608 :Octopus's pride :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 00:04:45.40 ID:jSSPVc3q0
本編のつなぎ
本編のつなぎ
注意というか、読む対象のはし書き
- タコ好き
- タコまで、本編を読んでいる方
- タコのくだりに納得のいかない方
おまたせいたしました
609 :Octopus's pride :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 00:05:55.87 ID:jSSPVc3q0
Octopus's pride
Octopus's pride
「オクトパルド!! 書類を出すんだ!!」
白い廊下を怒声が貫く。
足早に歩く少女を、眼光を鋭くした老人が追った。
白い廊下を怒声が貫く。
足早に歩く少女を、眼光を鋭くした老人が追った。
「お断りしますのですよ」
無機質の床をブーツで鳴らす、軍隊用のコートを着込む童顔の女。
ベレー帽が女――少女の歩みに合わせて揺れる。
無機質の床をブーツで鳴らす、軍隊用のコートを着込む童顔の女。
ベレー帽が女――少女の歩みに合わせて揺れる。
オクトパルドと呼ばれたレプリロイドが、後ろを振り向き、失せろとばかりに手を振った。
老人の横顔に青筋が立ち、皺のよる手が拳を作る。
老人の横顔に青筋が立ち、皺のよる手が拳を作る。
「いい加減にしないか!!」
らしくなく、声を張り上げるスーツ姿の老体。
少女と、その上司は本部の廊下で睨み合った。
らしくなく、声を張り上げるスーツ姿の老体。
少女と、その上司は本部の廊下で睨み合った。
「ケ、ケイン博士……落ち着いてください。もう本部への始末書は出されたんでしょう?」
白髪が後ろに流れる――その後頭部に、気弱な声がかかった。
青いボディを装着した少年が、体と同じく青ざめた顔をしている。
白髪が後ろに流れる――その後頭部に、気弱な声がかかった。
青いボディを装着した少年が、体と同じく青ざめた顔をしている。
610 :Octopus's pride :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 00:07:28.15 ID:jSSPVc3q0
「君には関係の無い話だ」
少年――エックスを見やる上司。
面倒な所を見られた、との思いを表情にありありと浮かび上がらせた。
少年――エックスを見やる上司。
面倒な所を見られた、との思いを表情にありありと浮かび上がらせた。
「オクトパルド、この問題は、もう君だけで済む話じゃ無いんだ。書類を渡せ!!」
二人の上司のケインは、少年を尻目に怒りを露にする。
そして少女に向け、手の平を突き出した。
二人の上司のケインは、少年を尻目に怒りを露にする。
そして少女に向け、手の平を突き出した。
「――そろそろ黙れ」
だが、老体の求める物は得られなかった。
代わりに放たれたオクトパルドの冷めた瞳が、ケインを射抜く。
だが、老体の求める物は得られなかった。
代わりに放たれたオクトパルドの冷めた瞳が、ケインを射抜く。
「オ、オクトパルドさん……」
エックスは顔を引きつらせ、どうにかこの場を収めようとする。
しかし腕を振り回すだけでは、事態が好転する訳もない。
エックスは顔を引きつらせ、どうにかこの場を収めようとする。
しかし腕を振り回すだけでは、事態が好転する訳もない。
オクトパルドは微笑み、
「私、忙しいのですよ。――失礼」
短く挨拶すると、踵を返し、その場を去る。
「私、忙しいのですよ。――失礼」
短く挨拶すると、踵を返し、その場を去る。
ケインは諦めた顔をすると、溜め息を吐きながら通路の壁に寄り掛かった。
「いったい、何があったんですか?」
エックスが問う。
エックスが問う。
613 :Octopus's pride :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 00:10:18.51 ID:jSSPVc3q0
「君には関係無いと、言っただろう」
二人を案じた少年の言葉。だが、それも上司の一言で一蹴された。
「君には関係無いと、言っただろう」
二人を案じた少年の言葉。だが、それも上司の一言で一蹴された。
「でも……」
ケインとは違い、諦めきれない、と下唇を噛み締めるエックス。
ケインとは違い、諦めきれない、と下唇を噛み締めるエックス。
「いや……もしかしたら、君に頼むのが一番なんだろうか」
己の歯がゆさに悔やむ部下を見ながら、老人が呟く。
灰色の瞳には苦悩が揺れていた。
己の歯がゆさに悔やむ部下を見ながら、老人が呟く。
灰色の瞳には苦悩が揺れていた。
「人間の心を持ったレプリロイドか……」
顎に手を置き、ケインは思案顔をする。
顎に手を置き、ケインは思案顔をする。
「ケイン博士?」
上司の独白に、少年は訝しげに聞きなおすが、
「忘れてくれ」
結局ケインはそう呟き、エックスを置いてどこかへ消えた。
上司の独白に、少年は訝しげに聞きなおすが、
「忘れてくれ」
結局ケインはそう呟き、エックスを置いてどこかへ消えた。
「オクトパルドさん」
エックスが本部から出ると、彼の視界に、黒い乗用車に乗り込もうとするオクトパルドが最初に入った。
上司であるケインからの説明は受けれず、煮え切れないものを抱えたエックスは、少女に声をかける。
エックスが本部から出ると、彼の視界に、黒い乗用車に乗り込もうとするオクトパルドが最初に入った。
上司であるケインからの説明は受けれず、煮え切れないものを抱えたエックスは、少女に声をかける。
614 :Octopus's pride :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 00:12:16.86 ID:jSSPVc3q0
「……女顔。何か用なのですかー? 無いなら消えるのですよー」
少年の姿に顔をしかめるオクトパルド。
自動車の鍵を指にかけて回す仏頂面が、口を開けば嫌味が飛び出る。
「……女顔。何か用なのですかー? 無いなら消えるのですよー」
少年の姿に顔をしかめるオクトパルド。
自動車の鍵を指にかけて回す仏頂面が、口を開けば嫌味が飛び出る。
いつもの事だが、今日は輪をかけて酷いとエックスは感じた。
めげずに、逃げる事無く少女の冷たい視線を受ける。
めげずに、逃げる事無く少女の冷たい視線を受ける。
「あ、あの、一緒にお昼でも食べませんか?」
意を決して昼食の誘いを、エックスは放つ。
オクトパルドの顔が更に歪む。
不機嫌は、常に貼り付けられた柔和な笑顔から零れ、殺意にも似た感情が鎌首を擡げる。
意を決して昼食の誘いを、エックスは放つ。
オクトパルドの顔が更に歪む。
不機嫌は、常に貼り付けられた柔和な笑顔から零れ、殺意にも似た感情が鎌首を擡げる。
「断るのですよ」
拳銃でも抜きそうな勢いだったが、少女は怒りの矛を丁寧に収めた。
代わりにブーツの踵が、アスファルトを穿つ。
八つ当たりをされた漆黒の石畳は、簡単に砕け散った。
拳銃でも抜きそうな勢いだったが、少女は怒りの矛を丁寧に収めた。
代わりにブーツの踵が、アスファルトを穿つ。
八つ当たりをされた漆黒の石畳は、簡単に砕け散った。
「僕が奢りますから。ね?」
凶行にも、今日のエックスは負けない。
強い意志で、鼻を鳴らして車に乗り込む少女に、腰を低くし食い下がった。
凶行にも、今日のエックスは負けない。
強い意志で、鼻を鳴らして車に乗り込む少女に、腰を低くし食い下がった。
「お願いします」
オクトパルドは無視してエンジンをかけるが、フロントウインドゥ越しで頭を下げる少年を見ると、直ぐに止めた。
舌打ちしながら下車し、本部前に位置する公園の並木道に向かう。
それを、ほっとした顔をしたエックスが後に従った。
オクトパルドは無視してエンジンをかけるが、フロントウインドゥ越しで頭を下げる少年を見ると、直ぐに止めた。
舌打ちしながら下車し、本部前に位置する公園の並木道に向かう。
それを、ほっとした顔をしたエックスが後に従った。
617 :Octopus's pride :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 00:14:53.15 ID:jSSPVc3q0
「何でも好きな物、頼んで良いですからね」
隣の窓から、港を一望できるファミリーレストランに二人は入った。
取り成すように言い、エックスはメニューの頭から少女を伺う。
隣の窓から、港を一望できるファミリーレストランに二人は入った。
取り成すように言い、エックスはメニューの頭から少女を伺う。
少女は返事をせず、窓から青い空と海を見つめている。
風景を楽しんでいるという様には見えなく、オクトパルドの瞳は何処か別の世界へ。
二人の席に伺ってきた従業員のレプリロイドへ、簡潔に注文をすると沈黙を貫いた。
風景を楽しんでいるという様には見えなく、オクトパルドの瞳は何処か別の世界へ。
二人の席に伺ってきた従業員のレプリロイドへ、簡潔に注文をすると沈黙を貫いた。
店内のスピーカーから流れる、ブームを過ぎた歌唱曲だけが、少年と少女の間に下りる。
エックスは、ケインとの事を尋ねようとしたが、運ばれた料理を食べるのに集中する。
黙し、野菜を挟んだサンドイッチを食べ続けるオクトパルドの姿が、彼をそうさせた。
黙し、野菜を挟んだサンドイッチを食べ続けるオクトパルドの姿が、彼をそうさせた。
行儀悪く、少女が音を立ててソーサーに置く、空になったティーカップが食事の終了の合図だった。
薄いハンカチで口元を、これだけは丁寧に拭き、腰を落ち着ける少女。
薄いハンカチで口元を、これだけは丁寧に拭き、腰を落ち着ける少女。
エックスは、少しだけ機嫌を取り戻したオクトパルドの表情に、ひどく安堵する。
「ごちそうさま」
少女は会計をエックスに託し、先に店を出た。
その素早さに、少年は慌てて立ち上がり、レジへと向かった。
少女は会計をエックスに託し、先に店を出た。
その素早さに、少年は慌てて立ち上がり、レジへと向かった。
618 :Octopus's pride :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 00:16:38.50 ID:jSSPVc3q0
「オクトパルドさん。ちょっと、歩きませんか?」
みゃあみゃあと鳴く海鳥の下、港の近くにある海岸――白い砂浜を二人が歩む。
爪楊枝を口にしたオクトパルドは、店を出た後帰ろうとしたが、エックスの嘆願を仕方なく聞き入れた。
みゃあみゃあと鳴く海鳥の下、港の近くにある海岸――白い砂浜を二人が歩む。
爪楊枝を口にしたオクトパルドは、店を出た後帰ろうとしたが、エックスの嘆願を仕方なく聞き入れた。
口元の爪楊枝を上下に揺らしながら、少年の前をオクトパルドが黙って前進する。
砂浜を踏みしめ進む少女の背中に、エックスは何度か声をかけようとしたが、思い出される本部での異様さがそれを阻む。
砂浜を踏みしめ進む少女の背中に、エックスは何度か声をかけようとしたが、思い出される本部での異様さがそれを阻む。
「何か……あったんですか? 差し出がましいですけど、僕が力になれるなら――」
少年が、緊張に粘つく口を開くにはとても時間がかかった。
コート姿が立ち止まり、振り返る。その顔には嫌悪。
少年が、緊張に粘つく口を開くにはとても時間がかかった。
コート姿が立ち止まり、振り返る。その顔には嫌悪。
「うるさい」
振り絞った勇気も、オクトパルドの一言で叩き潰された。
すみません、と呟きエックスは謝罪した。
少女は歩くのを再開し、何処かを目指し前へ。
振り絞った勇気も、オクトパルドの一言で叩き潰された。
すみません、と呟きエックスは謝罪した。
少女は歩くのを再開し、何処かを目指し前へ。
エックスの胸裏には、少女の事で一杯だった。
自分よりいくつか年上のオクトパルド。
自分よりいくつか年上のオクトパルド。
同僚であるはずだが、彼女の事は殆ど知らないに等しい。
だからこそ、少女の怒りに混じった悲哀を、少年はそれが何なのか知りたかった。
だからこそ、少女の怒りに混じった悲哀を、少年はそれが何なのか知りたかった。
「第6艦隊に……最近出動してないみたいですね」
どうなってもいい、エックスはそんな思いを抱いて、どこかで聞いた噂の真偽を尋ねる。
どうなってもいい、エックスはそんな思いを抱いて、どこかで聞いた噂の真偽を尋ねる。
619 :Octopus's pride :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 00:18:10.81 ID:jSSPVc3q0
ケインとの会話を鑑みると、それが関係していると思い立った結果だった。
少年の思惑通り、オクトパルドの背中が震え、再び歩みを止める。
ケインとの会話を鑑みると、それが関係していると思い立った結果だった。
少年の思惑通り、オクトパルドの背中が震え、再び歩みを止める。
「エックスさん、あなた恋人とか居ますか?」
砂へ、爪楊枝を吐き捨てる少女の口から出たのは、思いも寄らぬ言葉だった。
砂へ、爪楊枝を吐き捨てる少女の口から出たのは、思いも寄らぬ言葉だった。
「へ?」
意図せぬ問いに、ぽかんとするエックス。
「いえ、あの……えっと、居ません……よ」
なんとかして、答えを返した。
意図せぬ問いに、ぽかんとするエックス。
「いえ、あの……えっと、居ません……よ」
なんとかして、答えを返した。
オクトパルドが笑う。
恋人が居ないという事に、嘲弄した訳ではなく、どこか達観した笑み。
恋人が居ないという事に、嘲弄した訳ではなく、どこか達観した笑み。
「そうですか。私も居ませんのですよー」
でも、と続け、
「処女じゃないんです」
耳を疑う事実を白日の下に晒した。
でも、と続け、
「処女じゃないんです」
耳を疑う事実を白日の下に晒した。
引きつらせるエックスにオクトパルドは苦笑し、足元にあった石を掴むと、海へと投げた。
「第6艦隊の連中に犯されたので」
石が海面で何度も跳ねる。
少女の言葉に、エックスの心が何度も跳ねる。
石が海面で何度も跳ねる。
少女の言葉に、エックスの心が何度も跳ねる。
622 :Octopus's pride :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 00:20:52.34 ID:jSSPVc3q0
「なん……で」
「私がレプリロイドで、向こうが人間。それだけですよ」
青ざめた疑問に、投げられた小石より軽い答え。
「私がレプリロイドで、向こうが人間。それだけですよ」
青ざめた疑問に、投げられた小石より軽い答え。
もう一つ、投げるのに適した石を見繕い、オクトパルドは投擲。
綺麗な波紋を何度も作り、石は跳ね飛んだ。
綺麗な波紋を何度も作り、石は跳ね飛んだ。
「仕事の一貫ですよ。慰安部隊って知ってます? あれなのですよ」
少女の顔はどこまでも遠い。
エックスの横に広がる海ですら、地平線という終わりはあった。
少女の顔はどこまでも遠い。
エックスの横に広がる海ですら、地平線という終わりはあった。
「部隊って言っても、私一人ですけどね」
少女は言葉を続けながら、砂浜に捨てられた缶を蹴り付ける。
アルミの筒は小気味いい音がして、放物線を描いた。
少女は言葉を続けながら、砂浜に捨てられた缶を蹴り付ける。
アルミの筒は小気味いい音がして、放物線を描いた。
「仕事って……。そんな、断れないんですか!?」
理解できないと首を何度も振り、少年は悲鳴のように聞こえる疑問をぶつける。
理解できないと首を何度も振り、少年は悲鳴のように聞こえる疑問をぶつける。
「断れますけど。――そしたら、他のレプリロイドに移行するのですよ」
言葉の端の刹那――ほんの一瞬だけ、二度目のオクトパルドの答えが悲鳴に聞こえた。
言葉の端の刹那――ほんの一瞬だけ、二度目のオクトパルドの答えが悲鳴に聞こえた。
「あ……」
〝最悪〟に気づくエックス。
〝最悪〟に気づくエックス。
624 :Octopus's pride :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 00:22:53.80 ID:jSSPVc3q0
「私の部隊、大半がレプリロイドで構成されているので、真っ先に白羽の矢が立ちますね」
ボディよりも海よりも空よりも、顔を青く染める少年にオクトパルドは、おかしそうに笑う。
成長しきれない少女の顔が、薄い色をした蒼穹を仰いだ。
「私の部隊、大半がレプリロイドで構成されているので、真っ先に白羽の矢が立ちますね」
ボディよりも海よりも空よりも、顔を青く染める少年にオクトパルドは、おかしそうに笑う。
成長しきれない少女の顔が、薄い色をした蒼穹を仰いだ。
「隊長として……それは見逃す事も、許す事も出来ないのですよ」
誰かの為に自分の身を削る。
皮肉にも、エックス自身がよく行う行為だった。
誰かの為に自分の身を削る。
皮肉にも、エックス自身がよく行う行為だった。
「……本部は知ってるんですか?」
最後の希望。
本部が認知しているなら、何とかなるかもしれない、少年は力を掻き集めた。
最後の希望。
本部が認知しているなら、何とかなるかもしれない、少年は力を掻き集めた。
「いいえ」
すぐさま砕かれる。
オクトパルドの否定はあっけなく、そして無慈悲だった。
すぐさま砕かれる。
オクトパルドの否定はあっけなく、そして無慈悲だった。
「上の人間も一枚噛んでいるんです。だから、イリーガルな仕事ですよ」
「だったら……」
「言及しにいきますか? そんな事したら、どうなるかぐらい解るのですよね?」
エックスの言葉の続きは、先回りされる。
冬の海風が二人の間を強く吹きぬけ、砂を撒き散らし、少女のコートがはためいた。
「だったら……」
「言及しにいきますか? そんな事したら、どうなるかぐらい解るのですよね?」
エックスの言葉の続きは、先回りされる。
冬の海風が二人の間を強く吹きぬけ、砂を撒き散らし、少女のコートがはためいた。
「誰も助ける事が出来ませんよ。そういう体制になってるんです」
オクトパルドは砂がついたコートをはたき、白い煌めきを地へと落とす。
体制――エックスにはおよそ考えのつかない、最低なものだった。
オクトパルドは砂がついたコートをはたき、白い煌めきを地へと落とす。
体制――エックスにはおよそ考えのつかない、最低なものだった。
631 :Octopus's pride :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 00:30:14.02 ID:jSSPVc3q0
「これは……レプリロイドが、人間に隷属された時から……」
少女は自嘲し、
「だから、酷い事されても救われない……」
全てを諦めた。
「これは……レプリロイドが、人間に隷属された時から……」
少女は自嘲し、
「だから、酷い事されても救われない……」
全てを諦めた。
「いやだ、いやだ、って叫んでも、誰も助けてくれないのですよ?」
自分の身に起こった、凄惨な事を少女は、何でもないように言う。
自分の身に起こった、凄惨な事を少女は、何でもないように言う。
「そうそう、小型の魚雷を突っ込まれた事もありました」
オクパルドが笑い、エックスが耳を塞ぐ。対極の二人。
オクパルドが笑い、エックスが耳を塞ぐ。対極の二人。
「お腹の器官なんか、グチャグチャになっちゃって――」
「もう、やめてください!!」
怒声で遮られたが、オクトパルドは気を害せず、陰惨な不幸を吐く口を噤んだ。
「もう、やめてください!!」
怒声で遮られたが、オクトパルドは気を害せず、陰惨な不幸を吐く口を噤んだ。
「それじゃ、帰りますね。お昼、ごちそうさまなのですよ」
襟と腕の裾の位置を確認し、少女は軽く頭を下げた。
襟と腕の裾の位置を確認し、少女は軽く頭を下げた。
「〝休暇〟は今日で終わりにします。ご安心を、ちゃんと仕事には復帰しますのですよ」
少年に言い放ち、少女が背中を向ける。
少年に言い放ち、少女が背中を向ける。
「どうして、一人で背負うんですか」
それに待ったをかける問い。
それに待ったをかける問い。
636 :Octopus's pride :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 00:32:19.11 ID:jSSPVc3q0
「仲間を守るためです」
振り向かずオクトパルドが答える。
振り向かずオクトパルドが答える。
「どうして!?」
少年が問う。
「それが仕事ですから」
少女が答える。
少年が問う。
「それが仕事ですから」
少女が答える。
「どうして!?」
「それが責務ですから」
子供じみた応酬が続く。
オクトパルドは苛立たず、目前の〝子供〟へ丁寧に答えた。
「それが責務ですから」
子供じみた応酬が続く。
オクトパルドは苛立たず、目前の〝子供〟へ丁寧に答えた。
疑問を重ねるのは、エックスが絶望に膝を付くので終了し、誰も救われないという事実だけが残り終了した。
少女は両手を打ち鳴らして、今度こそこの場から離れようとする。
少女は両手を打ち鳴らして、今度こそこの場から離れようとする。
コートの裾が弱く掴まれた。
「行っちゃ……駄目です」
うんざりした顔で振り向くオクトパルド。
その足元に、捨てられた子犬の様のエックスが小さくなっていた。
うんざりした顔で振り向くオクトパルド。
その足元に、捨てられた子犬の様のエックスが小さくなっていた。
640 :Octopus's pride :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 00:34:39.79 ID:jSSPVc3q0
「オクトパルドさんが、傷つくのを黙って見ていられません」
見下ろす侮蔑に彩る顔へ、決意を宿し見上げる顔が激突した。
オクトパルドは頭痛がしたかのように、表情を歪める。
「オクトパルドさんが、傷つくのを黙って見ていられません」
見下ろす侮蔑に彩る顔へ、決意を宿し見上げる顔が激突した。
オクトパルドは頭痛がしたかのように、表情を歪める。
「離せ」
いい加減にしろ、とばかりに足を上げる。
いい加減にしろ、とばかりに足を上げる。
少年の顔に靴裏を叩き込もうとした時に、
「部隊は違えど、僕達だって〝仲間〟じゃないですか!!」
全身を硬直させる言葉を、オクトパルドはぶつけられた。
「部隊は違えど、僕達だって〝仲間〟じゃないですか!!」
全身を硬直させる言葉を、オクトパルドはぶつけられた。
「確かに、仲間の為に身を挺するのって、大事だと思います」
コートの裾を離し、少年が立ち上がる。
コートの裾を離し、少年が立ち上がる。
「でも、じ、自分の体を差し出すのなんて……!」
自分に対する怒りに、オクトパルドは疲れた顔で受け止めた。
自分に対する怒りに、オクトパルドは疲れた顔で受け止めた。
「それしか、仲間を救うには方法がありませんから……」
妥協の言葉。
妥協の言葉。
「だったら、誰かに助けを求めれば良いと思います」
それを否定する言葉。
それを否定する言葉。
「こんな恥ずかしい事、墓まで持っていきますのですよ」
肩をすくめ、オクトパルドは今日の事を、何かの冗談のようにしようとする。
肩をすくめ、オクトパルドは今日の事を、何かの冗談のようにしようとする。
644 :Octopus's pride :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 00:36:50.02 ID:jSSPVc3q0
「――でも、僕には打ち明けました」
はっ、とするオクトパルド。
己の失態に舌打ちする。そこにいつもの力は無い。
「――でも、僕には打ち明けました」
はっ、とするオクトパルド。
己の失態に舌打ちする。そこにいつもの力は無い。
「お願いします。僕にも、その責務を背負わせて下さい」
エックスが手を差し出す。
求めるのは、老人のように書類ではなく、少女の手。
エックスが手を差し出す。
求めるのは、老人のように書類ではなく、少女の手。
「あなたが固執する隊長のプライド。分けてください」
オクトパルドの瞳が苦悶に揺れた。
オクトパルドの瞳が苦悶に揺れた。
「背負って……具体的にはどうするのですか?」
口から出かかった〝何か〟を飲み込み、少女はいつもの嫌味を吐く。
口から出かかった〝何か〟を飲み込み、少女はいつもの嫌味を吐く。
「話し合います」
硬質な答え。
あまりの馬鹿らしさに、オクトオパルドは笑いを禁じえなかった。
硬質な答え。
あまりの馬鹿らしさに、オクトオパルドは笑いを禁じえなかった。
「他のレプリロイドに知られた。――第6艦隊は間違いなく、あなたを消去しますね」
オクトパルドは、命は無いという、世界で最も使われている脅しを選んだ。
オクトパルドは、命は無いという、世界で最も使われている脅しを選んだ。
「闘います」
もう、オクトパルドは笑いを堪えない。
645 :Octopus's pride :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 00:38:56.28 ID:jSSPVc3q0
「馬鹿なのですか、あなた」
はっ、と失笑し、おまけとして鼻で笑う。
レプリロイド一人で軍隊に闘うという話は、軍によくあるジョークでも聞いた事が無い。
「馬鹿なのですか、あなた」
はっ、と失笑し、おまけとして鼻で笑う。
レプリロイド一人で軍隊に闘うという話は、軍によくあるジョークでも聞いた事が無い。
「オクトパルドさんとなら。……仲間をそこまで重んじる、あなたとなら出来ます!」
差し出された手は引っ込まず、微動だにしない。
差し出された手は引っ込まず、微動だにしない。
オクトパルドは、熱にあてられたようによろめく。
柔和な仮面は全て剥ぎ取られ、悩める少女がエックスの前に現れた。
柔和な仮面は全て剥ぎ取られ、悩める少女がエックスの前に現れた。
下げられた少女の腕が震える。
「お願いです。僕の事信じてください」
少年の瞳はどこまでも真っ直ぐだ。
直線の決意を受け止めるオクトパルドは、そっと口を開いた。
少年の瞳はどこまでも真っ直ぐだ。
直線の決意を受け止めるオクトパルドは、そっと口を開いた。
「明後日に、品評会――まぁ、公開レイプですけど、上層部の護衛艦で行われるのです」
エックスは祈る思いで、少女の肯定を待ち望んだ。
エックスは祈る思いで、少女の肯定を待ち望んだ。
「……た、助けてくれるのですか? 私の事」
腕と同様に口調も、恐怖に震える。
腕と同様に口調も、恐怖に震える。
――だが、それは希望にすがっても良いのかというもの。
明るい未来に対しての恐怖だ。
明るい未来に対しての恐怖だ。
648 :Octopus's pride :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 00:40:39.02 ID:jSSPVc3q0
願っても無い問いに、力強く頷く少年。
少女も小さく頷き、腕をゆっくりと挙げた。
願っても無い問いに、力強く頷く少年。
少女も小さく頷き、腕をゆっくりと挙げた。
「た、頼むのですよ? 向こうで、自分も品評したい、なーんて言わないで下さいね」
冗談を放ち、そっぽを向く。
しかしオクトパルドは、しっかりと震える手をエックスのに重ねた。
冗談を放ち、そっぽを向く。
しかしオクトパルドは、しっかりと震える手をエックスのに重ねた。
「はい!!」
エックスは満面の笑顔で、それを優しく握り締めた。
エックスは満面の笑顔で、それを優しく握り締めた。
『緊急逮捕!! 第6艦隊に潜む悪意!!』
『部隊長の一人が、同僚に暴行!! ハンターの管理が問われる』
『他にも関係者が!? ハンター本部へ突撃取材』
『部隊長の一人が、同僚に暴行!! ハンターの管理が問われる』
『他にも関係者が!? ハンター本部へ突撃取材』
『青いレプリロイドが、一人で部隊を捕縛!! 詳細をハンターに――』
『護衛艦沈没。二人のハンターの影が――』
『同僚という名の悪に鉄槌が下った。タコ型の部隊長が――』
『護衛艦沈没。二人のハンターの影が――』
『同僚という名の悪に鉄槌が下った。タコ型の部隊長が――』
651 :Octopus's pride :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 00:42:20.39 ID:jSSPVc3q0
「残りのやつ、なのですよ」
巨大な画面がいくつも置かれる休憩室。
巨大な画面がいくつも置かれる休憩室。
悪事が露呈された様を中継する画面の前に、二人の男女が立つ。
オクトパルドが書類を、隣の老人に投げた。
オクトパルドが書類を、隣の老人に投げた。
「これで、上層部の椅子が一つ欠けるな」
受け取って、丁寧に胸へと収めるケイン。
受け取って、丁寧に胸へと収めるケイン。
「平和を謳う人間が……。同じ人間として恥ずかしい」
悪事を働く者への、理解しきれない思いで構成した、静かな怒りを老体は顔に貼り付けた。
悪事を働く者への、理解しきれない思いで構成した、静かな怒りを老体は顔に貼り付けた。
「さようでございますか」
相変わらず、オクトパルドの言葉はそっけない。
相変わらず、オクトパルドの言葉はそっけない。
「でも、何で渡す気になった」
ケインはここ一番の疑問を横へと投げる。
それに対するのは、自然な笑み。
ケインはここ一番の疑問を横へと投げる。
それに対するのは、自然な笑み。
オクトパルドは微笑み、
「プライドを……一緒に、背負ってくれる人が出来たのですよ。――失礼」
「プライドを……一緒に、背負ってくれる人が出来たのですよ。――失礼」
<了>
54 :番組告知 :佐賀暦2006年,2006/11/06(佐賀県民) 23:41:19.16 ID:jSSPVc3q0
<ハンターからのお知らせ>
<ハンターからのお知らせ>
「甘い物を食べれない苦痛が、お前に解るか?」
突如鳴き出す、財布の閑古鳥。
金欠のクワンガーに迫る、悲劇のオンパレード。
甘い物が欲しい――その思いは彼女の精神を蝕む。
給料日まで一週間。
クワンガーは生き残れるか!?
クワンガーは生き残れるか!?
次回!! イレギュラーズエレジー
――甲虫観察日誌!! ご期待ください!!
96 :以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 01:00:56.87 ID:eNUGwG2m0
甲虫観察日誌
甲虫観察日誌
1日目
しとしと、と降る雨。
曇る冬の空から降り注ぐ、冷たい雨粒。
水滴が、いくつもいくつも窓に張り付き、その身で尾を引きながら垂れ落ちる。
曇る冬の空から降り注ぐ、冷たい雨粒。
水滴が、いくつもいくつも窓に張り付き、その身で尾を引きながら垂れ落ちる。
ハンター本部に存在する施設の一つ、執務室に二人の男女が対峙していた。
簡素な作り、装飾の無い壁、真っ白な天井と床が寂寥感を感じさせる。
簡素な作り、装飾の無い壁、真っ白な天井と床が寂寥感を感じさせる。
「何だこれは?」
角ばった鉄色の机――足の間に入れられるパイプ椅子。
そこに座る、疑念に眉を曲げる老人が、薄い紙片を手にしている。
角ばった鉄色の机――足の間に入れられるパイプ椅子。
そこに座る、疑念に眉を曲げる老人が、薄い紙片を手にしている。
机上の名札によって解る彼の名。
ハンター幹部が一人、Dr.ケインの灰色をした瞳の先には、黒装束の少女。
ハンター幹部が一人、Dr.ケインの灰色をした瞳の先には、黒装束の少女。
「領収書だよ……不不不」
形の良い眉を通り過ぎる、銀髪を弄る少女が事も無げに言った。
上下に異国の衣装、その上に分厚いコートを羽織った――クワンガーが上司に微笑む。
形の良い眉を通り過ぎる、銀髪を弄る少女が事も無げに言った。
上下に異国の衣装、その上に分厚いコートを羽織った――クワンガーが上司に微笑む。
98 :以下、佐賀県庁にかわりまして佐賀県民がお送りします :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 01:02:44.37 ID:eNUGwG2m0
「錯覚だろうか? 宛名が私になって、概要がお菓子代って書かれている」
陰湿を覚える笑みを視界から遮断し、ケインは握られた紙片へ視線を落とす。
自分には信じられない事が書かれた、領収書に頭痛を覚えた。
陰湿を覚える笑みを視界から遮断し、ケインは握られた紙片へ視線を落とす。
自分には信じられない事が書かれた、領収書に頭痛を覚えた。
すかさず引き出しから、錠剤が詰まった薬瓶を取り出す。
「不不不……仕事中での糖分補給は必要だよ」
錠剤を飲む老人に、クワンガーは説明にならない説明を送った。
薬を嚥下したケインは、死ねば良いのに、と呪文のように呟く。
錠剤を飲む老人に、クワンガーは説明にならない説明を送った。
薬を嚥下したケインは、死ねば良いのに、と呪文のように呟く。
「4万2000円。これは、一月でか」
紙の上に並んだ数字を読み上げ、頭痛が酷くなる老人。
銀髪の少女が肩を揺らして笑った。
紙の上に並んだ数字を読み上げ、頭痛が酷くなる老人。
銀髪の少女が肩を揺らして笑った。
そして机に近づき、老人が手にする紙片の数字を、白魚のような指でなぞる。
「お菓子は最高だ。不不不……それと桁が違うよ、ご老体。――42万だ」
ケインの顔面が痙攣する。
ひきつけを起こす上司を尻目に、クワンガーは胸から飴玉を取り出し包みを取ると、姿を現した赤い玉を口に放った。
ケインの顔面が痙攣する。
ひきつけを起こす上司を尻目に、クワンガーは胸から飴玉を取り出し包みを取ると、姿を現した赤い玉を口に放った。
「端数は切り捨てた。部下の上司への配慮に、感謝したまえ」
ころころ、と口の中で飴を転がしながら、人の逆鱗に触れるような発言。
普段は温厚なケインも怒りを、握りこまれる両拳で露にした。
ころころ、と口の中で飴を転がしながら、人の逆鱗に触れるような発言。
普段は温厚なケインも怒りを、握りこまれる両拳で露にした。
101 :甲虫観察日誌 :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 01:05:16.42 ID:eNUGwG2m0
「とうぁっ!!」
引かれる両端からの力で、領収書はその身を裂ける。
老人の掛け声と共に、雪のような紙の切れ端が、周囲に散開した。
引かれる両端からの力で、領収書はその身を裂ける。
老人の掛け声と共に、雪のような紙の切れ端が、周囲に散開した。
「何をする」
クワンガーは眼光を鋭くし、上司の凶行に抗議する。
クワンガーは眼光を鋭くし、上司の凶行に抗議する。
「こんなの支払える訳が無いだろ、異常者!!」
壁を震わせ、抗議に激突したのはケインの怒声だった。
対するクワンガーは、目前の男の怒りに反省した感じも無く、手の中にあった包みを投げ捨てる。
壁を震わせ、抗議に激突したのはケインの怒声だった。
対するクワンガーは、目前の男の怒りに反省した感じも無く、手の中にあった包みを投げ捨てる。
「それは困る。今月の私の財布は閑古鳥だ」
両手を広げ、自らの不幸を披露するが、その姿もケインの怒りを煽る。
部下の行動に常日頃から振り回される――薬を再度取り出しながら、彼は真剣に転職を考えていた。
両手を広げ、自らの不幸を披露するが、その姿もケインの怒りを煽る。
部下の行動に常日頃から振り回される――薬を再度取り出しながら、彼は真剣に転職を考えていた。
「貯金は」
「すると思うかね? これでは後一週間持たない。――払いたまえ」
儀礼的に放った疑問も、非常識な答えに跳ね飛ばされる。おまけに理不尽な物言い。
「すると思うかね? これでは後一週間持たない。――払いたまえ」
儀礼的に放った疑問も、非常識な答えに跳ね飛ばされる。おまけに理不尽な物言い。
「ふざけるな」
ケインは己の名を書かれた名札を投げつけ、退室を命じた。
ケインは己の名を書かれた名札を投げつけ、退室を命じた。
103 :甲虫観察日誌 :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 01:07:12.74 ID:eNUGwG2m0
「食べ放題パスか……子供の褒美じゃあるまいし」
妥協案として上司が提示した物を見つめながら、クワンガーが廊下を歩む。
彼女の赤い瞳がネームプレートに似た、紐が通されたカードに注がれた。
妥協案として上司が提示した物を見つめながら、クワンガーが廊下を歩む。
彼女の赤い瞳がネームプレートに似た、紐が通されたカードに注がれた。
「金欠では、お稲荷堂の最中は食べれそうに無いな……」
ぶつぶつと呟き、ハンター本部に内包された施設、食堂に入る。
ぶつぶつと呟き、ハンター本部に内包された施設、食堂に入る。
「食堂のあんみつで我慢するとしよう」
一人頷き、少女は今週の献立を思考した。
他が見れば胸焼けするような大量の甘い物を、脳裏に描き、ほくそ笑んだ。
一人頷き、少女は今週の献立を思考した。
他が見れば胸焼けするような大量の甘い物を、脳裏に描き、ほくそ笑んだ。
「やぁ、卑猥な名称のレプリロイド」
カウンターに足を進め、横に空かれた空間から晒される厨房に声をかける。
割烹着を着た、桃色の髪を生やした女が出迎える。
カウンターに足を進め、横に空かれた空間から晒される厨房に声をかける。
割烹着を着た、桃色の髪を生やした女が出迎える。
訪ねてきたクワンガーの姿を、ちらりと一瞥し、女は挨拶として頷く。
「あんみつだ。三つ寄越したまえ」
クワンガーは頷き返し、注文する。
クワンガーは頷き返し、注文する。
105 :甲虫観察日誌 :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 01:09:24.08 ID:eNUGwG2m0
「無い」
だが、女の短い返答が、求めた物の不在を告げる。
だが、女の短い返答が、求めた物の不在を告げる。
「は?」
思わず聞き返す銀髪の少女。
思わず聞き返す銀髪の少女。
「無い……とは……不不不……君も意地が悪くなったね。酷い冗談だ」
乾いた笑いを漏らし、割烹着の女を何度か指差して、冗談への抗議をした。
乾いた笑いを漏らし、割烹着の女を何度か指差して、冗談への抗議をした。
しかし、女は困った顔をし、
「いや、ほんとに無い」
クワンガーの顔を先の上司のように引き攣らせた。
「いや、ほんとに無い」
クワンガーの顔を先の上司のように引き攣らせた。
「あんみつが売れないんだよ。お前以外、誰も注文しないんだ」
指を差し返して、女は手にしたお玉を振る。
指を差し返して、女は手にしたお玉を振る。
「そのお前も、そこまで頼まんだろ? だから、昨日から仕入れて無いんだ」
「ありえない。……本部は馬鹿か」
クワンガーは呆然と呟き、カウンターの前で立ち尽くした。
「ありえない。……本部は馬鹿か」
クワンガーは呆然と呟き、カウンターの前で立ち尽くした。
109 :甲虫観察日誌 :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 01:11:22.42 ID:eNUGwG2m0
2日目。
2日目。
「甘い物が食べたい……」
とんとん、と長椅子に腰掛けたクワンガーの足が、神経質に揺すられる。
革張りへ無造作に置かれた手も、断続的にリズムを取った。
とんとん、と長椅子に腰掛けたクワンガーの足が、神経質に揺すられる。
革張りへ無造作に置かれた手も、断続的にリズムを取った。
鼻を突く消毒液の匂い。
病院の受付前に広がる、長椅子の群れにクワンガーは居た。
病院の受付前に広がる、長椅子の群れにクワンガーは居た。
ハンター職員は、定期的に検査を受けなければならない。
企業と同じく、安全と衛生を保つため健康診断を行う。
レプリロイドもその例には漏れなく、こうして銀髪の少女が名を呼ばれるのを待っているのだ。
企業と同じく、安全と衛生を保つため健康診断を行う。
レプリロイドもその例には漏れなく、こうして銀髪の少女が名を呼ばれるのを待っているのだ。
『クワンガーさん。ブーメル・クワンガーさん、待合室へどうぞ』
受付カウンターの天井に設置されたスピーカーから、高い女の声。
クワンガーは重い腰を上げ、待合室と書かれた矢印に歩行を沿わせた。
受付カウンターの天井に設置されたスピーカーから、高い女の声。
クワンガーは重い腰を上げ、待合室と書かれた矢印に歩行を沿わせた。
「お金が無ければ、甘い物が食べれない」
嘆息が、少女の口から漏れる。
嘆息が、少女の口から漏れる。
「甘い物が食べれなければ、動きたくない」
室というからには、部屋であるはずなのだろうが、誰が見ても矢印の終着点は通路だ。
壁に密着して置かれた丸椅子に、クワンガーは座る。
室というからには、部屋であるはずなのだろうが、誰が見ても矢印の終着点は通路だ。
壁に密着して置かれた丸椅子に、クワンガーは座る。
111 :甲虫観察日誌 :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 01:13:29.29 ID:eNUGwG2m0
「動かなければ、お金は稼げない」
ため息が出るのを止められない。
少女は憂鬱に顔を染めて、本日何度目かの不満と不機嫌の息を吐き出した。
「動かなければ、お金は稼げない」
ため息が出るのを止められない。
少女は憂鬱に顔を染めて、本日何度目かの不満と不機嫌の息を吐き出した。
「といっても、行き着くところは給料日か……」
銀の滝が落ちる額を押さえ、良くない状況に頭を抱える。
銀の滝が落ちる額を押さえ、良くない状況に頭を抱える。
「おー、クワンガー。検尿するから、これに溜めてくれ」
そんな彼女にかかるキーの高い声。
紙コップを手にした、白衣の少女が横から現れた。
そんな彼女にかかるキーの高い声。
紙コップを手にした、白衣の少女が横から現れた。
「甘い物が食べたい……」
狭き個室。清潔に保たれた便器。
ドアの荷物かけにトレンチコートの襟を、そして下半身を覆う装束を脱いだ。
クワンガーは相変わらず嘆息を続け、下着であるふんどしを、白い布として解体する。
狭き個室。清潔に保たれた便器。
ドアの荷物かけにトレンチコートの襟を、そして下半身を覆う装束を脱いだ。
クワンガーは相変わらず嘆息を続け、下着であるふんどしを、白い布として解体する。
銀の煌きが散らばる股間を外気に晒し、便器に座り込んだ。
「大丈夫、耐えられるよクワンガー。こういう窮地はよくある事だ」
自分に言い聞かせ、秘部に紙で出来たコップの口を押し当てる。
検尿の羞恥よりも勝る、甘い物への渇望。
自分に言い聞かせ、秘部に紙で出来たコップの口を押し当てる。
検尿の羞恥よりも勝る、甘い物への渇望。
114 :甲虫観察日誌 :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 01:15:47.50 ID:eNUGwG2m0
「んっ……」
と、クワンガーは排尿の呻きを漏らした。
股間から飛び出る黄金色をした小水が、コップに注がれ、溜まってゆく。
体の反射で、少女は全身を震わせた。
と、クワンガーは排尿の呻きを漏らした。
股間から飛び出る黄金色をした小水が、コップに注がれ、溜まってゆく。
体の反射で、少女は全身を震わせた。
「正義のヒーロー……ブーメル・クワンガー、立ち上がれ」
溢れそうになるま尿の入った紙コップを荷台に置き、自分の言葉通り立ち上がる。
溢れそうになるま尿の入った紙コップを荷台に置き、自分の言葉通り立ち上がる。
「憎き、ゴルゴムの手先であるケインを打ち倒すのだ」
悦に入り、コップを持つ方ではない拳を、何かに決起したクワンガーが力を込め掲げた。
悦に入り、コップを持つ方ではない拳を、何かに決起したクワンガーが力を込め掲げた。
トイレで下半身に衣服を纏わず、意味不明な言葉を吐く少女。――その姿は異様を極めた。
「お前、これ入れすぎ」
「不不不非っ……ゴルゴムの仕業だ……」
「不不不非っ……ゴルゴムの仕業だ……」
118 :甲虫観察日誌 :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 01:18:10.44 ID:eNUGwG2m0
3日目。
「不不不……甘さが欲しい」
「旦那!! おはようございます!!」
動く事もままならず、自宅で待機していたクワンガー。
カメレオンの形をした訪問者が、玄関から飛び出て現れる。
「旦那!! おはようございます!!」
動く事もままならず、自宅で待機していたクワンガー。
カメレオンの形をした訪問者が、玄関から飛び出て現れる。
床で倒れ付す銀髪は、胡乱げな視線を元気が溢れる少女にくれてやった。
「大変みたいですね!! これ、お土産です!!」
それを気にせず、少女――カメリーオは腕に抱いた瓦のような箱を差し出す。
「大変みたいですね!! これ、お土産です!!」
それを気にせず、少女――カメリーオは腕に抱いた瓦のような箱を差し出す。
「お土産とな!? ――甘いのか!?」
その言葉と、目に入った箱によって、クワンガーの体は地から飛び上がった。
その言葉と、目に入った箱によって、クワンガーの体は地から飛び上がった。
「饅頭ですって!!」
にこにこと笑みを浮かべ、カメリーオは箱の中身を説明する。
何故か正座をするクワンガーは、大きく頷いた。
にこにこと笑みを浮かべ、カメリーオは箱の中身を説明する。
何故か正座をするクワンガーは、大きく頷いた。
119 :甲虫観察日誌 :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 01:19:36.89 ID:eNUGwG2m0
箱を見下ろす。
『ナマズロス堂 どじょう掬い饅頭』
箱を床に落とす。
「ナマズロス……あの関西娘のか……」
クワンガーは再び床に倒れ付し、絶望感を顔に滲ませる。
クワンガーは再び床に倒れ付し、絶望感を顔に滲ませる。
「捨ててきたまえ」
そして、カメリーオに向け手を打ち払った。
そして、カメリーオに向け手を打ち払った。
「えー!? 何でですかー!!」
「甘い物が食べたい……」
全身を襲う気だるさに、クワンガーは目を閉じ、暗闇の世界へと旅立った。
「甘い物が食べたい……」
全身を襲う気だるさに、クワンガーは目を閉じ、暗闇の世界へと旅立った。
4日目。
「旦那!! これは、どうですか!!」
昨日の訪問者が、懲りずに今日も来る。
ずっとそうしているのか、クワンガーの体は床に根をはっていた。
昨日の訪問者が、懲りずに今日も来る。
ずっとそうしているのか、クワンガーの体は床に根をはっていた。
122 :甲虫観察日誌 :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 01:21:53.00 ID:eNUGwG2m0
疑問の目。
赤眼の視線は、カメリーオの手に握られた肌色をした棒。
疑問の目。
赤眼の視線は、カメリーオの手に握られた肌色をした棒。
「遺産らしいですよ!!」
少女が視線に気づき、楽しそうに棒を振り回した。
それがどうなのか、クワンガーは考えるが答えは出ない。
動くのは無理なので、仕方なくカメリーオに任せようと判断した。
少女が視線に気づき、楽しそうに棒を振り回した。
それがどうなのか、クワンガーは考えるが答えは出ない。
動くのは無理なので、仕方なくカメリーオに任せようと判断した。
「わっ!?」
黄色の悲鳴。
「……どうかしたのかね?」
クワンガーの怠惰な問いがそれを追う。
黄色の悲鳴。
「……どうかしたのかね?」
クワンガーの怠惰な問いがそれを追う。
「おちんちんです!!」
羞恥の無いカメリーオの発言。銀髪が生える頭ががっくりと落ちた。
片側だけ髪を三つ編んだ少女の股間から、屹立する男の象徴が出現していた。
羞恥の無いカメリーオの発言。銀髪が生える頭ががっくりと落ちた。
片側だけ髪を三つ編んだ少女の股間から、屹立する男の象徴が出現していた。
遺産。
いつものクワンガーなら、使用方法やその結果に興味を持つのだが、今は甘い物しか考えることができない。
いつものクワンガーなら、使用方法やその結果に興味を持つのだが、今は甘い物しか考えることができない。
「あのねあのね!! 本物じゃない見たいだから、出るのはせーしじゃないと思います!!」
「だから?」
クワンガーの声に覇気が薄れてゆく。
危険だと、少女自身も判断するが、どうする事もできない。
「だから?」
クワンガーの声に覇気が薄れてゆく。
危険だと、少女自身も判断するが、どうする事もできない。
124 :甲虫観察日誌 :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 01:24:10.38 ID:eNUGwG2m0
カメリーオは自分に生える男性器を擦り、
「白いの……きっと、カルピスですよ!! これで旦那は助かります!!」
と言った。
カメリーオは自分に生える男性器を擦り、
「白いの……きっと、カルピスですよ!! これで旦那は助かります!!」
と言った。
「カルピス!?」
根拠の無い少女の言葉だが、思考能力の低下したクワンガーは顔を輝かせ、跳ね起きる。
根拠の無い少女の言葉だが、思考能力の低下したクワンガーは顔を輝かせ、跳ね起きる。
「素晴らしいね。是非とも吐き出したまえ、ハリー、ハリー」
膨張するペニスを前に正座し、事の時を待ち望んだ。
それに答え、カメリーオが自らに生えたのを上下にしごく。
膨張するペニスを前に正座し、事の時を待ち望んだ。
それに答え、カメリーオが自らに生えたのを上下にしごく。
「んんっ……」
少女に、あるはずないものが生える。その光景は見る者に倒錯を与えた。
少女に、あるはずないものが生える。その光景は見る者に倒錯を与えた。
「難しいですよぉ……旦那ぁ……」
自分の手では上手く快感を引き出せず、カメリーオは泣きそうになる。
自分の手では上手く快感を引き出せず、カメリーオは泣きそうになる。
「仕方あるまい」
クワンガーは涙を溜める少女に微笑み、舌を出すとその先端を舐めた。
効果は顕著だ。
カメリーオは全身を震わせ、突き抜ける快楽に腰が砕けそうになる。
クワンガーは涙を溜める少女に微笑み、舌を出すとその先端を舐めた。
効果は顕著だ。
カメリーオは全身を震わせ、突き抜ける快楽に腰が砕けそうになる。
「……あっ!? 出ちゃいます!! 旦那、出ちゃいます!!」
そう時間もかからず、少女は放精の警告を出した。
口を大きく開け、クワンガーがペニスを口内に収める。
そう時間もかからず、少女は放精の警告を出した。
口を大きく開け、クワンガーがペニスを口内に収める。
130 :甲虫観察日誌 :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 01:27:25.81 ID:eNUGwG2m0
「リオの白いの出ちゃうぅぅ!! ふあああああん!!」
熱い奔流が少女の口の中で爆発する。
どぷどぷと音を立てて射精が行われた。
男性器を生やす少女が、悲鳴をあげながらクワンガーの頭を抑え、白い液体を吐き出し続けた。
熱い奔流が少女の口の中で爆発する。
どぷどぷと音を立てて射精が行われた。
男性器を生やす少女が、悲鳴をあげながらクワンガーの頭を抑え、白い液体を吐き出し続けた。
「ぬににぃ……ど、どうでしたか? 旦那」
落ち着く遺産。
もごもごと頬を動かす銀髪の少女に、艶かしく顔を赤くしたカメリーオが、笑いかけた。
落ち着く遺産。
もごもごと頬を動かす銀髪の少女に、艶かしく顔を赤くしたカメリーオが、笑いかけた。
ゆっくりと味わい、飲み込んだクワンガーの顔は渋い。
結果を言った。
結果を言った。
「…………牛乳だ」
5日目。
「ふるふぉーす、昨日よりー早くー、走るのーが条件ー」
歌う。
「自分のげんかーい、いつも、抜き去ってーいくのさー」
歌う。
クワンガーはそれしかする事ができない。
歌う。
「自分のげんかーい、いつも、抜き去ってーいくのさー」
歌う。
クワンガーはそれしかする事ができない。
134 :甲虫観察日誌 :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 01:32:18.38 ID:eNUGwG2m0
6日目。
6日目。
「かゆ……うま……」
言語すらおかしくなる。
いつから置かれたのか、玄関に見慣れないダンボール箱が置かれていた事に気付いた。
言語すらおかしくなる。
いつから置かれたのか、玄関に見慣れないダンボール箱が置かれていた事に気付いた。
銀髪の少女は首をゆっくりと傾げ、クリーム色の箱ににじり寄る。
『――仕送り――姉ちゃんへ。グラビティー・ビートブード』
表面に少女の家族の名。
かすかな希望を見出し、クワンガーは箱を開ける。
表面に少女の家族の名。
かすかな希望を見出し、クワンガーは箱を開ける。
開かれた光り輝く扉。
クワンガーは震える唇で、
「不不不……これ、昆虫用のゼリーだよ」
中身を呟いた。
「不不不……これ、昆虫用のゼリーだよ」
中身を呟いた。
「あはははははははは!! これ!! ……これ、昆虫用のゼリーだよ!!」
立ち上がり、腹を押さえ、ダンボールを指差したクワンガーが哄笑する。
立ち上がり、腹を押さえ、ダンボールを指差したクワンガーが哄笑する。
「昆虫用のゼリー!!」
少女の目は血走り、狂気が顔に広がる。
少女の目は血走り、狂気が顔に広がる。
138 :甲虫観察日誌 :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 01:34:31.54 ID:eNUGwG2m0
「虫が食べるやつだよ!!」
箱からゼリーの入った袋を取り出し、包みを破る。
床に散らばる、三色の昆虫の餌。
箱からゼリーの入った袋を取り出し、包みを破る。
床に散らばる、三色の昆虫の餌。
「これ、食べるの? 私がこれ食べるの?」
否定に頭を振った。
そして、食べてみようかという考えがよぎる、とにかく悲鳴をあげて頭を振った。
否定に頭を振った。
そして、食べてみようかという考えがよぎる、とにかく悲鳴をあげて頭を振った。
「う……あ……ああああああああああああああ!!!!!」
銀髪の載る頭部を押さえ、クワンガーが絶叫する。
銀髪の載る頭部を押さえ、クワンガーが絶叫する。
「…………ちょっとだけ……甘い」
プライドは投げ捨てられた。
プライドは投げ捨てられた。
7日目。
「不不不……乗り切った……! 乗り切ったよ!!」
廊下を異常者が、ふらふらとおぼつかない足取りで歩む。
廊下を異常者が、ふらふらとおぼつかない足取りで歩む。
「甘い物食べれるよ!! いっぱい、いっぱい、食べれるよ!!」
給料を求め、クワンガーが上司の下へと力を振り絞った。
給料を求め、クワンガーが上司の下へと力を振り絞った。
141 :甲虫観察日誌 :佐賀暦2006年,2006/11/07(佐賀県警察) 01:37:29.66 ID:eNUGwG2m0
「嫌なことあっても、甘い物食べれば――」
空気を大きく吸い込み、
「――治るよ!! 治るよ!!」
人の目など気にせず廊下で叫ぶ。
空気を大きく吸い込み、
「――治るよ!! 治るよ!!」
人の目など気にせず廊下で叫ぶ。
「クワンガー…………」
突然現れるケインの姿。
沈痛な瞳でクワンガーを一瞥し、優しく肩を叩くと、紙片を手渡す。
突然現れるケインの姿。
沈痛な瞳でクワンガーを一瞥し、優しく肩を叩くと、紙片を手渡す。
紙には、
『検査結果:重度の糖尿病』
『検査結果:重度の糖尿病』
「その……気の毒にな」
「マック、これ何の遺産なんだ?」
「詳細は不明だが、パーティ用らしい。旧世代人の考えは解らんな」
「詳細は不明だが、パーティ用らしい。旧世代人の考えは解らんな」
<了>