LB&SCR A1 class

London, Brighton and South Coast Railway (LB&SCR) A1 Class(ロンドン・ブライトン&サウスコースト鉄道エーワン クラス)は、William Stroudleyによって設計され、1872年と1874年から1880年にかけて製造されたロンドン・ブライトン&サウスコースト鉄道(LB&SCR)の0-6-0タンク機関車である。
このクラスにはいくつかのニックネームが付けられた。当初はロンドン南部のクルーによって「Rooters」と呼ばれていたが、犬の鳴き声のようなノイズを出すために「Terriers」の愛称で知られていた。またヘイリングアイランド支線の運用に従事したA1クラスは「Hayling Billy」の名で知られていた。
より強力なD1クラスが導入されると共に一部のA1クラスは他の鉄道に売却されたが、サセックスの支線や入れ換え作業などの仕事に取り組んだ。
基本情報
運用会社 LB&SCR
SR
イギリス国鉄
設計者 William Stroudley
製造所 Brighton railway works
形式 LB&SCR A1/A1X
製造年 1872年~1880年
製造数 A1   / 50両
A1X / 17両
全廃 1964年
性能諸元
軸配置 0-6-0 / 2-4-0
軌間 1,435 mm
全長 A1・A1X / 7.49 m
機関車重量 A1   / 27.5 long tons
A1X / 28 long tons
固定軸距 3.66 m
動輪径 1.219 m
シリンダ数 内側2気筒
シリンダ A1   / 305 mm × 508 mm
A1X / 360 mm × 508 mm
ボイラ圧力 1.0 MPa

歴史

ロンドン・ブライトン&サウスコースト鉄道(1872-1923)

もともと「A」クラスとして知られていたA1クラスは、1870年にロンドン南部と南東部の混雑した路線における通勤列車のために設計され、6台が1872年に造られた。狭い間隔の停車駅と軽量な列車、高い加速力によってA1クラスは成功を収め、1844年6月から1880年9月までの間に、44台が追加された。

製造された50台の機関車には"Stroudley's Improved Engine Green "という実際には黄土色のカラーリングが施された。これにはStroudleyが色覚異常であったという説がある。

19世紀末の約20年の間で郊外が発展すると同時にロンドンの市街地は外向きに拡大していった。それによってロンドンとは別の通勤都市であったクロイドン、サットン、ノーウッドなどの町が1つの大きな住宅地を形成するようになった。これの多くは郊外への旅客サービスのスピードアップを行ったA1クラスの成功が理由であり、人々のロンドンの中心部からの移住を促した。列車は次第に重くなったが、短い所要時間の必要性は変わらずに求められ、A1クラスはより大きなD1クラスに置き換えられた。しかしA1クラスは信頼性の高さから、他の作業にも使用され、支線の旅客輸送や貨物輸送の作業や入替用機関車として使用されることがよくあった。

1898年から1905年の間に23台の機関車が廃車になったが、これらの機関車の大多数はニューヘイブンハーバー社、ワイト島中央鉄道(4両)、ポーリング社(5両)、ケント&イーストサセックス鉄道(2両)、ロンドン&サウスウェスタン鉄道(2両)、そしてサウスイースト&チャタム鉄道に譲渡された。

1911年から1913年の間に、12台が機械技師長としてStroudleyの後を継いだDouglas Earle Marshの指示の下でボイラーを交換し、さらに4台が第一次世界大戦後に交換、これらの機関車はA1Xクラスとなった。他にも煙室の延長や、一部の機関車を除く砂箱のスプラッシャー延長部からランボードの下への移動、煙室とサイドタンク間の凝縮器の一部として使用されていた管の除去がされ、“Marsh Umber”という茶色のカラーリングで再塗装された。

1905年、ブライトン~ワージング間およびブライトンケンプタウン線における圧縮空気を利用したプッシュプルトレインの試験にNo.81 BeulahとNo.82 Boxhillの2台が使用された。2台は試験の際に2-4-0Tに改造、A1Xクラスに改造された後、1913年頃に0-6-0Tに復元された。

サザン鉄道(1923-1948)

サザン鉄道では、主にテンターデンやヘイリングアイランドからの支線や、管轄下の軽便鉄道などの重量制限ある路線で、サザン鉄道の他の旧型の機関車より長く使用された。またブライトン工場などにおいても入替機として運用された。

1923年1月1日のサザン鉄道の合併で15台はLB&SCRに残ったが数年以内にいくつかの機関車が廃車、または売却となった。なおこの時廃車が決まっていたNo.55 Stepneyはヘイリングアイランド支線における小型機の運用の要望があり唯一廃車を逃れた。1925年と1937年にWCPRに売却されたNo.43 Gipsy HillとNo.53 Ashteadは、それぞれNo.2 PortisheadとNo.4に番号が付け替えられた。1940年の路線の閉鎖後、No.5 PortisheadとNo.6としてGWRに売却され、国鉄移行後それぞれ1954年と1948年に廃車となった。

サザン鉄道は南東部と南西部で急増する急行旅客輸送のための大型機関車の設計や第三軌条方式の郊外輸送の拡大に集中していたことから、小さい支線などの電化は経済的に難しく、地方路線においてA1Xのような旧型の機関車を用いて維持することとなった。

イギリス国鉄(1948-1963)

1948年の国有化時に、1台のA1と14台のA1Xがイギリス国鉄の傘下となる。初期の運用はサザン鉄道時代と変わらず重量制限のある支線の上に集中し運用を維持したが、部品磨耗や老朽化によって維持コストが増加、1954年のイギリス運輸委員会による近代化計画が公表された後、運用のあったケント&イーストサセックス鉄道は1961年に廃止、ヘイリングアイランド支線は、ラングストーン湾に架かる鉄橋の状態悪化により1963年11月3日に廃止。

ヘイリングアイランド支線の廃止により、イギリス国鉄は残りのA1Xの撤退を決断、1963年8月10日に最後のA1XとなったNo.32678が離脱した。

ナンバーの変遷

製造時、各機関車にはNo.35〜84の番号(以下xx)が付けられており、そのほとんどにはロンドン自治区や列車の運行において重要な地域の名前が付けられた。また1900年以降、2桁の数字の前に6が付けられたNo.6xxとなり、数年後にサイドタンクに書かれていた名前もLBSCに書き換えられた。

サザン鉄道の下、ブライトン所属の元LB&SCRの機関車にはBを頭につけられ、ワイト島の機関車には例外的にWが与えられていた。1930年、新しいナンバリング方式としてLB&SCRの機関車には2000番代が与えられ、この方式の下No. B6xxはNo.26xxになった。

1948年に国鉄が作成した番号変更計画に沿って、最後の再ナンバリングが行われ、元サザン鉄道所属の機関車には30,000番代を付与、No.326xxに変更となった。またブライトン工場の入れ換え機の377Sは唯一DS(Department of Southern region)377とされた。

海外におけるA1クラス

ポーリング社に譲渡された3台のうち2台は1909年にアルゼンチンのラプラタ路面鉄道に再度譲渡された。
オーストラリアにおいてA1と同型のニュー・サウス・ウェールズ州政府鉄道N67クラスが八台制作されA1Xと同時期に運用が始まった。A1よりもシンプルな運転室や、大型化されたコールバンカーと砂箱、その他の細部に違いが見られた。他の大型かつ強力なタンク機関車の導入後、1890年頃から余剰になると共に、多くがコールバンカーの代わりに小型クレーンを装備するようになり、入れ替え機や小型移動式給炭機として運用された。N67は異なる運用条件であったためA1のように成功せず、早期の廃車により保存もされなかった。

保存機

現在10台がイングランド南部を中心に保存されている。

番号 名前 保存場所
40 ブライトン ワイト島蒸気鉄道で[W11 ニューポート]として保存
46 ニューイントン ワイト島蒸気鉄道で[W8 フレッシュウォーター]として保存
50 ホワイトチャペル スパバレー鉄道に[No.32650 サットン]として保存
54 ワドン カナダ鉄道博物館に保存
55 ステップニー ブルーベル鉄道に保存
62 マルテッロ ブレッシンガム・スチーム & ガーデンズに[662 マルテッロ]として保存。2011年5月まで[32662]として保存
70 ポプラ ケント&イーストサセックス鉄道で[3 ボディアム]、2011年4月まで[32670]として保存
72 フェンチャーチ ブルーベル鉄道で[672 フェンチャーチ]として保存
78 ノウル ケント&イーストサセックス鉄道で[32678]として保存
82 ボックスヒル 国立鉄道博物館に保存

登場作品

汽車のえほん・きかんしゃトーマス
  • 「がんばりやの機関車(原題:Stepney the "Bluebell" Engine)」:No.55 ステップニーが登場。
  • 「Thomas and the Great Railway Show(日本語未翻訳)」:No.82 ボックスヒルが言及のみされている。
  • きかんしゃトーマス(TVシリーズ4~7、12期):No.55 ステップニーが登場。
リストマニア:ケンラッセル監督 1975年公開 No.72 フェンチャーチが出演
アンナ・カレーニナ:BBC制作 1961年放送 No.55 ステップニーが出演

模型

DapolよりN・OO・Oゲージ、HornbyよりOOゲージが販売されている。

Dapol製品

Nゲージ
LB&SCR・SR・GWR・BR・LSWR・K&ESRなどの所属した鉄道に加え固有のナンバーや名前入りの仕様を販売。2019年現在で24種類をリリース、2017年製品から塗装のディテールも一段と高くなっている。
また個体差はあるが整備すれば低速運転ができるものもある。
Oゲージ
Dapol Nゲージとほぼ同じラインナップとなっている。また車体が黒一色で塗装の必要があるものもある。ケースはスポンジではなく他のスケールと同様のプラスチックケースとなっている。他のスケールよりも大きいことから精密ではあるが、底面側は簡略化されているのに加えて大きく「DAPOL made in China」と書かれている。

Hornby製品

OOゲージ
一部を除くA1/A1Xクラスの所属した鉄道に合わせた各仕様が販売されていた。しかし金型はA1もA1Xも同じ金型を使用しており、特にA1Xはスプラッシャーの形状など実際と比べて異なるモデルが販売されていた。

2019年3月に新規金型によるリニューアルされたA1/A1Xクラスが販売された。このリニューアルによってA1Xも実際の本機に近い仕様のモデルとなり、それぞれ細部の再現まで行われた。

「Dapol Nゲージ A1X クラス」

「Dapol Nゲージ A1 クラス」

   「Dapol Oゲージ」

  「Hornby 2019年製品」

   「Hornby 旧製品」

メーカ名 品番 製品名 軌間 縮尺 電源 購入場所・サイト 状態 金額
Dapol 2S-012-009 Class A1X 'Terrier' 0-6-0T 40 "Brighton" in LB&SCR improved engine green 9mm 1/148 DC Hattons(個人輸入) 新品 約10000円
Hornby R3767 Class A1X Terrier 0-6-0T 32655 in BR black with early emblem 16.5mm 1/76 DC Hattons(個人輸入) 新品 約11000円
Hornby R2550 BR 0-6-0 Terrier locomotive 32678 16.5mm 1/76 DC メルカリ 中古 約6000円
Gaugemaster Collection (Dapol) GM7210103 Class A1X 'Terrier' 32635 "Brighton Works" in LBSCR improved engine green - weathered - "Gaugemaster Collection" 32mm 1/43 DC Hattons(個人輸入) 新品 約24000円

外部リンク

最終更新:2019年06月12日 03:53