プッシュプルトレイン(
Push-Pull Train)とは主に機関車列車において、機関車と反対側の編成端に設置された運転台からその機関車を遠隔制御し運転するような列車のことを言う。この運転台は運転台付きの客車、
制御客車や運転台付きの貨車であっても他の機関車の運転台でもよい。
制御客車を用いた運転の歴史については
制御客車を参照。
利点と欠点
利点
- メンテナンスの省力化や編成の増減の容易性などの動力集中式のメリットを受けながらかつ両側の運転台で操作可能なので、終端の駅での機回しがいらず折り返しが容易である。
- 制御客車を用いる方式の場合"TGV"のような動力車で客車を挟む方式と比較すると、機関車が1両で済むため、編成中の定員をわずかだが増やすことができる。
- 高速・低速・架線の有無・電源の種類ごとに車種を用意せずとも機関車を付け替えるだけで、異なる電気方式や信号方式の区間や、非電化区間へ入線できるため、国際列車に適している。
欠点
- 制御客車側を用い、先頭で走行する際、機関車1両で他の客車を押して走行するため力学的に不安定で、長編成を高速運転するには適さない。
- 制御客車側を先頭にして走行し、脱線や衝突などブレーキ以外のなんらかの要因で制御客車側が停止した場合において、後方から車重の重い機関車が押しこむような形となるため事故の被害が大きくなりやすい。
- 重量の重い機関車列車であるため軌道への負担が多い
- 動力分散式と比べ、加速性能が劣りや路面摩擦の低下の影響を受けやすく高密度な運転には向かない。また機関車の分デッドスペースがあり、有効長を最大限に活用できない。
各国での呼称方
Push-Pull Train (プッシュプルトレイン:英語圏全般・台湾など)
機関車がその列車を押したり引いたりするさまを表している。
Wendezug (ウェンデツーク:ドイツ・オーストリアなど)
ウェンデ/Wende ⇒ 折り返し・逆転 ツーク/zug ⇒ 列車
直訳すると「逆転列車」となる。機関車を付け替えずに同じ区間を行ったり来たりする列車の形態をそのまま表している。
Pendelzug (ペンデルツーク:スイスなど)
ペンデル/Pendel ⇒ 振り子 ツーク/zug ⇒ 列車
直訳すると「振り子列車」となる。機関車を付け替えずに同じ区間を行ったり来たりする列車の形態を振り子に例えたもので、日本などで一般的に振り子車両と呼ばれる車体傾斜装置を装備した列車は、チルトやスウィングといった言葉で表現される。
Train réversible (トレインレバシブル:フランス)
可逆列車でそのまま折り返せることからそのように呼ばれる。
日本においての呼称
いわゆるプッシュプル運転
日本では両端に機関車を連結した編成はすべてプッシュプルと呼ばれているが、和田岬線のDE10+旧型客車のように折り返しの為に運転中は無動力となる機関車を後位に連結している場合や石北貨物のように前後それぞれに乗務員が乗りそれぞれ操作している場合には本項で扱うような本来の意味のプッシュプル運転とは言わない。編成両端に機関車を連結しているような列車はトップアンドテール(Top and Tail,TnT)と呼ばれ厳密に区分されている。
推進運転
推進運転とは運転の取扱いの一種で先頭部に適任者を配した上で"最前部以外の運転台から列車を操縦すること"を言う。機関車列車で客車を押すような形で運転するのが有名であるが、今日では電車・気動車等において事故や故障等の何らかの事情で最前部の運転台が使用できない場合に中間や後部などの他の運転台で操縦する場合や、故障した列車の後部に正常な他の列車を連結し運転するような場合にもこの
推進運転で行われる。運転速度は一般に毎時25キロメートル以下に制限される。上野駅から尾久までの回送列車が有名でこの場合は先頭部に別途運転士を配し、ブレーキをかけられるようにするなどの措置をし特例で毎時45キロメートルでの運転を行っていた。
ここから転じて、ファンの間では最前部の運転台で運転する機関車が後位に連結された列車であっても客車を機関車が押すような運転の仕方を
推進運転と呼ぶこともある。
その他
- 北米の列車では編成の両端に機関車を連結した場合、HEPは片側の機関車からしか給電できない。
関連項目
外部リンク
最終更新:2019年11月15日 23:51