真実と正義に怯え嘘と闇に隠れる少女その参

気絶して、起きてみたらそこは見たこともない暗いところ。
強盗の住み着いている廃屋であった。

「い、生きてる……」

まず生きていることに気が付いた。もうあの場で殺されていると思っていた。
強盗は一応約束を守ったのである。

『おう、起きたか』

さっき、家で少女をずっと押さえつけていた方の強盗が現れた。
刃物は持っていない。丸腰だ。それでも少女は遠く及ばないような非力さだが。
そして、よく見ると少女はベッドの上に寝かされていたようだ。まあ、ベッドと言ってもコンクリートの塊の上に手頃な布を敷いたという酷く簡易なものだが。

「ここは?……」

何故か冷静に強盗に聞いた。
すると。

『げっへへ……ここは俺らのアジトさ……』

そんなこと言われたってそのアジトはどこなんだよ。と聞きたいがそこまでの勇気はないので聞かなかった。
そして次に、

「私の家は?お父さんは?」

『お前の家は父親もろとも焼いた。証拠隠滅さ』

それにしてもよく喋る強盗である。
こんなに秘密を喋ったりしないだろう、普通は。

「えっ…………」

気がつけば頬には涙が。
そして、思いだす、あの惨劇を、そして、ちょうど読んでいた小説がバラバラ殺人の話だったことに。
もしかしたら、何かを暗示していたのかもしれない。

『おお、やっと起きましたか』

奥から父親をいたぶっていた方の強盗が現れる。
不気味で、厭らしい視線で体を舐めまわすように見られた。

『小学生のくせにいい体してますよねぇ』

そう言いながら、少女の胸を触ってくる。
厭らしい手つきで上から下へ、下から上へ。

「いや……やめて…」

小学生でもこれがセクハラだと言うことぐらい分かる。
そしてそれが良くないことだということも。
強盗の手を掴んで動きを止めようとするが、非力な少女の力では強盗の手は止まらなかった。

「やだ!やだやだやだ!!」

泣きながらじたばたしようとする。が、口は強盗の手で覆われ、手足も掴まれて動きを封じられる。
強盗の内、父親を殺した方が服のポケットから何かを取り出す。
そしてそれを少女の腕につけ、腕を体の後ろに回され、もう片方の腕にも装着させられる。
手錠だ。

『いやー。手錠って高いんですね』

こっちの強盗が遅れてここに来たのは手錠を買いに行っていたかららしい。
兎に角、これで少女は虚しい抵抗すら出来ない。
少女の額に嫌な汗が。頬に涙が。

「なにするの!やめてっ!!」

掴まれている脚を必死にもぞもぞ動かそうとする。

『ナニって…もちろんエッチなことですよ?』

ニヤリと少女を見つめる。
胸を撫でる手に力が入る。少し痛い。

「や、やだ……!」

やだ、というものの逃げることなんて不可能。
絶体絶命のこの状況、もはや犯される意外に道はなかったのだ。

『お嬢ちゃんのお父さんと殺さないって約束したからね?殺し〝は〟しないよ』

殺しはしないが………犯しはする。
二人の強盗の瞳は楽しげに光る。少女の瞳は絶望に光を失う。
胸を撫でる手が服の中に侵入してくる。背筋がゾワッとして、気持ち悪い。だが、抵抗することすらできない。


―――――――――以下、自粛

少女が次に起きた場所に天井はなかった。何故ならそこは悪臭漂うゴミ捨て場。
ゴミに塗れて捨てられた、少女。

「くさい……」

とりあえず、此処を出ようと立とうとするが足に力が入らない。
よくよく見れば服は着ているものの所々破れて、股からは血が出ていた。
描写的には今初めて知りましたというように書いているが、コトの一部始終は嫌と言うほど見せられた少女。
強盗二人にいいように扱われ、慰め物にされたあの忌々しい光景が脳裏をよぎる。一生忘れることのない、最悪な思い出。

「いつか……いつかあいつらを殺してやる………!」

ご丁寧に手錠は外されていた。
踏ん張りが効かない足に頑張って力をいれ、ゆらりと立ち上がる。
お腹もすいた。腹の虫が盛大に鳴く。

「ゴミは流石に……無理だ……」

一瞬ゴミを食べようかとも思ったが、それは出来なかった。まだ人を捨てる気にはなれなかった。
ゆらゆらと、今にも倒れそうにゴミ捨て場を後にした。



そしてたどり着いたのは路地裏。そこでは何者かが喧嘩していた。巻き込まれるのは御免なので、物陰に隠れた。
少女はその光景を目に焼き付ける。喧嘩の仕方を身に焼き付ける。いつか、復讐するために。
人の殴り方、人の殺し方、その全てを路地裏の喧嘩やストリートファイトから学ぶ。

「いつか…復讐してやる……!」

喧嘩は終了した。片方が死に、片方が金をあさる。
それを見た少女はそばにあった鉄パイプ的なものを拾い上げ、恐る恐る勝者に近づいていく。

「ごめんなさい!!」

謝りながら、腕に力を込めて鉄パイプを振り下ろす。それは不良と思われる男の後頭部に直撃し、男は気絶する。
少女は汗ダラダラ。
その後も執拗に鉄パイプで男を何度も何度も殴りつける。男が死んでからもずっと。
殴るのをやめ、不意に倒れた男を見て、罪悪感が全身を駆け巡る。そしてもう一度ごめんなさいと謝った。
男の服から金を抜き取り、ふらふらとその場を去る。


こうやって、横取りで生計を立てていたが、ある日その光景を警察に目撃される。
泣きながらガラスの破片で人を刺している少女。それを見る警察。
少女は警察に気が付き焦る。ガラスの破片を投げ、覚束ない足取りで警察から逃げ出す。

「ご、ごめんなさい!!ごめんなさい!!!」

何者かに謝りながらゆっくりな全力ダッシュ。
運よく警察からは逃げられたが、これで迂闊に明るいところに行けなくなってしまった。
少女は毎晩、泣いている。

――――――――――――――それから

ボロボロの服は捨ててゴミ捨て場で拾った真っ黒いローブに身を包む。
それからも少女は毎日人を殺してしまった。
ある日格闘技を操る人物に会い、その技を盗ませてもらう。
そして、ものに頼らず人を殺せるようになってしまった。
そんな生活を続けていたらいつの間にか人を殺さずに済む〝加減〟を覚えた。
段々と体が格闘に馴れてきた。
たまたま通りかかった場所でストリートファイトに参加してみた。
そこで正当に横取りでも襲うのでもなく金を手に入れられることを知った。
生きることが大変で強盗のことなんか忘れていた。
いつの間にか口調も荒く、女だからと甘くみられるのが嫌になった。
自分の知らないうちに路地裏では有名人になっていた。


――――――――そして今、化け物と呼ばれるほどの異様な身体能力を手に入れた。


そこにかつての面影はない。
インドア派の少女が毎日人を殺し、生きるために戦い続けた。
唯一変わらないのは綺麗に整った顔と美しい体つきのみ。
少女は生きるために今日も誰かを殴る。

いつの日か、幸せになれると信じながら。

END


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最終更新:2011年06月01日 00:52
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