第十四話 罠
囮になれ。
それは死ね、と言ってるのとほとんど同じだ。
このような敵に無謀にも突っ込んで死なないはずがない。
だけど───────
なんとなく、死なないと口裂けは思った。
VIPに向かってゆっくり歩いて行く。それをVIPが気付かない訳がない。
(`・ω・´)「ほう、お前は俺に真っ向勝負を挑むつもりだな?いいぞ・・・名前を聞こう!」
('A`)「名前か・・・お前に言ってやる義理もないな。果たし合うには必要ないだろう?」
(`・ω・´)「ふむ、その心構え、いいぞ。それならb・・・」
VIPが固まる。というのも、口裂けがだいぶ近付いて来たからだ。
そう、口裂けは、現代ではありえない、とうの昔に廃れきったものを持っているからだ。
(;`・ω・´)「魔・・眼・・・?」
口裂けの目が妖しく紅く光る。魔力を灯した目。
('A`)「ああ、でもな・・・これは魔眼とか言われるくらい大層なもんじゃねーよ。」
口裂けが吐き捨てる。
現代には魔眼はほとんど存在しない。昔はたくさんいた、と言われる。
というか、魔術師たちは自分の目をどれだけ立派なものに出来るか競いあっていたらしい。
その効果はさまざまなもので・・・麻痺や幻術を見せるもの、催眠をかけるもの、相手を固まらせるものなどもあった。
だが口裂けの魔眼にはそんな大層な効果はない。
('A`)「俺の目は・・・単なる修行でどうにかなる洞察眼だ。千里眼的な能力も多少あるがな・・・」
(`・ω・´)「ほほう・・・その程度か・・・だが。」
ニヤリとVIPが笑う。とても騎士とは思えない、姑息な笑い。
(`・ω・´)「そんなやつと戦うのはさぞかし楽しいだろうなぁ・・・?」
それを聞いて背中に悪寒が走った。ああ、なんでこんな怪物と戦わなきゃならないんだ・・・と口裂けは思った。
少し前のこと、ウィンディア要塞前に行く最中のこと、VSVIP戦についての作戦を話していたとき。
自分は、口裂けとばよえーんに囮になれ、その間にリップルと私とみかんで罠を仕掛けると言った。
今の状況では罠は30%ほど完成である。だが内容は名無しのようなクナイなどではなく、魔術の罠だ。
そして、囮の状況。
正直ばよえーんは空気抵抗より役にたたなかった。
だが口裂けは・・・
*( ‘ ‘)*「まさか・・・口裂けが魔眼持ちだったなんて・・・」
暗闇の茂みの中、リップルたちと魔力をリンクさせながらそう言う。
今から行う魔術には三人がかりでも難しいほどの難易度、三人の意思と魔力が完全にリンクしないと発動すらしない。
ゆえに時間がかかる。口裂けには囮と言うよりかは足止めを頼む形になる。
*( ‘ ‘)*「少し・・・少しだけでいいから・・」
そう懇願しつつ口裂けとVIPに目をやる。
そして今、二つの影が切り結びあった。
恐ろしく速い攻撃。その速さゆえにほとんど不可視のレベルに達する。だが。
('A`)「フッ!」
キィンと、剣と剣の音。口裂けは上手く魔力でスピードを底上げし、全てを防ぎきっていた。
だがそう長くは持たない。
むしろVIPは遊んでいる。
(;'A`)「(ダメだ、こりゃいったん距離をとって・・・)」
迫り来る横一線になぎ払う剣を躱し、距離を取る。
しかしそれを追い掛ける用にすぐにVIPが距離を縮める。
そしてまた始まる剣戟。
(;'A`)「(クッ・・ラチがあかねぇ・・・)」
こんな相手に勝てるのか。
右の肩口を切られる。
一瞬のスキを突かれた。
もうそうなってしまえば終わりだ。体勢を崩す。
(;'A`)「・・・ッ!」
首を狙いに来る。肩を切られた瞬間にそう見えた。
今できる限りの魔力を切られた右腕に込め、全力で右から首を刈り取りに来る横切りを防がなければならない。
否、もう防いだ。
(`・ω・´)「んなッ・・?」
VIPの剣が弾かれる。こいつに一矢報いるなら今しかない。
囮になれとか、関係なく、この化け物に一泡吹かせてやりたい。
急いで体勢を立て直す。
魔力を込めた右腕はもうすぐ使えなくなる。だから今のうちに。
痛みをこらえてでも─────────!!
体を右腕が後ろになる形に思いっきりひねる。
肩口から血が出て、痛い。
それでも、死に物狂いでひねった体を思いっきり前に戻す。
(#'A`)「三龍旋!!」
ほぼ同時に放ち穿つ三点の突き。スピードはほぼ光速。
まだVIPの体勢は回復していない。
これなら・・・当たる!
そう、自分の目と頭が今は語っていた。
魔眼の能力は伊達じゃない。
その鋭い洞察眼で全ての動きを観察、そして考察。
今までの動きからすればVIPが今から魔力でスピードを底上げしたところで防げても三点のうち一発は当たる。
だが同時にその洞察眼は。
何かがおかしいことも訴えていた。
まず首をなぎ払いに来た時。
VIPの力量ならあんなにスキが出る大振りをしなくても首を落とせる。
そして今、VIPがあまりにも体勢を直す気配がないこと。
それを含めて考え出される結果。それは。
──────剣が何かにぶち当たる。固い・・・?
剣以外にもVIPには防御方法がある──────ということ?
剣がガラスのような防護壁を三枚、突き破る。
───────罠だった。スキをみせたことも。完璧にハマってしまった。
ガラスが割れる。その破片は細かく、鋭く。
ああ──────なにが洞察眼だよ、クソったれ。何の役にもたってない。
その細かく鋭い破片はまず右腕、ついで体に向かいそれを突き刺し、貫いていく。
くっそ、やっぱ化け物なんだな─────コイツ。逃げ帰りゃあ良かった。
さながら散弾のよう。だが急所は当たってない─────いや当てられてない?
こりゃあ足の先からてっぺんまで蜂の巣だな─────死んだわ。
ドタリ、と地に倒れる口裂け。針が体中に突き刺さったよう。
(`・ω・´)「ふふん、魔眼の持ち主とやらも本当に大したことないようだな。呆気ない。
切り合いも少し出来るくらいか。このようなものすら見抜けないとは・・・」
いや、それは違う。分かっていた。分かっていたけど───────
( A )「・がう・・」
(`・ω・´)「ん?」
息をするたびヒューヒューと鳴る。空気がとてつもない毒薬のようだ。でも────
どうせ死ぬなら、もうちょっと足止めしとかないとな。
('A`)「それは、違う。分かっていた。分かっていたんだ。だけどな・・・」
('A`)「てめぇみたいな強い奴に突っ込んで逝きたかったんだ。それだけだ。」
(`・ω・´)「フム、犬死にをしたいと・・・いやいや逆か。まぁ貴様のような立派なやつに俺は止めを刺せる。
これほど幸せなこともなかろう。名誉なことだ。」
ああ、俺やっぱり死んじゃうのか─────これだけで見逃してくんねぇかな、それならなんとか生き延びれるだろうな。
そう思いながら口裂けは腹を括った。
しかし死を覚悟した瞬間、この世のものとは思えない叫び声を聞いた。
それはきっと。
「口裂けええええええええええええええええええええ!!!!!」
って言っていたと思う。
*( ‘ ‘)*「もうすぐ・・・もうすぐよ・・!!」
口裂けがもうすぐ、というところでやられた。
だが、どういう訳か、闖入者が現れた。それはこちらを助けようという意思にある。
罠は90%ほど完成した。あとたった一分────。
それだけあればVIPに当てられる。
*( ‘ ‘)*「頑張れ・・・・イミフ!」
ウィンディア奪還に向けて、さらに罠の完成に集中した。
怒っていた。キレていた。恐れなど全くなかった。
口裂けが負けた相手も知っている。SOS団のVIP。恐ろしいまでの強者だ。
でもそんなことは全く考えもしなかった。
口裂けが死んだ。
口裂けが死んだ。
口裂けが死んだ。
口裂けが─────死んだ。
それだけで全理性を排除する理由に成りうるし、どさくさに紛れてウィンディアを無所属に奪還しようとしたこともみーんな全て忘れた。
ただ、ただ、涙を流し、無様であろうが、卑怯であろうが、相手が強すぎであろうが、VIPを倒す。
両腕を広げ、手の平に魔力を溜める。
そこにどす黒い槍状のものが出来─────それを力の限り放ち穿った。
( #´Д`)「ネクロマンサァァァァァーーーーー!!!!」
いつものものとは違う、鬼気迫るものに包まれた黒い槍。
VIPはもうすでにこちらに気付いている。放ち穿たれた槍はいとも簡単に弾かれる。
だがそれを見終わらないうちに次の槍を放つ。
槍を放つ。
放つ。
放つ。
放つ──────!
休む暇のない怒濤の攻撃。
魔力が尽きる、とか頭になかった。
ただ、悲しかった。
悲しくて、どうにでもしたくなった。
いわば自殺のようなもの。
槍はいつまでたっても、何回やってもVIPに掠りもしない。
彼に策など何もない。巫女に足止めを言い渡された訳でもない。
( #´Д`)「死ね・・死ね・・死んでくれ・・!!」
何本槍を撃ったのか分からない。槍を撃っていた時間は、永遠だったように思うし、一瞬だったようにも思う。
──────気付けば、槍など撃っていなかった。
(;´Д`)「あ・・・」
(`・ω・´)「ふう・・愛とは、なんとも愚かしいものだな。」
ガクリと膝をついて倒れこんだ。完全に終わった。今に自分は殺される。
魔力はもうスッカラカンだ。
(`・ω・´)「安心しろ。今に楽にしてやる。」
VIPがゆっくりと近付く。
今、終わりの時が近付いていた。
*( ‘ ‘)*「・・・」
魔術はもう出来上がった。
あとは息を合わせるだけ。
*( ‘ ‘)*「いくわよ・・・」
大魔術の発動。それだけのエネルギーが三分の一とはいえ両の手の平に集結している。
痛みとか感じるレベルではない。そのエネルギーは逃げ場を求めて手から逃げ出そうとする。
それを全力で押し止めているのだ。腕が内側から弾け飛びそうである。
*(;‘ ‘)*(;*゜ー゜)(;´∀`)「「「1、2、3ッ!」」」
3で茂みから飛び出す。全員がVIPに向かって両手を突き出す。
見ると、イミフがやられるところだった。
まずい、足止めなどしていない!
しかしVIPが自分達に気付いてなければ・・・
だがそんな思いも虚しく、それはVIPに見抜かれていた。
(`・ω・´)「来ると思ったぞ!巫女ォ!」
VIPが今まで以上のスピードで突っ込んでくる。
魔術の発動がそれに間に合わない。誤算だった。
気付けば巫女の目の前で剣が振るわれる。
*(;‘ ‘)*「クッ・・・!」
巫女は目を瞑って、魔術を発動させた。
ザシュ!と音が鳴り、生暖かい血が顔に飛ぶ。
正直、痛みはなかった。
そんなことよりも、両腕に溜まってはち切れそうなエネルギーを放てて、すっきりした、という感じしか残ってなかった。
恐る恐る目を開ける。そこには。
妖しく紫に発動した巨大な魔方陣と、
自分を身を呈して守る人影が。
自分は怪我は全くしていない。守ってくれたのは・・・。
ばよえーん「フフッ・・・最後に・・かっこ・・つけたく・・・なっちまった・・・」
左腕は途中から無くなり、右腕でVIPの剣を止めていた。
もう、助けられない。これじゃあ、絶対に死ぬ。
そう思っているとばよえーんの体が吹っ飛ぶ。
(#`・ω・´)「ケッ・・このクソが!巫女!これは・・・まさかとは思うが。」
VIPもこの魔方陣の正体に気付いたようだ。ここまでしないと発動出来ないほどのもの。
*( ‘ ‘)*「ええ。これは空間転移の魔方陣よ。あとはあなたに狙いを定めてどこかに飛ばすだけだわ。」
それを聞き、VIPの顔が青ざめる。
(;`・ω・´)「クソ・・・なんだよそれ。クッソォォォォ!!」
VIPが剣を振りかぶり、巫女に振り降ろす。
だが、途中で結界のようなものに阻まれ、吹き飛ばされる。
(;`・ω・´)「クッ・・・なんだよ。ありえないぞこんなこと!」
あれほど実力のあったVIP。だがここまですれば籠の中の鳥だ。
この魔方陣の中では術の行使者が全てを司る。ゆえに行使者に攻撃を通すことなど不可能。
*( ‘ ‘)*「フフン、VIP、こうしてしまえばあなたとて何も出来ないものね?滑稽だわ。」
(;`・ω・´)「待ってくれ巫女!話せば、きっと分かる!」
その言葉を鼻で笑う巫女。
*( ‘ ‘)*「馬鹿言わないでよ。ばよえーんや口裂けを殺して何もなしで済むと思ってるの?」
今までになく取り乱すVIP。騎士の面影はもうどこにもなく、ただの乞食だ。
(;`・ω・´)「魔眼持ちの奴は死んでない!今からならなんとかなるはずだ!」
*( ‘ ‘)*「あら、それは耳よりな情報をどうもありがとう。ついでにSOS団の守備状況とか教えてもらえるとありがたいな~?」
今のVIPからなら何かもっと役にたつ情報がもらえるかもしれない。
引き出せるものは全て引き出しておこう。
だが、VIPは巫女の魂胆が見えたのか、ハッと我に返り、再び騎士の顔になった。
(;`・ω・´)「それは無理だ。主に背くことなど出来ない。もうこれ以上喋らぬ。」
これ以上はやっぱり無理か・・・忠誠心は人一倍の騎士だ。
巫女はさっぱりと諦めた。
*( ‘ ‘)*「そう。じゃあ・・・」
右手をVIPに向ける。それを覚悟したのか真っ直ぐに見返すVIP。そして、
*( ‘ ‘)*「さようなら、ね。」
静かに最後の通告をした。
途端、空間が歪み、穴が開き、それがVIPを巻き込む。
景色がもとどおりになった時には、VIPはもういなかった。
第十四話 完
最終更新:2007年10月03日 16:23