どーなつの書庫
かめくん
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SF・かめくん
北野勇作著 徳間デュアル文庫
日常を普通に生きること
毎日仕事場でまじめに働き、帰りに商店街によって晩御飯を買い、共同トイレのアパートに帰る。時々河原で夕陽を眺めながらいろんなことを考える。行き付けの図書館にはあこがれの人がいて、通ううちに館員の人とも仲良くなる。
こんな日常を送るのは、人ではなく亀型のロボットかめくん。木星戦争に投入されるために開発されたかめくんが、どうしてそこにいるのか、かめくんにもわからない。必要のないメモリーは甲羅の中にしまわれているから。
木星戦争がどうなっているのかそれ自体誰にもわかっていないようなのだ。
淡々と日常を生きるかめくんと正体の見えない戦争という非日常。
それは普通に生きているつもりのわたしたちと遠いどこかで起きている戦争の姿に重なる。
かめくんは記憶(メモリー)を甲羅にしまって旅立っていく。新たな記憶で、かめくんの日々が失われていくのを感じながら。
わたしたちはその時が来たとき、なにを失っていくのだろう。
下町の商店街を生真面目に歩くかめくんの姿は、それだけで名作である。
(2002/05-12)
