シナリオ 寮長ルート 7月25日(水曜日)・その8
人殺し
屋上へ着いたが、そこには誰もいなかった。[plc]
だが扉の南京錠は壊されており、ここに誰か来ていたのは間違いない。[plc]
真緒「誰もいないな」[plc]
芽衣子「……はい」[plc]
屋上をグルリと見回してみるがやはり誰もいない。[plc]
障害物のない見通しのよい屋上。[lr]
誰かが隠れているような場所もなかった。[plc]
真緒「他の所へ行こう」[plc]
芽衣子「真緒様、この屋上にはフェンスがないのです」[plc]
真緒「ああ、無いな。だから鍵をしてたんだろ」[plc]
真緒「そんなことより行くぞ」[plc]
芽衣子「そんなことじゃないのです。いるのです」[plc]
真緒「いる? どこに?」[plc]
言葉の代わりに、岸岡はゆっくりとその場所を指差す。[plc]
そこは誰もいない空間だった。[plc]
真緒「誰もいないぞ?」[plc]
芽衣子「案内致します。さ、行きましょう」[plc]
岸岡に腕を取られ引っ張られる。[plc]
反射的にそれを拒むものの、阿部高の時と同じく異常な力で太刀打ちできなかった。[plc]
真緒「お、おい、どこへ行くんだ? 誰もいないぞ」[plc]
芽衣子「………」[plc]
ズルズルと引きずられ屋上の隅へ連れていかれる。[plc]
立ち止まった岸岡は、膝程の一段高い場所へ上がると、
それに続けと強引にぼくを引っ張った。[plc]
真緒「お、おい、岸岡」[plc]
芽衣子「むこうです」[plc]
もう一度指を指す。[plc]
誰もいない、いれるはずもない空中を──[plc]
真緒「お、お前……まさか」[plc]
芽衣子「さぁ真緒様、逝きましょう。
ご心配なさらずに……芽衣子も一緒にお供致しますから」[plc]
虚ろな目をした岸岡……[lr]
こいつは、ぼくの知ってる岸岡じゃない。[plc]
真緒「ふ、ふざけるな! 誰が行くか!」[plc]
芽衣子「ふざけてなどいません」[plc]
真緒「この偽者め! いいから離せ!!」[plc]
芽衣子「偽者? 私は偽者ではありませんよ」[plc]
芽衣子「その証拠にほら」[plc]
片手の爪で、ぼくを抑えつけている自分の腕に傷をつけた。[plc]
見る見る赤い血が流れ出す。[plc]
それを見た岸岡は……ほらねと言わんばかりの笑顔をぼくにむけた。[plc]
芽衣子「阿部高さんの偽者は血なんて流してなかったですよね?」[plc]
芽衣子「痛いですけど、真緒様に信じて貰えるならこれくらい」[plc]
真緒「く……狂ってる」[plc]
芽衣子「芽衣子は真緒様に狂わされたのです。なにを今さら仰るのです?」[plc]
真緒「ふざけるな! 離せ! 離せよ!!」[plc]
芽衣子「真緒様……暴れないで下さいまし」[plc]
真緒「離せ!! 離せって言ってるだろ!!」[plc]
……殺される。[lr]
ぼくは、死にたくない![plc]
抵抗しなきゃここでぼくは死ぬ![lr]
寮長に会う事もできず死んでしまう![plc]
駄々をこねる子どものように、ぼくは必死で暴れた。[plc]
ぼくを掴んでいるこの腕さえ離れれば逃げられ──[plc]
腕が当たったのか足で蹴ったのか頭でぶつかったのか
ぼくを掴んでいた手が離れたと思った直後、
岸岡の体は宙に浮いていた。[plc]
長い、長い時間──[plc]
そしてようやく、岸岡を突き飛ばしたんだと気づく。[plc]
芽衣子「……芽衣子は先にいってまいります」[plc]
そして岸岡は……下に落ちていった。[lr]
数秒後に下から聞こえる激しくも生々しい落下音。[plc]
ぼくは下を覗きこむ事ができなかった。[lr]
この高さだ……間違いなく命はない。[plc]
真緒「ぼくが……ぼくが突き落としたのか」[plc]
そんなつもりは無かった。[lr]
たまたまなんだ。[plc]
これは事故で不可抗力なんだ。[lr]
ぼくのせいじゃない。[plc]
そう思いこもうとしても、岸岡が落ちたという事実は曲げられない。[plc]
どんな理屈を並べても、ぼくがこの手で生徒を殺したんだ……[plc]
……怖い。[lr]
自分も、この場所も、何もかもが怖い。[plc]
もう、もう嫌だ。[lr]
止めてくれ…止めてくれ……[plc]
真緒(誰……?)[plc]
最終更新:2010年07月15日 23:50