シナリオ 寮長ルート 7月16日(月曜日)・その4
寮長の過去
寮長「………」[plc]
夕暮れの帰り道。[plc]
ここをまたこうして通るなんて、あの頃には思わなかった。[plc]
こうしてまた学園の制服を着て通るなんてね。[plc]
でも、それももうすぐ……[plc]
寮長「……綺麗」[plc]
山々に連なる雲とそこから真横に広がる夕焼けの空。[plc]
広く大きく、ただ見ているだけで心が癒される。[plc]
広大な空を見てると、私の悩みなんてちっぽけなものなのかも……[plc]
きっとそうだ、そうなんだって思い込むとほんの少しだけ楽になれた。[plc]
寮長「………」[plc]
私は皆と違う。[lr]
皆には無い能力がある。[lr]
その力のせいで私は、誰にも心を開けない。[plc]
きっと最初はそうじゃなかったのに、いつしか私は諦めたんだ。[plc]
真実の私を知った人はみな私を恐れ、避ける。[plc]
──それは仕方の無い事。[plc]
だから私は力を隠し、ごく平凡な生徒として過ごしてきたのに……[plc]
なんで先生にあんな事を言ったんだろう。[plc]
結局言えなかったのは、怖かったから。[lr]
先生が本当の私を知ったらたぶん……[lr]
だから言えない。[plc]
でもこのまま先生といると、いつか私は抑えきれなくなる。[plc]
すべてを打ち明けたくなる。[lr]
嫌われるかもしれないのに。[lr]
そんなのは嫌だ。[lr]
だから、だから私は……[plc]
いつのまにかうつむいていた私は顔を上げ、空を見上げた。[plc]
そして、遠い昔を思い出していた──[plc]
「ねぇお父さん、最近家によくいるけどお仕事は?」[plc]
父「あ、ああ、ちょっとな」[plc]
「ちょっと?」[plc]
父「それより、どこか遊びに行くか?」[plc]
「え……うん、いいよ」[plc]
「お父さん、今日はお仕事?」[plc]
父「ん、ああ」[plc]
「ふふ、スーツ姿久しぶり」[plc]
父「ああ……」[plc]
「お父さん?」[plc]
父「ああ、それじゃ行ってくる」[plc]
「いってらっしゃいお父さん」[plc]
「おはよー」[plc]
女の子「あ、きた」[plc]
「え? きたってなに?」[plc]
女の子「ねぇ、今朝なんだけど、あなたのお父さんが公園のブランコに乗ってるの見たわよ」[plc]
「え?」[plc]
女の子「スーツ姿だから目だってて……声かけようとも思ったんだけど……」[plc]
「お父さんが? なんで?」[plc]
女の子「あたしが聞きたいわよ」[plc]
「だってお父さんは仕事で、今日は仕事だって」[plc]
女の子「社長さんなのにね……どうしたんだろうね」[plc]
「………」[plc]
最終更新:2010年07月15日 22:38