第二十六話
( ^ω^)「梅しそさんはキニさんを頼みますお」
サラッとそう言いながら、ブーンは文を引き抜く。
目はVIP先生を捕らえて離さない。
梅しそは無言で首を縦に振るとこちらに向かって走ってきた。
VIP先生は、目の前を敵が走っていると言うのにそれに目も向けず
自分を睨みつけているブーンの目を見ていた。
梅しそがキニの元へたどり着き、ぎこちない動作で神術を始めるのを確認すると
ブーンは文を正眼に構えた。
( ^ω^)「いくお」
小声で、VIP先生にではなく自分自身に向かって呟くと、神風は使わずに勢いよく地を蹴った。
ブーンはまだ、二つ未使用の技がある。
一つ目を使わなかった理由は、単純に特に使う場面がなかったから。
二つ目の使わなかった理由は、まだ未完成だったから。
一応、有為には合格を貰ったのだがそれでも実戦で使うには抵抗があった。
なんせそれは少しでも気を緩めればすぐに負けへと繋がってしまう。
それほどに繊細な、針に糸を通すほどの魔力コントロールが必要だから。
基本チキン主義なブーンが使えないのは当然である。
だが、今ならできる気がする。
頭の中は驚くほどスッキリしてる。
天部との戦いで覚悟が固まったからなのか、今ならきっと自由に空も飛べるはずだ。
魔力を、僅かに腕の方に流す。
(`・ω・´)(魔力放出? にしては魔力が少なすぎる。あれは…)
ニィッと笑みを浮かべ、ブーンの行動の意味を理解したVIP先生はようやく剣を構えた。
( ^ω^)「らぁッ!!」
ブーンの繰り出した斬撃は、天武戦の時とは比べ物にならないほど早かった。
やはりな、と笑いつつ、VIP先生はそれを軽々と剣で受けた。
当然だが、ブーンの斬撃が早くなったのは短期間でブーンの体が成長したからではない。
いくらFTを授かっているとはいえ、それはいくらなんでも無理な話である。
トリックは簡単だ。
自らの斬撃を、魔力放出によって生み出した微量な風に乗せるだけ。
簡単な様で、これが難しい。一撃一撃に集中力を使うし、放出の量を間違えれば体制を崩すし消費も激しい。
だが、完璧に使いこなせれば剣の速さはまさに神速のものとなる。
技の名を、”鳳凰の舞”と言う。
( ^ω^)「おおぉぉぉおおお!!」
何度も斬り込む。
1、2、3、4…そっからはもう覚えてない。とにかく何度も斬る。
魔力放出は使わない。
一瞬、隙が生じてしまうしこの距離なら確実に避けられてしまうから。
避けられた時の隙をこの人は確実に突いて来るだろうし、魔力も無駄には出来ない。
だから切り込む。熱くなりすぎず、常に集中力を保って。
僕の剣技に問題はなかった。しかし、
(`・ω・´)「くくく…」
笑いながら、余裕で僕の剣を全て防いでいる。
その表情は余裕の表れなのか、それともハッタリなのか。
どっちにしても全て防いでいると言う事実だけは確実だ。
(;^ω^)「ふぅ…!」
一瞬、不意に剣を休めた。その時だった。
(`・ω・´)「ハァッ!!」
遂に、VIP先生が攻撃に移った。
”鳳凰の舞”は防御にも適応できる。
使わざるを得なかった。それほどにVIP先生の剣は早く、
なにより、
(;^ω^)「ギッ!?」
重い。
尋常ではない。金属バットでおもックソ叩かれている様な感じだ。
防御こそ間に合うが、剣を防ぐたびに体勢は崩されていく。
耐え切れず、僕は防御に乗じて後ろに退いた。
が、
(`・ω・´)「その程度か?」
(;^ω^)「!?」
僕が地を蹴るのとほぼ同時にVIP先生も地を蹴り、僕に重なるように付いて来た。
剣を振りかざすVIP先生。剣の構えを一時的に解いたブーン。
(;゜ω゜)(当たる!!1)
ブーンがそう思った刹那、二つの火の玉が視界の端から現れ、それは紙一重でブーンに当たらず目の前のVIP先生に直撃した。
小規模の爆発、煙が目の前を覆う。
そのおかげでVIP先生との距離を話すことができ、構えを直した後すぐに後ろを振り向くと、巫女が此方に手を翳していた。
.*( ‘ ‘)*「大丈夫よ、あなたは強いわ。私の予想以上にね。私がサポートするから、一緒にこいつを倒すのよ。
煙を剣で晴らし、出てきたVIP先生はダメージを追ったのかは分からないが険しい表情をしていた。
(`・ω・´)「幻想郷の残りカスが……、舐めたマネを」
.*( ‘ ‘)*「あら、この程度。まだまだ準備運動に過ぎなくってよ?」
(`・ω・´)「準備運動とは、後の運動に備えてのウォーミングアップを言うのだ。残念ながら貴様にはもう死しかない」
.*( ‘ ‘)*「坊やが言うじゃない。ならそろそろでかいのいくわよ!」
そう言い、手の中の宝石を転がしつつ巫女は───
「エル・イル・フォレス・イタベダ・・・・」
(*^ω^)「おぉ…」
戦場に咲く一厘の花の如く、可憐に舞った。
その場にいたものは誰もが時を忘れた。
なぜか背景はピンクに染まり、目の前の巫女の動作の全てが目に焼きつく。
トクン、トクンと心臓が大きく脈を打った。
「トル・イラ・ケルル・セクサフォン・・・」
僕や、治療中の梅しそさん、満身創痍のキニさん。
そして、あのVIP先生までもが気付けば目を奪われていた。
「ウンド・ダー・グローブ・ホーゾッグ・デス・ヴァートラッグ・・・!」
いち早く正気に戻ったVIP先生はハッとした様に目を丸くした。
(`・ω・´)「しまっ……」
詠唱はすでに整っており、巫女の宝石は禍々しい針へと変化を遂げていた。
.*( ‘ ‘)*「────エンシャントカース」
最後の言葉が放たれ、それを合図に針は一直線にVIP先生へと向けられた。
あれはやばい、そう思ったVIP先生が行き着く対処法は勿論”避ける”
だが、その考えは刹那に取り消された。
「避けられない」
一瞬でその言葉が脳裏をよぎった彼は足ではなく、反射的に剣を持っていない方の左手を防御にだす。
(`・ω・´)「ぉぉお!?」
.*( ‘ ‘)*「───セット。放出。」
左腕の前腕に突き刺さった針は小さな光のツタとなり、
徐々にVIP先生の左腕を覆っていった。
VIP先生の喘ぎを肥料にするかのようにぐんぐんと育ち、
やがて肩の所まで覆い尽くし、最後に白い花を咲かせた。
そして、それは王室を丸ごと飲み込むほどの光を放った。
その場にいたものは皆目を閉じる。
目を開けると、左腕を力なくダラリとぶら下げ、それを苦しそうに抑えるVIP先生がいた。
(`・ω・´)「ぐ、不覚を取ったか」
.*(;‘ ‘)*「あれを食らって完全に消滅しないとは……なるほど、化け物ね」
(`・ω・´)「左腕は、使い物にならないか。だが貴様を殺すにはちょうど良いハンデだ」
.*(;‘ ‘)*「恐らく、ね」
巫女は笑った。
VIP先生はそれの意味にすぐに気が付いた。
後方から聞こえる微かな足音、いつの間にか姿を消した一人の男。
振り向いたときには、男は飛んでいた。
(;^ω^)「うおりゃああああああああ!!」
VIP先生はとっさに前に地を蹴る。
避け方は実に無様だった。ブーンの剣はVIP先生の背中を斜めに切り裂いた。
「勝った」
勝利を確信し、巫女は拳を小さく握り、ブーンは剣をぶら下げた。
だが結果としてそれは状況を悪い方向に持っていくことになる。
(;^ω^)「!?」
ブーンを襲う刃。
たった今斬った筈のVIP先生はあれほどの傷を追ったにもかかわらず、
何事もなかったかのようにくるりと体をこちらに向け、間髪居れずに襲い掛かってきた。
繰り出された斬撃は、言うならば野球のスイングに近かった。
何とか防御には防御には間に合うが、ブーンは斬撃に耐え切れず吹っ飛ばされた。
(;゜ω゜)「カハッ!」
壁に勢いよく背中を打ち、ズルリと床に落ちる。
.*(;‘ ‘)*「君!!」
(`・ω・´)「人の心配をしている暇があるのか?」
吹っ飛ばしたブーンを放置し、巫女へ向かう。
剣を振りかざすVIP先生を見て、とっさに防御魔術を張る。
.*(;‘ ‘)*「マジックバリア!」
翳した手の先に現れる、虹色の盾。
それを無視し、VIP先生は方向を変え巫女の右へ回り込んだ。
咄嗟に避けるも、腹部を斬られる巫女。
更に追い討ちを掛けようとした時、VIP先生の頭上に小さな雷が落ちた。
(`・ω・´)「小賢しいぃぃぃいいい!!!」
直撃してなお、ノーダメージのVIP先生は雷を放ったであろう人物の方を振り返った。
川;゚ -゚)「ぐっ」
振り返った先では梅しそが符を構えていた。
(`・ω・´)「ライトニングッッ!!!」
不快感を吐き出すように、呪文を唱える。
VIP先生の剣先から出された雷は梅しそのものとは比べ物にならないほど大きかった。
そしてそれは、梅しそとキニを襲う。
(;^ω^)「テメェエエエエエエエエ!!」
要約、体を動かせるようになったブーンは神風を全開にし、VIP先生の元へ走った。
精一杯斬りかかるが、その動きに先ほどまでの速さはなかった。
(`・ω・´)「”鳳凰の舞”はもうおしまいか?」
ブーンの脳裏には怒りと焦りが駆け回る。
”鳳凰の舞”を使うほどの精神力は消えうせていた。
またしても弾かれ、吹っ飛ばされてしまう。
だが、今度は雑だが受身を取り、曲がった膝をバネにしてすかさずVIP先生に向かって飛んだ。
(;^ω^)「テメェ、何で魔王なんて復活させようとしてるんだお?」
剣を降りながら、ブーンが問う。
(`・ω・´)「ハッ、何を聞くかと思えば。俺が魔王の復活にたどり着くのは必然なのだ」
(;^ω^)「わっけわかんねぇお!」
先ほどVIP先生から受けたように、力任せに剣をたたきつける。
しかしガキンと鈍い音を立てて阻まれる。
(`・ω・´)「貴様は自分の生きる意味を考えたことはあるか!?」
反撃しつつ、VIP先生も問う。
(;^ω^)「中二の時、アホほど考えたお!!」
(`・ω・´)「答えは出たか? 出なかっただろう。だから、俺は自分自身で決めたのだ! "俺”が生きる意味を」
(;^ω^)「だからなんだって言うんだお!?」
(`・ω・´)「考え抜いた末、俺の生きる意味は”強さを追い求めること”だった。その証明をするのは強者を倒して名を上げなければいけなかった」
VIP先生は大きく後ろへ下がる。
(`・ω・´)「そして強者を倒し、倒し、気付いたら俺は最強になっていた。だが、まだ足りなかった。
そんな時に出会ったのが、魔王に関する文章だった」
( ^ω^)「だからって、他の人を犠牲にしてまでそれを叶えるのかお?」
(`・ω・´)「人の生は儚い。その全てを自分の為だけに生きるのは当然だろう?」
後ろへ下がり、体を大きく捻るとその勢いで剣を振るった。
剣先から出たのは、魔術放出による星の波動。
( ω )「そういうのはなぁ」
ブーンは無性にイラついていた。
そんなことのために、
たかがそんなことのために梅しそさんが傷ついている。
その思いは具現化し、ブーンの魔力を爆発させた。
( ^ω^)「世間じゃ自己中って言うんだお!!」
星の波動に対抗するように、風の刃を放つ。
二つの魔力がぶつかった刹那、風の刃が星の波動をVIP先生へ押し返した。
(;`・ω・´)「な!」
最強故の自身が、VIP先生に大きな隙を作った。
結果、VIP先生は跳ね返ってきた魔力放出を避けることができなかった。
先ほどのブーンと同じように吹っ飛び、壁に打ち付けられる。
(#`・ω・´)「貴様ァァアア!!」
それでも、ダメージを受けた素振を見せないように立ち上がる。
離れた所から両手をブーンの方へ翳すと、その手は光を放った。
直後、ブーンの周りを数多の星が囲んだ。
( ^ω^)「放出…螺旋…螺旋…螺旋」
その状況でもブーンは取り乱さず、呪文のように言葉を繰り返した。
VIP先生の両手が掛け声とともに交差されると、星の弾幕は一斉にブーンを襲った。
動揺することなく、ブーンは瞬時に手を床に翳す。
(#^ω^)「八乙女舞!」
ブーンを守るように、螺旋状の風が上方へ昇る。
星を全て裂いた後、ブーンが上方に手を翳し風は天井に留まり、ゆっくりと形を変えていく。
( ^ω^)「っけぇぇええええ!!!」
風は、小学生が粘土で作った剣のような形に姿を変え、
振り下ろされた手と共にそれはVIP先生へ向かった。
(#`・ω・´)「おぉぉぉおおおお!!!」
向けられた風の剣を、VIP先生は特大の魔法壁で防ぎきった。
だがもう、勝敗は下っていた。
巫女がブーンの方を優しく叩く。
.*(;‘ ‘)*「本当に…凄かったわよ、君。後は私がやるから」
腹を抑えていた手を離し、VIP先生に両手を向ける。
いつの間にやらVIP先生の周りに散りばめられていた小さな人形サイズの”甲冑”。
それが巫女の合図の下、一斉にコキコキと音を立て立ち上がった。
声もなく、一斉にそれぞれが持つ小剣を振りかざすと、それはVIP先生に斬りかかった。
(;`・ω・´)「俺の……悲願は…! うぉぉぉおおおおおおお」
最初こそは切り落としていたものの、
次第にその数になす術をなくしあっという間に姿が見えなくなるほど囲まれてしまう。
叫び声だけが聞こえる中、遂にVIP先生は声を失い倒れた。
同時に甲冑もがガチャリと地に落ち、すべて力なく床に倒れる。
( ^ω^)「やっ…た、お?」
思わず声を漏らす。
甲冑が散らばっている方からは、何も来ない。
不意に緊張が解け、ブーンは腰を抜かした。
(;^ω^)「やったんだお」
.*( ‘ ‘)*「ええ、やったわ。貴方のおかげでね」
巫女が優しく手を差し出す。
その好意に甘え、ブーンは立ち上がった。
( ^ω^)「貴方ほどではなかったお」
出た言葉は謙遜ではない。
ブーンは心からそう思っていた。
安心のせいで頭が回らなかったのか、ブーンは梅しその事を思い出し、その元へ駆け寄る。
梅しそは傷だらけながらも両足をしっかりと地につき、微笑んでいた。
川 ゚ ー)「ブーン…」
ああ、やっと見れたんだ。
ずっと見たかったこの笑顔。
天使?女神?そんな言葉では足りないほどに美しい。
その笑顔は全てが終わったことの証明でもあった。
───故に、僕は迫り来る絶望に気がつけなかった。
次の瞬間。絶望が梅しそを貫いた。
ネタ結構借りてるけど作者さんから許可取ってるよっ
ふーははー
最終更新:2008年06月14日 04:13