戦術的決断のチュートリアル
現実では指揮官は作られて生まれるのではなく確実に訓練を受けて生まれる。指揮官はしばしば「もしも」の状況を与えられ、どのような計画を立案するかを問われる。これが皆さんへの訓練である。いくらかは本物だ。
任務計画のチュートリアルは地形と任務についての一般的な研究である。
草原の奇襲(Surprise on the Steepes)
- 遭遇戦
- ソビエト連邦 対 ドイツ
- 1941年6月23日;ビャウィストク、ソヴィエト連邦
- ターン数:10
- 作成:Wild Bill Wilder
このシナリオの序文より―二日目、…戦うロシア軍を求めて、第18装甲偵察・オートバイ大隊の一部が誰もいない道路を疾走していた。彼らのもとに現れたのはビャウィストクから大急ぎの進撃の途中であったロシア第6機械化軍団に所属する部隊であった。曲がりくねった未舗装路の鋭い屈曲点で双方の部隊は互いを視認した。ドイツ軍とロシア軍は100ヤードも離れていない互いを信じられないといった顔で見つめ、ほとんど同時に反応した。双方の車両と兵士が互いに射撃の雨を浴びせ始めた…
この遭遇戦はこのように小さく、単純なシナリオがこのような興奮し、かつ戦術的な挑戦を含めるようなものであったといえるだろう。ここでは視界1000m(20ヘクスあるいは0.6マイル)で20よりもやや少ない数のユニットが双方にある。作戦は二つの木に覆われた高地の間を屈曲して通る道に沿って行われる(マップ参照)。ドイツ軍は西(左)から東(右)へと進軍することになる。自軍の主力は道路を前進しており、両翼の警戒部隊としてPSW-222(SdKfz 222)がある。東へと道が屈曲するあたり、最初の二つの勝利ヘクス(ここでは今北に進軍している最中だ)の付近で正面から不意に近距離で敵と接触することになるはずだ。
これが我が部隊の一覧(OOB)である
- 司令部(HQ)
- PSW-222(SdKfz 222)×3
- PSW-231 6 RAD(SdKfz 231(6))×3
- Motorcyclists(Kraftrad)×3
- Recon Patrol(PzAufklaerer?)×3
- SPW-250/1(SdKfz 250/1)×4
- PzJg-1b(Panzerjaeger I)×1
- Tigers×4(いや、ただの冗談w)
さて、決断の時間だ
- ソヴィエト軍部隊はどれくらい強力なのか?偵察部隊としてのわれわれの任務は敵を発見することだが、脇の軽度の敵抵抗を掃討して我々の後に続く主力部隊のために道を安全な状態に整えておく必要もある。(これは道に沿って勝利ヘクスを確保する必要条件によってシミュレートされている)
- 前進して進撃の運動量を保つべきかあるいは急速防御によって状況がわかるまでの間自軍部隊を守った方がよいのか?
- どのように自軍部隊を配置すべきか?
- 機動部隊を一つ、監視部隊を一つというように分ける(小部隊を集めて運用できるがソビエト軍にどちらか一方の部隊のいる地点への集中を許すことになる)
- それぞれにペアを作るのはどうか(おそらく自軍部隊はあまりに薄く広がってしまい、各個撃破を招きかねないがソヴィエト軍に二方向でいっぺんに戦わせることができる)
- 何かほかに試すべきか?
- 側面の警戒についてはどうするのか?
- 我が軍は今北を向いているがソ連軍は東から自軍側面目がけて進撃してくる。以下を考えなくてはならない:
- 西の高地に監視部隊を配置し、開けた地域を北へと機動するのか?
- 高地の間の道路に阻止部隊を配置し(北と西同時に、あるいはどちらか一方に)ソヴィエト軍部隊側面への移動でソヴィエト軍を捕獲する
- 西側高地の南目がけて自分兵士を退却させ、道路屈曲点を通ってやってくるソヴィエト軍逆斜面陣地を形成しての待ち伏せを行わせるか?
- 援軍呼ぶのか?
- 他?何をするのか?
例:以下戦術的解答の提案
我々は実際のところWWII初期のソ連軍小部隊指揮官と同程度の戦術的能力しか持たないAIと戦っている。これからソヴィエト軍が単純で直線的なやり方で、しかし断固とした攻撃を行ってくると予想できるだろう。ソヴィエト軍の砲はこちらのそれよりはるかに質が悪い(ソヴィエト軍の平均経験値はこちらのそれより約30も低い)が近距離ではこちらと比しても遜色なく当てることができ、こちらの軽車両はあまり多くの損害を出すわけにはいかない。もし勇み過ぎればハチの巣になってしまうだろう。こちらに対戦車ユニットは一つしかなく(Panzerjaeger I)、これを危険にさらす余裕はない。
最初の屈曲点に差し掛かり高地の間に入る際に、私は先行する装甲車とPanzerjaeger Iを西の高地と主監視陣地に移動させた。その後最初から側面警戒にあたっているSdKfz 222を更に北と南に移動させて側面警戒にあたらせた。自軍主力の残りは敵に初撃をとられずに移動できるようになるまで偵察部隊とオートバイ兵を後ろに下げて反斜面陣地の位置につけた。
その時までに我々はすでに砲火を交わしており、Panzerjaeger Iは中央の勝利ヘクスにいるソヴィエト軍軽装甲車を撃破していた。そこから上がる煙がAI側の我が軍監視部隊との視線を遮っていた。ソヴィエト軍ユニットが煙の中からどんどん現れるにつれ、これらは監視部隊と反斜面陣地との十字砲火を受けることになった。どんどんソヴィエト軍ユニットが撃破され、どんどん煙が発生する。こちらの願っているよりも多くの煙が発生した。ソヴィエト軍部隊が我々よりも大規模だった場合、これらが煙の中から現れ、我々がこれを撃破するのに十分な射撃を行う前に我が軍を蹂躙する可能性が現実のものとなってきた。
何かソヴィエト軍に注意をひきつけるものを与え、高地間に突っ込んでくる可能性のある更なる部隊を分散させるため、私は偵察部隊とオートバイ兵、加えてSdKfz 231(6)一両を西の高地を越えてソヴィエト軍南側面へと機動開始した(ソヴィエト軍が高地北の道に沿って東から西へと移動中であると予想)。高地頂上のまばらな林は(もしいくらか短いにせよ)高地間への火線を掃討した装甲部隊よりも歩兵部隊に向いていると私は考えた。なんてこったい!誰がこんなことになると思っただろう?AI側も高地を越えて我が軍の側面をつこうとしていたのだ。幸運にも敵に近接強襲を仕掛けられるゼロ距離で遭遇し、ソヴィエト軍に対して指揮と立て直し能力において勝っていた。
高地頂上での戦闘は近接強襲を仕掛けるドイツ軍と臨機射撃で何とかドイツ軍を潰走させたソヴィエト軍の間で揺れ動く接戦となり、そしてソヴィエト軍部隊の抑圧値が安定して上がり続ける中立て直しに成功したドイツ軍が盛り返し、最終的にソ連軍は崩壊・敗走した。
高地頂上の我が軍の側面部隊は高地間にいる残存のソヴィエト軍部隊の側面に移動し、これを殲滅した。甘美な勝利は我がものだ。
ポーランド軍装甲部隊の犠牲(Sacrifice of Polish Armor)
スコードリーダーのシナリオ201
- 遭遇戦
- ドイツ軍 対 ポーランド軍
- ターン数:15
- ノヴィ・タルク地方、南ポーランド
- 1939年9月1日
シナリオ翻案:Scenario adaptation: Jim 'Figmo' Faletti
さて、次はあなたはシュヴァイツァー大佐だ。自分の置かれている状況を確認しよう。君は第2装甲師団に属する戦闘団の指揮官として1939年9月1日第10騎兵旅団に所属する完全に機械化されたユニットのみで構成された不明な部隊と対峙している。自分の任務を確認しよう。あるポーランドの村付近にある重要な交差点を奪取せよとの命令だ。自軍部隊の構成は以下の通りだ:
- Opel Blitzに乗車した司令部ユニット(HQ)×1
- motorcyclists(Kraftrad)×6
- rifle squad(infantarie Grp?)(徒歩)×8
- PKW IVc(PzKw IVc)×1
- PKW IIIe(PzKw IIIe)×1
- PKW IIc(PzKw IIc)×3
- PKW IIb(PzKw IIb)×2
- rifle squad(infantarie Grp?)(Opel Blitzに乗車)×2
- MG34(Opel Blitzに乗車)×2
徒歩のライフル分隊は南北の道に沿って配置されており、あとの残りの戦力は西からの道に並んでいる。時間は0900時、天候は晴れで視界は約1000mだ。この作戦を完了するまでの時間は30分程度だと君は考えている。
いくつかの問いが君の頭の中でぐるぐる回っている。どのように地形を利用するか、どの進撃路を使用するのか?ポーランド軍はどれだけの兵力で、どこでどのように防衛しているのか?もしそうだとしてもどのように自軍を分けて進撃するのか?予備を持っておくべきか?もしそうするならその構成はどのようにすべきなのか?偵察をどのように行い、どうやってポーランド軍の待ち伏せに合わないようにするか?主攻と助攻はどこにする?移動力と防御力が隔絶しているユニットをどのように協調させて進撃するか?
さあ大佐、どうする?
例:以下戦術的解答の提案
マップを見渡してみると北に周囲を睥睨する高地が、部隊の前には分厚い森が、南には間隙が開いている。それぞれが進撃路として使えるが、同時にポーランド軍部隊もここを防衛している可能性がある。つまりポーランド軍部隊は高地の陰や森に隠れ、こちらが現れてこれらの向こうに何があるか見えるようになると同時に突如として射撃を行ってくるのである。ポーランド軍がこちらの進撃に対して防御を行っている可能性のある地点を5つ特定できる。
- 南の林は我が軍の戦車が間隙を通過した場合に側面への射撃を行える機会をもたらす。
- 間隙の端の建物と森林は対戦車ユニットを隠蔽して配置し、こちらが間隙をずっと進軍してくるのを攻撃することができる。
- 高地の丁度後ろの森林(平地地形でさえ)では反斜面陣地を形成することができる。
- 森林
- 建物と林は森から出てきた我が軍を交戦距離50mで待ち伏せ攻撃するポーランド軍ユニットに素晴らしい防御地形となっている。
我が軍の決戦戦力は装甲部隊であり、これはポーランド軍が展開できるあらゆるものに勝っている。しかしポーランド軍の装甲戦力に役に立つものは2両(III号&IV号戦車)しかない。他はポーランド軍歩兵戦力には効果的だが対戦車ライフルや対戦車砲には脆弱である。III号&IV号戦車でさえ注意深く扱う必要があり、さもなくば37mm対戦車砲で失われてしまうだろう。これほどまでに戦車は少なく、1両もこれらを失う余裕はないため、注意深い偵察を行ってポーランド軍の対戦車砲を発見し、遠距離から戦車でこれと交戦するか、歩兵でこれらと交戦する必要がある。
主攻はどこにするのか?もっともあり得る二つの進撃路が空隙と高地を越えるルートである。双方ともに開けた機動スペースがあり(ただし高地の方が空隙より制限が少ない)、勝利ヘクスへと続くルートがある。高地は装甲部隊の方がよく見えるが、これは森林や間隙のルーから孤立している。もしポーランド軍の歩兵部隊が#5の地点のあたりで防御していた場合、高地の戦力はこの地点への支援を行えない。もし空隙のルートの方を使用すれば#5地点にいるポーランド軍を後ろから襲うことが可能になる。これが空隙の方を主攻路に選んだ決定的要素である。
主攻はIII号&IV号戦車2両、II号戦車C2両、II号戦車B1両から構成される。II号戦車B1両は森を通って進撃する徒歩歩兵の支援を、II号戦車C1両は高地へと移動するオペルブリッツに乗った歩兵部隊の支援を行う。この戦力割り当ては主攻部隊に対戦車戦力の点で大きな比重を置くものだが北部翼部隊に完全に対戦車能力がないわけではない。森でポーランド軍戦車と遭遇すること可能性は低いためここを進撃する歩兵の支援には機関銃装備のII号戦車Bで十分である。もしここでポーランド軍の戦車を発見した場合には歩兵が森林の遮蔽を利用してこれに近接強襲を仕掛けることができるだろう。
6つのオートバイ分隊は偵察部隊の理想的な候補である。3個分隊は空隙を、3個分隊は高地を偵察する。隠れていたポーランド軍ユニットによって損害が出るかもしれないが、もしこれらを一緒にし続けていれば監視と相互支援射撃を行うことが可能だ。偵察時にこれらを目標もなく前進させてはいけず、達成すべき特定の任務を割り当てなければならない。特に赤い#1の位置に何らかのユニットがいるかどうか、そして高地の東には何がいるのかを知る必要がある。
これら3つの部隊はそのすべてが同時に突破を行い、これを止めようとするポーランド軍の対処が難しくなるように時間調整されなければならない。オペルブリッツに乗った歩兵部隊は高地頂上のちょっと西まで移動する。徒歩歩兵部隊は最初は数ヘクスずつ、その後は一度に1ヘクスずつ前進する(これによって警戒移動ボーナスの利を得られる。SPWAWマニュアル58ページ参照)。主攻部隊はすぐに開けた間隙へと進撃する余裕がある。もし何らかのポーランド軍ユニットがこれらに射撃を行ってきても損害を与えるには距離が遠すぎ、ただ自らの位置を暴露するだけになるであろう。主力部隊はオートバイ兵を前に立てて間隙南端に沿って森林の縁へと前進する。オートバイは1ユニットが森を通過してそこにいるポーランド軍部隊を全て掃討し、残りの2ユニットは交互に森から出つつも森の端付近にとどまる。もし前進している1ユニットが射撃を受けた場合は他のユニットが射撃を行った敵ユニットを発見できるようにしなければならない。防御側の射撃が強すぎる場合は隠蔽を得るため森の中に退避してもいいだろう。装甲ユニットは同じ理由で森の近くにとどまることになる。
ポーランド軍防御部隊が砲火を開いたら、進撃してもっと多くの防御部隊を発見する前に火力の集中によってこれを撃破しなければならない。
自軍ユニットの集中、そしてポーランド軍歩兵部隊に対するドイツ歩兵部隊の、ポーランド軍の7TP戦車に対する我が軍戦車の優位全てがポーランド軍部隊に対する火力優勢のゆっくりとした構築に貢献する。決定的勝利を得てより大きな栄光に向かわんことを!
任務計画のチュートリアル
以下は皆さんが攻撃、防御双方の点から分析しなければならない地形の一部である。(有能な防御指揮官は攻撃側がどのように自分の側に向かってくるかを考え、逆もまたしかりである。)北が上である。
典型的な農村の風景である。交差点に村があり、その近くは畑になっている。
林があちらこちらに散らばっているが、地形は開けて移動に適したものとなっている。この領域は横より縦が長い。西側からの攻撃、あるいは西側からの攻撃に対する防御のみならず北側から攻撃しなければならないあるいはこれに対して防御しなければならない場合にこれを考慮せよ。自軍領域が十分な縦深を持つ状況のためには広く薄い前線という解決策とは違う解決策が必要だ。
防御側OOB:
司令部
FO
三個歩兵中隊(各自編成三個分隊+機関銃・迫撃砲)
大隊迫撃砲
対戦車砲小隊
攻撃側OOB
司令部
FO
機械化偵察兵小隊
戦車中隊
機械化歩兵中隊
歩兵支援戦車1個小隊
105m榴弾砲中隊
皆さんへの問題
- 鍵となる地形はどれだ?
- 接近と側面移動のルートはどれだ?
- 砲兵への事前砲撃要請を行うか?そしてそれはなぜ?
- どのようにして攻撃・防御するか?
- 目標地点はどれか、そしてそれはなぜ?
- 何を予備として保持しておくのか?
最終更新:2014年06月15日 20:36