シナリオ 寮長ルート 7月25日(水曜日)・その9
凶器…狂気
寮長「どこにもいない……」[plc]
寮長「………」[plc]
寮長「物音や声は聞こえたのに」[plc]
寮長「あれ? あそこに誰か……」[plc]
屋上の扉に視線をむける。[lr]
そこにはいたのは……北上だ。[plc]
逃げ場のない屋上。[plc]
だから、ゆっくりとこっちへくる北上を見つめる事しかできない。[plc]
蛇に睨まれた蛙のように、身動きひとつ取れない。[plc]
奏「センセ、探したよぉ」[plc]
真緒「……く、来るな」[plc]
奏「なかなかロックだったよ、あの突き飛ばしはさ」[plc]
真緒「え……見て」[plc]
奏「へへ、やるじゃん」[plc]
真緒「違う…ぼくは…落とすつもりなんて……」[plc]
奏「違う! センセは殺すつもりだった!
アタシは分かるよ? だって……」[plc]
真緒「な、なんだよ……」[plc]
奏「アタシも同じだしさぁ」[plc]
真緒「ぼ、ぼくを殺すのか?」[plc]
北上の右手には包丁が、八十記を刺したあの包丁がまだ握られている。[plc]
奏「まさか。センセを殺すなんてしないし」[plc]
真緒「じゃ、じゃあそれは何だよ!」[plc]
奏「センセが熱を上げてるあの女を殺るつもりだったんだけど?」[plc]
真緒「あの女……寮長の事か」[plc]
奏「やっぱりそなんだ。あんな女のどこがいいのか分からないなぁ」[plc]
真緒「………」[plc]
奏「でもセンセの気持ちは動きそうにないしさ、アタシ止めた」[plc]
真緒「止めた?」[plc]
奏「そう、止めたの」[plc]
北上はぼくの手に包丁を押し込めた。[plc]
真緒「お、おい?」[plc]
奏「だから、センセがアタシを殺して?」[plc]
真緒「な、何を……」[plc]
奏「そうしたらアタシはセンセの心の中で一生生き続けられる気がるし」[plc]
奏「センセのことだから、良心の呵責で絶対にあの女と幸せな生活は送れないだろうし」[plc]
奏「それにさ、愛する人に殺されるって……なかなかロックじゃん?」[plc]
真緒「や、止めろ……」[plc]
体が……動かない。[plc]
この包丁を手放したいのに……手が動かせない。[plc]
奏「好きだよセンセ。ずっと、ず~と」[plc]
そう言って北上は……包丁めがけて倒れ込んだ。[plc]
鈍い音と嫌な感触。[lr]
包丁から流れる赤い血が、ぼくの手と腕を伝う。[plc]
真緒「う…そ……だろ?」[plc]
奏「………」[plc]
崩れ落ちた北上。[lr]
真っ赤に染まった包丁。[plc]
ぼくは…ぼくは……[lr]
人を…人をころ…ころ……[plc]
真緒「うわぁああああああ」[plc]
嘘だ! これは夢だ! 夢に決まってる![plc]
目が覚めたら寮にいて、そしていつもの生活が始まるに決まってる![plc]
そう、そうだ……そうなんだ。[lr]
絶対そうに決まってる。[lr]
夢だ、これは夢だ、夢だ夢だ……ははは。[plc]
だから気にする事ない。何にも気にする事はないんだ。[plc]
人を殺そうがどうしようが、夢だから罪は無いんだ。[plc]
はは、なんだぁ……最初から気づけば良かったじゃないかぁ。[plc]
へっ…これは夢……夢なんだって。[plc]
だいたいさぁ、ぼくが人を殺せるわけないんだよな。[plc]
ははは、笑える。ぼくが人殺し?[lr]
……ぷっ、あははははははは。[plc]
最終更新:2010年07月15日 23:52