B-8/3-2

シナリオ 北上ルート 8月3日(金曜日)・その2

 お見通しですわ


奏「はいセンセ」

真緒「ああ、ありがとう」

寮へ戻るやいなや、さっそくのプレゼントだ。

奏「アタシは後で来るから」

真緒「ん?」

奏「なに驚いてるの?」

真緒「後で来るってどういう事?」

奏「え? アタシも一緒に見るし」

真緒「ぼくの部屋で?」

奏「そだよ。今から見るんだよ」

真緒「え、一緒に見ないと駄目なのか?」

奏「ダメ! アタシ後で来るからね。
あ、センセは先に見てていいよ。
アタシはもう何回も見てるし」

真緒「………」

奏「それじゃセンセ! 後で来るからね!」

真緒「……やれやれ」


早く終わったんなら、貯まってる仕事を片付けようかと思ったんだけどな。
後で北上も来るなら仕事は出来そうにないな。

仕方ない、せっかくだしDVDを見てみるか。
TVをつけディスクを入れる。

派手なバンドのロゴが画面いっぱいに出た後、どこかのライブ会場が映しだされた。

野外ステージの周りから盛大に花火があがり、オープニング曲の前奏が流れ始める。

このバンドはたしか北上が好きなバンドだったな。
一度は解散の危機までいったのに、不死鳥の如く復活して今も第一線を走ってるバンドだ。
特にボーカルとギターはバンドの中心人物で……

真緒「……かっこいいな」

いつのまにか食い入るように映像を見ていた。
数え切れない程のライブをこなしてるだろうバンド。
客の煽り方やステージでの立ち振る舞いなんかも自然でスムーズだ。

真緒「………」

……北上はたぶんこういうライブにしたいんだろうな。
でも理想ばかりで実力が伴わない彼女では無理だ。

「マジ、アタシの歌で腐った世の中を変えたいし」

「アタシはスターだから、練習なんて軽くでいいし」

真緒「………」

映像の様に客がノッテくれると考えているのなら、
現実とのズレに戸惑い傷つくのは北上自身だと思う。

やっぱりまだ早い。
まだ時間がある、何とかなるかと思っていたけど……
練習も疎かにしてる様な状況では止める方が教師として正しいんじゃないだろうか?

真緒「ああ、北上か、開いてるぞ」

せえら「失礼しますわ」

真緒「あれ、八十記か、どうしたんだ?」

八十記は何も答えず、TVの映像をジッと見ている。

真緒「おい、八十記?」

せえら「カナちゃんのお気に入りDVDですわね。ワタクシも見せられましたわ」

真緒「八十記もか」

せえら「カナちゃんときましたら、ずいぶんセンコーに心を開いていますわね」

真緒「そ、そうかな?」

せえら「ええ、毎日ニコニコと楽しそうですわ」

真緒「ま、嫌われるよりは嬉しいよな」

せえら「ライブ出来る出来るとそれはもう」

真緒「ライブなぁ……」

せえら「なんですのその暗い顔は?」

真緒「な、なにが?」

せえら「いつにもまして暗い顔をしてますわよ」

真緒「……いや」

せえら「……なにかあったんじゃにゃーですの?」

北上と仲の良い八十記に打ち明けてみようか。
今のままじゃライブは無理で、辞退する様に言おうか迷ってる、と。


真緒「………」

せえら「黙ってたんじゃ分からにゃーですわ」

……駄目だな。
言わない方が良い。

真緒「……何でもないよ。何もない」

せえら「嘘くさいですわね」

真緒「嘘じゃないよ」

せえら「元ヘッドたるワタクシの口の堅さは世間では有名ですわよ?」

真緒「だから何もないって」

せえら「ワタクシに打ち明けてみるのですわ」

真緒「いや、だから……」

せえら「さあ、センコー」

真緒(……なんかしつこいな)

真緒(……悩んでるってバレてるのかな)

せえら「ワタクシにもすべてお見通しですわよ」

真緒(う……顔に出てたかな)

真緒(でも北上に直接言う前に八十記に言う訳には……)

真緒(それにまだ言うって決めた訳じゃないしさ……)

せえら「なかなか頑固ですわね。その態度はリッパですわよセンコー」

真緒「……何もないんだって」

せえら「でも相手が悪かったですわね。メイド長!」

真緒「え?」


 Back    Next




タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2010年07月13日 22:39
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。