シナリオ 北上ルート 7月24日(火曜日)・その1
ロック談義
※日付修正、ここは25日にします。
そして夏休みがやってくる。
今日で二日目だ。
ぼくも休みだからゆっくり寝てても問題はないけど、
いつもの癖で早起きしてしまった。
いや、生活リズムを崩しちゃ駄目だな。
いつも通り食堂へ行こう。
皆まだ寝ているのか、食堂にはぼくと寮長だけだった。
寮長「おはようございます先生」
真緒「おはよう」
寮長「お早いですね」
真緒「いや、寮長こそ」
寮長「私は早く起きるのが習慣になってしまってますから」
真緒「なるほどね、他の子も見習って欲しいもんだ」
寮長「寺井さんたちは寝てると思いますけど、ちゃんと起きてる人もいますよ?」
真緒「お、誰?」
寮長「それは」
奏「あ! いたいた!」
真緒「北上か」
寮長「はい」
奏「セーンセ! おはよ」
真緒「ああ……朝から元気だな」
奏「センセが元気ないんだし。もっとビシッとしてくんなきゃアタシ困るよ」
寮長「ふふ」
真緒「あ、ああ、分かった」
奏「うん」
真緒「なぁ北上」
奏「なに?」
真緒「珍しく早起きしてるようだけど、何かあるのか?」
奏「アタシ?」
真緒「うん」
奏「フヒヒ」
真緒「な、なんだ……」
寮長「それでは先生、北上さん。私は失礼しますね」
真緒「あ、寮長!」
奏「………」
真緒「行っちゃった……」
奏「………」
真緒「どした北上?」
奏「寮長を引きとめようとした」
真緒「え?」
奏「センセはさ、寮長みたいなのが良いの?」
真緒「なんの話だ?」
奏「だから、タイプって言うかさ……」
真緒「タイプと言われても……寮長は生徒だしそんな風に考えた事もないかな」
奏「そなんだ!」
真緒「莉緒たちも妙な誤解してるみたいだけど、寮長は生徒だしな」
奏「アタシも生徒だし」
真緒「そうだな」
奏「………」
真緒「……どした?」
奏「生徒じゃなくて、メンバーだよね。へへ」
真緒(メンバー? まさか……)
奏「あのさ、今日早起きしたのはさ」
真緒「あー北上、途中で悪いんだけどぼくはちょっと呼ばれててさ、
だからすぐに行かないと」
奏「………」
真緒「ま、また後で聞くからさ」
奏「誰に呼ばれてるの?」
真緒「り、莉緒にちょっと……」
奏「また嘘つくし」
真緒「いや、嘘じゃ」
奏「しょうがないセンセだね。でもアタシがちゃーんとロックな人にしてあげるからね」
真緒「あ、あの」
奏「センセはギターだからね?」
真緒「え?」
奏「当然アタシはボーカルだし」
真緒「ちょ、ちょっと待て北上」
奏「何を待つの? ダメだよセンセ! 今日から伝説の始まりなんだよ?」
真緒「ぼくはライブには出ないというか……だいたい二人じゃ無理だろ?」
奏「大丈夫だよ。もうベースとドラムの人は雇ってるし」
真緒「や、雇ってる?」
奏「そだよ」
真緒(まさか……このお嬢様)
真緒「その……友達か何かだよな?」
奏「え? 違うし」
真緒「じゃあ……」
奏「セミプロの人だよ」
真緒「セミプロ……」
奏「ライブだけの助っ人だよ。またアタシたちのバンドに相応しい人を探さなきゃねセンセ♪」
アタシたちって……
すっかりバンドの一員なわけね……
奏「何暗い顔してるのセンセ? 大丈夫だよ、楽譜はちゃんと渡してるし」
真緒「楽譜を渡してる?」
奏「そ、しっかり練習してきてくれるよ」
真緒「……ライブまで一緒に練習するんじゃないのか?」
奏「え? しないよ? 本番前にチョロっと合わせるだけだし」
真緒「チョロっとって……本当にそれで大丈夫なのか?」
奏「へへ、ぶっつけ本番なんてロックでしょ?」
真緒「いやロックというか……」
そんなぶっつけでライブが出来る程甘くはない。
例え相手がセミプロだとしても、ぼくと北上は素人なんだから……
奏「む。センセさっきからテンション低いし!
アタシとバンド出来るんだよ? 嬉しくないの??」
真緒「いや、あのな北上」
奏「やっぱりセンセはロックが嫌いなんだ!」
真緒「お、落ち着けって、好きだからロックは」
奏「じゃ、どうしてそんなに乗り気じゃないの?」
本音を言うと、ライブに出たくないわけじゃない。
ただ、仕事で手一杯で練習に時間を割けない事や、
ぼく自身近頃ギターを弾いていない事がある。
真緒「なぁ北上、寮祭に出るのは決定してるのか?」
奏「うん、学園長がすんなりオッケくれたし」
真緒(ばあちゃん……)
真緒「北上はボーカルで、ぼくはギターなんだよな?」
奏「そうだよ」
真緒(しょうがない……)
真緒「あのな北上……お前がそこまでライブに出たいならぼくも参加しても良いよ」
奏「さすがセンセ! 見込みあるよ!」
真緒「でもロックなのが良いんだろ? 伝説になるようなさ」
奏「そだよ」
真緒「じゃあさ、人を雇ったりせずに地道にメンバーを募集したりさ
ライブも路上とか小さなライブハウスとかから始めるべきなんじゃないか?」
奏「………」
真緒「やると決めた以上はさ、ぼくもちゃんと練習したいしさ」
奏「………」
真緒「それに寮祭って凄い大きい祭りなんだろ?
いきなりそんな大舞台は心配……じゃなくてどうかなって思ったんだ」
奏「………」
真緒「あ、いや……意気込みは素晴らしいと思うけど、ロックってこうもっとあれだよな」
奏「せ、センセの言ってる事は間違いだし!!」
真緒「お、怒るなって」
奏「センセは全然分かってないし!!」
真緒「お、怒るなって」
奏「怒ってないし!」
真緒(やれやれ……)
奏「つまりセンセはさ」
真緒「うん」
奏「アタシがロックじゃないって言いたいんでしょ!」
真緒「い、いや、別にそうとは」
奏「未来の大スターに対して言う言葉じゃないよ!
センセのばか!!」
真緒「いや、あのな……」
奏「ほんっとしょうがないセンセだね。アタシが一から教えなきゃだめみたいだし」
真緒「教えるって何を?」
奏「センセ座って。今からアタシがロックとはなんなのかをたっぷり教えてあげるから」
真緒「た、たっぷりってお前……」
奏「良い? ロックっていうのはね──」
真緒「………」
最終更新:2010年07月13日 21:56