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声楽【1】 - (2006/01/31 (火) 17:12:08) のソース
「リノ、どうした」 私はピアノの伴奏を止めて言った。 「このアリアは神の愛に感謝する歌だ。それなのに、お前は神様に文句を言っているように聞こえるぞ」 星の瞬きのような、と評されたリノの歌だが、このところどうものりが悪い。 「……すみません先生」 翡翠色の瞳を伏目がちにしてリオが謝る。 「責めてるんじゃない。なにか悩みでもあるのかい?」 「先生……ぼくもそのうち、この音楽学校から追い出されちゃうんでしょうか」 「なんだいきなり」 「このまえ、クルトがここを出て行きましたよね。クルトが声変わりしちゃったから、追い出されたんじゃないかって、みんな噂してるんです」 確かに、優秀な歌い手だったクルトは、声変わりを機にここを離れた。 「あの子は、声楽とは別の道を進むことを決断して、少年合唱団から去っていったんだよ」 「でも、みんなぼくの高音域の声が素敵って言ってくれてるのに」 リノはうつむき肩を震わせる。 「この声が出なくなっちゃったら……やっぱり歌を続けられないんじゃないかと思って……」 そうか。リノもそろそろ思春期だったな。それで不安になったのだろう。 「心配するな。君の素質は声変わりくらいでだめになるものじゃない」 「でもっ、でもっ!ここを出たらぼく、身よりもないし、それに、大好きな先生とも会えなくなっちゃう!」 がばっと私に抱きついて泣き出すリノ。私は彼の黄金に輝く髪をそっとなでてやった。 「バカだな」 リノのおでこに軽く口付ける。 「せっかく天使がこの腕の中に飛び込んできてくれたのに、私がみすみす逃すわけがないだろう?」 「大人になんて、なりたくない」 ひとしきり泣いて、落ち着いたリノがつぶやいた。 「子供のままでいられたら、先生とずっといっしょにいられるのに」 「そんなに子供のままでいたいかい?」 「あ……先生……」 私はリノのズボンの中に手を入れた。パンツの中を指でまさぐる。 すべすべした下腹に、ほんのわずかではあるが、明らかに産毛ではない毛が生えていた。 なるほど、これが気になったんだな。 リノが目を閉じ、キスをせがむように唇を突き出す。 私はキスをしてやったが、舌は入れなかった。しびれを切らして、リノの方から舌を出してくる。 私の口の中で小さな舌がチロチロと動き回る。 天上の歌を奏でる唇と舌で愛される喜びは並大抵のものではない。 今にもむしゃぶりつきたいほどであるが、それでも自制して、リノのしたいようにさせる。