄目っぽいぞ!! この子!!」
寒空の下、見放されたと言っていいハンター等の悲鳴が唱和した。





[From:アルマージ re: 本文:こ、怖かったです。やっぱり、お姉ちゃんと買い物にいってきます。]

ぐしゃり、と携帯が握りつぶされる。

「ケイン博士……どうして、あの子が隊長なんですか?」
「…………不幸な事に彼女は強いからだよ、エックス君」

<了>


413 :Eagle's day :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 16:38:11.01 ID:dJFSD/dI0
Eagle's day



肌寒さを感じさせる風が、薄手のコートの裾をはためかせる。
背の高い女はそれを押さえながら、石の床を歩んだ。

青空が眩しい。
陽光に目をしばたかせる女性――ストーム・イーグリードの出勤する姿だ。

「あそぼー、黒ミケ猫。ロシアンブルー」
革のブーツをスキップさせながら、機嫌良く歌を口ずさむ。
弾む身体に合わせて、肩から下げたクリーム色のトートバックが揺れた。

「ネコニャンダンス……」
笑顔のイーグリードの視界に、前を横切る紙袋を抱えた少女が入った。
女の顔が輝く。

「アイちゃーん!! 愛してるよー!!」
両手を広げ走る鷲型のレプリロイド。
薄赤のルージュを引く唇が、愛の告白を紡いだ。


415 :Eagle's day :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 16:41:09.38 ID:dJFSD/dI0

「…………ふっ」
小柄な少女は意味ありげな笑みを浮かべ、女の言葉を無視すると、足早に去る。

「何故なんだー!! アイちゃーん、何故にホワーイ!?」
ブースターを背負う少女の背中へ、イーグリードの悲痛な声。
彼女の叫びが虚しく公園に響き渡った。

「早いな、イーグリード」
消沈し、イーグリドは首をがっくりと落とす。
しかたなく仕事場に向かいだす彼女に、低い男の声がかけられた。

「あ、私の守備範囲以前の問題の存在」
右手から現れた老人に、イーグリードは舌打ちする。

「重役出勤をし続ける〝タコ〟に比べて、君は感心だな」
白髪が後ろに流れる男は、挑発を綺麗に受け流し、嫌味のない微笑みを送る。

女は裏拳を放ち、老人のねぎらいの言葉を叩き落した。
行動それ自体は抽象的で、意味は無いのだが、男はさすがに顔をひきつらせる。

「さ、始末書を出せ。本部からの催促が酷い」
湧き上がる怒りを丁寧に折り畳み、皺の寄る手を差し出す。
老人の手の平が求めるのは〝数週間前に提出される〟筈の書類。


416 :Eagle's day :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 16:43:05.57 ID:dJFSD/dI0

「あ」
イーグリードが漏らす失念の声。
老人を襲う嫌な予感は、巨大な鳥の形をしていた。

どうした、と男が声をかけるより早く、
「――ぱたぱた」
イーグリードが羽ばたく。

「おぉぉいい!? 待て、空へ逃げるな!!」
大きな翼を上下し、イーグリードの身体はゆっくりと青い空へ。
真下で無意味に腕を伸ばす老人を、嘲弄する顔で見下ろした。

「さらばだ」
別れの言葉は短い。

「本部への報告はどうなる!? 待て、イーグリード!!」
離別を惜しむ老人の姿は、恋人にすがる諦めのつかない男のそれだった。

「エンジェル隊とかやらの書類を、誰も出してないんだよ!! 待て!!」
「ぱたぱたー」
イーグリードは高く高く、舞い上がった。

「待ってー!!」 
気持ちの良い空の下、幸薄い老人を救うものは誰も居ない。――神ですら。


417 :Eagle's day :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 16:47:28.83 ID:dJFSD/dI0

「やれやれ、老人め」
下に広がる風景を楽しむように、緩慢に空を飛ぶ鷲。
朝から自分を不快にした上司へ不満を吐きながら、下界を眺める。

現在の瞳に映る光景は、軒が連なる商店街。
赤いレンガで構成する、吹き抜けた通りを、一定の間隔で商店が立ち並ぶ。
昼前の気だるい時刻は、周囲を閑散とさせ、とても静かだ。

平和な商店街を脅かし、静寂を打ち破る者。

住民達に奇異な視線を受けながら、奇声と点滅する様々な光が前進する。
近くで見ようと、イーグリードは高度を下げた。

「り、り、り、リオのカーニバル!!」
くねくねと踊り、羽細工を付けた衣装を着込むのは――彼女の同僚だった。

「本当にこれが仕事なのか、カメリーオ。どう考えてもおかしいだろう」
その後ろを追う、全身で眩い光源を放つマンドリル型のボディ。
ぺかぺかと光るライトが、商店街の住民の目を、眩しさに細めさせた。

「ケイン博士が、この街を楽しく盛り上げろって言いましたー!! り、り、り、リオのカーニバル!!」
尻尾の生えた形の良い尻を振り、少女がサンバを踊る。
羞恥心が無いのか、下から乳房が見える胸当てを付けていても、その動きは激しい。


419 :Eagle's day :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 16:48:57.08 ID:dJFSD/dI0

「せーかいはまるーい、せかーいはひとーつ!!」
「おい!! その歌は危険だ!! 変えろ!!」
商店街を進み、暴れる二人。

「遠い、この空が世界を分かち!! そして、生まれる新世界!!」
「おい!! カプコンはカプコンだけど、それはおかしい!!」

イーグリードは鼻を鳴らし、
「お気の毒な子」
その場を去った。



空飛ぶ女の旅は続く。
子供が集まる玩具屋に、イーグリードは翼を進めた。
成長期前の甲高い笑い声が、店の前で微笑ましく響く。

無感情に少年達を、空から見下ろす彼女は挙動不審な影を見止めた。

店先で遊ぶ少年達に、トレンチコートを羽織った銀髪の女が、物欲しそうな目を注いでいる。
手には、クワガタの顎を模した刃の玩具。


421 :Eagle's day :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 16:52:10.36 ID:dJFSD/dI0
イーグリードは見間違いか、と首を傾げながら近づく。
店の反対側の壁から半身を出す、怪しげな女が所在無く身体を揺らしていた。

「入れて欲しいなら、入れて欲しいと言えば? と、忠告を」
自分の顔を翳らせる影と突然の声に、コートの裾を翻しながら反転し、素早く身構える少女。
己の失態に舌を打ち、玩具では無い真剣が入ったブーメランを取り出す。

「不不不……みたね」
らしくなく、少女の頬は少しだけ赤く染まっていた。

「……言いにくいんだが。君は、キャラを確立した方が良い。変態なら変態のまま生きろ」
返すイーグリードの言葉は厳しい。

「カメレオンの方が、まだマシだ」
暗殺を生業としていた彼女が、生きていた中で言われた事のない侮辱だった。
羞恥の赤から、怒りの赤へ。

「……これでも精一杯生きているのに、なんたる言い草!! 殺してやろう!!」
怒りを動力に、白い腕が薙いだ。
風切り音をたて、ブーメランが牙を剥く。

「ぱたぱた。さよなら」
閃光の速さで放たれた凶器を交差する、鷲の高度を上げながらの蹴りが、女の胸板に叩き込まれる。

「ぐあっ!」
イーグリードは、吹き飛ぶ同僚を尻目に空高く舞った。


422 :Eagle's day :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 16:53:29.26 ID:dJFSD/dI0


「クロスチャンネル?」
またも見つけた同僚の肩に、イーグリードは遠慮なく手を置く。

「えひゃ!? きゃあああああああああああああああああああああああああ!?」
悲鳴で反応する少女の背は、鷲型の女の腰しか無い。

入り口前で、籠に入れられ販売されるゲーム。
二人が出会ったのは、テレビやパソコンのゲームを扱う店の前だ。

「やっ、アルちゃん」
朗らかに笑い、イーグリードは片手をあげ、振り向く少女に挨拶する。
その手で、小さい頭を撫でた。

「イ、イーグリードお姉ちゃん……? びっ、びっくりしたよぉ……」
少女は両手を胸の前で組んで、身を震わせた。
驚いたものの、その顔に怒りも抗議も無い。

「まだやってなかったんだ」
「う、うん……評価が良かったから……い、今更やってみようかなぁ、なんて」
お互いに共通する趣味に、二人は話に花を咲かせる。
彼女等の趣味は不純ではあるが、笑い合う表情は、純粋そのものである。


423 :Eagle's day :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 16:54:42.60 ID:dJFSD/dI0

「お、お姉ちゃんは何してるの?」
「空中散歩」
羽を一振りし、短く答えるイーグリード。

「そ、そうなんだ……」
少女が邪魔をしてしまったと、顔を申し訳なさで歪めた。
こっちが邪魔したよ、と首を振って否定し、イーグリードは幼い身体を抱きしめる。

「き、気をつけてね……こ、今度、また遊ぼうね?」
抱擁を受け止めながら、少女が耳元で囁く。

「ありがと、アルちゃん。絶対だよ?」
少女の身体を優しく引き剥がし、イーグリードは頷いた。
そして、それじゃ、と呟くと巨大な翼を広げる。

小さな少女に見上げられながら、突然イーグリードは親指を立てた。

「あ、アルちゃん。親友は――」
「――み、見返りを求めない」


イレギュラーは何処にでも姿を現す。
磯香る港ですら、その例には漏れない。


425 :Eagle's day :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 16:56:30.60 ID:dJFSD/dI0

日光浴のつもりか、サングラスを付けた童顔の女が、背もたれの低い椅子に寝転んでいた。
女が空から近寄るイーグリードの姿を見付け、サングラスを鼻先にずらす。

彼女の服装は、フリルを付けたどこかの制服。
だらしない姿勢のまま挨拶する女に、いつも着用していたベレー帽は無い。

「ミントさん……気に入ってたんだな、そのキャラ」
「なかなか良いキャラなのですよー。お淑やかさ、そして名門の名」
前髪をかきあげる女の顔は、自分の服装にひどく満足していた。
イーグリードも満更でもない顔をして、出所不明の制服を空からチェックする。

「私にぴったりなのですもの。メイモーン!」
無遠慮な視線に気を悪くした風もなく、女はむしろ両手をあげて、よく見えるようにした。

「そういや、アニメでもスクール水着を着てたな」
「何か言いましたかー?」
イーグリードは独り納得した。
彼女の独白に、フリルの女が小首を傾げる。

「いや。――頑張って」
否定し、そして、よく解らない激励をイーグリードは送る。

「どうもなのですよー」
奇妙な事に女は、その意味を解った様で、白い手袋に包まれた手をあげ礼を言う。


428 :Eagle's day :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 17:01:01.92 ID:dJFSD/dI0
「ふぅ……ハンターには、女を捨ててる奴が多い。ぱたぱた」
今度こそ彼女に聞こえないように呟き、イーグリードは赤みのかかる青き空へと還った。



「ただいまー」
元気良く、帰宅の挨拶をする。
ハンターから与えられた私宅。
空中要塞にも寝泊りする部屋はあるのだが、イーグリードは地に着く寝所を好んでいた。

バッグを投げながら、部屋へと進む。

「ただいま、ゼロ。良い子にしてたかい?」
君の悪い猫撫で声の先には、椅子に括り付けられ、猿轡を嵌められた少女の姿。

「今夜も一緒に寝ようね」
「んーっ! んっー! んっー!」



「ケイン博士、ゼロ知りません?」
「知るかぁあああああああああああ!! あ、もしもし本部ですか……書類は早急に――」


429 :Eagle's day :佐賀暦2006年,2006/11/05(佐賀県庁) 17:01:53.00 ID:dJFSD/dI0
<了>

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