第十一話 名月も御照覧あれ・後編
火の玉が名無しに襲いかかる。
周りを明るく照らしている黒魔が生み出した太陽から発射されたものだ。
だがそれを避けれないわけではない。軽く避ける名無し。
(´・ω・`)「(ふむ・・・いやしかし魔力は無尽蔵のようだな、あの太陽。火の玉はさながらファイヤーボールくらいの威力か・・・)」
火の玉は無限に名無しに繰り出される。
(´・ω・`)「この程度で・・・!」
だが次の瞬間体がガクンと下がる名無し。
(;´・ω・`)「く・・・グラビティが効くなぁ・・・」
火の玉を辛くもまた避ける名無し。そこに、
( -_-)「スキありっ!」
黒魔が切り込む。
(;´・ω・`)「!?」
一方向からの攻撃が二方向からに変わると避ける難易度は相当に高くなる。どちらかを受けねばならなくなる。
もちろん、闇に乗じて相手の実力を出し切らせずに勝つことを戦い方の前提としてる名無しである。
魔術への対抗策は出させないことにある。
ガードが出来ないので避けるしかない。
よって、黒魔の攻撃を防がねばならず、かつ火の玉に気を配らねばならない。
しかもグラビティというビハインド。
このままでは負けは確定である。
黒魔の切り込みを避けきり、走る名無し。その間も火の玉が名無しを襲う。
(;´・ω・`)「はぁはぁ・・・」
名無しは漏れ出している魔力を急いでたどっていた。
これだけの大掛かりな魔術なら、起動は呪文だけではなく、魔方陣と黒魔一人ではまかないきれない膨大な魔力がいる。
そこを叩けば・・・と希薄な願いを胸に名無しは走っていた。
もちろん、徒労になるだろうと知りながら。
そして魔力の泉に辿り着く。そこには・・・
起動で用済みになった魔方陣と、膨大な魔力を秘めた宝石が三つほどあった。
(#´・ω・`)「クッソ・・・!!」
悔やむ間もなく火の玉が襲ってくる。
それによって魔方陣が破壊され、宝石が吹っ飛んだ。
一度魔方陣によって作られたあの太陽に魔力を供給している宝石。
一度繋がれれば、魔術師が体の各部分に魔力を流すようなもの。
そうなれば、供給を止めるには宝石の魔力を他のものに移すか、宝石を溶かすしかない。
だが名無しの魔術においての苦手分野は魔力で宝石に干渉すること。
それは宝石をどうにもすることが出来ないということである。
そして宝石など今溶かせる訳がない。
だが名無しは落胆はしない。
半ば予想していたことだからだ。苦手をついてくることは予想していた。
それよりも今考えるべきは火の玉を止める方法。
それを考えたとき体が軽くなった。
グラビティの効果が切れたのだ。
これならまだ勝機はある。
そう思いながら走る名無しはすぐに方法を思い付いた。
それは至極簡単なことだった。
(;-_-)「ハァッ・・・ハァッ・・!」
黒魔が名無しを追わなかったのには訳がある。
単純なものだが、これだけの大魔術を発動させる側は著しく体力を魔力として奪われる。
それで追わないのではなく追えないのだ。
だが発動させただけのことはある、周りはすごく見晴らしがよく夜ということを感じない。
その明るい中を火の玉を避けながら走り抜けて来る人影が見えた。
(;-_-)「クッ・・・名無しか・・・もう宝石を使うしか・・・」
ポケットから宝石を取り出す。もうストックはあと一つしかない。
(;-_-)「ハァァァァァ・・・!」
宝石を使ったことによって黒魔の体力が最大限に修復される。
だがそれほどの大回復も同様、黒魔が明日の朝日を拝めれるなら体は間違いなく壊れているだろう。
だがそうしないと確実に殺されることも分かっていた。
( -_-)「いや・・・僕の勝ちだ・・」
向かって来る人影にぼそりと呟きつつ、残りの宝石をすべて防御につぎ込み、バリアを作成した。
(´・ω・`)「・・・やっぱり無理をしてるのか」
黒魔と対峙しつつ言う。
何故か火の玉はピタリと止む。
( -_-)「君が今すぐここから去るのなら攻撃はしない。どうだ?」
(´・ω・`)「・・・今なら逃げてもいい・・・そう言いたいのかい?」
黒魔がコクりとうなずく。だが名無しは白刀を両手に構えて、
(´・ω・`)「お断りだ。ここまで弱いくせに反則技で俺を追い詰めたてめぇなんざから逃げる気は毛頭ない。」
辛辣に言い放つ。その返答がされた瞬間火の玉が降り注ぐ。
( -_-)「ならば僕自身も君みたいな天敵は早急に潰すべきだと考えるよ。」
(;´・ω・`)「クッ・・・」
火の玉はこれまで名無しをピンポイントで狙っていたのに対して今は無差別攻撃になっている。
名無しはそれを冷静に避け、状況を考える。
無差別攻撃になったということは黒魔はもう攻撃する気がない。
それとも疲弊しきったところを狙うかどちらかだ。
そう考えるともっとも有効なのはやはりカウンターか奇襲になる。
今のストック、手榴弾二個、クナイ9本、ワイヤー28m、閃光弾はなし。白刀あと一本。
おそらく黒魔は防御を完璧にしている。通常の攻撃はおそらく効かない。そしてまず・・・
それを試すことだ。
( -_-)「ム・・・?」
名無しからクナイが投げられる。だがそれは黒魔の少し前で見えない壁に弾かれる。
黒魔は「無駄だ・・・」と呟く。だが名無しは、
(´・ω・`)「計算通り。あとは捨て身の覚悟だね。」
と言いながら火の玉をごく当たり前のように避ける。
もう要塞前は火の玉の無差別攻撃によって火の海である。
名無しがクナイを投げる。それも二つ、逆方向に。ただ、周りは明るく、名無しの魂胆がすぐに黒魔に暴かれる。
クナイにワイヤーがとりつけてあったのだ。
( -_-)「今更罠を仕掛けるつもりか。しかも明るいこの状況で。どうやらかなり後がないように見える!」
すぐに黒魔がワイヤーに近付き、切る。
(;´・ω・`)「ク・・・」
名無しはまたワイヤーをクナイにとりつけてほぼ同時に黒魔に投げ付ける。
一本は黒魔の前に刺さり、もう一本は魔術で出来たバリアの上を掠ったのか、軌道を変えて黒魔の後ろに刺さる。
( -_-)「フ・・・ヤケになってワイヤーの無駄遣いか?ははは・・・貴様ももう終わりだな!!」
火の玉がまた襲いかかる。
それを避けながら名無しは手榴弾のピンを抜き、黒魔に投げた。
凄まじい爆発と爆風が起きる。
(;-_-)「クッ・・・だが焼け石に水というもの・・・」
(;-_-)「・・・!?」
名無しが─────いない。
(;-_-)「そんな馬鹿なッ・・・!こんな明るいなかでどこに逃げ隠れれると・・・」
いや。そもそもただ爆発を起こした程度で時空間魔術でも使わねば隠れる時間はない。
(;-_-)「どこに・・・!!」
周りを見回す黒魔。しかし、どこに隠れようともこれだけのバリアを敷いてれば何も手出しは出来ない。
だが、それは誤認だった。
一瞬、自分の正面、目の前に魔力で作られた剣が目に入る。バリアの位置はとうに突き抜けている。
(;-_-)「なァッ!?」
両腕を交差させてガードする。魔力で作られた剣は恐ろしく切れ味がよく、両腕を貫通する。
言い様もしれない痛み。腕に焼けた鉄を突っ込まれたような感覚。
だがそれを無視して、剣の軌道を僅かに逸らす。
それで顔に当たることは免れる。剣は顔の横を通過していき─────
背中を貫通し、腹を突き出た。
(;-_-)「ガ・・・な・・・ん・・なに・・」
そして黒魔は見た。
急に目の前で膨れ上がって出現する魔力の剣を。
────そしてそれは黒魔の心臓を貫通した。
(;-_-)「ゴフッ!!」
血を吹き出す黒魔。そして彼はかろうじて、
剣が地中から出てきていることを確認して、息絶えた。
ドサッと、魔力で作られた剣が消えると同時に黒魔が地に倒れる。
(´・ω・`)「ふう・・・死んだか。」
両手に持っていた白刀二本と、控えのもう一本を持ちつつ黒魔の死角となっていた穴ぼこから出てくる名無し。
その体は煤だらけである。
(´・ω・`)「ゴホッゴホッ・・・あー・・・無理するもんじゃないなぁ・・・魔力をこんなにフルに使ったの初めてだ。」
名無しは封印の剣に切られていないので魔力は出せる。体の方は火傷が数ヵ所で済んでいる。
(´・ω・`)「黒魔・・・無差別攻撃を開始した時点でお前の負けだ。」
死体に語る。まだ黒魔が生み出した太陽は輝いていて、地に飛び火した火は消えかかっていた。
(´・ω・`)「火の玉を止めるために・・・簡単なことだ、お前を殺せばいい。」
(´・ω・`)「あの・・・太陽から放たれた火の玉によって隠れる場所が出来たのは偶然だったけどね。残ってた手榴弾で穴ぼこをもっと広げさせてもらった。」
(´・ω・`)「・・・あのワイヤーはヤケなんかじゃなくどの程度の細さならバリアを通すか見てただけだ。まぁ普通はわからないだろうがね。」
そして名無しは白刀をもう一度構える。これこそが勝負に決着をつけたのだった。
(´・ω・`)「この白刀はこれを媒介にして太刀を長くしたり出来る。魔力は粘土のようなものだ。集中すれば太刀を糸のごとく細くすることも出来る。」
(´・ω・`)「あとは太刀長くして地中をたどって君の近くまで太刀を伸ばし、
糸のように短くして君のバリア内に侵入し、太刀をもとの太さに変えて君に突き刺す。」
(´・ω・`)「その際に三本もの刀にそれをやったんだ。ホント魔力が尽きそうだよ・・・」
わざとらしく溜め息をつく名無し。いや疲れたというのは本当だろう。
太陽がしぼんでいく。黒魔の命がなくなり、もう持続する魔力もないのか。
それとも命令系統が消えたので消えようとしたのか、それさえも分からない。
それを名無しは完全に太陽が消えるまでずっと見守る。
そして、黒魔が天敵・名無しに仕組んだ対抗策が完全に消える。
名無しは黒魔の死体をうつぶせから仰向けに変え、その顔を見つめた。
そして一言、
(´・ω・`)「久しぶりにいい勝負だった、乙。」
と言った。
明るかった太陽が消え、蛍の明かりのような寂しげではかない光を灯す名月が姿を現す。
それは祝福でもなく。
健闘をたたえるでもなく。
ただ、優しい光で見守るのみであった。
第十一話 完
最終更新:2007年12月13日 16:15