「俺は田島、田島 順一(たじま じゅんいち)。
特技は目が光る。
短時間空が飛べる。
宇宙空間でも戦闘可能で打たれ強い。
ま、そんな所かな。
よろしく頼む」


「や! 今日もお勤めご苦労。
……?
……おかしいな。
いや、俺は怪我してなくても血の匂いがわかる
はずなんだが……」


「…やはり、おかしいな。
すまん、少し考えさせてくれ。
辻野が作る晩飯の献立を決めるよりも大変そうだ」


田島は目を細めている。
そして次の瞬間にはキスが出来るほど近づいて来た。
「……そうか、お前、呼吸してないな。
目の動きも偽物だ。
光に当たるとそれらしく動いているが、見ているわけじゃない。
……アンドロイド。
違う……俺の知らない何かで生体を乗り物にしているのか。
……趣味の悪い事をする……」


「お前、何しに来た?」
(誰かの役に、立つために)
「……そんな理由で、こんなとんでもない事をするのか。
これだけの技術を使って……?
話に聞く第7世界人だってそんな事はしないと思うぜ。
いずれにせよ。お前は信用ならんな。
この事は一応黙っといてやるが、俺に協力を求めようとするな」
(ゲーム、だけど)
「……快楽のために人に寄生するのか。
なんて事を。
いずれにせよ。お前は信用ならんな。
この事は一応黙っといてやるが、俺に協力を求めようとするな」


「……馴れ合う気は、無い」


「……悲しい歌だな。
いや、馴れ合う気は、無い」


「しつこいな…、お前も」


「……お前はいつも歌っているんだな。
天上の歌を。
……自分ではわかってないのか。
お前は可聴音域外でいつも音楽を奏でている。
あるいはお前の一部と言うべきか。
服のように音楽を身にまとう……。
まったく。
科学的にさえ正しければ、何やってもいいと言うわけでもないだろうに。
本当に一体お前は、何のためにここにいるんだろうな」


「んー、あー、何だ…、俺も考え直した。
俺は、たぶん、お前の友だ。
たとえお前が第7世界人であっても死ぬ時は、
誰かに拍手されながら死にたいだろ?
拍手は俺がしてやるよ」


「……いつも、お前は孤独な笑みを
浮かべているんだな。
まあ、この島は人外で一杯だ。
今さら少しそういうのが増えても、
俺は気にせんがね」


「暗いな」
田島は、目から光線を出して
電灯がわりにしている。
そして光らしたまま、歩き去っていった。


シマシマが歩いているのを見ていると、
田島と目があった。
驚いた顔をしている。
「こりゃ驚いたな、お前にも見えるんだな…。
トポロジーレーダーも時空不連続体知覚能力も無いのに。
…すごい、技術だな。」


田島 順一が星を眺めている。
まるで、願うように祈るように。
「星が綺麗だな。
俺は、昼間でも星が見えるし、条件が良ければ15等星でも見えるんだが…。
目の性能は、美しさを感じる事とは関係ないな。
……出来れば、願わくは、力のあるなしに関わらず、慈悲の心を持ちたいもんだな。」


「HEROって、知ってるか。
人でも神でもない、そういう存在だ。
その輝きは豪華絢爛。
踊るように舞うように、
そうやってしか生きられない生き方。
不思議の側の大河のほとりの住人。
その大河で、理の側の大河に行く不思議を止める
不思議…。
それがHERO」


「……お前は、本当にただの人間なんだな。
少なくとも中身は。
……つらいだろう。
能力だけHEROってのは、常人にはつらい。
心と体がばらばらって事は、そういう事だ。
……なんでお前みたいな奴をこんな所に
送ったんだろうなあ」


「……いっその事……なってみるか?
HEROに。
心がそれになれば、あるいはその悲しみも、
和らぐかもしれない」


「覚えておけ。
HEROと、そうでないものの違いは少しだ。
共に河を挟んだ右と左の存在だ。
命そのものが、不思議の側と、理の側と、
双方の狭間で揺れる存在だ。
HEROは、余人より少しだけ、河一本分、
不思議の側にいる。
その違いは学ぶことだ。
学ばなくても、どんな生き物でも、死ぬまでは
生きていける。
ただ生きるだけならば。
だがそれだけではない。
得にもならんが、学ぼうとする者は
いくらでもいる。
だから、不思議だ。
不思議の側より近いHEROは、
より学習する存在だ。
昨日よりも、今日よりも、明日の方が強い、
そういう存在だ。
だからHEROという」


「覚えておけ。
HEROと、そうでないものの違いは少しだ。
共に河をはさんだ右と左の存在だ。
命そのものが、不思議の側と、理の側と、
双方のはざまで揺れる存在だ。
HEROは、余人より少しだけ、河一本分、
不思議の側にいる。
その違いは、慈悲だ。
慈悲がなくても、どんな生き物でも、死ぬまでは
生きていける……。
ただ生きるだけならば、だが、それだけではない。
生きるというのは、それだけではない。
得にもならんが、慈悲を持つ者はいくらでもいる。
だから、不思議だ。
不思議の側より近いHEROは、
より慈悲深い存在だ。
HEROというのは、殺せばいいってものでは
ないことを、知っている。
だからHEROだ」


「HEROってのは、際限なく学ぶ優しさだ。
いくつもの幾千もの時の中で、
それは輝く夜の星だ。
それを忘れるな。
すべてはそれからだ」


「戦というものは性能じゃない…。
状況だ。
状況が最終的に使える使えないを決める。
戦争が終わって、優秀な兵器が出ても
そんなものに意味はない」


「状況を作れる存在になれよ。
戦に勝てる状況を作れ。
それは例えば、相手より高い所で遠距離から
一方的に攻撃とかだな。
地形を友にし、時を友とし、速度を稼げ。
HEROって奴は強いからなるんじゃない。
勝てる状況を必ず作るからHEROなんだ。
どんなに細い瞬間でも、それは必ず存在する。
それを狙え」


「……いいな。
俺の言った事を、忘れるなよ。
遠い世界でも、
いつかどこかで又逢う時、その言葉を
再開の合言葉にしよう」


「俺の先祖は火星人だ。
祖母さんの代までは性別が
コロコロ変化していたそうだよ」


「…この島を放棄して、俺達がこの島から
離れたら、お前は、どうするんだ?」
(新しい世界に行く)
「そうか……。
まあ、そうだろうな。
俺は、この件が終わった後…“お勤め”が
終わってしまった後の事は、
何も指示されてない。
どうすりゃいいんだろうなあ。
こんな、時代遅れの星で…」
(ループする )
「……まだ、なにかあるのか。
お前の“お勤め”が、まだどこかに。
まあいい、いずれにしても、俺はお前の、
とりあえずの友だ。
今回島を離れるまでは、一緒にいるよ。
それが嫌なら、ほら、頼み方があるだろ?
なんちゃって」


「空を見ろ。
お前の見上げた方向に、グレートワイズマンが
作った花の道がある。

天の大河、ともいう。
向かって右が不思議の側の大河、
左が理の側の大河だ。

俺たちがいるこの星も、その大河の一滴の一つ、
花の一つだ。」(夜、扇浦)




その日は、朝からみんなで写真を撮影して、
港へ行った。

…悪いが、これ以上は言えんよ。

     父島守備隊、生き残りの証言

「…俺達が、最後だな。
ま、ゆっくり歩いていこうか。
多分お前は姿を消すから、
これが、最後の散歩になるだろうからな」
(あ、分かった?)
「…それくらい俺達は、
わかりあえていたんだろうさ」
(そうね)
「…早く歩くのが惜しいと、
初めて思った」

そこから先は、
一言も話さず、ただ手を繋いで歩きました。
田島は、最後までこちらを見ませんでした。
「じゃあな…」
田島が言ったのは、それだけでした。

田島順一 通常 / 提案 / 派生 / シナリオ

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最終更新:2022年09月08日 05:49