シナリオ 7月3日(火曜日)・その10
星空とギター
夕食が終わって少ししてから、ぼくはギターを持って屋上へと足をむけた。[plc]
音を調節して部屋で弾いても良かったんだけど、
やっぱり開放感のある野外の方がいい。[plc]
それに……北上。[plc]
夕食時に謝ろうと試みるも莉緒たちがそれを阻むわ、
当の北上も聞く耳すら持ってくれない。[plc]
この静かな夜の屋上で、話ができればいいけれど……[plc]
辺りを見回してみる。[lr]
──北上はいない。[plc]
ま、そのうち来るだろう。[plc]
真緒「………」[plc]
ふと空を見上げる。[lr]
目を奪われる程、満点の星空だ。[plc]
こんな綺麗な夜には……[plc]
真緒「うん、これだな」[plc]
メロディが美しい曲を選び弾いていく。[lr]
少しロマンチストかもしれない。[plc]
でもこの星空と静かな夜に、激しい曲は不釣合いだよな。[plc]
星空を見上げながら指を動かしていく。[plc]
からっぽの頭の中で淡々と。[lr]
奏でるメロディーと風の音だけが辺りを包んでいく。[plc]
奏「ロックじゃないし」[plc]
背後からの声に手が止まる。[lr]
──北上だ。[plc]
真緒「お、来たか北上」[plc]
奏「アタシはいつも来てるし」[plc]
真緒「そ、そうだな」[plc]
奏「………」[plc]
真緒「あのさ、昼間の事なんだけどさ……[lr]
その、悪かったな」[plc]
奏「………」[plc]
真緒「いや、ほら別に北上と八十記が嫌ってわけじゃなくてさ」[plc]
奏「………」[plc]
真緒「なんていうかな、時間もなかったしさ」[plc]
奏「む」[plc]
謝ってはみたものの、機嫌は治りそうにないな。
ここは少し時間を置いた方がいいかもしれない。[plc]
真緒「とにかく、悪かった。それを言いたかったんだ」[plc]
奏「……ん」[plc]
真緒「じゃ、先生は戻るからな」[plc]
奏「そんなことじゃないし」[plc]
真緒「え? それで怒ってるんじゃないの?」[plc]
奏「もうそれで怒ってないし」[plc]
真緒「じゃ、じゃあ、何で怒ってるんだ?」[plc]
奏「センセ、今なに弾いてたの?」[plc]
真緒「これは……オリジナルの曲かな。[lr]
クラシックっぽくて綺麗な曲だっただろ?」[plc]
奏「エレキギターなのに……」[plc]
真緒「いや、まぁそうなんだけどさ。[lr]
ほら、星も綺麗だし、なんとなくね」[plc]
奏「ロックじゃないし」[plc]
真緒「そう怒るなって」[plc]
奏「………」[plc]
昼間の事は怒ってない。[lr]
とすると、今の話から推測するに──[plc]
ぼくがクラシックぽいのを弾いてたから怒ってるんだろう。[plc]
奏「センセ、夕食の前に寮長に怒られたって聞いたよ」[plc]
真緒「あ、うん。音量上げて弾いててさ、ちょっと怒られちゃったよ」[plc]
奏「アタシ、それ聞いてない」[plc]
真緒「まぁ、寮長しか聞いてないんじゃないかな」[plc]
奏「寮長だけ……」[plc]
真緒「それがどうかした?」[plc]
奏「夕食の後で寮長から聞いたんだ。[lr]それで──」[plc]
真緒「それで?」[plc]
奏「ここで弾いてると思うからまた聞ける。[lr]
って寮長が言ったのに……」[plc]
真緒「………」[plc]
奏「クラシック弾いてるし……」[plc]
お怒りの理由はやはり曲のせいか。[plc]
やれやれ、仕方ない。[plc]
真緒「北上、ロックなのを弾こうか?」[plc]
奏「無理に弾かなくてもいい。[lr]
センセ、ロック嫌いっぽいし……」[plc]
しょんぼりつぶやくと、立ち去ろうとする。[plc]
まったく、ここのお嬢様ときたら……[plc]
真緒「ちょっと待て北上!」[plc]
奏「………」[plc]
真緒「先生はロックが大好きだぞ。学生バンド組んでた位だしな」[plc]
奏「また、嘘?」[plc]
真緒「う、嘘じゃないってば!」[plc]
奏「嘘くさいし」[plc]
真緒「嘘じゃないってば。いい? そこで聞いてて」[plc]
奏「……うん」[plc]
最終更新:2010年07月18日 00:47