D-7/29-4

シナリオ 岸岡ルート 7月29日(金曜日)・その4

 ぼくにとって岸岡は…


真緒「ん、これからどうしようか」

芽衣子「そうですね……」

真緒「散歩でもして帰る?」

芽衣子「はい」

真緒「それじゃ適当に」

芽衣子「真緒様」

真緒「ん?」

芽衣子「あの……」

真緒「どうした」

芽衣子「ありがとうございます」

真緒「どうしたの?」

芽衣子「私を連れてきてくれて」

真緒「あ、ああ、それか。いや、ほっとけなかったしね」

芽衣子「………」

真緒(おかげでスッカリ元に戻ったみたいだしな)

芽衣子「芽衣子は幸せ者です……」

真緒「……そっか」

真緒「まぁ、今日みたいに遊べるのはもうないかもしれないけど」

芽衣子「え!?」

真緒「明日はめいっぱい研修だし、明後日は帰らなきゃいけないしね」

芽衣子「あ……そのことですか。これから先の話だとばかり……」

真緒「心配しなくても寮に戻ってからまた遊べるよ。
それにま、出かける事は無理だけど夜は部屋で遊べるしさ」

芽衣子「夜……」

真緒「うん」

芽衣子「………」

真緒「それじゃ行こっか、喉も渇いたし」

芽衣子「は、はい!」




真緒「ふぅ」

のんびりと田舎の夏を満喫した一日だった。
よく晴れて暑かったけど、風を遮る高いビル等も無い場所だ。
都会の蒸し暑さとは違う自然な暑さと風は、まさに夏って感じで気分が良かった。

そして今も、窓から入ってくる夜風に当たりながら夏の夜を満喫している。

芽衣子「真緒様」

真緒「ん」

芽衣子「し、静かですね」

真緒「ああ、だがそれが良いな」

芽衣子「は、い……」

岸岡も風を受けながら気持ち良さそうにしている。
昨日今日ここに来てからというもの、あの退行も治まりいつもの岸岡に戻った。
まだ不安な部分はあるものの、もう大丈夫だろうと思う。

いつもの岸岡に戻ってくれて本当に良かった。

真緒(待て……)

真緒(いつもの……岸岡だと)

芽衣子「ま、真緒様……あの」

真緒「あ、何?」

芽衣子「お、お風呂はどうなさるのでしょう?」

真緒「え、入るよ」

芽衣子「よ、よろしければ、この部屋に付いている家族風呂なるものに芽衣子とご一緒していただきたく……」

真緒「………」

そ、そうだった……
いつもの岸岡に戻ったのなら当然こうなるわけで……
それ自体は嬉しいんだけど、こういう事を言い出すなら困ったもの……というほど
嫌じゃなくむしろ嬉し……って、ぼくはなんて事を考えてるんだ!

しかしやばい。
夏という季節、二人きりの旅館、積極的な岸岡。
この攻撃に耐えられるだろうか……

芽衣子「真緒様?」

真緒「え? あ、ああ」

芽衣子「よろしいのですね? それでは私は準備を」

真緒「ちょ、ちょっと待て!」

芽衣子「え?」

真緒「部屋の露天風呂は使っちゃ駄目だ」

芽衣子「では、混浴場ですか?」

真緒「そ、そうじゃなくて、一緒に入るのが駄目なの」

芽衣子「なぜです?」

真緒「なぜも何も……一緒に入るのが駄目だからだよ」

芽衣子「理由になっておりません。真緒様は嫌なのですか?」

真緒「い、嫌じゃないけど……分かるだろ?」

芽衣子「芽衣子とは入りたくないのですか?」

真緒「岸岡が嫌とかそういう事じゃないんだってば」

芽衣子「入って下さい」

真緒「ぐ、妙に強気だな」

芽衣子「……申し訳ありません、ですが私はどうしても入りたいのです」

真緒「……そう言ってくれて嬉しいけど、駄目なんだよ」

芽衣子「………」

真緒「ほら、分かるだろ? 岸岡は生徒でぼくは教師だからさ、
こんな事がばれたらぼくは教師を辞めなくちゃいけなくなるんだ」

芽衣子「………」

真緒「せっかくここまでみんなと仲良くなったんだし、辞めたくないんだ」

芽衣子「………」

真緒「分かってくれたか?」

芽衣子「………」

真緒(……納得してない、な)

芽衣子「誰にもばれたりしません」

真緒「いや、ばれるばれないじゃなくて、そういう事自体が駄目で」

芽衣子「ばれなければ真緒様が教師を辞めることもありません。
そして私は、真緒様の不利益になるようなことは言いません」

真緒「ぐ……」

芽衣子「さ、真緒様」

真緒「……違うんだ、そうじゃないんだ岸岡」

芽衣子「真緒様?」

真緒「さっき言った事も本当だけど、その……」

芽衣子「………」

真緒「一緒に入ったり何かしたら、絶対に変な事をしてしまうと思う」

芽衣子「………」

真緒「岸岡はその、可愛いからな、抑える自信が無いんだ。
こうしている今ですらちょっと意識してるのに、そんな事したらさ……」

芽衣子「私は……むしろ望んでいます」

真緒「駄目だ、もし何かしてしまったらもう岸岡の側にいてやれない」

芽衣子「え……」

真緒「例え二人が黙ってたとしても、そのうち苦しくなってきて、きっと誰かに言ってると思う。そうしたら教師という立場も終わりだ」

芽衣子「なぜ、苦しくなるのです?」

真緒「それは、生徒に手を出したっていう良心の呵責でだ」

芽衣子「……真緒様にとって私は生徒なのですか?」

真緒「あ、ああ」

芽衣子「唯の生徒なのですか?」

真緒「………」

友達以上恋人未満を置き換えて言うならば、
岸岡は生徒以上、恋人未満だろうな。

いや、恋人というよりも、ほっとけない家族のような存在かもしれない。

真緒「み、みんなには内緒にしといて欲しい」

芽衣子「はい」

真緒「岸岡は他の生徒より特別に思ってる。だからこの研修にも一緒に連れてきた」

芽衣子「真緒様……」

真緒「でもぼくは教師になったばかりで、しかも臨時教師だからな、この研修や色々な事で認められて、正式な教師になりたいんだ」

真緒「そうしたら、ずっとって訳にはいかないだろうけど、卒業するまではいられるだろうしさ」

芽衣子「………」

真緒「という訳だけど……何か恥ずかしい事言っちゃったな」

芽衣子「……恥ずかしいことなどなに一つありません」

真緒「そうかな」

芽衣子「……芽衣子は嬉しいのです。真緒様がそこまで考えていてくれてたなんて」

真緒「あ、ああ」

芽衣子「芽衣子だけが、芽衣子だけが特別な存在……」

真緒「………」

芽衣子「あぁ、真緒様……お慕いしております」

真緒「……ま、まぁ、分かってくれたなら嬉しいよ」

芽衣子「はい、もう芽衣子は無茶なことは言いません」

真緒「ありがと、それじゃ大浴場に入っておいでよ。
お風呂行くんでしょ?」

芽衣子「はい、真緒様のために綺麗に洗って参ります」

真緒「は、はは……」

どういう風に岸岡がぼくの言葉を受け取ったのかは分からない。
でも、危機は回避出来たから良しとしよう。

今日と明日を乗り越えればこの研修も終わり。
きっと、何事もなく終わるはずだ。


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最終更新:2010年07月17日 00:47
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