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「中国経済崩壊するする本」はどのくらいあるのか


はじめに

「アメリカ人が好きなもの2つを挙げて風刺せよ」と言われたら銃と聖書が挙げられるだろうが、日本人で同じことをやれと言われた
らおれはアニメと「中国経済崩壊するする本」を選ぶ。「中国経済崩壊するする本」とは読んで字のごとく、あれやこれやという理由
で中国経済、あるいは共産党政権が崩壊するのだ、ともっともらしいことを面白おかしく主張する本のことだ。あまりに何度も何度も
主張されるために、「一体何回崩壊してるんだよ」「こいついつも崩壊してんな」などと皮肉られることさえある。そんな「中国経済
崩壊するする本」はいったいどれくらいあるのかを調べてみたくなった。言ってみればこれはプロのオオカミ少年たちがまき散らした
戯言のドブさらいである。毎年のように崩壊していく中国経済(崩壊してない)を君の目に焼き付けろ!

今回調べた方法・基準は以下の通り。
  • 国立国会図書館サーチを使って書名を検索した。
  • 「中国」「経済」「崩壊」などの単語で検索し、それらしいタイトルの本をピックアップした。
  • 検索期間は記録に残っている最も古いものから2024年6月末まで。
  • 基準としては上記の通り「中華人民共和国の経済、あるいは共産党政権/習近平政権が崩壊する」と書名で主張している本を選んだ。
  • つまり「スーパー中国史 後漢の崩壊と次なる野望」は現代中国じゃないため対象外であり、
    「河南省北部での生態系崩壊の危機」は一部の限られた分野について述べているため対象外となる。(いずれも架空の本)
  • 国が崩壊しても平気な中国人・会社がヤバいだけで真っ青な日本人」みたいなエッセイも除外 
  • そのためタイトルが煽っているだけで中身が真面目な本は対象となるが、タイトルは真面目でも中身がうさんくさい本は対象とならない。
  • 微妙な感じのタイトルが付いていた場合最後は感覚で判断した。だから完全なリストではないだろう。
  • 戦前戦中の本に限っては当時の支那≒中華民国が崩壊すると主張している本もカウントした。
  • 終焉とか壊滅とか自壊とか最期とかいった単語でもできるだけ検索したつもりだが、抜けがあってもご容赦願いたい。
  • これも「中国経済崩壊するする本」じゃ? と思われるものがあったらぜひお知らせください。

今回確認できた「中国経済崩壊するする本」の一覧

タイトル 著者/編集者 出版年月
中國農村經濟の崩壊 丁達著 ; [鎌田政國抄譯] 1931.9
世界恐慌と支那の経済的崩壊 (世界経済パンフレツト・ニユース ; 第12輯) 陳翰笙(1897-2004)[著],
[五十嵐隆編輯]
1933.6
崩壊を辿りつゝある中国国民政府 : 添付国民政府図解 大月社会問題調査所 1934
支那経済の崩壊と日本 高橋亀吉 編 1936
支那経済の崩壊過程と方法論 田中忠夫 著 1936
近代支那農村の崩壊と農民闘争 田中忠夫 著 1936.12
中國民族工商業崩壞の諸要因とその實態 :
對日民間貿易の早期再開に中國々民はなぜ反對したか
經濟安定本部總裁官房調査課 [編] 1948.3
迷走する中国経済の悲劇 : 「長老国家」崩壊のシナリオ 木屋隆安 著 1986.11
中国崩壊 : 誰も知らない、この国の病状 司瞭 著 1989.8
中国共産党帝国の崩壊 : 呪われた五千年の末路 (カッパ・ビジネス) 小室直樹 著 1989.9
大予言中国崩壊のシナリオ 黄文雄 著 1989.9
中国秘密報告 : 国家崩壊が始まった (カッパ・ブックス) 永田二人 著 1990.6
中国は崩壊する : ドキュメント北京の55日 : 中国民主革命の最前線をゆく 滝谷二郎著 1990.6
中国の終末 : 中国共産党は死んだ 方励之 著, 末吉作 編訳 1992.5
鄧小平後、中国ビジネス大崩壊がやってくる : 中国・台湾・香港の大中華共栄圏はどうなる 征木翔 著 1995.2
中国大崩壊 : 1995年鄧小平亡き後の大分裂 江戸雄介 著 1995.2
「鄧小平」帝国の遺産 : 中国共産党の崩壊と中華人民共和国の変容 石田収 著 1995.5
脅かす中国騙される日本 : 中国ビジネス市場崩壊 (カッパ.ビジネス) 黄文雄 著 1996.1
香港崩壊と日本 : 中国共産党が仕掛けた「罠」 (カッパ・ブックス) 廖建竜 著 1997.4
改革開放中国は崩壊する 玉川信明 著 1998.9
人民元大崩壊 : 中国発「世界連鎖恐慌」の衝撃 宮崎正弘 著 1998.11
中共は十年以内に崩壊する : 『チャイナ・ウオッチング』誌予測の理由 石原栄次 著 2001.4
やがて中国の崩壊がはじまる ゴードン・チャン 著, 栗原百代,
服部清美, 渡会圭子 訳
2001.11
2008年中国の真実 : 覇権か、崩壊か 中嶋嶺雄, 古森義久著 2002.4
中国金融崩壊 : 見せかけだけの経済成長と隠されている銀行破綻 野口能孝 著 2003.9
それでも中国は崩壊する (WAC bunko) 黄文雄 著 2004.4
中国農村崩壊 : 農民が田を捨てるとき 李昌平 著, 吉田富夫 監訳,
北村稔, 周俊 訳
2004.6
チャイナ・クラッシュ : 中国バブル崩壊後、日本と世界はどうなるのか 山崎養世 著 2005.6
そして中国の崩壊が始まる (マンガ入門シリーズ) 井沢元彦 原作, 波多野秀行 漫画 2006.8
中国は猛毒を撒きちらして自滅する : 全世界バブル崩壊の引き金を引くのも中国 宮崎正弘 著 2007.9
断末魔の中国 : 粉飾決算国家の終末 (学研新書) 柘植久慶 著 2007.11
崩壊する中国逃げ遅れる日本 : 北京五輪後に始まる戦慄のシナリオ 宮崎正弘 著 2008.1
マンガ中国崩壊 (ゴマ文庫) 井沢元彦 原作, 波多野秀行 漫画 2008.5
本当にヤバイ!中国経済 : バブル崩壊の先に潜む双頭の蛇 三橋貴明 著 2008.5
中国大崩壊 : 世界恐慌のシナリオ 柘植久慶 著 2008.7
北京五輪後、中国はどうなる? : 中国崩壊これだけの理由 宮崎正弘 著 2008.6
中国が崩壊する日 : チベット、四川大地震から北京五輪へ (Oak mook ; 223号. 撃論ムック) 西村幸祐 責任編集 2008.7
中国の崩壊が始まった! (Wac bunko) 日下公人, 石平 著 2008.6
中国大崩壊の衝撃 : 世界を恐怖に陥れる : 共産党一党独裁体制が、いよいよ終焉を迎える!? 青柳孝直 著 2008.8
それでも中国は崩壊する 改訂版 (WAC bunko) 黄文雄 著 2008.10
中国は歴史に復讐される : 繁栄か、崩壊か-赤い資本主義の全シナリオ 岡崎久彦, 渡辺利夫 著 2008.11
宴のあとの中国 : 崩壊目前の偽装大国 柘植久慶 著 2008.12
中国経済崩壊の現場 : 中国のメディアが語る 石平 著 2009.1
バブル崩壊で死ぬか、インフレで死ぬか : 不動産国家・中国の行方 (Wac bunko ; B-134) 石平, 有本香 著 2010.9
上海バブルは崩壊する : ゆがんだ中国資本主義の正体 宮崎正弘 著 2010.9
自壊する中国 : ネット革命の連鎖 (文芸社文庫) 宮崎正弘 著 2011.6
2012年中国崩壊2014年日本沈没 浅井隆 著 2011.8
巨龍中国は2022年に崩壊する 關洸念 著 2011.11
「大国中国」の崩壊 : マーシャル・ミッションからアジア冷戦へ
(現代中国地域研究叢書 = National Institutes for the Humanities Contemporary
Chinese Area Studies ; 2)
松村史紀 著 2011.12
中国崩壊と暴走3つのシナリオ 石平 著 2012.5
2014年、中国は崩壊する (扶桑社新書 ; 117) 宇田川敬介 著 2012.6
中国崩壊か繁栄か!? : 殴り合い激論 副島隆彦, 石平 著 2012.7
2013年の「中国」を予測する : 中国社会の崩壊が始まった! (WAC BUNKO ; B-170) 宮崎正弘, 石平 著 2012.9
世界中に嫌われる国・中国崩壊のシナリオ (WAC BUNKO ; B-173) 黄文雄 著 2012.10
「中国の終わり」のはじまり : 習近平政権、経済崩壊、反日の行方 黄文雄, 石平 著 2012.11
中国ビジネスの崩壊 : 未曾有のチャイナリスクに襲われる日本企業 青木直人 著 2012.12
習近平と中国の終焉 (角川SSC新書 ; 167) 富坂聰 著 2013.1
中国高官が祖国を捨てる日 : 中国が崩壊する時、世界は震撼する (経済界新書 ; 033) 澁谷司 著 2013.2
中国崩壊カウントダウン : 世界と日本のこれから 河添恵子 著 2013.4
2013年後期の「中国」を予測する : 習近平の断末魔の
叫びが聞こえる (WAC BUNKO ; B-176)
宮崎正弘, 石平 著 2013.4
中国バブル崩壊が始まった 宮崎正弘 著 2013.7
そして、生き残るのは日本だけ! : 行きづまりの米国、崩壊に向かう中国、
静かに滅びるEU、 : プラグマティズム国家崩壊の時代
増田悦佐 著 2013.7
中国自壊 : 賢すぎる支配者の悲劇 増田悦佐 著 2013.7
中国はもう終わっている 黄文雄, 石平 著 2013.9
「全身病巣」国家・中国の死に方 : 蝕まれた虚像の大国が悲鳴を上げる 石平 著 2013.11
中国共産党3年以内に崩壊する!? 宮崎正弘 著 2013.12
世界恐慌か国家破産か パニック編 (中国が先に崩壊するのか日本が先に潰れるのか) 浅井隆 著 2014.3
世界恐慌か国家破産か : 中国が先に崩壊するのか日本が先に潰れるのか サバイバル編 浅井隆 著 2014.4
衰退する中国経済 : 不動産投資の要点 亀田壽夫 著 2014.4
中国崩壊前夜 : 北朝鮮は韓国に統合される 長谷川慶太郎 著 2014.5
マスコミと政治家が隠蔽する中国 : 保守政治家が警告するその崩壊と、親中派の売国 長尾敬 著 2014.5
「中国の時代」は終わった 宮崎正弘 著 2014.5
世界征服を夢見る嫌われ者国家中国の狂気 : 習近平体制崩壊前夜 石平 著 2014.6
仲良く自滅する中国と韓国 : 暴走と崩壊が止まらない! 宮崎正弘, 室谷克実 著 2014.6
中国崩壊カウントダウン : 中国は崩壊の歴史を必ず繰り返す! 石平 著 2014.7
自壊する中国反撃する日本 : 日米中激突時代始まる! 古森義久, 石平 著 2014.8
「全身病巣」国家・中国の死に方 : 蝕まれた虚像の大国が
悲鳴を上げる (宝島SUGOI文庫 ; Dせ-2-3)
石平 著 2014.9
中国崩壊で日本はこうなる : 貨幣論に無知な中国に通貨戦争を仕掛ける米国 宮崎正弘, 大竹愼一 著 2015.1
日本に惨敗しついに終わる中国と韓国 宮崎正弘, 室谷克実 著 2015.5
こんなに脆い中国共産党 : 現実味のある三つの崩壊シナリオ (PHP新書 ; 986) 日暮高則 著 2015.6
ついに中国で始まった大崩壊の真実 : 急落する経済と社会混乱の実態を現地から衝撃報告 邱海涛 著 2015.7
中国経済まっさかさま : 中国共産党崩壊間近の予兆 勝又壽良 著 2015.8
中国バブル崩壊 (日経プレミアシリーズ ; 293) 日本経済新聞社 編 2015.10
私たちの予測した通り、いよいよ自壊する中国! (WAC BUNKO ; B-228) 宮崎正弘, 石平 著 2015.10
「中国の終わり」にいよいよ備え始めた世界 宮崎正弘 著 2015.10
習近平にはなぜもう100%未来がないのか 石平 著 2015.11
中国崩壊後の世界 (小学館新書 ; 246) 三橋貴明 著 2015.12
中国壊死 : 百年変わらない腐敗の末路 宮崎正弘, 宮脇淳子 著 2015.12
中国バブル崩壊の真実 : これから中国が経験する3つのバブル崩壊! (別冊宝島 ; 2422) 宝島社 2016.2
中国経済はどこまで崩壊するのか (PHP新書 ; 1039) 安達誠司 著 2016.3
中国経済はどこまで死んだか : 中国バブル崩壊後の真実 宮崎正弘, 田村秀男, 渡邉哲也 著 2016.4
中国黙示録 : 未来のない国の憐れな終わり方 黄文雄, 渡邉哲也 著 2016.4
最後は孤立して自壊する中国 : 2017年習近平の中国 (WAC BUNKO ; B-235) 石平, 村上政俊 著 2016.5
日本・インドの戦略包囲網で憤死する中国 石平, ペマ・ギャルポ 著 2016.6
中国バブル崩壊の全内幕 : 2017年、習近平は失脚する 宮崎正弘, 石平, 福島香織 著 2016.7
世界大乱で連鎖崩壊する中国日米に迫る激変 : EU分裂、テロ頻発、南シナ海紛争… 宮崎正弘 著 2016.8
習近平が中国共産党を殺す時 : 日本と米国から見えた「2017年のクーデター」 石平, 陳破空 著 2016.8
赤い帝国・中国が滅びる日 : 経済崩壊・習近平暗殺・戦争勃発 福島香織 著 2016.11
米中の危険なゲームが始まった : 赤い帝国中国崩壊の方程式 福島香織 著 2017.6
バブルで衰退する中国技術力で復活する日本 勝又壽良 著 2017.8
戸籍アパルトヘイト国家・中国の崩壊 (講談社+α新書 ; 777-1C) 川島博之 [著] 2017.10
中国経済崩壊のシナリオ フィスコ世界経済・金融
シナリオ分析会議 著
2017.11
習近平の絶対化でいま中国で起きている大破局 :
経済も民心も急速に荒廃 : 緊迫の現地から衝撃レポート
劉文志 著 2017.12
習近平の死角 : 独裁皇帝は間違いなく中国を自滅させる 宮崎正弘 著 2018.7
嫌韓朝論 : 世界の火薬庫朝鮮半島 : 中国の夢は崩壊か (MSムック) ブレインハウス 2018.10
2019年アメリカはどこまで中国を崩壊させるか : そして日本が歩む繁栄の道 渡邉哲也 著 2018.11
2020年「習近平」の終焉 : アメリカは中国を本気で潰す 日高義樹 著 2019.2
習近平がゾンビ中国経済にトドメを刺す時 : 日本は14億市場をいますぐ「損切り」せよ! 石平, 渡邉哲也 著 2019.5
習近平の敗北 : 紅い帝国・中国の危機 福島香織 [著] 2019.6
「中国大崩壊」入門 : 何が起きているのか?これからどうなるか?どう対応すべきか? 渡邉哲也 著 2019.7
ディープインパクト不況 : 中国バブル崩壊という巨大隕石が
世界経済を直撃する (講談社+α新書 ; 341-2C)
真壁昭夫 [著] 2019.11
崩壊した「中国システム」とEUシステム : 主権・民主主義・健全な経済政策 荻野文隆 編 2019.12
世界は「習近平中国」の崩壊を望んでいる : 覇権・監視国家 (WAC BUNKO ; B-316) 河添恵子 著 2019.12
中国は2020年で終わる (変見自在) 髙山正之 著 2019.12
「コロナ以後」中国は世界最終戦争を仕掛けて自滅する 宮崎正弘 著 2020.4
さよなら習近平 : 新型肺炎、経済崩壊、軍事クーデターで 宮崎正弘 著 2020.4
コロナ大戦争でついに自滅する習近平 福島香織 著 2020.5
米中最終決戦 : アメリカは中国を世界から追放する 藤井厳喜 著 2020.6
大中華帝国崩壊への序曲 : 中国の女神洞庭湖娘娘、泰山娘娘/
アフリカのズールー神の霊言 (OR BOOKS)
大川隆法 著 2020.8
それでも習近平が中国経済を崩壊させる (WAC BUNKO ; B-334) 朝香豊 著 2021.3
亡びゆく中国の最期の悪あがきから日本をどう守るか : 国防秘策としてのプロスペクト理論 兵頭二十八 著 2021.12
バブル崩壊前夜を迎えた中国の奈落 : すべてはバカ殿習近平の仕業!? 石平 著 2022.1
怪物(モンスター)化する中国は世界を壊して自滅する :
ゼロコロナ失敗、バブル崩壊、ジェノサイド激化…
渡邉哲也 著 2022.1
中国経済はもう死んでいる 宮崎正弘 著 2022.2
習近平独裁王朝に待つ悲惨な末路 石平 著 2022.2
中国の危機と世界 : 強権国家・終わらないバブル・人民共和国崩壊 有賀敏之 著 2022.6
習近平帝国のおわりのはじまり : 孫文の亡霊と中華民族というウソに騙されるな! 石平 著 2023.6
中国経済崩壊宣言! : 断末魔の数字が証明する 髙橋洋一, 石平 著 2023.8
習近平「独裁新時代」 : 崩壊のカウントダウン 福島香織 著 2023.8
やっぱり中国経済大崩壊! : いま中国で起こっている本当のこと 石平 著 2023.11
中国経済衰退の真実 : オールカラーのグラフで一目瞭然 (産経セレクト ; S-033) 田村秀男 著 2024.2
「中国大恐慌」時代が始まった! : 日本のバブル崩壊を超える大惨事 石平 著 2024.5

感想と指摘

以上132冊。まずここまで見た人が言いたくなったであろうことをおれが代弁する。「日本人は何回中国経済を崩壊させれば気が済む
のか?」まるで毎年、毎月の風物詩であるかのように崩壊している。一種の病的なものを感じずにはおれない。個人的な見解としては
思ったほど多くない。500冊くらいあるのかと思った。Amazonで本の表紙も少し見てみたが、タイトルはまともでも帯や中身がメタク
ソな本が山ほどあるようだ。戦後80年代まではまったくなかった「中国経済崩壊するする本」が2010年代には大量発生している。考え
てもみれば当たり前で、中国のGDPが日本を抜いたのはPPPベースで2001年名目GDPで2010年のことだ。逆に言えばそれまでは中国経
済など崩壊させる価値さえなかった。崩壊するとすごくてヤバくてカタルシスがあるからこそ崩壊させるのである。

中国経済だけでなく習近平を名指しで崩壊だの終焉だの未来がないだのと好き放題書く本が多いのも気になった。試しに「習近平」を
タイトルに含む日本語の書籍を検索したところ362件の本がヒットした。同じく日本語書籍に限って「安倍政権」「安倍晋三」で検索
してみたところそれぞれ245件と143件だった。日本人は習近平好きすぎるだろ。

著者を見てみると「イツメン」が多く並んでいることが挙げられる。読者を含めたいつものメンツがいつもの話題で盛り上がる閉鎖性
なサークル。その輪の中で自分たちの偏見や先入観を強化し合い自己満足する不健康なループが出来上がっている。著者たちは恥も臆
面もないのかと思いたくもなるが、実際にないらしい。「日本の出版業界では、中国崩壊物は必ず売れる」のだという。「『中国崩壊
物』のフォロワーは、予言が的中することなんて最初から期待していないのかもしれない」は全くその通りだろう。事実、「中国経済
についてはあまり明るくない」人間がよそからデータをパクって中国経済がどうのこうのという本を書いている。本が売れれば中身は
どうでもいいのだし、そもそも「中国経済崩壊するする本」の読者層は中身をまともに読んでさえいない可能性もある。

著者はビジネスでやっているから中国経済がどうなろうと内心知ったことではないだろうが、読んでいる読者の方は崩壊すれば自分の
得になると思っているのだろうか。知っての通り日本の最大の貿易相手国は中国であり、輸入でも輸出でも1位である。中国が「汚染
水」を巡って日本産水産物を輸入停止にしたことで大騒ぎになったのは記憶に新しいが、本当に中国経済が崩壊したら影響はそんなも
のでは済まない。そこのところどういう理屈になってんだろう?  それともう一点。この手の本は中国経済が崩壊するするとのたま
う一方で、中国が他国を経済力で乗っ取るのだとする脅威論がまま語られる。この二つの相矛盾する主張が同時に存在する二重思考状
態を「中国経済崩壊するする本」の著者や読者は自覚しているのか、とてもとても気になる。

さて、そんな突っ込みは銘々がするとして、以下気になった書籍をいくつかピックアップしたい

  • 世界恐慌と支那の経済的崩壊,陳翰笙(1897-2004)[著], [五十嵐隆編輯],1933.6
  • 支那経済の崩壊と日本,高橋亀吉 編,1936
  • 支那経済の崩壊過程と方法論,田中忠夫 著,1936
日本人は戦前から「中国経済は崩壊する!」という本を読んでいたのかとゲンナリできる。大日本帝国の経済はどうなりましたか…?(小声)

  • それでも中国は崩壊する (WAC bunko),黄文雄 著,2004.4
  • それでも中国は崩壊する 改訂版 (WAC bunko),黄文雄 著,2008.10
「それでも」ってあたりがヤケクソじみてて笑える。崩壊すると言っておきながら4年後にしれっと改訂版を出しているが、崩壊して
いないからこそ改訂版を出せたのではないか?

  • 中国はもう終わっている,黄文雄, 石平 著,2013.9
  • 「中国の時代」は終わった,宮崎正弘 著,2014.5
  • 中国経済はもう死んでいる,宮崎正弘 著,2022.2
あまりにも崩壊しないので崩壊したことにしちゃった本。「もう死んでいる」ってケンシロウかお前は。あんまりなタイトルなのでグ
グったところ同様の指摘してる人あり。でもこれはMMRが「人類はすでに滅亡している」と言い出すような悪手ではないのか。この本
を書いたが最後、もう中国経済は崩壊するぞ! と書けなくなってしまう。だってとっくに崩壊してるんだもの……というおれの心配
をよそに、著者らが今も元気に「中国経済崩壊するする本」を新規出版し続けているのは表にあるとおり。

  • 大中華帝国崩壊への序曲 : 中国の女神洞庭湖娘娘、泰山娘娘/アフリカのズールー神の霊言 (OR BOOKS),大川隆法 著,2020.8
イタコ芸で有名な例のあの人まで「中国経済崩壊するする本」に参戦してくるとは……。

  • 中国バブル崩壊 (日経プレミアシリーズ ; 293) 日本経済新聞社 編 2015.10
日経、お前もか。

  • 中国大崩壊の衝撃 : 世界を恐怖に陥れる : 共産党一党独裁体制が、いよいよ終焉を迎える!?,青柳孝直 著,2008.8
  • 中国崩壊か繁栄か!? : 殴り合い激論,副島隆彦, 石平 著,2012.7
  • 中国共産党3年以内に崩壊する!?,宮崎正弘 著,2013.12
  • バブル崩壊前夜を迎えた中国の奈落 : すべてはバカ殿習近平の仕業!?,石平 著,2022.1
断言できないんで「?」でごまかしてみましたシリーズ。どうせ崩壊すると大上段に構えてもの申すなら思い切って言い切らんかい。
本のタイトルまでベターリッジの見出しの法則(「●●は××なのか?」といった疑問符で終わる見出しの記事の結論は「ノー」であ
る。なぜなら「イエス」と断言できる証拠があるなら最初から肯定文で書くはずだ」というもの)みたいになっててちょっと笑える。

  • 暴走する中国が世界を終わらせる : オンナ・カネ・権力への妄執の果て,宮崎正弘, 福島香織 著,2016.10
中国どころか世界が終わってしまうとまで表現する本まであった。次は「中国が太陽系を終わらせる」「宇宙を終わらせる」だろうか。

  • それでも習近平政権が崩壊しない4つの理由,富坂聰 著,2023.2
  • 中国がいつまでたっても崩壊しない7つの理由 : 世界が見誤った習近平の冷徹な野望,富坂聰 著,2017.6
  • 中国は崩壊しない : 「毛沢東」が生きている限り,陳惠運, 野村旗守 著,2010.1
番外編。検索している最中に見つけた面白いタイトルの本。非常に珍しい、崩壊しないという側に賭け金を置いた本である。今のとこ
ろこちらが勝利を収めているのは明白だが、本の売れ行きは悪そうである。

最後に一冊、真面目な本を紹介して終わりたい。タイトルは「中国経済の謎―なぜバブルは弾けないのか?」Amazonでも読書メーター
でもレビューの評判がいいのでいつか読んでみたい。しかし原題の「China : The Bubble that Never Pops」は粋だ。「決して弾けな
いバブル」はもちろん、今まで何度も何度も弾けるだの崩壊するだのと言われてきたことを前提にしている。たぶん、アメリカの書店
にも「中国経済崩壊するする本」は山ほどあるのだろう。

もし万が一、共産党政府が力を失うくらいにまで中国経済が崩壊したらこのコラムのトップに謝罪文を10行くらい書くつもりだが、本
当にそんなことになったらおれもあなたも笑えない事態になっているのは確実である。戦争と中国経済の崩壊は本の中だけにして欲し
いものだ。




最終更新日 2024-06-30

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最終更新:2024年06月30日 00:03