A-7/30-3

シナリオ 寺井ルート 7月30日(月曜日)・その3

 水嫌い


真緒「莉緒」[pcm]

莉緒「………」[pcm]

ベッドで寝ていると思っていた莉緒が立っている。[pcm]
もう平気なんだろうか。[pcm]

真緒「寝てなくて大丈夫なのか?」[pcm]

莉緒「寝てばっかりの方が疲れるのよ」[pcm]

真緒「まぁ、そうだな」[pcm]

久しぶりの莉緒は以前に比べるとずっと元気そうだ。[pcm]
意識もちゃんとしてるし、こうして立って話してるわけで。[pcm]

真緒「疲れたら言ってくれ。ぼくはすぐに出るから」[pcm]

莉緒「大丈夫よ」[pcm]

真緒「あ、ああ」[pcm]

莉緒「………」[pcm]

真緒「………」[pcm]

何から喋ったらいいのか分からない。[lr]
それは莉緒も同じなのか、お互い黙ったままだった。[pcm]

莉緒「………」[pcm]

真緒「………」[pcm]

莉緒「真緒くん」[pcm]

真緒「ん?」[pcm]

莉緒「私を看病してくれてたのね。寮長から聞いたわ」[pcm]

真緒「ああ」[pcm]

莉緒「魔王に看病だなんて情けない話だけど、一応お礼は言わなくちゃね」[pcm]

真緒「お礼なんて別に」[pcm]

莉緒「……ありがと」[pcm]

真緒「いや…そんな、ぼくはただ心配で」[pcm]

莉緒「それにずっと……」[pcm]

真緒「え?」[pcm]

莉緒「ううん、なんでもない」[pcm]

莉緒「とにかくお礼は言ったからね」[pcm]

真緒「ああ、良くなってなによりだ」[pcm]

莉緒「……うん」[pcm]

真緒「………」[pcm]

お互いあの日の事を避けてる。[pcm]
だから、ぼくと莉緒の間はどこか不自然でギクシャクしてて……[pcm]

真緒(切り出そう、あの時の事を)[pcm]

莉緒「………」[pcm]

真緒「なぁ莉緒」[pcm]

莉緒「なに?」[pcm]

真緒「終業式の時の事なんだけどさ」[pcm]

莉緒「!!」[pcm]

真緒「ほら、あれ以来話も出来なかったから」[pcm]

莉緒「あ、うん、あの時はごめんね。
あたし、もうあの時に熱出てたと思うの」[pcm]

真緒「そうなのか?」[pcm]

莉緒「……うん、だからよく覚えてないんだけど、
真緒くんに変なこと言ってたかもしれないわね」[pcm]

真緒「………」[pcm]

莉緒「熱のせいね。よく覚えてないし」[pcm]

真緒「そうか……」[pcm]

莉緒「覚えてないけど、一応謝るわ。ごめんね真緒くん」[pcm]

真緒「いや」[pcm]

……無かった事にしたいのか?[lr]
それとも本当に熱を出していて、それで覚えてないんだろうか。[pcm]

……聞けない。[pcm]

莉緒「ほんっと、恥ずかしいわ。熱で倒れるだなんて」[pcm]

真緒「……ああ、心配したよ」[pcm]

莉緒「魔王に心配なんて」[pcm]

真緒「雨にうたれたのが原因だってのは寮長からも聞いてるよな?」[pcm]

莉緒「ええ」[pcm]

真緒「あの時さ」[pcm]

莉緒「……なに」[pcm]

真緒「……いや、いつも傘を持ち歩いてるのに
どうしてずぶ濡れになってたんだって思って」[pcm]

莉緒「それは……」[pcm]

真緒「言いたくないなら言わなくてもいいけど、莉緒お前……」[pcm]

プール、水泳大会、そして終業式。[pcm]
これまでの事を思い出すと、やはり莉緒は水が嫌いなんじゃないかと思う。[pcm]
濡れる事を極端に嫌がる子どものように。[pcm]

だからあの日、ずぶ濡れの莉緒は取り乱したんじゃないかと、そう思う。[pcm]

莉緒「なによ……言いなさいよ」[pcm]

真緒「水が、怖いのか?」[pcm]

莉緒「………」[pcm]

真緒「違うならいいんだ。ただぼくがそう思っただけで」[pcm]

莉緒「……怖いわ」[pcm]

真緒(やっぱりそうか)[pcm]

莉緒「もうあの頃よりずっと大人になったのに、それでも怖いの」[pcm]

真緒「あの頃?」[pcm]

莉緒「自分でも情けないって思ってるんだ」[pcm]

莉緒「でも……どうしてもダメみたい」[pcm]

真緒「莉緒」[pcm]

莉緒「テラリオン唯一の弱点を敵に話しちゃった。
なんでかしらね……」[pcm]

真緒「……安心しろ、誰にも言わないから」[pcm]

莉緒「………」[pcm]

真緒「ぼくと莉緒だけの秘密だ」[pcm]

莉緒「……ありがと」[pcm]

真緒「………」[pcm]

莉緒「………」[pcm]

莉緒「……あたしちょっと疲れちゃったから寝るね」[pcm]

真緒「あ、ああ」[pcm]

莉緒「お休み真緒くん」[pcm]

真緒「ああ、お休み莉緒」[pcm]




真緒「………」[pcm]

水が怖い、か。[lr]
でも、その原因はなんだろう。[pcm]

それに結局、あの時の事を話せなかった。[lr]
莉緒は覚えていないと言っていたけど……[pcm]

いや、今日はもう十分だ。[lr]
四日ぶりに会えて話も出来たんだから。[lr]
これからまた話をして、ゆっくり聞けばいい。[pcm]

そして水嫌いも、出来る事なら克服させてあげたい。[pcm]
そうぼくは思った。[pcm]


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最終更新:2010年07月12日 01:20
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