1◆


「よく来たなオーヴァン。それにフォルテ。我々は君たちを歓迎しよう」

 そうして踏み入った教会の奥で、その男――榊は仰々しい手振りでオーヴァンたちを迎え入れた。
 だがその場所は、一般にイメージされる教会の内装とは明らかに異なっていた。

「知識の蛇、か」
 その場所に見覚えのあったオーヴァンがそう口にする。
 そう。言峰神父が口にした通り、榊は二人をGMの本拠地とでも言うべきエリアへと招き入れたのだ。
 背後を振り返っても、教会の扉はすでに消え去っている。
 文字通り、後戻りできない場所に来た、という訳だ。

「それで榊、わざわざこんな場所にまで俺たちを呼び寄せた目的はいったい何だ?」
 自らの絶対性を誇示するかのように浮遊する台座に佇む榊へと、オーヴァンは問いかける。

 後戻りができないことなど、とっくの昔に理解している。
 このデスゲームが始まり、榊と手を組んだ時点で、そんな選択肢はなくなったのだ。
 ……いいや。そんなものは初めから――『The World』で志乃を……■■をPKした時から、残されてなどいなかったのだろう。


「君たちをこの場所まで招き入れた目的。
 それは、月海原学園を拠点としていたプレイヤーたち、対主催生徒会とやらの面々と戦ってもらうためだ」
「……それは、どういう意味だ?」

 対主催生徒会というのは、おそらくハセヲたちの事だろう。
 彼らと戦ってくれと頼むために、自分たちを招き入れたと榊は言う。
 だが、だからこそ意味が分からない。
 学園から忽然と姿を消したとはいえ、これがデスゲームである以上、ハセヲたちと戦うことは運命付けられている。
 それをわざわざ、こうして本拠地にまで招き入れて、戦ってくれと頼むのはどういうことなのか。

「実に簡単な話さ。バトルロワイアルを完遂するために、君たちの協力が必要な状況になった、というだけの事だ。
 いやむしろ、このデスゲームはすでに破綻している、といったほうが正確かな?
 なにしろ、彼らはすでにゲームの表舞台から抜け出している。闇雲にフィールドを探し回ったところで、彼らを見つけることなどまず不可能だろう」
「ほう」

 オーヴァンは感心したように呟く。
 表舞台から抜け出した、と榊は言った。ハセヲたちが姿を消したのは、それが理由だったという訳か。
 想定していた理由の一つではあったが、どうやらハセヲの仲間には優秀なハッカーがいるらしい。

 そして、表舞台から抜け出したという事は、デスゲームのルールから逃れたという事。
 さすがにまだ完全に逃れたわけではないだろうが、榊らGMの裏をかくことに成功したのは確からしい。
 このデスゲームの打破を目的とする彼らからすれば、間違いなく大きな成果だと言えるだろう。

「無論、彼らを敗者として扱い、君たち二人で戦い生き残った方を優勝者とすることも可能だが……そのような決着など、君たちは望まないだろう?」
「当然だ!」
 そう声を荒げたのは、言うまでもなくフォルテだ。
 彼は怒りを露わにし、余裕を見せる榊へと詰め寄る。

「御託はいい、さっさと答えろ! ヤツらは……キリトはいったいどこにいる!」
「それは現在調査中だ。とは言っても、そう時間はかからないだろうがね。
 何故なら、彼らがどんな手段を使おうと、ログアウトすることだけは不可能だからだ。
 そう遠くなく、彼らは何らかの行動を開始する。そうなれば、彼らを見つけることなど簡単だ。
 我々はただ、じっとその時を待てばいい」
「ッ……!」
 そう言って挑発的な笑みを浮かべる榊に対し、フォルテはどうにか湧き上がる苛立ちを抑え込む。

 榊の言い分はわかる。焦ったところでどうにもならないことも理解している。
 湧き上がる苛立ちの理由も、ただ人間の思惑に乗せられることが気に食わないというだけ。
 だからこの場は堪える。今はキリト達の情報を得ることが先決だ。
 ただ待っているだけで奴らの居場所がわかるというのなら、それに越したことはない。
 なぜなら、ヤツだけは、この手で破壊しないと気が済まないからだ。
 そのための機会を、こんなどうでもいい人間への怒りで不意にするわけにはいかない。

 ……それにどうせ、最期にはすべて壊すのだ。
 例え榊が何を考えていようと、キリトとの決着がついた後、その思惑諸共破壊してしまえばいい。


「……だがまあ、それはそれとして、だ。このまま何もしないでいるのも退屈だろう?
 ちょっとした余興を用意してある。君にその気があるのなら、参加してもらえるとありがたい」
「………何をすればいい」
「なに。ちょっとしたテストに協力してもらうだけさ。
 君はただ、その力を存分に振るってくれるだけでいい」

 そんなフォルテの考えを知ってか知らずか、その問い返しに対し、榊は意味深な笑みを浮かべるのだった。

      §

「ここは……」

 そうして榊に案内された場所は、一見すればアリーナの闘技場のような場所だった。
 だがそうでないことは、実際にアリーナで戦ったことのあるフォルテにはすぐにわかった。
 何しろ賑やかしのNPCがいなければ実況者もいない。観客席には閑散とした空席だけが広がっていた。

「ここはアリーナのデータをコピーしたエリアだ。
 君にはここで、あるプレイヤーと戦ってもらう」
 榊がそう言うと同時に、フォルテの居る闘技場に新たな人物が転送されてきた。
「グ……オ、O噁……」
 現れたのは、両肩に大角の生えた黒いマントで覆い隠した一体のネットナビだった。
 しかしだいぶ深くAIDAに侵食されているらしく、その身体はほぼ全身が黒いバグ――AIDAに侵食されている。
 零れ聞こえる声も呻き声ばかりで、その様子からは会話が成立するようにはとても思えなかった。
 このネットナビと比べれば、まだアスナやボルドーの方が正気を保っていたと言えるだろう。

「彼はダークマン。我々GMのメンバーの一人だったナビであり、
 そして君がオーヴァンから渡された“力”の一つ、第七相『復讐する者(タルヴォス)』の碑文の前任者だ。
 まずは彼と戦い、その力を証明してもらおう」

 榊はそう口にすると、オーヴァンとともに闘技場から退場した。
 残されたのはフォルテとダークマンの二人だけ。
 他に何かが転送されてくる様子もないことから、一対一で戦えということらしい。

「フン。たとえAIDA=PC化していようと、ただのネットナビが今のオレに敵うものか」
 フォルテはつまらなさげに鼻を鳴らすと、呻き声を漏らすダークマンへと相対した。
 同時にその右手に収束される、ネットナビ一体を破壊するのには十分過ぎるほど高のエネルギー。

 AIDA=PCから奪うべき力など、もはや何もない。
 ネオの力を奪い、それによってAIDA本体さえも喰らった今、その力はただのAIDA=PCを完全に上回っている。
 こんなものは余興にすらならない。これが榊の目論見だというのなら、さっさと破壊し終わらしてしまうだけだ。

「――――――――」
「む」
 しかしフォルテの行動に反応したのか、呻くばかりだったダークマンの様子が一変する。
 漏れ出ていた呻き声が止まり、周囲に散漫に放たれていた微かな狂気が、明確な殺意へと変わってフォルテへと向けられる。

 その殺意を感じ取ったフォルテは、即座に収束したエネルギーをダークマンへと放つが、ダークマンは素早く横へと回避する。
 同時にその手が地面へと叩き付けられ、その動作を引き金として放たれる《フレイムタワー》。
 燃え盛る火柱が連続して発生し、一直線にフォルテへと襲い掛かる。

「無駄なことを。その程度の攻撃など、今のオレには無意味だ」
 だが対するフォルテは動じることなく、真正面からその火柱を受け止めた。
 直後、フォルテの全身から黒白の光を放つ《ダークネスオーラ》が発生し、火柱は僅かなダメージも与えることなく霧散した。

 《ダークネスオーラ》は三〇〇ポイントまでのダメージを無効化する、オーラ系最強の守りだ。
 その代わり他のオーラと比べて効果時間が短くなっているのだが、その欠点もフォルテ本来のオーラと統合されたことでなくなっている。
 純粋に大ダメージを与える以外で破壊するには、特殊効果を無効化するスキルか、心意攻撃のようなイリーガルな手段を使うしかない。

 しかしただのAIDA=PCでは、そのいずれの条件も満たせない。
 いかに通常のシステムから外れようと、それだけではシステムは越えられないことを、AIDA本体を食らったフォルテは理解している。
 加えて『第七相の碑文』の前任者ということは、現在は『碑文』を持っていないことも推測できる。
 つまりダークマンの持つイリーガルな力は、AIDAによるもの一つきり。
 フォルテがダークマンを警戒する理由など、何一つとして存在しなかった。

 ――――ダークマンの身体に寄生した異形が、その眼を開くまでは。

「コシュー…………」
「ッ―――!」
 背後から放たれた特徴的な呼吸音に、フォルテは咄嗟に振り返る。
 どうやらダークマンは、《フレイムタワー》を囮にして一瞬で背後へと回り込んだらしい。

「《ダーク……シャドー》……」
 そして振り上げられた右手に現れる、闇色の斧。
 それを見た瞬間、フォルテは直感的にその場から飛び退いた。
 だが背後を取られた分反応が一瞬遅れ、《ダークネスオーラ》と《ダークシャドー》が接触し、
 まるで紙を引き破り捨てるかのように、闇色の斧が黒白のオーラを引き裂いた。
 直感に従いとっさに回避しなければ、間違いなく致命傷を受けていただろう。

 ……だが、今ダークマンが放った攻撃スキル。それ自体からは、《ダークネスオーラ》を破壊するほどの力は感じられなかった。
 しかし現実として、《ダークネスオーラ》は破壊された。
 その彼我の能力差を無視した一方的な干渉力に、フォルテは覚えがあった。

「チィッ! まさかキサマ如きが“あの力”を使えるとはな……!」
 その確信とともに、フォルテはダークマンに対する警戒を最大値にまで引き上げる。
 今ダークマンが放った攻撃スキル。それは間違いなく、シルバー・クロウらが使ったあのスキルと同じものだ。
 でなければ一度は己の一撃を防ぎ切った《ダークネスオーラ》が、こうも容易く破壊されるはずがない。
 そしてすぐに気付いた。先ほどまでのダークマンにはなかった、その異常に。

「なっ、キサマの“それ”は……!」
 ダークマンの体を覆うマントの留め具らしき部位。
 そこには、得てして機械的な見た目になりやすいネットナビにはあり得ない、あまりにも生物的(グロテスク)な眼球があった。
 先ほどまで気づかなかったのは、その瞼が閉じられていたからか。

 だがそんなことはどうでもよかった。
 フォルテにとって重要なのは、その眼球に見覚えがあったという事だ。
 そう。それはオーヴァンから見せられた画像に写っていたものと、完全に同じもの。

「あのロックマンと、同じ……!?」

 変わり果てたロックマンのシンボルマークを浸食していた、あの禍々し眼球だった。

      §

「あれは……もしやISSキットによるもの、か?」
「その通り。よくわかったなオーヴァン」
 ダークマンの姿を見て取ったオーヴァンの言葉に、流石という風に榊が応える。
 闘技場の舞台から転移した二人は、観客席の一角、司会者席へと移っていた。
 観客が一人も存在しない以上場所に意味などない。だというのにわざわざ司会者席を選ぶあたり、榊の性格が透けて見える。

「そう、あれこそがISSキット――正しくはインカ―ネイトシステム・スタディキット。
 AIDAや碑文とはまた違う、装備者にイリーガルな“力”を授けるアイテムさ」
「AIDAや碑文とは違う“力”、ね。それがフォルテのバリアを一撃で破ったモノの正体か」
「そうだ。ISSキットが齎す“力”、その名は《心意》。
 読んで字のごとく、使用者の意志力を源とする、ともすれば君達の『憑神』にも引けを取らぬ強大な力だ」
「なるほどな」
 得心が行ったという風にオーヴァンは頷く。

 榊が心意と呼んだ力に、オーヴァンは覚えがあった。
 ――シルバー・クロウ。
 彼やその同郷のプレイヤーたちが使用していたあの力。あれこそが《心意》を用いた攻撃だったのだろう。
 それならば『碑文』を持たぬはずの彼らが、AIDAを用いた自分の一撃に一瞬でも対抗できたことにも納得出来る。
 何しろフォルテのバリアを紙切れの様に破る“力”だ。通常のプレイヤーではまず勝ち目などない。
 彼らにとっての誤算は、自分が『AIDA』と『碑文』、二つの“力”を持っていたことに尽きるだろう。

 そしてISSキットは、そんな“力”を装備者に与えるという。
 なるほど。確かにそれならば、何の力も持たないプレイヤーでさえも、このイリーガルな力の跋扈するデスゲームで優勝する可能性を得られるだろう。
 AIDAの種子に、ISSキット。イリーガルな力を与える要素が、二つもこのデスゲームにはあったのだから。
 ――――だが。

「相応のリスクも、勿論あるんだろう?」

 シルバー・クロウたちの見せた心意に比べ、ダークマンのそれはあまりにも禍々しすぎる。
 例えるのならば、碑文に対するAIDAのそれ。
 加えて言えば、AIDAだけが原因だとするには、ダークマンの様子は異常に過ぎる。
 ならばダークマンの異常は、何が別の要因――つまりはISSキットに原因があると考えるのが当然だ。

「当然ではないか。何のリスクもなく得られる力などありはしないよ」
 榊の答えは“肯定”。
 彼はISSキットの危険性を一切隠すことなく認める。

「そもそも《心意》とは、イメージによってシステムを超越し、《事象の上書き(オーバーライド)》を発生させることで発動する。
 故に通常のシステムでは心意技に対抗できず、対抗できるのは同様にシステムを超越した力によるしかない」

 つまりは同じ『心意』か、それこそ『碑文』のような力だ。
 あるいは、人々の想念(イメージ)によって形作られた英霊(サーヴァント)やその宝具も該当するだろう。
 サーヴァントについては、オーヴァンはまだ把握していないが、GMである榊は当然把握している。
 だがそれは、わざわざここで語ることではない。

「ここで重要なのは、イメージによって《事象の上書き》を引き起こす、という点だ。
 心意はイメージを源とする関係上、使用する際の感情によって二つの属性に分類される。
 すなわち正と負。肯定的な感情と否定的な感情だ。
 対してISSキットがもたらす心意は破壊の心意。そして破壊とは即ち、対象の否定だ。
 ISSキットはたしかに装備者に『力』を齎す。だが同時に、その『力』――負の心意による破壊のイメージを押し付けもするのだ。
 なぜなら、心意の発動が可能になるほどに装備者の感情を増幅させる、というのがISSキットによって心意が使用可能になる仕組みだからね。
 言ってしまえば、装備者のイメージを《上書き(オーバーライド)》することで、結果として心意の発動を可能とさせているわけだ」

 無論、いま語られた原理は榊の推測に過ぎない。
 だがISSキットを装備した者が負の感情に引き摺られることは確かであり、
 そして重要なのは推測の内容用ではなく、ISSキットを装備したことで生じるその結果。

「―――だが。
 AIDAによって感情のリミッターを外された者が、ISSキットによって感情を増幅されてしまえば、どうなると思う?」

 答えるまでもない。
 今フォルテと戦っているダークマンの状態が、その答えだ。
 際限なく増幅された負の感情は、そう時間を掛けずに装備者の心を塗り潰し、その精神を破壊する。
 おそらく今のダークマンは、目の前の敵を破壊することしか考えられなくなっているだろう。
 そして一つ確かなことは、AIDAとISSキットをダークマンに齎したのは榊だということだ。

「なるほど。彼の状態はわかった。だが……君は大丈夫なのか?」
「……何がだね」
「彼をGMメンバーの一人だった、と言っていただろう?
 つまり表面上だけであっても、仲間だったということだ。それをあんな状態にしてしまって大丈夫なのかと訊いている。
 これはさすがに、越権行為だと思うが」

 GMが一枚岩でないことは把握している。
 彼らは己が目的のために、GMという立場を利用しているのだ。
 そんな連中を一つにまとめ上げ、GM全体としての目的に向かわせるのが監督役の役割だろう。
 当然、その行いが監督役の目に余れば、そのGMは罰せられる……最悪デリートされることになるだろう。
 そして榊のこの行いは、どう考えても越権行為に思えるものだ。

 オーヴァンにとっては今初めて知ったダークマンの存在などどうでもよかった。
 だがもしダークマンの事が監督役に知られれば、榊は高い確率で処罰を受けるだろう。
 なにしろ榊は、自らの目的のために仲間の一人を使い潰したのだ。
 彼らの間で何があったかは知らないが、そうなってしまえば、最悪自分達も巻き添えで処分されかねない。
 そうならなかったとしても、せっかくここまで協力したのだ。いまさらGMとの繋がりが切れるのは御免被りたい。
 自分がGMに協力した理由――“真実”は、まだその姿を現していないのだから。


「なんだ、そんな事か。別に問題はあるまい。
 彼の役割は、すでにその意味を喪失している。あのままGMとして起用し続けたところで、何の役にも立たなかっただろうよ。
 それくらいならば、この榊が有効に活用してやった方が、仮にもGMだった者として本望だろうよ」
 しかしオーヴァンの問いに、榊は拍子抜けしたように答える。
 まるでそんなどうでもいい事を訊かれるとは思わなかった、とでもいった風に。

 ダークマンにどんな役割が与えられていたかは知らない。
 だが仮にもGMとして起用されたのだ。その役割がデスゲームの運営に必要なものだったことは間違いない。
 しかしデスゲームが最終局面にまで進行したことにより、彼は用済みとなってしまったのだろう。
 いや、榊の言い振りからすると、役割を終えたのではなく、“役割を果たす意味がなくなった”と言うべきか。
 ……それがGMとしての立場からの見解か、榊個人の目的からの見解かは別として。
 そうしてGMである意味をなくしたダークマンを、榊が“再利用”した結果が今の状態というわけだ。

「それに、何も無理にああしたわけではないとも。挽回の機会は与えた。その結果が今の彼だ。
 いかに規律に厳格な彼女とて、彼自身の行動と選択の結果となれば、黙認する他あるまい。
 ましてやこれは、バトルロワイアルを進行させるために必要なことなのだからな」

 榊の表情から余裕は消えない。
 本当に大丈夫だと確信しているのか。あるいは、“処罰されても大丈夫なように手を打っている”のか。

「そうか。それなら別に構わないが……。
 だが、せいぜいやり過ぎないことだ。君が処罰されてしまっては、俺が困る」
「無論だとも。私も消されたくはないからね。そこら辺の匙加減はちゃんと弁えているさ」

 いずれにせよ、榊がデスゲームの進行に積極的なのは確かだ。
 そして結果を出している以上、監督役も手出しできないという訳か。
 ……たとえその裏に、どんな目的が隠れていたとしても。


「しかし興醒めだな。AIDAとISSキット、二つの力を得ていながらこの程度とは。
 いくら暴走状態とはいえ、いやだからこそか。
 型に嵌まったままの力しか行使できないようでは、新たな力を得ることなどできはしまい。
 例え名の知れた暗殺者であろうと、所詮はただの敗北者に過ぎんという事だな」

 そうして、話は終わったと判断したのだろう。
 眼下の闘技場の様子を観て、榊はつまらなさ気にそう言い捨てた。
 その闘技場では、一見すれば、ダークマンがフォルテを相手に優勢に戦っていた。
 ―――そう。あくまで、一見では。


     2◆◆


 フォルテの周囲に闇色の穴が開かれ、そこから無数の蝙蝠が出現する。
 ダークマンの必殺技の一つ、《ブラックウィング》。
 止めどなく現れる蝙蝠の群れは、まるでそれ自体が意思を持っているかのようにフォルテへと殺到する。
 さらに波打つような軌道で放たれた《アイスウェーブ》が、その蝙蝠の群れの合間を縫うようにフォルテへと襲い掛かる。

「チィッ……!」
 フォルテは舌打ちをしつつ蝙蝠の群れを掻い潜り、同時に地面へと深く身を沈め氷の手裏剣をやり過ごす。
 そしてその直後、大きくその場から飛び上がり――背後に遠隔発動された《ダークシャドー》を寸でのところで回避する。
 だが襲い掛かってくるのは《ダークシャドー》だけではない。
 飛び上がったフォルテを狙い澄ましたかのように、今度はダークマン自身がその手に《ダークシャドー》を発動させ襲い掛かってくる。

 しかしフォルテは、すでにバスターへと換装させていた左腕をダークマンへと突き付け、《エアバースト》で迎撃する。
 思わぬカウンターにダークマンは動きを止め、《ダークシャドー》を盾として自身へと迫る光弾から身を守る。
 しかしフォルテはその間に、残されていた右手にエネルギーを集め、《アースブレイク》を発動する。

 放たれた強烈な破壊エネルギー。
 着弾と同時に生じた爆発が、ダークマンの姿を飲み込んでいく。
 だがその直後、爆煙の中から《アイスウェーブ》が飛び出し、フォルテへと飛来する。
 当然フォルテはそれを回避し、狙いを外した《アイスウェーブ》は地面へと命中し凍結させる。
 しかしその《アイスウェーブ》は、フォルテの追撃を防ぐための牽制に過ぎない。
 その証拠に爆煙が晴れたその場所には、多少煤けてはいるが、ほぼ無傷と言っていいダークマンの姿があった。

「……やはりな」
 そのダークマンを見て、フォルテは苛立たしげに呟く。

 《フレイムタワー》も《アイスウェーブ》も、《ブラックウィング》さえも今のフォルテにとっては大した攻撃ではない。
 すでに《ダークネスオーラ》が破られているとはいえ、例え直撃したところで、一度や二度程度なら何の支障もないだろう。
 だがその程度の攻撃に対し、フォルテは回避を余儀なくされている。
 それはなぜか。
 簡単だ。ダークマンが今もその手に発動させ続けている《ダークシャドー》。それこそがダークマンの攻撃に対し、フォルテが回避行動を余儀なくされている要因だった。

 元の技が何であれ、今のダークマンの《ダークシャドー》は心意技として放たれている。
 そして心意技である以上その《ダークシャドー》は心意のようなイリーガルな力でしか防げず、しかし今のフォルテには、心意を防げる武器や手段・能力が存在しない。
 いや、あるいは存在するのかもしれないが、フォルテがそれを認識していない以上、存在しないのと同じだ。
 加えてダークマンは他の技も的確に使うことで、フォルテを徐々に追い詰めようとしていた。

 心意技化した《ダークシャドー》と違い、ダークマンの他の技は心意技ではない。
 迎撃は容易であり、その上でダークマンを攻撃することすら今のフォルテには可能だ。
 だがそうやって迎撃した瞬間、その隙を遠隔発動された《ダークシャドー》が襲い掛かってくるのだ。
 防御が不可能であり、直撃すれば大ダメージを受けてしまう以上、そんな隙を晒すわけにはいかない。
 さらには《ダークシャドー》以外の心意技を有する可能性も考えれば、フォルテは様子見に徹するしかなかったのだ。

 ……そう、様子見だ。
 フォルテはすでに、ダークマンの戦闘能力に見切りをつけ始めていた。

「その“力”、確かに強力な力ではあるが……」
 言いながらフォルテは、右手をダークマンへと突き付け《アースブレイカー》を放つ。
「コシュー………」
 だがその一撃は、その手の《ダークシャドー》によって容易く迎撃される。
 結果フォルテの《アースブレイカー》は、ダークマンの周囲を破壊するだけに終わる。

 《アースブレイカー》の威力が劣っているのではない。
 これはただ単純に、心意技がそういう性質を持つというだけの話だ。
 ダークマンは心意以外では防げない攻撃で迎撃することで、《アースブレイカー》を打ち消しているにすぎないのだ。

「他の“力”と同様、使い手が弱者では何の意味もない。
 どうやってその力を得たのかは知らないが、キサマには過ぎた力だったな」
 だからこそフォルテは、ダークマンというネットナビに見切りをつける。
 こいつは心意もAIDAも使いこなせていない。
 たとえ強力な力を与えられていようと、他の弱者と同じ、ただの有象無象に過ぎない、と。

 そもそもフォルテが回避に徹していたのは、《ダークシャドー》以外の心意技を警戒してのこと。
 たとえダークマンがどれだけイリーガルな力で強化されていようと、それはフォルテも同じだ。
 心意技という強力無比な攻撃手段がない限り、ダークマン程度ではフォルテの相手にはならないのだ。


「――――オ、オオ噁。O圬寘弙菸歍廞摽………ッッ!!!」
 だがフォルテがそう口にした瞬間、唐突にダークマンが叫び声を上げ、同時に無数の闇色の穴がフォルテの全方位に展開された。
「む、これは」
 僅かな逃げ場すらも許さない《ブラックウィング》の最大展開。
 今の言葉が何かの琴線に触れたのか、あるいは一向に倒せないフォルテに痺れを切らしたのか。
 いずれにせよ、これが今のダークマンにできる最大規模の攻撃であることに間違いはなく、
 …………しかし。

「無駄だ。キサマの限界はすでに見切った」
 闇色の穴から溢れ出した夥しい数の蝙蝠の群れが、もはや黒い津波にも等しい様相でフォルテへと襲い掛かる。
 しかしフォルテは微塵の動揺も見せることなく、その右手を腰に佩いた直刀へと添え、
 そして次の瞬間。

「消えろ」
 抜き放たれた刃の一撃によって、フォルテへと迫っていた蝙蝠の群れの大半が消し飛ばされ、
 さらに次の瞬間。
 フォルテの姿が、その背後に出現した《ダークシャドー》を置き去りにして、消えた。
 これにはダークマンも動揺を隠せず、その直後、自身の目前に現れたフォルテにさらなる驚愕を露わにする。

 《ダッシュコンドル》。
 前方一直線に超高速の突進攻撃を行う攻撃用バトルチップだ。

 すでに何度も見た手だ。《ブラックウィング》を迎撃すれば、《ダークシャドー》が遠隔発動されることはわかっていた。
 ゆえにフォルテは、その特性を最大限に発揮した《ジ・インフィニティ》によって《ブラックウィング》を迎撃し、直後に《ダッシュコンドル》を発動させダークマンとの距離を一瞬で詰めたのだ。

「終わりだ」
 フォルテが突進の勢いのまま、その手の直刀を振りかぶる。
「ッッッ………!!!」
 いかにその手に《ダークシャドー》が発動されてようと、完全に手口を読まれ、動揺したダークマンでは迎撃は間に合わない。
 加えて《ブラックウィング》を迎撃した先の一撃。あれを考えれば、相打ちを狙うこともあり得ない。
 そんなことをすれば、たとえ相手に致命傷を与えようと、こちらのデリートは必至。
 故にダークマンがとった手は、後方への回避。そして空振った斬撃とともに放たれるだろう衝撃に対する防御であった。
 だが。

「ッ―――!?」
 寸でのところで回避したフォルテの斬撃は、ダークマンの予測とは異なり衝撃を放たず、ただその斥力によって空気を唸らせるだけに終わった。


 フォルテの武器である《ジ・インフィニティ》の効果。
 それは鞘に納めている時間が長ければ長いほど、抜刀直後の一撃が無限に増幅される、というものだ。
 ただし制限として、増幅効果が発生するのは戦闘開始後からであり、増幅されるのも最初の一撃のみ。
 二撃目以降に効果はなく、再び威力を増幅させるにはもう一度鞘に納めなければならないのだが。
 しかしその制限を踏まえたとしても、『七星外装』と呼ばれるにふさわしい強化外装だといえるだろう。

 そして当然この効果を、装備者たるフォルテは把握している。
 つまり《ダッシュコンドル》の加速によって放たれた二撃目はフェイントであり、
 そのフェイントに釣られたダークマンに、フォルテの追撃を回避するすべはない。


「ハアァッッ―――!!」
 直刀を振り抜くと同時に、フォルテは空いた左手にエネルギーを収束させる。
 そして放たれた《アースブレイカー》は容赦なくダークマンを吹き飛ばし、その体を闘技場の透明な外壁へと叩き付ける。

「、ッァ………!」
 防御の上からでさえ総身を砕くその威力に、ダークマンが苦悶の声を漏らす。
 その体は、ただの一撃で満身創痍。まだ息があるのは、速射性を優先した結果威力が落ちたが故か、イリーガルな力で強化されていたが故か。
 だがいずれにせよ、ダークマンにはもはや次の一撃を防ぐ余力はない。膝こそついていないが、立っているのがやっとという有り様だ。

「オオ……ッ!」
 より確実に止めを刺すためにか、そんなダークマンへとフォルテは距離を詰める。
 直刀はすでに鞘へと納められている。
 わずかでも威力を高めるためか。あるいはほかの攻撃によって止めを刺すためか。

 ダメージによってマヒしているのか、対するダークマンに動きはない。
 いやそもそも、フォルテの追撃を回避する余地などない。
 背後は壁。上や左右に逃げたところで、フォルテは確実に追尾してくるだろう。
 ゆえに、
 フォルテが残り一歩分の距離にまで踏み込み、鞘に納められた直刀の柄を握った、その瞬間――――。

 完全に避けようのないタイミングで、ダークマンから雷撃を伴った閃光が放たれた。


 ―――《キラービーム》。
 それがダークマンの放った攻撃の名称だ。
 この技はダークマンの持つ技の中で最も発動、攻撃速度が早く、さらにガードブレイク、インビジ無効、麻痺といった効果が付いている。
 この麻痺効果さえ発生させられれば、たとえ《キラービーム》自体が直撃せずとも、《ダークシャドー》による追撃によってほぼ確実に大ダメージを与えられるだろう。

 この技をダークマンは、フォルテとの戦いにおいてこの瞬間まで使用していなかった。
 それは偏に、フォルテを確実に仕留めるため。強大な敵を倒すために伏せられた、秘策と言える一手だ。
 そんな、今のダークマンの状態ではまずありえないその思考、戦術は、破壊衝動に飲まれてなお残る暗殺者としての矜持ゆえか。
 その、ダークマンの最後の意地ともいえる一撃を、

 フォルテは、紙一重で回避していた。

 避けようのないタイミングで放たれた一撃。それを回避できたのは、ピンクから奪った未来予測が故。
 発動の予兆さえ掴めれば、今のフォルテはたとえ視覚外からの攻撃だろうと対処できる。
 フォルテはダークマンが《キラービーム》を放とうとしたその瞬間には、すでに回避行動をとっていたのだ。

「ッ――――!」
 その事実に、ダークマンはフォルテに接近された時以上の驚愕を見せる。
 《キラービーム》からの追撃のために振り上げた《ダークシャドー》は、もはやフォルテを迎撃するには間に合わない。

「終わりだ」
 フォルテはそう宣告しながら、直刀を鞘から抜き放つ。
 チャージ時間は僅か二秒弱。だがそれでも、瀕死のダークマンを倒すには十分すぎる。
 そうして振り抜かれた一閃。
 直刀の刃はダークマンを右脇から左肩へと袈裟に切り裂き、マントの留め具に寄生していた眼球諸共にその体を両断する。

 ―――以て戦闘は決着した。
 ダークマンの体は両断され、たとえ生きていようと、もはや戦うことなど不可能だ。
 対するフォルテは、オーラこそ破られてはいるが、ダメージと言える傷は全くの皆無。
 ゆえにその結果は、フォルテの圧勝であると言えた。

      §

 地面に投げ出されたダークマンの上半身へと近づく。
「……チッ」
 だがダークマンの状態を見て、フォルテは小さく舌打ちをする。

 マントの留め具にあった眼球は完全に両断され、すでにデータ片となって消え去っている。
 止めの一撃を放った際に、同時に破壊してしまったのだろう。
 これではそのデータを奪い、“あの力”を手に入れることはできない。
 もう少し手加減するべきだったか、と考え、すぐに否定する。
  “あの力”の厄介さは身に染みている。“あの力”そのものか、何かしらの対抗手段を得るまでは、油断するべきではない。

「………………コシュー」
「む。しぶといな、まだ息があったのか」

 不意に聞こえた独特な呼吸音に、フォルテは僅かばかり感心する。
 AIDA=PC化した影響ではあるだろうが、右上半身だけになっても存命しているのだから。
 だが、それも余命は残り少ない。その証拠に、ダークマンの体は両断された面から崩壊が始まっている。

「コシュー……。オレは……そうか、負けたのか……。ヤツに……またしても……」
「ヤツ?」
 あの眼球が消滅したからか、正気を取り戻したらしいダークマンが朦朧とした意識でそう呟く。
 それに対し、フォルテは思わずといった風に問い返す。

 ヤツとはいったい誰だ。
 フォルテにダークマンと戦った記憶はない。だがダークマンは「またしても」と言った。
 つまりダークマンは今の戦いにおいて、フォルテではなく別の誰かと戦っていたつもりだったのだ。

「コシュー……。おまえは………フォルテ、か……。
 ということは………なるほど、榊の差し金か……。
 ク、クハハハ……。コシュー……滑稽だな。オレはもはや、ヤツと戦ってさえいなかったのか……」
「答えろ。ヤツとは誰だ」
「コシュー……決まっている。オレをこんな様にしたやつだ。そいつが誰かは……どうせすぐにわかる……。
 だが……その時になればおまえは、俺にデリートされなかった事を後悔するだろう……。
 ヤツがその身に宿した闇の深さは、オレなどとは比べ物にならない………。
 ヤツと相対した時、おまえを待つものは、デリートなど遥かに生温い『絶望』だけだ!!」

 フォルテの問いには答えず、ダークマンは残る力を振り絞るようにそう宣告する。
 実際、それで残る力をすべて使いつくしたのだろう。ダークマンの体は、急速に崩壊を進めていった。

「コシュー……コシュー……。
 セレナード……、オレは……おまえを――――」

 そうしてダークマンは、無数のデータ片となって消えていった。
 どうやらダークマンは、あのセレナードの関係者だったらしい。しかし結局“ヤツ”とやらの正体はわからなかった。
 ダークマンにAIDAや“あの力” を与えたであろう存在。その口ぶりからして、榊の事ではないようだが………。

 パチ、パチ、パチ、と。
 無音となった闘技場に、乾いた音が響く。
 音の発生源へと視線を向ければ、司会者席から榊が拍手を送っていた。

「お見事だ、フォルテ。やはり彼程度では、今の君を相手にするには不足だったようだね」
「つまらん御託はいい。余興がこれで終わりなら、さっさとヤツ等を探しに行け」
「いやいや、最初に言ったはずだぞ? “まずは”、とね。
 ダークマンとの戦いなど、ただのテストに過ぎない。
 彼に勝てないようでは、私の用意した本命と戦うことなど不可能だからな」

 榊がそう言うや否や、上空から黒色の閃光が飛来し、闘技場の中心へと着弾する。
 舞い上がった粉塵の中から発せられる圧は、ダークマンの比ではない。
 榊が口にした“本命”が現れたのだ。

「キサマは……っ!」
 その“本命”の姿を見て、堪らず口端が吊り上がる。
 ――――望む決着を付けられるかもしれない、と。
 知識の蛇へと招かれる直前に、言峰というNPCから聞かされた言葉が思い返される。

「――ロックマン!」
 その存在へと向けて、その名を口にする。
 目の前に現れた存在は間違いなく、このデスゲームでデリートされたはずのロックマンだった。

「そう、私が用意した“余興”の本命。君の本当の対戦相手。それは君の最大の宿敵、ロックマンだ!
 とは言っても、見ての通り、彼はもはや君の知るロックマンではないがね」

 その言葉に、改めてロックマンの姿を見る。
 どこか暗く染まった青い体/全身を侵食する黒いバグ。
 意思の光を失った無機質な瞳/禍々しい光を宿した胸元の眼球。
 なるほど。確かに目の前のヤツは、自分の知るロックマンとは違う。オーヴァンに見せられたあの画像の姿そのものだ。
 そして違うのは外見だけでない。
 その全身から放たれる気配も、以前のロックマンと比べ変わり果ててしまっている。
 ともすれば、ヤツは本当にロックマンなのかと疑ってしまいそうなほど。

「もちろん、以前と違うのは姿だけではない。
 AIDAにISSキット。以前の彼にはなかった様々な『力』を吸収し、可能な限り強化されている。
 君も様々な『力』を得てきているが、『心意』への対抗策を持っていないのなら、敗北する可能性は十分にあるだろう。
 ――それでも、彼と戦うかね?」

 榊のその言葉に、ふと湧いて出た疑念が掻き消える。
 目の前のヤツが本当にロックマンであろうと、外見を似せただけの偽物であろうと、そんなことはどうだっていい。
 そうだ。たとえ相手が何者であろうと、オレのすることは変わらない。

「こいつがどれだけ強くなっていようと関係ない。相手が何者であろうと、オレは全てを破壊し喰らうだけだ」

 眼前のロックマンと改めて相対する。
 あまりにもグロテスクで無機質な、以前とは変わり果てたその姿。
 コイツが本当にあのロックマンだというのなら、その真価はオペレーターがいてこそ発揮される。
 いやむしろ、オペレーターとの絆を力にするロックマンこそ、オレが本当に倒したい相手だと言えるだろう。

 しかしここにヤツのオペレーターは存在せず、その欠落を埋めるかのように、イリーガルな力をコイツは得ている。
 それはあたかも、オペレーターを必要とせず、様々な『力』を喰らってきたオレのように。

 だからこそ、これは一つの証明になる。
 オペレーターを否定するオレと、オペレーターを肯定するヤツ。
 そのどちらがネットナビとして正しい在り方なのか。

「ほう、言うではないか。
 ならばよろしい。我々GMの一員として新生したロックマンの『力』。存分に味わうといい!」
 榊がその言葉とともに、戦いの始まりを告げる。

 さあ、始めよう。
 様子見などせず、最初から全力で。
 一度は付け損ねた決着を、今この場でつけてやる―――!


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最終更新:2018年02月14日 15:45