【主人公がスクープを探して校舎内をうろついていたとき……】
「ん……? あれは部長か?」
放課後の人気のない廊下で窓辺に立ち、オペラグラスを覗き込んでいる。
軽々と櫛が流れそうな黒髪と引き締まった口元は、二見刹那部長に違いない。
「部長、ここから何を見ているんですか?」
レンズの奥を注視する横から声を掛けると、彼女は俺に気付いてこちらに向き直った。
「あ、○○くん。そっちはスクープを見つかったの?」
「いえ、まだ」
「そうよね。そんなすぐに発見できないよね」
「で、部長が見ていたのは……?」
「○○くんも見てみる? 百聞は一見に、だから」
「はあ、そういうなら」
部長からオペラグラスを渡されて受け取る。
「向こうの校舎の屋上よ。給水塔のところ」
言われた通りに方角を合わせてピントを合わせる。
すると視界に入ってきたのは……
「なっ!?」
「どう、さっきはAだったけど、今はBに入っているようね」
屋上で半裸のまま抱き合っているカップル。
このまま見ていたら俺は出歯亀だ。
「部長はなんてものを見ているんですか!」
オペラグラスを突き返すと、彼女は再び熱心に見入り始めた。
「だってね、さっきあの2人がこそこそと屋上への階段を昇っていったのよ?
何をするつもりなのか気になるでしょ。あたしはただ、知りたかっただけ」
「そんなことは確認するまでもなく察するものです。第一、記事にできませんよ」
「ん~、それもそっか。仕方ないわね」
最終更新:2007年03月29日 02:49