シナリオ 8月4日(土曜日)・その3
不良なんて
※廊下
そして、作戦実行直前。
部屋の前で最後の打ち合わせも終わり、
八十記を呼ぶ段階に入った。
真緒「……では」
真緒「………」
真緒「よし……」
※コンコン
せえら「はい、誰ですの?」
真緒「八十記、ぼくだ」
せえら「あ……」
真緒「少し話があるんだ、出てきてくれないか?」
せえら「………」
真緒(やっぱり、駄目か)
せえら「……話?」
真緒「お、そうだ。話があるんだ!」
せえら「……そこでして下さらない?
ワタクシ疲れてますの」
真緒「………」
メイド長を見る。
駄目だと言う様に首を横に振っている。
真緒「いや、出てきてくれ」
せえら「またですの? もう嫌ですわ」
真緒「昨日はすまなかった、謝るよ」
せえら「………」
真緒「だから、出てきてくれ! 頼む!」
せえら「ま、まぁ、そこまで仰るなら良いですけど」
※八
真緒「ありがとう」
せえら「べ、別に礼を言われる程のことじゃにゃーです」
せえら「それで、話とはなんですの?」
真緒「ああ、あのさ……」
きつく言ってくれと言われても、
どういう感じで言えばいいんだろう。
教師として言うのなら今までと変わりはないし、
じゃあどうするかと言えば分からない。
※選択肢 恋人みたいに言う 父親として言う ~みたいな
……そうだ。
もし八十記が恋人だと、そう設定してみたらどうだろう。
そう、恋人が悪い事ばかりをして──
本当は良い子なんだけど、突然そんな事をして──
恋人のぼくはそれに対して凄く怒る──
うん、いけるな。
八十記が恋人ってのはちと無理があるけど、
上手く演じてみよう。
せえら「だから、なんですの?」
真緒「八十記、不良は止めろ」
;;せえらと呼ぶ
せえら「な、なにを突然言ってますの? 馬鹿なんじゃにゃーです?」
真緒「ぼくの言う事を聞いてくれないのか」
せえら「だ、だから、なにを突然」
真緒「突然じゃない、ずっと思ってた」
せえら「ずっと……」
真緒「ああ、ずっとだ」
真緒「どうすればお前が元に戻ってきてくれるか、ずっと考えてた」
せえら「え……」
真緒「朝起きて、寝る時まで──
いや、夢の中でもだ!」
せえら「……ちょ、ちょっとセンコー、様子が変ですわよ?
頭でも打ったんじゃにゃーです?」
真緒「何も変じゃない」
せえら「目、目が怖いですわよ」
真緒「真剣に言ってるからだ」
せえら「………」
真緒
「もう一度言うぞ。不良は止めろ、ぼくは不良は嫌いだ」
せえら「え……」
真緒「乱暴でガサツな女の子なんて嫌だ。
ぼくは可愛い女の子……いや、可愛いせえらが好きだ」
せえら「や、ヤンキーは嫌い?」
真緒「ああ、大嫌いだ」
せえら「ほ、本心で言ってますの??」
真緒「本心だ」
せえら「で、でも……」
真緒「不良は止めろ! 止めないなら別れるぞ!」
せえら「わ、別れる? わ、別れるってどういうことですの??」
真緒(しまった……乗りすぎた)
せえら「ま、まさか教師を……
ここを出て行く……」
真緒「あ、いや、そうじゃないけど」
せえら「ど、どうして突然そんなことを言うんですの!
これまではワタクシを受け入れてたじゃありませんか!」
真緒「いや、これはその」
せえら「どうして出て行くなんて言うんですの!
ワタクシが嫌いなんですか!」
真緒「き、嫌いとかそういう問題じゃ……」
せえら「不良が嫌いだと仰ったじゃありませんか!」
真緒(ぬぅ……言うのが辛いけど、ここは心を鬼にして)
真緒「そう、そうだよ。今の八十記は大嫌いだ!」
せえら「!!」
真緒(……うう、嫌な役だ)
せえら「わ、ワタクシがきら、嫌い……
だから出て行くと言うんですの……」
真緒「……あ、ああ」
せえら「……う、う」
真緒「お、おい八十記?」
そして目から零れる涙。
ポロポロと声もあげずに泣いている。
まさか、ここまでショックを受けるなんて思わなかった。
どうせいつものように返してきて、それで失敗に終わると思っていたのに……
真緒「な、泣くなって」
せえら「う、ぅわあああん」
真緒「あ……」
泣き叫びながら部屋へと戻る八十記。
ガチャガチャと鍵をかける音が聞こえる。
真緒「お、おい! 待ってくれ!」
ノブを回すがもう開かない。
そしてドア越しに聞こえる八十記の泣き声。
作戦は……成功なんだろうか?
何だろうこの気持ちは──胸が痛い。
最終更新:2010年08月13日 18:46