シナリオ 寺井ルート 8月3日(金曜日)・その2
隙間風
さて、誰もいない食堂にいても仕方ない。[pcm]
今からどうしようか。[pcm]
部屋で仕事をするべきか、それとも……[pcm]
少し考えてぼくも食堂を後にした。[pcm]
真緒「莉緒? いる?」[pcm]
何度か呼びかけてみるも、返答は無かった。[pcm]
部屋に戻ってきていないんだろう。[pcm]
真緒「仕方ない、仕事するかな」[pcm]
莉緒「あ……」[pcm]
真緒「お、莉緒」[pcm]
莉緒「なに?」[pcm]
真緒「いや、特に用事はないけど」[pcm]
莉緒「そ」[pcm]
そっけなく答えると莉緒は
逃げるように部屋に入ろうとする。[pcm]
真緒「ちょっと待って」[pcm]
莉緒「……なに?」[pcm]
真緒「少しさ、話でもしないか?」[pcm]
莉緒「……なんの?」[pcm]
真緒「いや、他愛もない話をさ」[pcm]
莉緒「なんで?」[pcm]
真緒「なんでって……ぼくが話したいから」[pcm]
莉緒「………」[pcm]
真緒「最近ゆっくり話してないだろ? だからさ」[pcm]
莉緒「………」[pcm]
莉緒「私は嫌よ。魔王とゆっくりなにを話すのよ」[pcm]
真緒「莉緒、ぼくは」[pcm]
莉緒「あたし疲れてるから」[pcm]
そして莉緒は部屋に入っていってしまった。[pcm]
相変らず避けられてる。[lr]
まだもう少し時間が必要なのかもしれない。[pcm]
だけどいったい何時まで待てばいいんだろう。[lr]
一日も早くこのギクシャクした関係を元に戻したい。[pcm]
だからもう、あの時の事は触れない方がいいんだろうか……[pcm]
寮長「………」[pcm]
部屋に戻る気が起きず、フラフラと歩いてここへ来た。[pcm]
このまま外に出て気分を変えよう。[pcm]
芽衣子「真緒様」[pcm]
真緒「……ん、岸岡か、どうした?」[pcm]
芽衣子「どこへ行かれるのです?」[pcm]
真緒「いや、ちょっと散歩でもしようかなって」[pcm]
芽衣子「芽衣子もご一緒致します」[pcm]
真緒(……一人になりたい気分だけど)[pcm]
真緒(近頃莉緒ばっかりで、岸岡たちとも話せてないしな)[pcm]
真緒「ああ、一緒に行こうか」[pcm]
芽衣子「はい」[pcm]
真緒「良い天気だな~」[pcm]
蝉の声と風の音。[lr]
寮からほんの少し離れた場所なのに、もう自然のざわめきしか聞こえない。[pcm]
ほんと、のどかなで良い所だ。[pcm]
芽衣子「………」[pcm]
隣を歩く岸岡は無口だった。[lr]
そうお喋りな子でもないから、いつもの事と言えばいつもの事だけど。[pcm]
真緒「やっぱり外は気持ち良いな」[pcm]
芽衣子「あ、はい」[pcm]
真緒「暑いけど今日は風もあるし」[pcm]
芽衣子「……はい」[pcm]
真緒「なんだ? 元気ないな」[pcm]
芽衣子「真緒様」[pcm]
真緒「ん?」[pcm]
芽衣子「寺井莉緒のことなのですが……」[pcm]
真緒「莉緒がどうかした?」[pcm]
芽衣子「その……あの小娘の風邪の原因はおそらく……」[pcm]
芽衣子「私との決闘のせいだと……」[pcm]
真緒「え、決闘してたのか」[pcm]
芽衣子「はい……私の魔剣があの小娘の傘に当たってしまい……」[pcm]
真緒「そうか」[pcm]
芽衣子「……申し訳ありません」[pcm]
真緒「岸岡のせいじゃないよ、だから謝る事ないって」[pcm]
芽衣子「ですが魔王様はあの小娘を……」[pcm]
真緒「ん?」[pcm]
芽衣子「いえ……」[pcm]
真緒「もしかして……近頃元気が無かったのはそのせい?」[pcm]
芽衣子「……はい」[pcm]
真緒「そっか、友達だもんな」[pcm]
芽衣子「と、友達ではありません! 憎むべき相手です!」[pcm]
真緒「分かってる分かってる。でもほんと気にしなくていいからさ、いつも通りの岸岡でいてくれ」[pcm]
芽衣子「……ありがたきお言葉」[pcm]
岸岡との会話らしい会話はそれ以上特になく、
二人でのんびりと散歩を続ける。[pcm]
いや、オルトロスもいたな。[pcm]
真緒「しかし熱いな、大丈夫か岸岡?」[pcm]
芽衣子「はい、まるで魔界の灼熱地帯にいるかのようです」[pcm]
真緒「はは……」[pcm]
日差しも高くなって、暑さが一層ましてくる。[pcm]
──夏も、いよいよ本番だ。[pcm]
最終更新:2010年07月12日 01:27