シナリオ 7月23日(月曜日)・そのA11
遠い記憶
仕事を切り上げ、莉緒と共に寮へと戻る。[pcm]
あらかじめ電話で、寮長にだけおおまかな経緯を話していたから、
戻るとすぐに着替え等をしてくれた。[pcm]
そしてまだ意識の戻らない莉緒をベッドに寝かせて、
ぼくと寮長は部屋の外に出た。[pcm]
真緒「………」[pcm]
寮長「先生……いったいどうしたんです?」[pcm]
真緒「……寮長にだけは話しておいた方がいいか」[pcm]
寮長「先生が言いたくないのであれば……」[pcm]
真緒「いや、話すよ。実はさっき──」[pcm]
さっき起こった出来事をすべて寮長に話す。[pcm]
ずぶ濡れで意識の無い莉緒をおぶって来た理由を
手伝ってくれた寮長に言わない訳にもいかない。[pcm]
それにこの子なら、きっと助けてくれると思ったからだ。[pcm]
寮長「そんなことが……」[pcm]
真緒「ああ……正直ぼくも混乱してるんだ」[pcm]
寮長「………」[pcm]
真緒「どうすればいいのか……」[pcm]
寮長「………」[pcm]
寮長「とにかく今は、寺井さんを休ませましょう」[pcm]
真緒「あ、ああ」[pcm]
寮長「また目を覚まして、落ち着いてから話をすれば良いと思います」[pcm]
真緒「そうだな」[pcm]
寮長「今日は先生も休んで下さい。寺井さんは私が見ていますから」[pcm]
真緒「でも、ぼくが」[pcm]
寮長「いえ、今日は止めた方がいいです」[pcm]
寮長「寺井さんも先生も気まずいでしょうし。少し時間を空けた方が良いかと思います」[pcm]
真緒「そうだな……」[pcm]
寮長の言うとおりだ。[lr]
目を覚ました莉緒にぼくは何て話しかける?[lr]
莉緒はぼくに何を話してくれる?[pcm]
口を開けば憎まれ口の莉緒とあんな事があった後で何を話せばいいのか分からない。[pcm]
きっと莉緒だって分からないだろう。[pcm]
真緒「……分かった、今日は任せるよ」[pcm]
寮長「ええ、ご心配なく」[pcm]
真緒「ありがとう寮長」[pcm]
寮長「先生もゆっくり休んで下さい」[pcm]
真緒「ああ、それじゃ」[pcm]
寮長「はい」[pcm]
真緒「はぁ……」[pcm]
たった半日の間に、とんでもない事が起こった。[pcm]
昨日の今頃は、莉緒も普通にしていたのにどうしてこんな事に……[pcm]
色々考えている間に部屋の前まで来ていたが、
中に入らずぼくは屋上へとむかった。[pcm]
誰もいない夜の屋上。[lr]
この天気では北上も練習してないようだ。[pcm]
もう雨は上がっているものの、つい数時間前の雨の酷さを物語るように
屋上には水溜りが出来ていた。[pcm]
真緒「莉緒……」[pcm]
星の見えない曇った夜空を見上げ莉緒の事を考える。[pcm]
一つ一つの事を、ゆっくりと。[pcm]
『どこにもいかないで』[lr]
と莉緒は確かに言った。[pcm]
その言葉に引っかかってるけど、ぼくは寮にいる。[l]
どこにも行くはずがない。[pcm]
だから、莉緒がどうしてあんな事を言ったのかが分からない。[pcm]
そもそも、ぼくに関係がある事なのかそうじゃないのかも……[pcm]
真緒「………」[pcm]
いつしかぼくは、色褪せた記憶を思い返そうとしていた……[pcm]
最終更新:2010年07月11日 22:42