第六次人工能力者育成計画とは、よく噂される怪しい組織の非合法な物とは違い、国の許可を得て民間の研究所が行った正々堂々とした研究である。教育機関の監査役が常時置かれ、被験者である子供達に害が出ないように研究所員も細心の注意を払って実験に挑んだ。
この研究において重要視されたのは、幼少期から能力者を鍛える事でどの位までその力を高める事が出来るのか、また、その能力を扱うにふさわしい社会性を持つ事は可能かというこの2点であり、要は「強くて優しい有能な人材」を育成する事であった。その主要参加者、つまり対象となる子供達は以下の通りである。
体内における臓器の内容量に限界が無い。無限の体液を有し、無限に息を吸い続けられどんな物でも体内に納められる。
人物・活発な少年で、何をするにも率先して行動する。まだ精神的に未熟な所はあるが、仲間思いの熱い感情を内に秘めているようだ。チームのリーダー格である。
自分の周囲3m以内のみ光速移動出来る。一度射程限界まで移動したら1秒のインターバルが必要。反射神経も光速である。
人物・悪戯好きな少年。たまにやり過ぎてしまうが、常に周囲へ気を配り、ムードメーカーに努めている。
自分の周囲に念動力を展開し、擬似的な無重力空間を作る。射程内の物体を操る事も出来る。
人物・おませな女の子。女子のリーダー格であり、お姉さん気質。背伸びしたがりな所がある。時折年下の子供を能力で楽しませるなど、面倒見がとても良い。
辞典を媒介とし、触れている物体を上・下位互換出来る。手で触れた短剣を、辞典の「長剣」のページを開いた状態で念じれば長剣に変えられるなど。上位・下位の概念は、彼女の主観による物のようだ。
人物・読書好きでおとなしい女の子。少々引っ込み思案だが、勇気を持って行動すれば誰よりも力強い。研究所の小動物の面倒をよく見てくれている。
物体を逆再生出来る、擬似的な時間逆行能力。対象は触れている物。
人物・おっとりのんびりとした性格。物事を落ち着いて見通し、必要とあれば誰にでも手を貸す。怪我や血を見るのが嫌い。
あらゆる物体を跳ね返す無敵の矢を放つ。一度に放てる数は15本。喰らった物は吹っ飛ぶか凹む。
人物・ガキ大将。我が強く自分が一番で無いと気が済まないが、弱い相手には慈しみの感情を見せる。相手を下に見る傾向あり。
他人の思考を読み、その内容を記録する。受信距離は最長50m、波長が合えば70mまで読み取れる。記録は彼の両手のどちらかに触れる事で読み取らせて貰える。
人物・マイペースな少年。真実や正確といった物を好み、不正や嘘を嫌う。能力によって、他人の心を熟知しているからかも知れない。スピナーと仲が良く、悪戯を共に行ったりもする。
時間と距離を超越した、いわゆる四次元空間へと繋ぐ入り口を好きな所に作れる。内部に置いてある物はいつになっても新品同様だが、空気が無い為隠れる事は空気を大量に持ち込める【無尽臓器】と【浮遊宇宙】位だろう。
人物・無口でおとなしい少年。モクモクと作業をこなし、淡々としている為冷たい様に思われがちだが、単に口下手なだけである。武器に詳しく、コレクターの一面を持つ。
特殊な構造の物を複製する事が出来る。特殊な構造とは、幾重にも重なったような「層」の事で、一部分にでもこの構造を持てば全体を複製出来る。但し、その場合は複製が甘い。
人物・生意気で天邪鬼な少年。常に相手を馬鹿にする様な態度を取るが、年上の女性に弱い。敬意を払うべき場面では、所員の顔を立てるなど世渡りは出来る。
指から特殊な液体を出し、触れた物を溶かす事が出来る。溶かせる物体の限度は鋼鉄まで、材質によっては溶かせない。
人物・かなりプライドが高い少年。チーム内では年長だが、一番能力が弱い(というか地味?)な事に劣等感を抱いているらしい。その為か、チーム一努力をしている。また、能力開発・育成における論理に詳しい。将来は、正式に研究員として招きたい。
触れた相手の行動を支配する。効果は30分程。
人物・相手にも自分にも厳しい、向上心旺盛な性格。合理的に物事を考え、最短ルートで成し遂げる事を好む。それ故か、無駄が多い子供には振り回されがち。
火球を生み出す能力。燃やした物を組み立て、炎の巨人として操る能力も持つ。
人物・常ににやにやとして、捉え所の無い性格。常に一人で行動し、違う価値観で物事を見ている。しかしそこが子供達には尊敬されている所でもある様だ。
銃弾を軽くかわす速度と、ロケット弾も受け止める腕を持つ。
人物・かなりはっちゃけている女の子。一人だけ自分の世界にいる奇抜な子で、男子に混じり皆に率先して行動する。七つの大罪を具現化した様な性格だが、現在は見違える様に優しくなった。育成計画における唯一の元・無能力者であり、計画の「キメラ部門」被験者である。
子供達は大変仲が良く、喧嘩もするが仲直りも早い。恐らく、この先何があっても、彼らの絆が朽ちる事は無いだろう。これは能力者の社会性を証明し、未だ残る部分もある偏見に対する有効な答えとなる筈だ。
研究所には、この他数十名の研究者と監査官が存在し、彼等と寝食を共にしている。また保護者と地元の市民らによる支援団体があり、研究と子供達の成長を支えている。
現在、この計画及び研究所は消滅し、どこにあるか分からない。分かるのは、時を同じくして少女と連絡が取れなくなり、代わりに研究所の面々に対し総額十数億ロードもの援助がなされたという事だけである。
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