シナリオ 北上ルート 8月8日(水曜日)・その2
仲なおりの第一歩
敷地内を歩きながら考える。
北上は本当に来て欲しいと思ってるんだろうか。
寮長の言う事を信じないわけじゃないけど、
あれだけ怒って無視してたから、嫌われたのは間違いないわけで……
練習場が近づくにつれ不安になるな。
ま、行ってみれば分かる事だ。
よし、行くぞ!
背中を見せ、歌っている北上。
ぼくが来た事に気がついていないようだ。
真緒「……やぁ」
声をかけ、北上がふり返る。
奏「え?」
真緒「今日は来たよ」
奏「……あ」
真緒「あれ」
奏「……ふ、ふん」
一瞬嬉しそうな顔していたような……
気のせいだろうか。
真緒「昨日来なくてごめんな」
奏「……来なくていいし」
真緒(うーん)
真緒「昨日はちょっと色々考えて、それで来なかったんだ」
奏「………」
真緒「だけどそれじゃ駄目だなって思って」
奏「………」
真緒「………」
北上は何も言わず、練習を始めだした。
真緒「とにかく、練習を見てるから」
椅子代わりの石に腰を下ろし、ぼくは練習を見守る事にした。
相変らず無視の姿勢だけど、こないだよりは良くなったと思う。
多少の会話……と呼んでいいのか分からないけど、そういうのもあったしさ。
北上は歌いながら横目でぼくを見てくる。
歌い終わった後も相変らずだんまりだけど、逃げたりする様子は見られない。
ぼくがここにいる事は受け入れてくれてるのかな。
寮長の言った通り……なんだろうか。
とはいえまだ怒ってて、口を利いてくれないしな。
うーん……
せえら「………」
せえら「まったくカナちゃんときましたら」
せえら「センコーもセンコーですわよ……まったく」
せえら「なんですのあの二人は……はたから見れば痴話喧嘩ですわよ!」
メイド長「………」
せえら「メイド長もそう思いませんこと!」
メイド長「お嬢様……まさか妬いておられるのですか……?」
せえら「……ば、ばか言うんじゃにゃーですわ!!」
メイド長「そうですか……安心致しました」
せえら「ワタクシはカナちゃんを心配してるだけですわ」
メイド長「お嬢様」
せえら「なんですの?」
メイド長「あの二人を見てると、昔を思い出しませんか」
せえら「なんのことですの?」
メイド長「お嬢様と北上さんも、よくああして練習していましたよね」
せえら「そういえば、そうでしたわね。でも見てましたの? 秘密の練習でしたのに」
メイド長「はい、一生懸命にピアニカを拭いてるお嬢様と北上さんは微笑ましいものでした。特にお嬢様のあの可愛らしさときたら……」
せえら「ちょ、ちょっとメイド長! 変なこと言うんじゃにゃーですわ!」
せえら「ワタクシが可愛いなどと、馬鹿げたこと言うんじゃにゃーです!」
メイド長「お嬢様、私は……」
せえら「分かればよろしくてよ?」
メイド長「またビデオを見たくなってまいりました……」
せえら「な!? と、撮ってたんですの!?」
メイド長「もちろんです。お嬢様の成長の記録はすべて、と言っても過言ではありません」
せえら「な、ななな」
メイド長「特に私のお気に入りは、お嬢様が私とお昼寝している映像ですね。何度見ても飽きませんし、幸せな気持ちになれるんです」
せえら「そ、そんなもの早く消せですわ!」
メイド長「まだまだ色々ありますよお嬢様。よろしければ今度二人で懐かしみませんか?」
せえら「ぜ、絶対に嫌ですわ!!」
メイド長「そ、そんな……」
最終更新:2010年07月13日 23:00