シナリオ 7月15日(日曜日)・そのA1
莉緒と傘
真緒「おー! 綺麗な街だね」[pcm]
よく晴れた日曜日。[pcm]
打ち合わせ通りに寮を出たぼく等は、
学園にいちばん近い大きな街へと来ていた。[pcm]
初めて訪れる街の景色は新鮮で、それだけでも来た甲斐があるかもしれない。[pcm]
寮長「ええ、私も好きです」[pcm]
莉緒「まぁ、魔界では見れない光景よね。感謝しなさいよ」[pcm]
真緒「ああ、感謝するよ」[pcm]
莉緒「ふん」[pcm]
寮長「それじゃ先生」[pcm]
真緒「よし、行こうか!」[pcm]
莉緒「しょうがないわね」[pcm]
街の中心部。[pcm]
日曜日だからなのか元々なのか、とにかく人で溢れかえっていた。[pcm]
楽しそうに通り過ぎる人を見ると、羨ましいと思ってしまうが、[l]
まずは学園長から頼まれた事を済ませなきゃな。[pcm]
真緒「えーと」[pcm]
真緒「ここの店で取ってこなきゃいけないみたいだけど……」[pcm]
寮長「……ここは、あそこの角を曲がった所ですね」[pcm]
真緒「ああ、それじゃ近いんだ」[pcm]
寮長「ええ、すぐそこですよ」[pcm]
莉緒「………」[pcm]
莉緒「……なによ、寮長ばっかり頼って」[pcm]
真緒「それじゃ行こうか」[pcm]
寮長「ええ」[pcm]
真緒「莉緒、行くぞ」[pcm]
莉緒「………」[pcm]
ぼくの声が聞こえていないのか、莉緒は呆けている。[pcm]
後、どこか暗い。[pcm]
真緒「莉緒? どうしたんだ?」[pcm]
莉緒「え? なにがよ?」[pcm]
真緒「いや、元気ないからさ」[pcm]
莉緒「ま、魔王に心配される必要はないわ! ほら、早く行くわよ」[pcm]
真緒「うん、行こう」[pcm]
真緒「寮長……次はここなんだけどさ、場所分かる?」[pcm]
寮長「はい、ここはですね……」[pcm]
莉緒「………」[pcm]
真緒「ああ! ここもすぐそこだ」[pcm]
寮長「ふふ、そうですね」[pcm]
真緒「頼りになるよ」[pcm]
寮長「いえ」[pcm]
莉緒「……うー」[pcm]
莉緒「ちょっと真緒くん!」[pcm]
真緒「ん?」[pcm]
莉緒「なんであたしに聞かないのよ!」[pcm]
寮長「……寺井さん」[pcm]
真緒「え? 何でって言われても」[pcm]
莉緒「………」[pcm]
寮長「………」[pcm]
真緒「あれ? ど、どうしたの二人とも?」[pcm]
寮長「いえ……」[pcm]
真緒「具合悪くなったとか?」[pcm]
真緒「暑いから日射病──お?」[pcm]
ふと視界に入った小さな女の子。[pcm]
傘をさして楽しそうに歩いている姿に、
ぼくだけじゃなく周りの人たちも目を止めている。[pcm]
今日は快晴で傘の必要は無いし、まして日傘をするような年の子じゃない。[pcm]
きっとあの子、あの傘を気に入ってるんだろうな。[pcm]
天気に関係なくさして歩きたい位に。[pcm]
それにしても、微笑ましい。[pcm]
莉緒「なによ? 話の途中で終わるなんて気持ち悪いじゃない」[pcm]
寮長「どうかしましたか先生?」[pcm]
真緒「いや、ほら、あの子見て」[pcm]
そう言って、女の子の方に目を配る。[pcm]
寮長「あら、可愛いですね」[pcm]
真緒「あの可愛い傘を気にいってるんだろうね」[pcm]
寮長「ええ、そうだと思います。[l]
凄く楽しそうにして、ふふ、可愛いですね」[pcm]
莉緒「………」[pcm]
無邪気な子どもの様子に笑顔になるぼくと寮長だったが、[l]
莉緒は笑いもせずにジッと女の子を見つめている。[pcm]
真緒「どうしたんだ莉緒?」[pcm]
莉緒「なにもないわ」[pcm]
真緒「知り合いか?」[pcm]
莉緒「なにもないって言ってるでしょ」[pcm]
寮長「あれ……あの傘は寺井さんの所の」[pcm]
真緒「莉緒がどうかしたの?」[pcm]
莉緒「そうみたいね」[pcm]
真緒「何の話?」[pcm]
寮長「あら、先生はご存知ないんですか?」[pcm]
真緒「え、何?」[pcm]
寮長「寺井さんのお父さんは雨具メーカー社長なんですよ」[pcm]
真緒「ええ!? そうだったの?」[pcm]
莉緒「………」[pcm]
寮長「はい、幅広い年代の方に人気があるんですよ」[pcm]
寮長「特に人気なのが子ども向けの傘なんです」[pcm]
真緒「へぇ」[pcm]
寮長「その子ども向けの商品は、寺井さんがデザインをされたんですよね?」[pcm]
真緒「ま、まじで?」[pcm]
寮長「ですよね寺井さん?」[pcm]
莉緒「………」[pcm]
真緒「じゃ、あの子の傘はもしかして莉緒がデザインした傘?」[pcm]
莉緒「あたしじゃないわ。あたしはそんなことしないわ」[pcm]
寮長「え? でも以前に」[pcm]
莉緒「寮長の勘違いね。ほら、行くわよ二人とも」[pcm]
そう言って莉緒は前へ歩き出した。[pcm]
莉緒が雨具メーカーの令嬢。[pcm]
ちゃんと書類を見てなかったせいか、初めて知った。[pcm]
しかし……何だかんだ言って、莉緒もお嬢様なんだよな。[pcm]
社長令嬢……[pcm]
だからと言ってぼくと莉緒がどうなる訳でもない。[pcm]
教師と生徒という関係も変わるわけじゃない。[pcm]
でも、莉緒を少し遠くに感じてしまうな……[pcm]
真緒「よし、あとちょっとだ」[pcm]
寮長「ええ、もう少しで終わりですね」[pcm]
真緒「だね。それで、ここはあそこでいいの?」[pcm]
寮長「えっとですね、ここは……」[pcm]
莉緒「………」[pcm]
莉緒「ちょっと真緒くん!」[pcm]
真緒「どうした?」[pcm]
莉緒「す、少しはあたしにも聞きなさいよね」[pcm]
真緒「え? 何を?」[pcm]
莉緒「なっ!? 道に決まってるでしょ!」[pcm]
真緒「あ、ああ、道か」[pcm]
莉緒「そうよ。ほら、どこよ?」[pcm]
真緒「いや、でも寮長がもう教えてくれたし」[pcm]
莉緒「………」[pcm]
寮長「す、すいません寺井さん」[pcm]
莉緒「寮長もなに謝ってるのよ! 意味が分からないわ!」[pcm]
真緒「おい莉緒? なに怒ってるんだよ?」[pcm]
莉緒「別に怒ってなんかないわよ。じゃ、次はあたしが教えるわ。どこなの?」[pcm]
真緒「いや……これで最後なんだ」[pcm]
莉緒「な!?」[pcm]
寮長「………」[pcm]
真緒「ま、とにかく行こう。早く済ませたいしさ」[pcm]
莉緒「………」[pcm]
寮長「………」[pcm]
真緒「これで終わり、と」[pcm]
寮長「お疲れ様でした」[pcm]
莉緒「………」[pcm]
真緒「ああ、お疲れさま。莉緒もお疲れ」[pcm]
莉緒「………」[pcm]
真緒「どうした? 元気ないな」[pcm]
寮長「………」[pcm]
莉緒「落ち込んでるのよ」[pcm]
真緒「どうして?」[pcm]
莉緒「寮長の洗脳も完成していたっていう事によ!」[pcm]
真緒「お、おい、こんな所で変なこと言うなって」[pcm]
莉緒「変なこと? 私にとっては変でもなんでもないわ」[pcm]
真緒「だいたい、何をそんなに怒ってるんだよ!」[pcm]
莉緒「怒ってなんかないわ!!」[pcm]
真緒「怒ってるじゃないか!」[pcm]
莉緒「怒ってるのは真緒くんじゃない!」[pcm]
真緒「ぼくは怒ってない!」[pcm]
寮長「あ、あの二人とも……周りの方も見てますし」[pcm]
真緒「あ、ああ……そうだな。ちょっと大人げなかった」[pcm]
街中で喧嘩してしまった。[pcm]
周りの視線に、今さら気がつき恥ずかしくなる。[pcm]
莉緒「……あの寮長を部下にするなんて、魔王の力は凄いのね」[pcm]
莉緒「岸岡芽衣子もそうやって僕にしたわけ?」[pcm]
真緒「おい莉緒、いい加減に」[pcm]
莉緒「なによ!! 今度は私にやってみなさいよ!!」[pcm]
真緒「な、なにをだよ?」[pcm]
莉緒「だから寮長を洗脳した時のように私にもやってみなさいよ!!」[pcm]
寮長「………」[pcm]
真緒「莉緒に? 何を?」[pcm]
寮長「あ、あの……」[pcm]
真緒「寮長、莉緒は何に怒ってるの?」[pcm]
寮長「……それは」[pcm]
真緒「寮長も分からない?」[pcm]
寮長「………」[pcm]
真緒「うーん」[pcm]
寮長「……先生、私は学園長に呼ばれていますので、先に帰らせてもらいますね」[pcm]
真緒「え?」[pcm]
寮長「寺井さん、後の案内をお願いしてもいいですか?」[pcm]
莉緒「……な、なによ、いきなりそんなこと」[pcm]
寮長「ふふ、それでは私は帰りますので」[pcm]
真緒「あ! 寮長」[pcm]
一瞬の内に人ごみに消えていく寮長。[pcm]
用事も終わったんだから、一緒に帰ればいいのに。[pcm]
何でぼくと莉緒を残して先に帰るんだろう。[pcm]
莉緒「………」[pcm]
真緒「………」[pcm]
莉緒「………」[pcm]
真緒「………」[pcm]
気まずいな……[lr]
どうしたらいいのか……[pcm]
最終更新:2010年07月19日 07:37