シナリオ 7月27日(金曜日)・その1
帰ってきたお嬢様
朝が来た。
来たというより待っていた。
八十記の事が気がかりでろくに眠れず、夜明け前から寝たのか寝てないのか
よく分からないまま今に至る。
とりあえず、気分を変えるためにも食堂へ行こう。
食堂には誰もいなかった。
壁の時刻を見ると七時を少し回った所。
夏休みだから、こんな時間には降りてこないか。
せえら「あら? センコーじゃありませんこと?」
真緒「八十記?」
ぼくの寝不足の原因、八十記だ。
真緒「お、おまえ……いつ帰ってきたんだ?
いや、昨日はどこに行ってたんだ?」
せえら「帰るなりうるさいですわね。ええ、さっき帰りましたわ。
だいたい昨日は連絡したじゃにゃーですか」
真緒「だから、どこに行ってたんだ?」
せえら「……まったく、教えたというのに口の聞き方が全然ですわね。
犬の方がもっと賢いですわよ?」
真緒「言えないような所にいたのか?」
せえら「いいえ」
真緒「じゃあ言うんだ。昨日みんな心配してたんだぞ」
せえら「心配? このワタクシにそんな心配など必要にゃーです」
真緒「な」
せえら「どこにいたのかも答える必要はにゃーですけど、
まぁそれじゃセンコーも可愛そうですし、一言だけ」
真緒「なんだ?」
せえら「ええ、オールしてましたの」
真緒「オール……? オールナイトの事か?」
せえら「ええ」
真緒「夜通しで遊んでいた……と?」
よくよく八十記を見ると、朝だというのにどこかくたびれている。
髪も少し乱れているのもきっと、夜通しで遊んでいたせいだろう。
真緒「……どこで遊んでいたんだ? 街か?」
せえら「ワタクシは今から寝ますから」
真緒「おい八十記」
せえら「では失礼」
真緒「待て!」
真緒「ぬぅ……」
真緒「あいつ……」
いったいどこで何をしていたんだ……
まさか、変な遊びをしているんじゃないだろうな。
本当に悪い奴らと変な遊びを……
八十記に限ってそんな事はないと信じたいけど、
何も言わないから不安になる。
真緒「あ、メイド長」
どこからともなく姿を見せるメイド長。
八十記が言わないなら、この人に聞けばいい。
昨日いったい何をしていたのかを──
真緒「メイド長、八十記の事なんですが」
メイド長「はい」
真緒「最近のあいつ何か変なんですよ。昨日だってどこかで遊んでたみたいで」
メイド長「………」
真緒「それでメイド長に聞きたいんですけど、昨日八十記はどこに?
というより、最近のあいつはどうしちゃったんですか?」
メイド長「それは」
真緒「メイド長なら分かりますよね!」
メイド長「私はお嬢様の事ならどんな事でも存じ上げております。
ですが……」
真緒「何です?」
メイド長「お嬢様より命じられてますので、先生といえど言えません」
真緒「命じられてる? 八十記に口止めされてるんですか?
っていうか、メイド長は知ってるんですよね?」
メイド長「知っていますが言えません。以上です」
真緒「そ、そんな事いわずに!」
メイド長「申し訳ありません。では私も失礼致します……」
真緒「あ……」
メイド長から聞き出すという目論みは失敗に終わった。
やはり、昨日はメイド長も一緒にいたんだろう。
八十記と同じく、やや疲れた顔のメイド長だった。
まぁ、メイド長が一緒なら安心ではあるけれど……
いったいどこで何をしているのやら……
最終更新:2010年07月19日 22:35