天下一編 第四話 相殺
矢の波と波がぶつかりあい、飛沫をあげてたがいに波をもみ消しあう。
そんな様子を巫女は高いところから見下ろしていた。
今の自分の身体能力は異状。だがこの状態も長くは続かない。
もともと魔力による各部の強化と認識速度の向上というのは、小さな器になみなみと水を注ぐことに似ている。
限界以上の力は体に負担をかける。
もってあと五分。
だがここに来て────、
飛び散った矢の先が地面に突き刺さり、突き刺さったところは線で結ばれて────、
大きな魔方陣。見ただけで分かる、口寄せの並びだ。
スナイパーは、潜むことをやめたようだ。
あの魔方陣はヴィックスの右の手のひら描かれていたものと全く同じものだ。矢を呼び出す倉庫のような陣。
あれの論理や過程を辿ればおのずとヴィックスの位置が分かる。
だが────、
*( ‘ ‘)*「これを、避けてからね・・・」
体の高度が下がっていく。跳躍も頂点に達して、あとは落ちるだけ。
それを合図にしたように。
重力に逆らって、矢の雨が魔方陣から降り注ぐ───。
あれを食らえばひとたまりもない───。
空中では身動きがとれず、避けることは不可能だろう。
防ぐ?まさか。自分の中途半端な防御魔術では貫かれるのがオチだろう。
そう───。避けるしかない。
幸い、自分には避ける手段がある。
"エンシャント────、"
どんなピンチでも、どんなに絶対的な危機でも。
万が一の奇跡で、避けることはできる。
その0.0000001%でもあれば大丈夫だ。
"カース─────!!"
降り注ぐ矢の雨に身をさらす。
手に、腕に、肩に、肘に、首に、顔に、目に、胸に、腹に、股に、太腿に、膝に、足に、ああ、あああああ────。
死を何度も、何度も繰り返す。何千回、何万回、何億回────。
でも、神様もそう残酷じゃない。
真っ暗闇は、どこにもないのだ。一筋の光はいつだって差し込んでいる。
そう、今みたいに───。
矢を全て避けきって、着地。
だが、途端あしもとがふらつき、倒れかけたところを、何とか膝をつくだけで済んだ。
エンシャントカースは生命の危機を起因にして、平行世界から回避した結果を持ってくるもの。
だが、回避する結果が少なければ少ないほど魔力消費は大きい。燃費はかなり悪い魔術だ。
だけどこの、今触れている、地上に描かれた魔方陣。
それだけで相手の居場所が分かる。
ほぼ真横の、木の陰。
*(;‘ ‘)*「見、つけ────」
立ち上がって、そこに向かおうとする。
だが巫女は感じ取った。
チェックメイト、と呟かれたような、そんな最後の詰み───。
"後ろ、後ろか───!!"
その叫びは本能。かよわい草食動物が、獰猛な肉食動物を本能で感じ取るもの。
超スピードで振り向く。だが。
从 ゜∀从「間に合わないね───サジタリウスの矢───」
臓腑を貫く一本の矢。あまりに速く、重く、鋭い最高の一撃。
口から出る流血。吹き飛ぶ痩躯。
声にならない呻き声。痛い。痛い。イタい。矢が、矢の先が。背中から───。
从 ゜∀从「サジタリウス・・・射手座はな、地を這う蠍が天上に来て、いつ暴れ出してもいいように、その弓を蠍に向けてるんだ。
天空より飛来する矢に貫かれて、気分はどうだい?巫女」
ヴィックスの声が間近に聞こえる。どうやら吹っ飛んだときにこっちに来たらしい。
"ツメを、誤ったな、ヴィックス・・・"
そう、呟いた。
从 ゜∀从「・・・あと、一撃で死んでくれるよな」
ヴィックスの弓が巫女に向けられる。
今まで───、今までが本当に長かった。
この戦い、ヴィックスは、自分だけが罠を仕掛けてた、と思っている。
巫女は素早く動いて、自分に必殺の一撃を浴びせるつもりだった、と今でも考えているだろう。
・・・こういうときは、こう言いたい。
否。断じて否と。
巫女は瀕死になりながら、僅かに残った魔力を最後に使った。
引き絞られる弓。最後はボーガンじゃなく弓で仕留めたかった。
ギリギリギリ・・・・・・と弓が歓喜の悲鳴をあげる。
途端、何故か腕から、血、が。
从;゜∀从「なッ───」
気付けば、周りには甲冑の大群。
全員が当然のように剣を手にしている。
从;゜∀从「クソッ!!なんだてめぇら!!今俺にはてめーらと相手するほどの、魔力は残って、な、い、わぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
甲冑が一気にヴィックスに斬りかかる。ヴィックスはすぐに押し倒される。
刺され、切られ、貫かれ、抉られる。
ヴィックスの腕は助けを求めるように、ぶんぶん動いていたが、すぐにぐったりと地に墜ちた。
そして甲冑は全て人形に戻る。本当に人を殺す力があるのか、と言いたいくらい可愛げのあるちっちゃな人型の人形だ。
そして立ち上がるのは巫女。腰の少し上にはまだ矢が刺さっている。
*(;‘ ‘)*「バカ、ね。あなたは出て来ちゃダメだったのよ。あんな派手な技連発しておいて、魔力もすっからかんでしょうに。
油断は大敵よ・・・!!」
そして激戦の終わりを継げるゴングが鳴り響く。
(* `ω`)「勝者!!巫女!!」
ウオオオオオオオオオオ!!!!と沸き上がる会場。
舞台に駆け付ける医療班。
歓声を聞きながら、巫女はその戦場をあとにした。
(* `ω`)「第五試合!!夢ムラ VS オリム!!」
ミ,,゜Д゜彡「建k
(中略)
(^p^)「オリムアターック!!」
(中略)
(* `ω`)「勝者!!オリム!!」
( ^ω^)「まぁ死亡フラグ立っt
(中略)
(* `ω`)「第六試合!!リップルラップル VS ファルフリート!!」
呼ばれた二人が晴天の下へと向かう。
ブーンはただ見ているだけだった。こうやって試合が進んでいく度自分の試合が近付いてくる。
それだけで、何も考えられなかった。
だが、それは始まりのゴングが鳴らされるまでだった。
ゴングが鳴った、瞬間。
息が止まった気がした。
試合中の二人には全く動きはない。
だけど、今まで試合と違う、なにか。
気付けば、試合のこと以外を考えられなくなっていた。
(´・ω・`)「・・・本物の、ガチンコ、か・・・」
名無しが一人、呟いた。
瞬間、戦いが始まった。
重なりあう拳とバット。
それが生み出す轟音は天地を揺るがす。
ファルフリートは感じた。
どちらかが、完全にくたばるまで───久しぶりの長丁場だ──。
リップルラップルは感じた。
この試合、一筋縄ではいかない───、と。
そもそも彼らには共通してあるものとないものがある。
彼らには圧倒的なフットワークとパワーがたがいにある。
だが、それゆえに、必殺の一打というものがこのどちらにもない。
二人とも、普遍的な強さを持つ、持久タイプだ。
削って、削って、どちらが先に崩れるか。
(;*゜ー゜)「・・・っ!!」
(;゜∀゜)「チッ・・・」
・・・何度目か分からない拳とバットの激突。
そして。
大きくスイングされたバットが頭蓋に叩き込まれる。
───音もなく、吹っ飛ぶファルフリート。
だがすぐに体勢を立て直す。
(;゜∀゜)「楽しい・・・ハハハ!!楽しいぞォ!!」
高笑いしながら突っ込むファルフリート。
一撃、二撃とバットで拳に応戦するが、三撃目。
ぶち込まれる鉄拳。
リップルは投げられた玩具のように地面を転げ回った。
だがそれもすぐに踏み止どまり、そしてまたファルフリートに突撃する。
相殺し合う必殺の一打。
・・・彼らには必殺の一撃がない。それゆえに。
一撃一撃が、殺人的な威力を持つ。
そしてまた一撃、一撃と互いにダメージを蓄積させていく。
それは、死闘そのもの。
誰もが、固唾を飲んでそれを見守る。
そして────。
もう何度目か分からない直撃弾。
二人の足取りはおぼつかない。いや、おぼつかないなんてものじゃない。
二人とも立っていられないはず───。
そんな、青空の下に繰り広げられる狂った踊り。
ぶつかって、傷付いて、倒れて、それでも・・・。
なぜ立ち上がるか。
理由は簡単、明白だった。
転げ回るファルフリート。その体は見るも無残なほどに傷付いている。
左腕は折れ、頭は血まみれで、体中泥だらけ。
だがそれはリップルも同じ。
彼女は顔の左半分がほとんど潰れている。肋骨も何本か折れているだろう。
ファルフリートは立ち上がる。彼をそこまで動かした感情は、
ただの、快楽だった。
走り出す。
今、この瞬間だって。
言葉にできないくらい、狂ったように楽しい───。
リップルとて同じ。
勝てる、勝ちたい。でも、もう少しのところで及ばない。
確実に打ち砕いてみせる、完腑なきまでに叩きのめしてやりたい。
その一瞬のスリル、紙一重で死というギリギリの快感。
今すぐにでも、楽しくて楽しくて、全てをさらけ出したくなる衝動。
そして二人は激突する。
その瞬間、予想だにしなかったことが起こった。
(;゜∀゜)「グッ・・・アァァァァァァアアァァッッ!!!」
砕け散る、右腕。
真正面から挑み、中心から粉砕していくその腕。
(;*゜ー゜)「勝っ・・た!!」
勝利を確信したリップル。
その確信は揺るぎないまま、視界が傾いていく。
そうして、リップルは地面に倒れこんだ。
・・・己の負けを悟らずに。
顔めがけて繰り出された拳は高速でスイングされたバットに阻まれる。
それでも、バットをブチ抜く勢いで拳を振りぬく。
そのとき、すぐにわかった。
"あ──、これ、壊れる──"
自らの武器である義手とは感覚や運動神経を繋いである。
案の定、ブチブチとちぎれていく音。
ミシミシと軋む音。
はぁ、また作り直しか───。
なんだって、俺はこんなに女に義手を潰される運命にあるんだ。
ああ、でも楽しかったな、こいつ、強かった───。
また、いつか戦いたい。
だから、今は勝てるのなら勝たせてもらおう。
そう思うと、ファルフリートは右足を思いきり振り上げた。
右足はリップルのあごに当たる。そしてそのまま、リップルは蹴りあげられ、倒れこむ。
立っていたのはファルフリートだけ。
死闘の終わりは、あっけなく。
だがそれでいて大きな歓声に包まれていた。
(* `ω`)「えーと、第六試合、ファルフリートさんの勝利でしたが、ファルフリートさんが第五試合の勝者、つまりオリムさんとの試合を棄権しました。
理由は、武器がない、だからそうです。つまりオリムさんは無条件で勝利ですね。」
アナウンスで実況の兄ちゃんがそう告げる。
第七試合、下痢VSとりにくが終わった直後の事だ。
この試合は当然、とりにくが下痢を瞬殺した。
次は1段目で最後の試合。
つまり。
(* `ω`)「第八試合!!名無し VS ブーン!!」
ブーンはきらめく刀を持ち、戦場へとむかう。
名無しとの戦いにむけて考えた装備は、結局この刀だ。
槍では間合いの関係もあり、使いにくいはずだ。かといって短剣では威力不足だし、西洋の剣では少し重い。
だがブーンが今持っている刀はそんなに長くなく、軽く、威力も高い。
対名無しにはこれが一番だ。
それと、いくばくかの検閲を通ったクナイと短剣を持っていった。
(´・ω・`)「・・・」
( ^ω^)「名無しさん・・・」
二人はいつも同じ方向を見て、互いに助け合って来た。
師弟という関係。
それは簡単に忘れられるわけのないもの。
その二人、その関係が、戦うべく、向かい合う。
名無しは、自分と向かい合っているような気がした。
ブーンは、何か大切なことが始まるような気がしていた。
(´・ω・`)「君は、強くなった」
(;^ω^)「!?」
(´・ω・`)「この、一瞬。君は僕の敵だ。」
そう言うと名無しは顔を伏せた。顔をあげたときには。
両手には逆手持ちされた短剣。目は、
(´・ω・`)「敵は、潰す」
本気。
そんな名無しさん───、見たことがない。
( ^ω^)「全てぶつけます。覚悟してくださいですお」
潰されるわけにはいかない。
師匠だからといって顔を立てる気も毛頭ない。
いつからか、勝ちに貪欲になっていた。
(* `ω`)「試合、開始!!」
ゴングが鳴った瞬間、二人の体がはぜた。
天下一編 第四話 完
最終更新:2008年03月06日 16:27