第十五話 暗躍
空間転移。
それはこことは違う、どこか別の空間(場所)に移動する、いわばワープのようなものだ。
それがVIPにかけた魔術。
しかも強力な魔術でかけたため、VIPにある程度の解呪能力があったとしても避けることは不可能に等しい。
しかし、ただのテレポートを相手にかけるため強力な魔術に変えたのだ。
他の効果が起きても─────仕方がない。
訳の分からないところを飛ばされている。そもそもただのテレポートはこんなに痛みを伴うものだったか?
体が何かに溶かされていくような感覚。言葉では言い表せない痛み。
加えて、何故か目を開けても真っ暗だ。
いっそ楽に殺したほうがマシ────とはこのことだろう。
しかしそんなことよりも問題は空間転移が余りにも長すぎることだ。
所詮これもテレポートの一種、空間を歪めて一瞬で移動すること自体に変わりはない、はず・・・だ。
だが先ほどからずっと痛みが続き、体はフワフワしどこかを飛んでいるような感覚、周りを確認しようにも真っ暗だ。
こうなればもう痛みは痛みではない。暗闇は暗闇ではない。そう・・・思えてくる。
そうなれば廃人と化す。
拷問を受け続ければただ呼吸をするだけのボロ人形に成り下がる。人間は苦痛に耐えれるよう出来ていない。
VIPとて同じ。いくら超がつく達人と言えどもその前に一人の人間だ。
こんな状況に置かれて気が狂わない訳がない。
彼の目の色が変わっていく。
虚ろな、諦めを含んだ目。それを見せ、ゆっくりと瞼を閉じる。
この状況を諦めた───。
かつての英雄もこれで終わり────かと、思われた。
突然、手が現れ、VIPをむんずと掴み、思いっきり引き上げた。
(;`・ω・´)「んなッ!?」
急に引っ張られたVIPは戸惑い、受け身をとれず頭をしたたかに床に打ち付けた。
いや、受け身をとることを忘れていた。床などあるわけない、と思っていたからだ。
どうやら───よく分からないがあの地獄から抜け出せたらしい。痛みは消え、床も重力もちゃんとある。
そして閉じた瞼からは外が光に満ちた場所だというサインが見える。
助かった・・・助かった助かった助かったんだ!
歓喜に包まれゆっくりと───目を開ける。
そこには、生活感が溢れるただの部屋と、
二人の人物がいた。
どうやら助けてくれたのはこの人達らしい。礼を、とにかく礼を言わなければ。
すぐさま片膝をつき、二人を真っ直ぐ見て、
(`・ω・´)「SOS団のVIPと申す。助けてくれてこの度h────」
と言いかけて口をつぐむ。
いや、自分としたことが喜びで判断力を欠いている。なぜ、どんな理由でこの人たちが自分を助けたということになるのだ。
一人は直立し、両手を後ろに回し、こちらを真正面から見ている。
きっと厳格な性格なのだろう。信念がある目をしている。
そしてもう一人は椅子に座り、片膝を抱え、疑わしげな横目でこちらを見ている。
服は何故かパジャマというか、スウェットだ。
立っている方は普段着、という感じだ。ポロシャツにジーパン。
とりあえずこの人達に聞かねばなるまい。
(`・ω・´)「いや、俺を助けたのはあなたたちか?」
と。それに対しジーパンの男が、「愚問だ」と呟き答える。
(´<_`)「いかにも。君を引き上げたのは私たちだ。」
そう答えると、パジャマのほうが荒い口調でジーパンに言う。
(´_ゝ`)「おい、役に立たなさそうだぞ。こんなやつで上手くいくのか?」
(´<_`)「まぁまぁ。きっとそれなりに上手くいくだろう。成功例は彼のような強者に多い。661番もそうだったろう?」
(´_ゝ`)「あれは失敗だろ。性格がそのままだったじゃないか。ゆえに強い自我を・・」
そう言うパジャマをジーパンが「何度も聞いた」となだめる。
・・・話の流れが見えない。
自分は一体何の為に引き上げられたんだ?こいつらはここで何をしている?
そもそもここはどこだ?
そんな疑問で喜びは一瞬でどこかに飛んで行ってしまった。
そう思っているとジーパンがVIPに声をかける。
(´<_`)「驚かせてすまないね、VIP君。自己紹介がまだだったな。」
と言い彼は名前を名乗った。
(´<_`)「有為、と言う。ここの、名義上開発者となっている。」
と言い彼、有為は含み笑いをした。
そして彼はVIPに宣告する。
(´<_`)「さて、VIP君、死にたくなければ少しついてきて貰おう。なに、ちょっとした実験だよ。」
そして有為は無言で奥の部屋へ歩き出す。VIPは訳が分からずその場で固まっていた。
それに声をかける椅子に座る人物。
(´_ゝ`)「行った方がいいよ。多分今回は監視システムの実験だし。まぁ死ぬことはないと思うけど君はこちら側のスパイになる。」
(;`・ω・´)「な・・・」
(´_ゝ`)「早く行かないと本当に死ぬよ?」
(;`・ω・´)「・・・クッ!」
言い知れぬ悪寒を感じた。逆らえば自分は消される。そう感じた。
急いで有為とやらを追いかける。
奥の部屋は一面シルバーの長い廊下だった。その中間あたりにどうやらこの部屋がある。さて有為とやらは・・・
いた。
廊下の奥、上へ通じる階段の前でこちらを見ている。
黙ってそれについていく。
有為はこちらがついてくることを確認すると階段をのぼり始めた。VIPもそれに続いた。
あえて無言で。この施設についての詳細が全くわからないうえ、下手なことを聞けば殺されるような殺伐とした空気が流れていたからだ。
階段をのぼる。気味が悪いほどの暗さだ。
いったん踊り場に出ると、長机と科学者のような身なりをしたものが座っていた。
(´<_`)「そこで腕輪をつけろ」
有為に促され、長机に近寄り、科学者から『752番』と書かれた腕輪を付けられる。
なんとなく、だがとてもイヤな予感がした。
森の暗闇の中、それに溶け込むように錬金術師の家は建っていた。
質素な木の家。
怖い昔話に出て来る魔女が住んでる家をブーンは思い出した。
中にはさぞ意地悪そうな人がいるんだろなぁ・・・とおぼろげに考えていると、
(´・ω・`)「おーい!いるか!?」
と名無しがドンドンと扉を叩いた。
・・・返事はない。いや、微妙に夜遅いし(十一時四十五分ほどだ)、寝てるだけかもしれない。
だが、そんなこと構わず扉をドンドンと叩き続ける名無し。
(´・ω・`)「俺だ!名無しだ!」
と名無しが名乗ると、すこし間があってわずかな明かりが家の横に差し込む。
その場所的に部屋の電気を付けたのだろう。ついで錬金術師がドアから出て来る。
/,' 3「なんだ・・・お前か・・・」
そんな安堵の溜め息と共に出て来た。
ブーンの想像していた魔女のような容姿とは全く違う。
目は怯え、口振りには覇気がない。まるで人生の負け組のようだ。
だがズル賢そう、という点では魔女と似通ったところがある。
まぁとは言ってもリッチな錬金術師なんて似合わないよね、と思うブーン。
金などを練成するような抜け道を考えているくらいだ、ロクなやつはいないはず。
(´・ω・`)「なんだ・・・そんなに怯えて。また借金か?うひひ。」
うひひと呼ばれたその男は俯きつつぼそぼそと言う。
/;,' 3「・・・そうだ。またブームとかVIP先生に・・・」
(´・ω・`)「まぁそんなことはどうでもいい。魔女の粉を売って貰いに来た。」
/,' 3「魔女の粉・・・330でどうだ?」
(#´・ω・`)「高い。280。」
/,' 3「高いじゃねーよwww魔女の粉を練成するのは難しいんだ!400でもいいくらいだ」
(´・ω・`)「ガタガタぬかしてんじゃねーよぶち殺すぞ」
/,' 3「250でどうですか?フヒヒwww」
( ^ω^)「(心変わりHAEEEEEEEEEEEEEwwwwwww)」
その提案に全くためらいも見せず名無しは、
(´・ω・`)「買った。さすがうひひ!」
と言った。
とまぁそんなわけで格安で魔女の粉とやらを手に入れた。
名無しはブーンにそれを手渡した。とりにくがお茶を用意してくれ、いざ飲もうというその時、
『みっくみっくにしてやんよ~♪』
(´・ω・`)「おっと、携帯が」
と携帯の着信音が鳴り出す。
名無しが出る。
名無しは「ふむ」だとか「そうか」とか言いながら電話に応対する。
それを黙って見ながらブーンはなんとなく電話の内容が分かった。
きっとリップルさん達がウィンディアを制圧したという通知だ。
名無しは1分ほどで電話を切り、すぐにこう言った。
(´・ω・`)「今からウィンディアに向かう。幻想組が制圧したそうだ」
予感的中。当然だ。
ブーンは無言の中、心中で歓喜した。
(´・ω・`)「ブーン、早く粉を飲め。すぐに行くよ」
( ^ω^)「わかりましたお!」
ブーンはすぐに粉を口に含み、お茶で流し込んだ。ブーンは薬などは得意な方ではなかったが、今はそんなこと全く気にならなかった。
だが次の瞬間!!
そこには粉の副作用で苦しむブーンの姿が!
このままではブーンの命が危ない!
そこで名無しは彼をおぶって近くの街、ウィンディアに行くことにした。
ブーンの容体は刻一刻と悪くなっていく。
(´・ω・`)「あの時は、本当にブーン君を助けることしか考えてませんでした」
数分後、奔走のかいもあってウィンディアにたどり着く。
名無しはすぐさまウィンディアの知り合い、リップルの家に駆け込んだ。
(;´・ω・`)「開けてくれ!連れが大変なんだ!」
リップルはドアを開けるとぐったりしたブーンを見て驚き、すぐに中に入れ、処置を施した。
( *゜ー゜)「ブーン君はひどい状態だったわ。でも助かると信じて一生懸命治療したの」
─────数日後。
そこには元気に走り回るブーンの姿が!!
( ^ω^)「名無しさんとリップルさんには本当に感謝しています。もう変な粉なんて飲まないよ」
楽しそうにリップルさんと訓練に励むブーン君。相手を思いやる気持ちは奇跡を起こすのである。
(´・ω・`)「で、まぁ熱っぽくなったと」
(#^ω^)「なんですかおあれ!大袈裟に書きすぎですお!実際ぐったりもしてないしただ熱っぽくなってだるくなっただけですお!」
( *゜ー゜)「まぁまぁwww作者はここらへんでネタを入れたかったんだよ」
( ´∀`)「・・・」
ここはウィンディア要塞。
この要塞は城のような感じであり、今いる場所はお城のテラスのような場所だ。
死亡者はばよえーん。もう埋葬したらしい。
奥に引っ込んでいる重傷者は口裂けだけらしい。
口裂けは一週間ほど動けないらしい。
*( ‘ ‘)*「今まで前線だったフュリアにいた皆にもウィンディアに移動するよう言っておいたわ」
*( ‘ ‘)*「あとここからは少し様子を見る、ということでSOSと一時休戦にしたわ。この人数では厳しいもの。」
( ´∀`)「・・まぁ巫女様に任せますよ。」
要塞はも抜けのから、自分達以外誰もいない。
近くには取り付けられた砲台が悲しく佇んでいる。使われることは全くなかったのだろう。
不意に名無しが立ち上がる。
(´・ω・`)「では僕たちはこれで。」
それを聞きとりにくも荷物を持って立ち上がる。
( ・∀・)「さいなら~」
とりにくが名無しに触れると急に何かに引っ張られたように二人が縮み、そして消えた。
きっとテレポート、というやつだろう。
*( ‘ ‘)*「さて、私とみかんは今から来る仲間を向かえるわ。ブーン君とリップルさんはもう寝たら?」
( *゜ー゜)「そうね・・・お言葉に甘えさせていただくの」
(;^ω^)「僕もなんか熱っぽいし寝ますお・・・」
*( ‘ ‘)*「それじゃあ中の部屋に連れて行くわ。ついて来てね」
(;^ω^)「しんどいお・・・」
ブーンは巫女に用意された部屋に通された。もちろんリップルとは別部屋である。
( ^ω^)「さっさと寝るお・・・」
ブーンは服も着替えずにベッドに倒れこむやいなやすぐに眠ってしまった・・・。
第十五話 完
最終更新:2007年10月08日 17:05