2月9日にオープンした川俣正 通路 展ですが、会期の半分・折り返し地点を過ぎました。
佐藤研メンバーが見に来てくれないのがチョッピリ寂しいですが、ラボメンバーは毎日黙々とコールマイン研究をしています。展覧会自体も各メディア関係各方面で取り上げられ、ネット上でも賛否両論を巻き起こしています。先日、北海道新聞に大きくラボの事が紹介されました。
レポート第二弾になる今回は、僕が炭鉱に関わるようになった経緯や、コールマイン研究室のコンセプト・スタンスに触れてみます。
▲ラボの合言葉。一山一家!(炭鉱で使われていた言葉です)
オープンしてしばらくは慣れない事続きで対応に追われる毎日でしたが、3月に突入する頃にはラボの環境にも慣れ、それぞれのプロジェクトが軌道に乗りました。
ラボで活動していると、「どうしてコールマインを研究しているのですか?」という素朴な(ある意味当然の)質問を聞かれます。なぜか。そもそも僕がこのテーマをやり始めたきっかけというのは、札幌にいた10年前の事です。当時通っていたデザイン学校の課題で”フィールドワーク”というものがあり、各自フィールドへ飛び出して興味のあるテーマを見つけてきて作品として提出するというものでした。そこでテーマ探しをしていた時にたまたま出会ったのが炭鉱・鉱山でした。当時既に石炭産業は壊滅し炭鉱はほぼ皆無という状態でしたが、北海道では石を投げれば炭鉱関係者に当たるというくらい石炭産業に関わりが強く、閉山して何十年も経った今でも良くも悪くも地域に大きな影を落とし続けています。一つ上の世代は「炭鉱・炭鉱」と言っています。しかしその実態はもう目の前にはありません。ではそれは一体何なのだろうと。それが関心を持ったきっかけであり、動機と言えるのかもしれません。
北海道ひいては日本の近代化に欠かせなかった炭鉱。エネルギー問題や政治や地域の問題は勿論のこと、人の暮らし・文化・労働・システム・盛衰・死といった人間の営みが凝縮されたテーマです。僕の中で炭鉱は、限りなく本質に近く、核心に迫るテーマです。だからこそ今回の活動においても、展覧会の中とはいえ、面白おかしくアートに引き寄せただけ、あるいはパフォーマンスには絶対にしたくない(してはいけない)テーマなのです。
勘違いされやすいのですが、過去の遺産を単に分析・研究するという切り口だけではないのです。いわゆるノスタルジーだけでやっているわけではありません。過去→現在→未来だけの視点ではなく、未来→現在→過去の発想で、将来の日本にとって必要となる要素が過去に埋もれているのではないでしょうか。また、高齢化が進み財政破綻を向かえている旧産炭地の現在の姿は日本の未来の姿そのものです。今、炭鉱について考えることは近代を考えるだけでなく未来を考えることにつながると思うのです。
ラボのプロジェクトの基本概念は”過去・現在・未来”を通じて「伝える」「考える」「創る」です。また、本来社会学的な観点で研究・分析される事の多い分野ではありますが、そこをあえてクリエーターが行うことで、単なる研究を越えたクリエイティブかつ独自の切り口を提示したいと考えています。また、研究&ラボのスタンスとして”賑やかしの量”ではなく”鋭く掘り下げる質”に重きを置いています。その分、他のラボに比べて見た目の変化は地味ですが、ここは絶対に譲れない理念です。”パフォーマンスではない”&”見せるのではなく見られる”であり、必然性のない安易な参加型も良しとしない。
以上のような理由でコールマインは硬派なラボとして通っています。
▲その無骨な硬派ぶり(笑)を中和してくれる新メンバーが加わりました。大牟田出身の國盛麻衣佳さんです。なんと春から芸大の壁画の大学院に入学することが決まりました。
▲彼女もこれまで九州で独自に炭鉱のプロジェクトを展開していました。なんと今回は一平くんのヤグラプロジェクトとのコラボも実現しました。
3/2に研究報告オープンミーティングを行いました。各プロジェクトの進捗状況の報告や今後の展開、リサーチの計画などを話し合いました。ラボのアドバイザーでもある札幌国際大の吉岡先生にも海外帰りにお立ち寄りいただきました。
▲ミーティングの様子。メンバーが全員集合してテーブルを囲んでます。
▲菊地が司会をしながらメンバー各人が発表しました。
▲池田くんはアーカイブ作業の報告。「炭鉱ってカッコいいス!」。
▲北海道でのPJやリサーチについてもご紹介。普段黙々と研究しているラボの活動の内容を分かりやすく紹介できる貴重な機会となりました。
3/3-13まで室長の菊地が北海道にリサーチへ出かけました。炭鉱に関する現場に足を運び、たくさんの情報を集めてきました。この時期の北海道リサーチは雪との戦いです。
▲写っているのは僕ですが、さて、ここはどこでしょう?
▲北海道支部の林研究員。ラボでは彼が撮影した炭鉱遺産の映像を流してます。
▲菊地+北海道支部メンバー+吉岡先生でミーティングin札幌。
▲北海道支部の相馬研究員の音楽スタジオ。炭鉱盆唄プロジェクト進行中。
▲リサーチではこんなものも集めてきました。
具体的な成果物は今後ラボ内で紹介していきますので、ぜひ会場に足を運んでご覧ください。また3月はリサーチ月間なので、一平くんが常磐炭鉱に、國盛さんが九州にリサーチに行きます。
▲リサーチの一環として先日、茨城県常陸那珂の最新鋭の石炭火力発電所に見学ツアーに行ってきました。アクシデントもありましたが、池田添乗員の楽しい企画で普段は見られない現在の石炭の現場をリサーチしてきました。
▲道中では石炭クイズで予習をしながら発電所に到着。レクチャーを受けます。
▲構内見学では巨大なプラント群に一同感動。石炭を陸揚げするローダー。
▲帰りには近くの海岸で遊んできました。
展覧会に対しては賛否両論あるようですが、何だかんだと動きながらまだまだ会期は続きます。後半に向けて研究の成果が表面化していきますので、ぜひご覧ください。コールマインラボには今後のオファー(?)も来ていますし、ライフワークなので死ぬまでやると思いますが、ひとまず二ヶ月という切られた会期の中で、どこまでやれるか。一山一家の魂で力を合わせて盛り上げます。では。
最終更新:2008年03月19日 23:57