※ここからは微エロと、微グロに注意ですぞ※
朝。目覚まし時計が朝を告げる。喧しい。
少女はその音で目をさまし、時計の頭を叩く。すると喧しい音が消え、時計は黙り込む。
そしてベッドから這い出て、億劫そうに着替える。パジャマを脱ぎ学校に出かける為に服を着替える。
「あれ?」
その時、一階から声が聞こえた。紛れもない。父親の声だ。どうやら誰かと話している様子。
いつもなら父親は既に会社。父親は少女が寝た後に帰ってきて、少女が起きる前に会社に行く。
それなのに今は家にいる。
「お父さーん!」
嬉しくなり、着替えてすぐに階段を駆け下りる。
そして今に着き、絶句。
「だ、だれ?」
『逃げろ!!早く!!』
父親が逃げるように促す。しかし少女は動かない。否、動けない。
目の前の光景に目を奪われてしまっているのだ。足が地面に張り付く。接着剤でも塗りつけられたようだ。
「………………」
そして喋ることも出来ない。開いた口が塞がらなかった。
目の前に広がる普通でない光景。いつもと違う光景。
それは赤い液体を流す父親と、背が高く、黒い服を着た二人組の男。
男たちは刃物を持っており、こちらをギラリと睨んでいる。
――――――それはまさしく、今噂の強盗そのものであった。
『逃げて!!お父さんに構わないで!』
父親の必死の訴えも虚しく、少女はその場を離れない。
目に焼き付く赤い液体―――血―――は父親の腕からとめどなく溢れ出ている。
それと、強盗の持っている刃物、そこにも血がついている。多分、否、絶対に父親を斬ってついた血であろう。
つまり、父親は斬られて、血を流している。
「なんで家にいるの?」
強盗ではなく、父親に聞く。何故いつもと違い家にいるのか?心の中では分かっている。
しかし、それを許容することを体が拒否する。信じられない―――――――信じたくない。
『はっはー!みれば分からないかい?』
答えたのは父親ではなく強盗の片方。
そう言いながら父親を見やすくさせようと一歩下がる。嫌な配慮である。
父親はもう諦めたかのように下を見ている。
「そ、んな……嘘だ……」
夢遊病者みたいな動きで父親に近づいていく。しかし、途中で先ほどとは逆の強盗に抱きかかえられ進路を阻まれる。
少女は嘘だ、と連呼している。そして、泣いていた。昨日泣いたばかりなのに、涙が溢れて止まらない。
涙が枯れるなんて言葉があるが、枯れることなく頬を伝い続ける涙。
「嘘だ…こんなの嘘だ……夢だ……」
ひたすらに現実逃避をする少女。しかし、残念ながらこれは現実。現実なのだ。
『お嬢ちゃん。よーく見てると言い。これは紛れもない現実だぜ?』
そう言って、父親の右腕の小指をズバッと切り落とす。笑いながら。
痛みに顔を顰め、叫ぶ父親。少女の耳にこびり付く強盗たちの笑い声。
それでも現実逃避をやめない。嘘だ、と。
『これはおもしれえ!ははははは!!』
そう言い、強盗は父親の右手を持つ。そして、刃物をギラつかせ。少女に語りかける。
『お嬢ちゃんも後で沢山可愛がってやるからさぁ。安心していいよぉ』
意地悪く笑いながら、少女にも何かするようなことを示唆する。
そして、父親の指を一本ずつ切り落としていく。じっくりと、ゆっくりと。
「や!やめて!」
切り落とされていく父親の指。刃物を食い込ませ、抜く。また食い込ませ、抜く。ゆっくり時間をかけて切り落としていく。
父親は絶えず叫び、体を動かして抵抗しようとする。しかし、強盗の力は強いらしく、抵抗するだけ無駄。むしろ血が噴き出て、死が近づくだけである。
「もうやだ!見たくない!!」
そう言って顔を背けようとするが、強盗に頭を掴まれそこから顔を背けられない。
目を閉じれば無理やり開かれる。第一、目を閉じても耳から音が入ってくる。この惨劇から逃げ出すことは最早不可能。
『娘は…娘は殺さないでくれ!!頼むぅっ!!!』
父親の必死の訴え。これに強盗は、ニヤリと笑い。
『ふー…随分立派な人格の持ち主なんだねぇ。自分はこうなってるのに娘のことを考えられるなんてさぁ?』
そのあとに、その心意気を買って娘さんの命は保障しましょうかね?と続けた。
こんな奴らがこんな口約束を守るかは疑わしいが、今はそれどころではない。
『私はどうなってもいい!家の金もこの際全部くれてやるから!!娘だけは!!』
必死に懇願している。本当に素晴らしい父親である。
何故。何故こんな素晴らしい人物が殺されなければならないのだろう?
『ではさっき見つけたこの金庫の暗証番号を教えてくれませんかねぇ?』
少女もしらない金庫がそこにはあった。
黒光りして1mはあろうかと言うその金庫はとても簡単には開きそうもなかった。
『番号は######だ…』
そしてその番号をあっさりと教える父親。
中には何が入っているのだろう?少女も知らない金庫。きっとなにか大切なものに違いない。
だが、少女はそんなこと気にも留めていなかった。
今、少女にとって大切なことは父親のこと。涙で潤んだ目で父親を今度はしっかりと見た。
「ああ………あああ……………!」
やはり、何度見ても血は出ているし、右手の指は既に三本なくなっている。
父親に近寄りたい。抱き着いて泣きたい。しかしそれは強盗による拘束のせいで適わない。
ただ身をよじらせることしかできない。
「…なんで…………なんでウチなの!?」
独り言。それはそれは大きい声での独り言。
強盗たちもそれに答えようとしない。どうせ理由なんてたかが知れている。
『開きましたね』
金庫からカチンという小気味いい音が聞こえてその重厚な扉がものものしく開かれていく。
中には、黒い箱。アタッシュケースのようなものが入っていた。
強盗はその箱を開ける。すると中には白い箱が四つ入ってた。
『随分と厳重ですねぇ…』
そしてその白い箱の一つを手に取り、ふたを除く。
『凄い!札束がびっしり!』
歓喜する強盗。きっと残りの箱もそれと同等の金額が収められていることだろう。
白い四つの箱。そのふたにはある文字が書かれている。
『なんでしょうかねぇ…「小学校」……?』
残りの箱には「中学校」「高等学校」「大学・社会」と書かれている。
これは父親が少ない給料を溜めて作った、娘の学校でかかる金額が収められていたのだ。
問題なく進学できるように。金銭的理由で進学できないことがないように。
『ほほー。ほかの箱にも沢山入っていますねぇ!ここに来てよかった!』
歓喜してちょっと大声を出す強盗。小躍りしたい気分なのかもしれない。
しかし、そのまま去ることはなく。父親のもとへ近づいていき―――
『あなたには感謝しますよー!お陰でもう強盗なんてマネしなくて済むんですから!』
父親にお礼を言いながら右腕を切り落とす。
『いやー。もっといたぶろうかと思いましたけど、やめます!』
お礼にすぐ死なせてあげます。と。
少女はそれを見ているしか出来ない。そして、泣き叫ぶことしかできない。無力であった。
力を持たないものは持つものに組み敷かれる。
「お父さん!!いや!殺さないで!!やめて!」
悲惨に叫ぶ。勿論、強盗はそんなの聞くわけがない。むしろ愉快そうにニヤニヤ笑っている。
少女に見せつけるように左腕をバッサリ切る。
そして、両腕がなくなった。欠損部分から大量の血が溢れ出る。
間もなく左足も斬った。
『うう……』
そこで、父親は気絶してしまう。当たり前だ、軍人でもあるまいにそんなに痛みに耐えられるわけがない。
「もうやめてっ!!もうやだ!」
叫ぶ少女を尻目に、刃物を滑らせていく強盗。父親の腹に突き刺さる刃物。
『これでは面白くありませんから。もう終わりにします』
「本当!?」
『ええ』
そう言い、父親の首を掻っ切った。
生首が体から落ちて、床に転がる。
「ひえ!!」
目の前で今。父親を失った。死んだ。唯一の肉親が、この世から――――――
顔色がみるみる内に青ざめていく少女。
悲しみと怒り、絶望。そんな感情が少女を支配する。
涙は依然流されたままで、あまりのグロテスクさに口から昨日の肉じゃがが排出される。
堪らず気絶する。
そして少女はそこから先を記憶していない―――――――
―――――――否、したくないだけだ。更なる地獄が待っているなんて、思いもしなかった。
最終更新:2011年06月01日 00:49