第十話 名月も御照覧あれ・前編
闇の街ウィンディア。
日は落ち、あたりは黒に包まれている。その街の要塞も全く光を発することもない。
暗闇の中の要塞の前に二人の男が焚き火をし、暗闇をわずかながらかき消していた。
二人は雑談をしている。
一人は魔術師のような格好、もう一人は騎士であった。
( -_-)「今日は晴天であったかいもあって、名月だなぁ・・・」
(`・ω・´)「まぁそうだな。ところで黒魔。準備のほどはどうだ?」
( -_-)「うん。まぁ今日で完璧になったよ。VIPが協力してくれたおかげだよ」
(`・ω・´)「なに、要塞を強化するには資材とか金的にも無理な今、門番であるお前を強化するのは当然であろう?」
( -_-)「ありがとう。幻想郷にはリップルが昨日入ったらしい。必ず一週間以内に仕掛けて来るだろうな。」
(`・ω・´)「一緒に入ったブーンとかいう奴は名無しが直々に稽古してるらしい。お前の天敵が攻めて来るかもな。」
( -_-)「まぁこれだけ僕とVIPで頑張ったんだ、名無しが攻めて来ても大丈夫だろう。」
と言いながら、焚き火に薪をくべようとする黒魔。だが・・・
その手がピタリと止まった。
( -_-)「VIP」
(`・ω・´)「わかってるさ。一人だな。かーっ、無所属の野郎か、名無しじゃないのかこれ?」
と言いながら要塞に戻るVIP。
要塞にすっこむ寸前、一言、「死ぬなよ」と黒魔には聞こえた。
(´・ω・`)「ふーむ、どうやら侵入がバレたね」
焚き火が消されたのを遠くから確認し、そう考察する名無し。
(´・ω・`)「言ってたとおり敵は黒魔だけ、か。でもなんかありそうだなー。」
(´・ω・`)「ま、牽制でもしてみるか」
クナイを取り出し、黒魔に寸分の違いもなく投げる。だがそれはいともたやすく弾き飛ばされる。
黒魔と完全に目が合う。
(´・ω・`)「あちゃ、完全にバレた」
(´・ω・`)「もう堂々と出て行くか。」
ザッと物陰から出、気配を丸出しにし、正面から堂々と出て行く名無し。
黒魔もまた正面からこちらを見ている。
そして正面から対峙する。
(´・ω・`)「お勤めご苦労様。疲れただろう?」
( -_-)「差し入れをしに来たってわけじゃなさそうだな。幻想郷の差し金か?」
(´・ω・`)「いや、それはないね。僕は僕自身の為に君を倒すよ」
( -_-)「僕自身の為?理由にまるでなっていないぞ。ますます幻想郷の差し金じゃないか。」
(´・ω・`)「・・・まぁ幻想郷の為というか僕自身の幸福の為だよ。」
( -_-)「幸福?僕と戦う事自体がか?」
(´・ω・`)「そうだね、実力が伯仲する戦いは楽しいよ。でもそうじゃない・・・」
(´・ω・`)「戦争の動きに興味があるんだよ。ドラマティックな展開が見たくてね。」
( -_-)「なるほど・・・まぁ強敵同士の戦いはゾクゾクするからね。理由としては十分とみなす。」
黒魔が剣を構える。大剣というわけではないがとても薄くむしろ投擲用に感じる。それの目的を一瞬で名無しは感じ取った。
(´・ω・`)「なるほど・・・そいつが封印の剣って訳か。軽く、当てる為に開発されてる。当てて魔力を込めればおk、になるのかな?」
( -_-)「・・・なら、くらってみるか?」
(´・ω・`)「遠慮しとくよ。僕はディスペルにもそんなに長けてないし、食らったら回復出来なさそうだ」
名無しが白刀を構える。
名無しの武器はほとんどが暗殺用であり、この白刀もしかり、魔力を込める事で切れ味が格段にあがり、太刀の長さも魔力で長く出来たりもする。
二人が再び無言で対峙する。
月明りに名無しの白刀が光り、名月を一層際立たせる。
そして、黒魔が昔、相性の悪さを思い知らされた戦いもこんな名月の夜のことだった。
ドサッ、と木にもたれかかる今とは違う、どこか初々しい黒魔。
両の肩口が刺され、血がドクドクと出ている。
おまけに右足は骨折、脇腹もジンジンと痛む。
(;-_-)「はぁ、はぁ・・・なんで、どうして」
やられたのだ、という言葉は出なかった。
そこにまたあまり今とは変わらない、名無しが現れる。
(´・ω・`)「君は僕と相性がとてつもなく悪い。ただそれだけだ。」
(;-_-)「クッ・・・」
鎖が付いた投擲用でもある釘の形状の武器が月明りに浮かび上がる。
手も足も出なかった。
何も出来なかった。
敵は、あまりにも自分にとって天敵すぎた。
毒、無効化。
封印、魔力をあまり浪費しない戦い方なら意味を成さない。
グラビティ、時間切れまで待たれる。
そしてあまりに多過ぎる罠。
戦術のストック。
何をしても黒魔に勝ちめはなかった。
その結果は当然これ。
( -_-)「はぁはぁ・・・死ぬ・・のか・・」
(´・ω・`)「うん、死ぬね。さようなら」
名無しが小さな振りかぶるモーションを見せる。次の瞬間。
黒魔が魔力の塊を発生させ、名無しにぶち当てる。
名無しは、ほぼダメージなしだが後方に回避の為大きく下がる。
(´・ω・`)「・・・・宝石による魔術行使か。三つほどあるね。」
( -_-)「・・・そうだ。まだ死にたくはないんだ・・・よ。」
黒魔はそのうちの一つを回復に当てる。そしてまたもう一つで防護魔術を張り、残りの一つは今のような攻撃に当てる。
(´・ω・`)「・・・物理攻撃を弾き飛ばす防護魔術か。うーん・・・封印されてるし参ったなぁ・・・」
名無しが思慮するような顔になったのも一瞬、すぐに鋭く狡猾な獣の顔に変わる。
(´・ω・`)「うーん・・・数は6人くらい・・・どうやら君に対しての援軍のようだね。」
(;-_-)「そう・・か。命拾いとは・・まさに・・・この・・事。」
(´・ω・`)「ははは、そうだな。これ以上ネチネチやるのは得策ではない。
敵の主力も叩けたし僕は無傷だし大きな戦果だな。戦略的撤退をさせてもらう。」
サッと消えるように去る名無し。そのまま黒魔の意識は消えていき────────。
気付いたのは病院のベットで、戦争は自分達の敗北で終わっていた。
(´・ω・`)「なっつかしいなぁ、僕は君にボロ勝ちしたっけ。こんなふうに対峙するのが二回目になるとは」
( -_-)「ボロ負けした僕としては対峙したくない相手だね。」
一瞬、緊迫したムードが漂う。
二人は臨戦態勢に入り、要塞前は殺気に満ち溢れていた。
先に戦いの火蓋を切ったのは、黒魔だった。
( -_-)「グラビティ!!」
空気が重くなる。それと共に名無しはガクンと体が重くなる。
(´・ω・`)「やだなぁ、この感覚。べっとりしてる」
( -_-)「スキあり!!」
グラビティに慣れない名無しをスキと見たのか、黒魔が一気に攻め込む。
( -_-)「ッラァッ!!」
怒濤の攻撃。その身のこなしは華麗で素早く、とても毒などを扱うとは思えず、そんな小細工をせずとも勝てそうな自信を伴っていた。
(;´・ω・`)「とっとっと・・・」
それを辛くもすべて受け止める名無しもさながら、グラビティを受けたとは思えない。
名無しはサッと後ろに飛び退き、クナイを二三本投げ、黒魔の追撃を許さず距離をとった。
ついで、白刀をもう一本取り出す。
(´・ω・`)「・・・なぜグラビティを連発しない?」
黒魔が体勢を正す。
( -_-)「気付いたか。そうだな、不自然と思うだろうな。」
(´・ω・`)「僕は感知にはうとい。君が魔力を温存してるのかそれとももうすでにないのか分からない。」
黒魔が思慮する様に、ほんの一瞬顔を伏せる。
その一瞬があまりにも命取りすぎた。
そして、自然に次の言葉を紡ぎ出す。
( -_-)「どちらにしろ貴様はk・・・なっ!?」
彼がいたはずのところに彼がいない。気配も完全に感じない。
(;-_-)「やられた・・・!!」
この辺りは暗く、そして茂みなどもなかなかに多い。
まさに名無しの独壇場であろう。
黒魔は残る魔力を感知にできる限り使う。この状態では罠がいつくるか分からないからである。
決して名無しを探すという野暮なことはしない。こうなってしまっては確実に見つからないことを分かっているからだ。
(´・ω・`)「(綺麗にお話に引っ掛かってくれちゃってまぁ・・・)」
茂みの中、名無しが黒魔を観察する。
(´・ω・`)「(罠の用意よし、と。始め!)」
手元のピアノ線を切る。
黒魔に向かって三本のクナイが向かう。
それぞれ黒魔の正面、斜め前二方向から。
それを黒魔はすべて弾く。
( -_-)「この程度で───!」
(´・ω・`)「残念ながらその避け方は不正解だな────!」
名無しが白刀一本を手に茂みから出て来る。
それに黒魔も気付く。
( -_-)「突っ込んで来るとは、ハ、血迷ったか!」
それを向かえようと黒魔も剣を構える。
だが次の瞬間名無しは目を閉じる。
距離は完全に把握した。ここから黒魔まで3秒かかる。ならここで目を閉じてそのまま進めばいい。
名無しが目を閉じた瞬間、黒魔の近くに罠として仕掛けられた閃光弾が飛び込み、黒魔の目を潰す。
(;-_-)「ク───!目が・・・」
辺りは暗闇で黒魔は闇に目が慣れている。
そこを逆に利用されたのだ。急に浴びせられる閃光は目を著しく刺激する。
黒魔はとっさに真後ろに飛び退く。そうではなければ名無しに首をはねられて終わりだ。
力いっぱい飛び退いたので後ろの木に中途半端に当たる。
だがそこには名無しのトラップが仕掛けられており、麻痺の効果が備えられた縄が黒魔をすくい上げる。
だがしかし。
(#-_-)「この程度のものこの封印の剣の前ではただの糸だ!」
魔力の流れを断ち切ることに長けた黒魔の剣がいともたやすく縄をちぎる。
黒魔の体が自由になる瞬間、黒魔は自分を捕らえようとした縄以外の何かがブチンと切れる音を確かに聞いた。
すぐにそれで気付いた。名無しの罠の起動音。
黒魔はこれまでにないほどの悪寒を背中に感じた。
(;-_-)「やばっ・・・・」
だが完全に目は回復していない。見えない為防げない、避けれない。
黒魔はとっさに宝石を取り出し─────
(;-_-)「──────!」
とっさに呪文を唱える。
それに呼応するように宝石が光り─────
大量の武具から黒魔の体を守っていた。
(;-_-)「はぁ・・・はぁ・・」
(´・ω・`)「まさか全部防がれるとは。驚きだね」
名無しの声がする。だが目が暗闇に慣れてきても名無しの姿はどこにも見えない。
しかし、見えないにしろ今は強力な防護魔術を発動させている。だがそれももって三分。
しかし、その三分という時間は黒魔にとって形成逆転には十分すぎる時間だった。
( -_-)「エル・ディアル・ホロウ────」
凄まじい精神力を必要とする大掛かりな魔術。
詠唱は長く、集中を途切れさせては完全な魔術にはならない。
( -_-)「サヤンス・ヤルンサクサ────」
詠唱が完成していく。
完璧な呪文詠唱。それは完璧な魔術に繋がる。
もちろんこれを名無しが黙って見ているわけがない。
すでに茂みを駆けていた。
(;´・ω・`)「(・・・あれだけ長い詠唱と精神力を必要とする魔術だ、
どこか大元になる魔方陣と媒介があるはず・・・それを叩けば・・・!)」
だがもう手遅れ。呪文の詠唱が完成する。
( -_-)「・・エターナル・ライトニング!」
詠唱が完成した瞬間それが形になる。魔力がうねりをあげて増幅し膨張しそして収縮する。
それは火の玉となり・・・
否。太陽となった。
その太陽は辺りを明るく照らしだし、夜の闇をかき消す。
さながら、要塞前だけが昼のようである。
ただ一つ違うのは空が黒いことだけだった。
(;´・ω・`)「なっ・・・なんだありゃ!嘘だろ!?」
名無しが駆ける。得体のしれない恐怖。それは──────
すぐに現実となった。
( -_-)「クックックッ・・・名月をもかき消す太陽・・・僕の勝ちだ!」
黒魔の高笑いが響く。そして。
火の玉が、地上に降り注いだ。
第十話 完
最終更新:2007年09月19日 16:55