第二十話 理由
( ^ω^)「おおおぉぉぉ!!」
アーチャーに突撃するブーン。槍をがむしゃらに突く。
だがそれは手に持った双剣によってあっさりと弾かれる。
やはり。
がむしゃらに突くだけではこの人には絶対に勝てない。
素早く槍を引っ込める。
すると、突きのお返しだと言わんばかりに上からの一閃。
相手は双剣。
こちらは槍。
しかも相手は熟練者だ。
ここで防ぐという選択肢は絶対に選べない。
もし防いだなら防御に向かない槍では双剣に負けるだろう。
ならば・・・!!
(=゜ω゜)「ム・・・!」
神風を使い、真後ろに飛び、躱す。
だが、真後ろに飛んだことなど今までにない。
不格好に足をもつれさせ、勢いよく尻餅を付け、こける。
しかし、当然その間も、武器になる槍は放さなかった。
痛烈に実感する。
これは実戦だ。
訓練ではないし、遊びなんかではない。
実戦。
命を奪い合う戦いだ。
自分はその自覚が足りなかったのではないか。
だからがむしゃらに突いたりした。
───信念が足りない。
尻をはたきながら立ち上がる。
───何に対する信念だ。
いや、執念も伴う。
───当然、自分が勝つと信じて揺るがない信念が足りない。
自分は勝つ。
勝つ。
勝つ。
負けないわけがない。
槍を構え直す。
敵は12mほど前に。
その手に持つ双剣は、似たような外見と白と黒の違ったデザインの剣。
どうやら二つで一つ、といったところだろう。
太刀幅は約50cmほど。
間合いは短い。だが・・・
そんなことはほとんど問題にならない。
相手はあの双剣が似合いすぎている。
( ^ω^)「(自分の体と同じように扱えるほどあの双剣を使いこんでいるお・・・)」
ブーンは直感でそう思った。
あんな熟練者に斬り合いは望むべくではない。
むしろ避けるべきだ。
ならばどうするべきか?
( ^ω^)「(飛び道具・・・それも強力な奴だお・・・)」
強力な飛び道具。
今のブーンには槍しかない。
しかもそれは1度だけ。
一度投げればお終いだ。
それで当てられるのか?
否。当てなければならない。
そのためには・・・
まず、動きをなんとかして止めなければならない。
(=゜ω゜)「来ないのならこちらから行く!」
アーチャーがこっちに向かって走り出す。
速い。神風はすでに発動可。
だが逃げはしない。
双剣の激しい攻撃を受けるとしても先ほどのように神風発動後こけるかもしれない。
そうなればまた双剣を受けることになる。
結局は同じことだ。
ならばここで迎え撃つ・・・!
アーチャーが素早い動きで迫って来る。
槍の利点と欠点は間合いにある。
槍の利点を活かせる間合いに・・・今ブーンはいる!
( ^ω^)「おおおらぁ!」
ヒュッ、っと向かってくるアーチャーの左胸を狙い勢いよく槍を突き出す。
狙いは的確、かつ完全に相手を倒そうとしたもの。
──────が。
(#=゜ω゜)「うおおおおおお!!!」
がぃん、と槍が勢いよくブーンの頭上まで弾かれ、体勢を崩す。
袈裟斬りを逆戻りする、左足から右肩への激しい剣の振り上げ。
あ・・・だめだ。
圧倒的なディスタンスを感じさせられる。
今、足には神風を発動させる為の魔力が詰まっている。
それを開放すれば完全に逃げられるだろう。
だが─────
それをしたところで永遠にこの戦いは終わらず、むしろ自分の負けが確定する。
・・・アーチャーがアーチャー自身の双剣の間合いにブーンを入れる。
だめだ───もう神風しか。
その時気付く。そう。
自分には今神風しか武器は使えない。
ならば───
一旦姿勢を低くする。その時に槍を地面に置く。
それと同時にアーチャーが双剣を振り降ろす。もうどっちの剣を振り降ろしたとかは考えていない。
そして───
振り降ろされる双剣に突っ込むように神風をジャンプと共に発動させる。
───だがその時、右足を僅かに先に発動させた。
左肩にずぶりと嫌な音がし、双剣が突き刺さる。だがもうその覚悟は出来ていた。
僅かな時間差で発動された神風は。
綺麗なサマーソルトキックを描く。
アーチャー自身の双剣の間合いは見事にサマーソルトキックの間合いと一致しておりイヤな音をさせてアーチャーを──どこに当たったのか分からないが──蹴りあげた。
蹴りあげたのは良いが、ブーンは後先を考えておらず、地面に一回転の後、うつぶせに激突。
(;^ω^)「いつ・・つ・・・」
生暖かいものが左肩から出ているのが分かる。
見なくても分かるほどに血がドクドクと出ている。
それは簡単にブーンの衣服を赤で染める。
やばい。思ったより深い。
だがそんなものは戦いが終わってからでも手当て出来る。
ブーンはすぐさま槍を手にし、立ち上がり、アーチャーの姿を探す。
その赤い騎士はすぐに見つかった。
地面に片膝を付き、顔に手をあてている。
手の間からはボタボタと血が漏れ出している。
顔を押さえている手───右手の剣がなくなっている。
多分自分に剣を突き刺した時どこかにやったのだろう。
そうなればブーンにも勝機がある。
すぐさま神風の発動。
アーチャーが立ち上がる。
ぐんぐんとアーチャーに近寄り、槍を突き出す。
都合のいいことに、アーチャーはこちらに右肩───剣を握ってない方を向けている。
勝ちを確信する。
なにせ、剣を持っていなければ───
ガィン。
(;^ω^)「な────」
槍がまたも勢いよく弾かれる。
そしてまた剣が振るわれる。
これに当たってはならない。
神風の発動を咄嗟にする。
ブーンはまたも勢いよく後ろに吹っ飛ぶ。
また転ぶ。───ああ、左肩から血がドクドクと。このままじゃヤバいかもわからん。
(;^ω^)「はぁはぁ・・・なん・・で・・・」
(#=゜ω゜)「俺を・・・舐めるな・・・!」
アーチャーの顔を見る。
どうやらキックは顎に当たっていたらしい。
鼻血が勢いよく出ており、口からも歯が折れ、血が出ている。顎もがたがただ。
その時、クラッと意識が朦朧になる。
ヤバい。血が出過ぎだ。
あと・・・もう少し・・・堪えて欲しい。
ブーンは目を瞑る。
体中を駆け巡る魔力を感じる。
それが残った時間を教えてくれる。
魔力は・・・残り少ない。
もう・・・終わりか・・?
その時、ドン、と吐き気に襲われる。
わけが分からず、その場に吐く。
ブーンは口を拭いながら立っているアーチャーを盗み見る。
・・・じっとこちらを見ているだけだ。
ブーンはもう一度自分の中を駆け巡る魔力を確かめる。
魔力は・・・自らの内でところ狭しとのたうち回り煮えたぎっている。
なんだ。
十分すぎるじゃないか。
その時、赤い騎士は感じとる。
感じ取ったそれが何かは分からない。
特に相対する敵───ブーンに変わった点はみられない。
だが長い経験から来る言い様のない予感。何かが来る予感。
あの左肩の深い傷・・・もうくたばってもいいくらいだ。
俺自身とブーンの実力差。どう考えても圧倒的。
だが思ったよりもブーンは臆病ではなく、状況判断が上手い。
あの蹴りといい・・・顎がバラバラだろうな、こりゃあ。
さて、あの馬鹿はまだ向かってくる。
状況判断が上手いとかいったがこりゃあ撤回だな。
普通はここで逃げる。どう考えたって俺はあんな愚図には負けないからな。
まったく・・・
俺は困ったように頭を掻く。
リップルも厄介な野郎を育てやがった。
今なら何でも出来そうな気がした。
そう───アーチャーに勝つ事も。
もうアーチャーに勝つ方法とかも考えなくてもいいような気がする。
ただ、槍を投げるだなんて馬鹿なことせずにアーチャーに向かって槍を突くだけで何とかなるような気がした。
我ながら気味が悪い。
今まであれだけやって無駄だったのに。
神風を発動させる。アーチャーもそれが試合再開の合図とばかりに双剣を構える。
まずはこちらから一突き。
いともたやすく弾く。
体勢は崩れない。
怯まずにもう一突き。
これは避けられる。
今度こそはと一突き。
また弾かれる。
まだまだと一突き。
弾く。
諦めないと一突き。
避けられる。
何故・・・アーチャーは攻撃してこない?
ブーンは突きを止めずに考える。
ブーンは機械的にアーチャーを狙い槍を突き出す。
全く腕は疲れない限界にならない。
だが───ブーンはそんなことに気付かなかった。
そんな異常な事に気付かないほど槍に全神経を集中していた。
その突きは・・・あまりにも高速。
アーチャーはその場から逃げ出せずにいた。
逃げればわけのわからん高速移動でとどめを刺されるだろう。
何にしても。
(;=゜ω゜)「(何なんだこの高速の突きは!さっきとは全然違う・・!!)」
おかしい。
笑えて来るほどだ。
なんなんだこのクソ野郎は。
油断しちまったなぁ・・・
ここまで状況が悪くなるとは・・・
────ほらな、見てみろ。
やられちまった───。
ずぶり、と槍が脇腹に突き刺さる。
あっけなく、負けた───。
特に相手が工夫を凝らしたわけでもない。
理由はいつでも単純だ。
俺より相手の方が強かったんだ。
それは思ったより深く突き刺さった。
だがもう一突き。
今度は腹部に突き刺さる。
ここまですれば・・・治療すれば何とかなるが今はとりあえずもう向かって来ないだろう。
あれだけ強かった赤い騎士は地面にあおむけに倒れこむ。
(;^ω^)「ハァ・・・ハァ・・・」
勝った。
何事にも変えがたく尊く絶対的な物を手に入れた。
倒した。
初めて話しかけてくれてきた人を。師匠を紹介してくれた人を。
(= ω )「ブーン君・・・強くなったんだな・・・」
(=゜ω゜)「俺の負けだ。とどめを・・・刺しなよ。」
アーチャーはずっと青い空を見ている。
腹部は血で濡れ始めている。
( ^ω^)「それは・・・しませんお」
(=゜ω゜)「何故だ」
アーチャーは空を見上げたままそう言う。
ブーンは背を向けて立ち去る。
だが背中越しにアーチャーに言う。
( ^ω^)「また・・・戦争以外で会ったら酒を飲みましょうお。」
( ^ω^)「ただ・・・それだけですお。それだけ・・・」
全てを言葉には出来ない。
アーチャーに届いた言葉は不十分であった。
理由にはなっていない。
でも、しっかりそれは届いた。
理由はいつだって単純。
複雑なのは人の心だ。
(=゜ω゜)「ボケ野郎が・・・かっこつけやがって・・・こんなめちゃくちゃいてぇ傷付けておいて。」
完全にクソ野郎からボケ野郎に昇格だ。ああ、マジいってぇ。
魔力はほとんどすっからかんだ。
槍を見切る時、目に集中していたからだ。あと使い慣れた剣の投影と。
よって再生魔術は使えない・・・か。
さて・・・寝っ転がってるから分かるがヤバいな。
誰かが来る。それも大人数だ。
(;=゜ω゜)「大層な足音させやがって・・・まる聞こえだクソったれ・・!」
腹部の痛みを押さえて立ち上がり、必死に走る。
アーチャーは草陰にガサガサッと突っ込み、そこでまた横たわる。
聞こえるのは足音と自分の荒い息。
まだ遠い・・・それまでに息を整えよう。
その瞬間、ガサリと音がする。
ビクリとして、その方向を見ると、
(;=゜ω゜)「お前か・・・。」
バットを持った女。そんなやつ一人しかここいらにはいない。
そいつは中身が入ったビンを投げ捨てる。
(;=゜ω゜)「とどめ・・・刺さねぇのか」
そいつは当然、とばかりにこちらを見る。
ビンの中身はどうやら魔力を回復するものっぽい。
再生魔術が使える事を知ってるようだ。抜け目がない。
そいつはそれだけ渡すと背を向けた。
俺はビンの中身をすぐに飲み干し、治癒を始めた。
そいつは去り際に「誰にやられたの?」と聞いた。
だから当然、答えてやった。
(;=゜ω゜)「てめーのクソ弟子だ!」
そうするとそいつは本当に───本当に嬉しそうに顔をほころばせ、こう言う。
( *゜ー゜)「私の予言どおりになったのw」
ああ、そういやそんなこともいってたっけな。
全くだ。ボコボコにされたよ。
第二十話 完
最終更新:2007年11月11日 13:31