Magic Items: Transferring XP Costs


魔法のアイテム:経験点コストの譲渡

『プレイヤーズ・ハンドブックII』ウェブ・エンハンスメント
著:Kolja Raven Liquette
訳:SatD


 アイテム作成特技と呪文修正特技の余裕のあるウィザードは、モンスターからの略奪品が(パーティーの各メンバーにふさわしい)“完璧に需要に合った”タイプの財宝をもたらすものでなかった場合、期待に満ちた熱い視線をおそらくは最も注がれることになる。プレイヤー・キャラクターたちは典型的に貯金を残さず金銭をかき集め消費するが、その一方で自分の経験点を自発的に切り捨てる冒険者など居はしない。適切なアイテム作成特技と前提条件の呪文を持つウィザードは、可能性として仲間たちの望むどんな魔法のアイテムでも作成することができる。しかしながら、永続的に代償経験点を支払うことを彼らに期待することは、基本的に“平均パーティー・レベルに遅れをとるって分かってるかい?”と尋ねるようなものだ。一部のウィザードが、(たとえば)《魔法の武器防具作成》を修得することによって彼らに寄せられる過多な要望は自分の成長に有害な影響を及ぼすだろうと信じ込み、ある種のアイテム作成特技を忌避するのは理解できる。そんなわけで、義務を背負い込む立場に置かれることを避けるべく、ウィザードはしばしば《スタッフ作成》や《ワンド作成》を選びがちだ(そしてもちろん、そういった特技は彼らの職能において実に有用なものなのだ)。

だが、所有予定者が経験点コストを譲渡する直接的方法が存在する場合、ウィザードは《魔法の指輪作成》や《その他の魔法のアイテム作成》、更には《魔法の武具・防具作成》ですら、修得して使い倒したところでそうは思わないかもしれない。たとえば、パーティーのファイターが自分の+2キーン・バスター
ド・ソードの為に720経験点を支払ったならば、ウィザードはレベルが遅れることなしに自分自身の為に+1リターニング・スペル・ストアリング・ダガーを更に作成することができる。その上、チャージを消費または使い切る典型的な呪文解放型アイテムと異なり、武器、アイテム、指輪は常動型もしくは再使用型の効果を注入することができるのだ。丹精を込めて、追加の2,000gpと80経験点を費やすことにより、上記の例のダガーは永続的に回数無制限でディテクト・マジックを発動するよう作成することもできる(『ダンジョン・マスターズ・ガイド』p.285の表7-33『魔法のアイテムの価格算定』を参照のこと)。
 以下の記事は魔法のアイテムを作成する際に経験点コストを譲渡する為のいくつかの選択ルールを探究したものだ。簡潔にただ“ファイターは自分の剣の為の経験点コストを払ったよ。”と告げるだけで充分かもしれないが、ちょっとした根拠の追加を以下に論じてみた。

経験点を譲渡する為の必要条件

ルール1:魔法のアイテムを作成する為の経験点譲渡の第一ルールは、クリーチャーは自発的に交換に関与しなければならない、というものである。魔法的あるいは非魔法的な手段による、強制で経験点を譲渡する試みは自動的に失
敗するだろう。魔法のアイテムを作成する為の経験点コストは、結果について完全に認識した上でのみ自由に譲渡することができ、これにはまた最低でも【知力】3を必要とする。
ルール2:なおその上、クリーチャーはレベルを失うほど多くの経験点を魔法のアイテムを作成する為に譲渡することはできない。しかしながら、そのようなクリーチャーは、新たなレベルを獲得するに十分なだけの経験点を得た上で、経験点を維持してレベルを上昇させるよりも、魔法のアイテムを作成する為にこの経験点を譲渡することにしてもよい。
ルール3:最後に、クリーチャーは自分が習熟しているか(鎧、盾、武器関係)、起動することができるか(ワンドやその他の呪文解放型アイテムの場合[1])、使用することができる(能力値、属性、クラスの特徴、または種族が限定されている場合[1])魔法のアイテムを作成する為にのみ経験点を譲渡することができる。
  [1] クリーチャーは経験点を譲渡する為に〈魔法装置使用〉判定を用いてこれらの条件を模擬しようとすることができる。

譲渡経験点の代価

 君が自発的に経験点コストを譲渡して魔法のアイテムを注文しているのであれば、1 経験点につき5 gpが最終的な市価から割り引かれる。
注:経験点要素のある呪文に基づく魔法のアイテムは、1 経験点につき5 gpだけ市価が上昇する(『ダンジョン・マスターズ・ガイド』p.285の表7-33『魔法のアイテムの価格算定』を参照のこと)。
 唯一NPCが魔法のアイテム作成の為に自発的に経験点コストを譲渡するのは、彼らがパーティー内のあるメンバーの腹心または従者である場合か、その魔法のアイテムが彼らの個人的な用途の為に作成される場合(たとえば、NPCが魔法のアイテムを注文した時)である。
 NPCが魔法のアイテム作成の為に自発的に経験点コストを譲渡することができるのであれば、この奉仕の代価は1 経験点につき5 gpで、前払いされる。経験点はNPCにとって抽象的な概念ではあるが、これは受容しうる最低額である。“個性付けされた”貪欲なNPCは、とりわけ彼らが経験点譲渡の為の複数の必要条件を満たしている場合には、おそらくさらに多くの金銭を要求することだろう。

経験点コスト譲渡の分担

 経験点コスト譲渡の必要条件を全て満たすクリーチャーは(訳注:魔法のアイテムを作成する為に必要な経験点の)全部または一部を譲渡して
よい。一部とは、典型的に、25%、50%、75%の範囲であるが、クリーチャーが定めた任意量の経験点とすることができる(実質的に、彼らが“こ
れくらいか”と言うまで)。5体までのクリーチャーが魔法のアイテム作成の為の譲渡経験点コストを分担し、等分するなり不均等配するなりできる。

魔法のアイテムの修復

 譲渡経験点にて魔法のアイテムを作成する為の全てのルールが、魔法のアイテムの修復にも同様に適用される。

経験点の譲渡方法

 魔法のアイテムの作成者に経験点を譲渡する為の3つの異なる手段を以下に挙げる。それぞれの手法は微妙に異なっており、関わり具合は様々である。

呪文

 経験点を譲渡する為の第一の手段は、全ての呪文の使い手が使用できる共通呪文を利用することである。
この手段は経験点を譲渡する個々人よりも呪文の使い手の身の安全を保障する。

  • トランスファレンス
共通
レベル:ウィザード/ソーサラー1、クレリック1、ドルイド1、バード1
構成要素:音声、動作、焦点具
発動時間:10分
距離:10フィート
目標:術者を中心とした半径10フィートの爆発
持続時間:永続;本文参照
セーヴィング・スロー:意志・無効(無害)
呪文抵抗:なし
 ほのかなエーテル光が目標クリーチャーから立ち上り、輝く光球と成り、そして術者へと流れ込んで、その体に融合していく。
 この呪文は術者が1体以上のクリーチャー(最大で5体まで)からの譲渡経験点を蓄えることを可能とするが、同意を得た魔法のアイテムを作成する用途においてのみである。この呪文を通じて他のクリーチャーから得られた経験点は新たなレベルを獲得する際に計算に入れられることはない。目標のクリーャーは、この呪文が自分に発動されることを同意する前に、魔法のアイテムを作成する為に使用されるであろう焦点具要素に同意しなければならない。いったん呪文が発動されたならば、目標のクリーチャーはどれだけの経験点を譲渡するか調節する。術者は同意を得た魔法のアイテムを作成する為に必要な分よりも多くの譲渡経験点を受け取ることはできない。経験点譲渡、経験点の代価、経験点コスト分担の為の必要条件は全てこの呪文を発動する際に適用される。
 同意の上での変更により更なる経験点が必要となったならば、術者は経験点を自分で提供するか、この呪文を再度発動して必要な分の譲渡経験点を蓄えなければならない。同意の上での変更により少ない経験点しか必要としなくなったならば、その差分は(元々の貢献度に応じた)適正な量が目標のクリーャーに返還される。たとえその内の一人だけであっても目標のクリーチャーが同意していない魔法のアイテムを術者が作成し始めたならば、譲渡経験点は直ちにそれらのクリーチャーに返還される。術者が同意を得た魔法のアイテムを作成する為に最低でも1日を費やしたならば、経験点は魔法のアイテムが完成したか否かに関わらず消費される。術者が同意を得た魔法のアイテムを作成する為に最低でも1日を費やした後で新たな魔法のアイテムに取りかかり始めたならば、(魔法のアイテム作成に関する一般ルールにより)経験点は消費され、消失する。
 焦点具:同意を得た魔法のアイテムの原材料(たとえば、クローク、ソード、ワンド)。

概要:
共通 トランスファレンス 同意を得た魔法のアイテムを作成する為にクリーチャーから経験点を移送する。


魔法のアイテム

 この第二の経験点譲渡手段は、誰でも使用することのできる安価な魔法のアイテムによるものである。この手段は魔法のアイテムの作成者よりも経験点を転送する個々人の身の安全を保障する。

  • タリスマン・オヴ・トランスファレンス
 タリスマン・オヴ・トランスファレンスは同意を得た魔法のアイテムを作成する用途において経験点を譲渡させることのできる導管である。
伝承:この装置は譲渡経験点を消費しながら契約を完了せずに完成した生産物を持って姿をくらます作成者から魔法のアイテムを注文したクリーチャーを保護する為に設計された(〈情報収集〉難易度20または〈知識:神秘学〉難易度10)。
解説:タリスマン・オヴ・トランスファレンスは典型的に、腕輪やペリアプト、その他の素肌につける宝飾品の形状をしている。
起動:標準アクションとして、作成を始める前に、リンクを作り出す為の合言葉“取り付け”を着用者が唱えながら、着用されたタリスマン・オヴ・トランスファレンスを同意を得た魔法のアイテムの原材料(たとえば、クローク、ソード、ワンド)に接触させる。魔法のアイテムに取りかかって最低でも1日(8時間)が費やされた後で、効果を完了する為の合言葉“注入”を唱えながら、着用されたタリスマン・オヴ・トランスファレンスを作成者に接触させる。
 タリスマン・オヴ・トランスファレンスは一度に一つの原材料としかつながりを持つことができない。新たな原材料に接触しながら合言葉“取り付け”を唱えると、古いリンクは消滅する。
効果:タリスマン・オヴ・トランスファレンスは、この装置がリンクしている大本の原材料から作成される魔法のアイテムに限って、着用者から魔法のアイテムの作成者へと経験点を譲渡する。着用者は(訳注:魔法のアイテムを作成する為に必要な経験点の)全部または一部を譲渡することができるが、着用者は魔法のアイテムを作成する為に必要とされているよりも多くの経験点を譲渡することはできない。経験点譲渡、経験点の代価、経験点コスト分担の為の必要条件は全てこの装置を使用する際に適用される。
 着用者が魔法のアイテムの為の経験点譲渡を拒否したならば、作成者は魔法のアイテムを破壊することができ、既に注入された経験点はそれによって取り戻される。しかしながら、注ぎ込んだ金銭はやはり失われる。
オーラ/術者レベル:微弱・共通。術者レベル1
作成:《その他の魔法のアイテム作成》、トランスファレンス呪文、100gp、16経験点、1日。
重量:1/2ポンド。
市価:200gp。

  • 儀式特技
 この第三の経験点譲渡手段は、魔法のアイテムの作成者が修得する特技である。この手段は、双方の集団が頻繁に共同で作業している間は、経験点を譲渡する個々人と魔法のアイテムの作成者の双方にほぼ等価に身の安全を保障する。
《譲渡の儀式》
 君は同意を得た魔法のアイテムに他のクリーチャーの経験点を移送することができ、また自分では条件を満たすことのできない前提条件のある魔法のアイテムを作成することができる。
前提条件:〈知識:神秘学〉または〈知識:宗教〉、任意のアイテム作成特技。
利益:君は自分の〈知識:神秘学〉または〈知識:宗教〉に基づいた儀式を執り行える。君が〈知識:神秘学〉でこの特技の前提条件を満たしたのであれば、秘術呪文の前提条件を持つ魔法のアイテムだけが譲渡儀式を伴って作成されうる。君が〈知識:宗教〉でこの特技の前提条件を満たしたのであれば、信仰呪文の前提条件を持つ魔法のアイテムだけが譲渡儀式を伴って作成されうる。
譲渡(〈知識:神秘学〉4ランクまたは〈知識:宗教〉4ランク):君は自分が作成している同意を得た魔法のアイテムに1体以上のクリーチャー(最大で5体まで)から譲渡経験点を運び込むことができる。この儀式に参加しているクリーチャーはどれだけの経験点を譲渡するか調節する。君は同意を得た魔法のアイテムを作成する為に必要な分よりも多くの譲渡経験点を運び込むことはできない。経験点譲渡、経験点の代価、経験点コスト分担の為の必要条件は全てこの儀式に参加する際に適用される。
 同意の上での変更により更なる経験点が必要となったならば、君または参加クリーチャーは必要な分の経験点を提供しなければならない。同意の上での変更により少ない経験点しか必要としなくなったならば、その差分は(元々の貢献度に応じた)適正な量が君または参加クリーチャーに返還される。たとえその内の一人だけであっても参加クリーチャーが同意していない魔法のアイテムを君が作成し始めたならば、譲渡経験点は直ちにそれらのクリーチャーに返還される。君が同意を得た魔法のアイテムを作成する為に最低でも1日を費やしたならば、経験点は魔法のアイテムが完成したか否かに関わらず消費される。君が同意を得た魔法のアイテムを作成する為に最低でも1日を費やした後で新たな魔法のアイテムに取りかかり始めたならば、(魔法のアイテム作成に関する一般ルールにより)経験点は消費され、消失する。
 この儀式に参加しているクリーチャーは、魔法のアイテムが作成されている間(市価1,000gpごとに1日、1日につき8時間;ポーションはコストと無関係に製作には常に1日しかかからない)、同席していなければならない。この儀式に参加しているクリーチャーが同席していないならば、その日の魔法のアイテム作成の進展は一切ない。1日につき8時間が経過する前にクリーチャーが退席したならば、その日の作業分は作成日数に含めない。
共同作業(〈知識:神秘学〉8ランクまたは〈知識:宗教〉8ランク):君はこの儀式に参加していて最低でも経験点コストの50%を譲渡したクリーチャーによって、同意を得た魔法のアイテムの為の前提呪文を提供することができる。クリーチャーは呪文に必要な物質要素または焦点具を提供しなければならず、また呪文に必要な経験点コストを支払わなければならない。魔法のアイテムを作成する行為はこれらの呪文を解放してしまうため、魔法のアイテム作成を行なっている期間中は毎日、その呪文を発動することはできなくなる。
注:(君が呪文を提供するものとして、)君がこの特技を修得したNPCに魔法のアイテムの作成を注文するのであれば、君の貢献度と魔法のアイテムの種類に応じた金額が最終的な市価から割り引かれる
(『ダンジョン・マスターズ・ガイド』p.285の表7-33『魔法のアイテムの価格算定』を参照のこと)。
 同様に、君はこの儀式に参加していて最低でも経験点コストの50%を譲渡したクリーチャーによって、同意を得た魔法のアイテムの為の前提条件となっている能力値、属性、キャラクター・レベル、クラス・レベル、クラスの特徴、種族、技能ランクを提供することができる。これらの条件を提供することによる割引きはない。君は魔法のアイテムを作成する為に必要な術者レベルとアイテム作成特技を常に提供しなければならない。
特殊:前提条件を満たしているキャラクターは、5つのタリスマン・オヴ・トランスファレンスを作成した後で、ボーナス特技として自動的に《譲渡の儀式》を獲得する。

概要:
特技 前提条件 利益
《譲渡の儀式》 〈知識:神秘学〉または〈知識:宗教〉、任意のアイテム作成特技 経験点を譲渡する儀式を執り行う

著者略歴:
  Kolja Raven Liquetteはおそらく、ウェブサイト『The Waking Lands』を作り上げたことでもっとも名を知られているが、『Races of the Dragon』や『Weapons of Legacy』の共著者でもあり、加えて『FiveNations』、『Complete Mage』(近刊)、およびWizards of the Coast社のウェブサイトの様々な記事やエンハンスメントの素材を提供している。

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最終更新:2010年06月02日 09:54