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白い羽根運動、再び



はじめに

第二次大戦中によみがえった白い羽根運動について、主にオーストラリアで出版された当時の新聞記事を翻訳しながら見ていく。
意訳・誤訳・超訳があることをお許し頂きたい。翻訳文中の[]は訳注である。

結論から言えば、第二次大戦中の白い羽根運動は第一次大戦中のそれと同等以上に悪質であり、相も変わらず戦傷を受けた兵士や休暇
中の兵士に送りつけられていた。それだけに止まらず、徴兵年齢に満たない少年が白い羽根を送りつけられ辱められたがために自殺、
それにショックを受けた友人までもが自殺する事件など目を覆いたくなるような事例までもが記録されている。中には「男性を辱めて
志願させる」という元々の意図を逸脱し女性が女性に白い羽根を送りつけたケースのように、白い羽根を単なる「叩き棒」や嫌がらせ
の道具として使っていたと思われるニュースもあった。

予備知識
  • イギリスにおいては18歳から41歳までの男性が徴兵対象(1939年制定)、1942年からは上限が51歳へ引き上げ
  • 警察、医療従事者、政府職員などは対象年齢でも免除されていた
  • 補助地方義勇軍婦人補助空軍など女性が非戦闘任務へ志願できる環境も整えられていた


恥辱を受ける兵士達

The Sun 1942年1月18日
A Glass Eye For A White Feather
Lieut. Jack Leslie Perry, Military Cross, minus an eye blown out in Syria, wounded in four places at Tobruk, fought in
Greece and Crete and now being treated at Concord Military Hospital, was given a white feather yesterday!
To the unknown woman who handed it to him, he said nothing. He just dropped a glass eye from its socket into his hand,
and the woman reeled. She recovered sufficiently to make a hurried exit from the lounge of a city hotel where the
incident took place. And with her went the feather. She declined his invitation to accept his left eye as a gift.
This decorated hero of Tobruk was waiting for his wife. He had a glass of beer to his lips when the woman suddenly
appeared and said, "Here," handing him the symbol of cowardice from her handbag.

Deed That Won M.C.
"You could have knocked me down with that feather, but I was sitting at the time," said the young Military Cross
recipient. This is the official citation which earned the Military Cross for Lieut. Perry:―― "For conspicuous
gallantry and devotion to duty. This officer was detailed with his platoon of pioneers to assist in blowing up the
enemy wire in an attack on Tobruk on January 21, 1941. While waiting near the enemy wire the party came under heavy
shell-fire and sustained numerous casualties. Lt. Perry led the rest of the party forward under fire and personally
supervised the placing of the explosives under the enemy wire, thus enabling the entry of the waiting infantry.
He displayed in this action leadership above the ordinary and outstanding courage and devotion to duty which was a
conspicuous example to his men." What Lt. Perry cannot make out is why this woman should pick on a khaki-clad man
for her white feather act. "There were plenty of men in civilian clothes around," he said. Lieut. Perry is still
in the Army training other men.

白い羽根にガラスの義眼で応える
十字勲章の受章者であるジャック・レスリー・ペリー中尉はシリアで片目を失い、トブルクで4カ所を負傷し、ギリシャとクレタでも
戦い、今はコンコード軍病院で治療を受けている。その彼が昨日、白い羽根を送りつけられた! それを渡した見知らぬ女性に対して
彼は何も言わなかった。義眼を眼孔から取り外して手にしただけだ。女性はその様子に動揺した。気を取り直した彼女は、事件が起き
た市内のホテルのラウンジから急いで立ち去った。白い羽根も女性と共に去って行った。左目を贈るというペリーの申し出も断った。
トブルクの英雄であるこの受章者はそのとき妻を待っていた。ビールのグラスに口を付けたところにその女性が突然現れ、「どうぞ」
と言って臆病者の象徴である白い羽根をハンドバッグから取り出し手渡したのである。

十字勲章を受けた行為
「白い羽根でひっくり返されるところだったけど、なにぶん椅子に座っていたのでね」と若き十字勲章受章者は語った。以下はペリー
中尉が十字勲章を受章した際の公式な推薦文である。「目覚ましい勇気と職務への献身を賞して。1941年1月21日、トブルクへの攻撃
に際し敵の鉄条網爆破を支援するため、この士官は彼率いる工兵小隊と共に分遣されていた。敵の鉄条網近くで待機していたところ、
部隊は激しい砲撃を受け多数の死傷者を出した。ペリー中尉は残った兵を率いて砲火の中を前進し、鉄条網の下に爆薬を設置する作業
を自ら監督した。その結果、待機していた歩兵部隊が突入できた。この行動において彼は人並み外れたリーダーシップと卓越した勇気、
そして職務への深い献身を示し、部下にとって顕著な模範となった」ペリー中尉がどうしても理解できないのは、なぜこの女性がカー
キ色[軍服のこと]を着た自分を選んで白い羽根を渡したのかということだ。「私服の男性も周りにたくさんいたのに」と彼は語る。ペ
リー中尉は今も陸軍に所属し兵士たちの訓練にあたっている。

いきなりキツいエピソードから。「マックの女子高生が…」「電車で乗り合わせた老人が…」なんてたぐいの作り話かと思ってしまう
くらいドラマチックかつひどい話である。実際、当時のオーストラリア国民もひどいと思ったらしく、翌日には当局が白い羽根を送り
つける行為を非難するコメントを出したことが報じられている。

The Newcastle Sun 1942年1月19日
WHITE FEATHER HABIT IS DENOUNCED
SYDNEY. ――"Thiis iis[原文ママ] one of the most reprehensible cases that has come under our notice in this war."
said army authorities today, referring to a woman who, on Saturday, handed a white feather to Lieut. Jack Leslie Perry,
Military Cross winner, who lost his eye in Syria. Lieut. Perry said nothing to the woman who handed him the feather.
He Just dropped his glass eye from its socket into her hand. "This officer would have been perfectly justified in
giving the woman in charge for offensive behavior." said authorities.
"The Government of Australia has always adopted the principle that every man is the keeper of his own conscience."
"It is the Army's job to administer that policy." An officer said that people who handed out white feathers could put
their time to better use in working for the war effort.

白い羽根という悪習を非難する
シドニー発:「これは今回の戦争で我々が見た中でも最も非難されるべき事例のひとつだ」と陸軍当局は本日語った。これは、土曜日
にジャック・レスリー・ペリー中尉に白い羽根を手渡した女性についての発言である。彼は十字勲章の受章者であり、シリアで片目を
失った。羽根を渡して来た女性に対してペリー中尉は何も言わなかった。義眼を眼孔から取り外して彼女に手渡しただけだ。[The Sun
の記事では自分の手に握ったと書いてあるがこの記事には女性の手に義眼を握らせたことになっている] 「この士官が女性を侮辱行
為のかどで訴えたとしても完全に正当化されるだろう」と当局は述べた。当局はさらに「オーストラリア政府は『すべての人間は自ら
の良心の番人である』という原則を常に採用してきた[ここでのman, hisは男性ではなく人間全体の意だろう]」「そして、その原則を
運用するのが軍の仕事である」と続けた。ある士官は「白い羽を配るような人たちは、戦争努力のためにもっと有意義な時間の使い方
をすべきではないか」と語った。

1942年の1月時点で当局さえも呆れるていたことがわかる。また最大の事例のひとつとしていることから、同様の事件が複数あったこ
とも示唆されている。事実次のようなニュースがある。

Daily Mercury 1941年9月15日
SHAMELESS WOMEN GAVE WHITE FEATHERS TO HEROES
SYDNEY, Sunday. — A young man walking across Martin Place on Friday felt something thrust into his hand by an elderly
woman, who smiled and hurried away.
It was a white feather, and the young man, who tossed it into the gutter, was Lieutenant Stanley Bently, 28, invalided
back to Australia after action in Tobruk.
Two days previously, at Palm Beach, three girls asked a young man in "civvies" why he was not in khaki.
He was Captain Bjelke-Petersen, also invalided back after action in Tobruk.
"Sending white feathers to any Australian is despicable," said an Army officer. "
Many men working in specialised munition tasks which they are not allowed to leave to join the fighting forces have
been receiving white feathers through the post."

恥知らずな女性たちが英雄に白い羽根を渡す
シドニー、日曜日——金曜日、マーティン・プレイスを歩いていた若い男性の手に、年配の女性が何かを押し込んで微笑みながらそそく
さと立ち去った。それは白い羽根だった。男性はそれを側溝に投げ捨てたのだが、その若者は28歳のスタンリー・ベントリー中尉で、
トブルクでの任務の後、負傷のためオーストラリアに後送されていた。
その2日前、パーム・ビーチでは、3人の女性が「民間人の格好」の若い男性に、なぜカーキ色の服を着ていないのかと尋ねた。彼は
ビェルケ=ピーターセン大尉で、彼もまたトブルクでの任務の後、負傷して後送されていた。
ある陸軍士官は次のように語った。「オーストラリア人に白い羽を送るのは卑劣な行為だ。戦闘部隊に加わるために仕事を離れること
を許されていない、特殊な兵器製造業務に従事している多くの男性たちが、白い羽根を郵送で送りつけられている」

全く見境なしである。地球を半周して北アフリカで戦い負傷して帰ってきたら白い羽根を渡される。また白い羽根を受け取り出征する
より重要な仕事に就いているがためになお侮辱される。胸中いかばかりか察するにあまりある。

The Telegraph 1942年10月9日
BOMBED IN MANY PLACES;GIVEN WHITE FEATHER
MELBOURNE: Bombed off Scotland, bombed off Java, bombed off Singapore――given white feather in Melbourne.
This was the experience of an English merchant naval officer who for the past three mouths has been ill in hospital
with a tropical disease. He was in Bourke Street yesterday wearing slacks and a sports coat with his MN badge.
A woman brushed past him, pressed something in his hand, and said:"With Hitler's compliments."
There was a white feather in his hand.

幾度も爆撃を受け、そして白い羽根を渡される
メルボルン発:スコットランド沖で爆撃され、ジャワ沖で爆撃され、シンガポール沖でも爆撃され――そしてメルボルンでは白い羽根
を渡された。これは、過去3ヶ月熱帯病で入院している英国商船隊の将校の体験である。昨日、彼はスラックスと商船隊バッジを付け
たスポーツコートを着込んでバーク・ストリートにいた。ある女性が彼の横をかすめて通り抜け、何かを彼の手に握らせてこう言った。
「ヒトラーからの贈呈の品ですよ」。手の中にあったのは白い羽根だった。

The Northern Producer and Morawa and District Advertiser 1942年12月4日
SAILOR GETS WHITE FEATHER.
A WOMAN SLIPPED A WHITE FEATHER INTO THE LAPEL OF FIREMAN L. J. SEYMOUR AS HE WAS PASSING THE CENOTAPH, SYDNEY.
Relating this, Seymour appealed for "protection for men of the Merchant Navy from such insults."
"I have wounds to show for sticking to my job in the war," he said, "and I have lost some good and game mates in
blitzes at sea. "We have been dive-bombed by planes, stalked and shelled by submarines, and, when we get to port,
we don't skite about our narrow escapes or seek any favours.
"All we ask is some protection from insults. We sailors bitterly resent white feathers being handed out to us."

船乗りが白い羽根を渡される
ある女性が、シドニーにある戦没者記念碑の前を通りかかった火夫のL・J・セイモアの上着の襟に白い羽根を差し込んだ。これについ
てセイモアは「商船隊の男性たちがこのような侮辱から守られるようにしてほしい」と訴えた。「私はこの戦争で、自分の職務を全う
するために手傷を負った」と彼は続ける。「海上で急襲され優秀で勇敢な仲間たちを失いもした」「敵機に急降下爆撃され、潜水艦に
つきまとわれ砲撃を食らい、そうして港にたどり着いても危機一髪命拾いしたことを自慢もしなければ特別扱いを求めることも無い」
「我々が求めているのは、ただ侮辱からの保護だけだ。船乗りたちは白い羽根を渡されることに強い憤りを感じている」

訳注:gameは形容詞として使うと「勇敢」の意味がある。
船員の話を続けてふたつ。言葉の端々から怒りが伝わってくる。生きている間は白い羽根を渡され、白い羽根を渡されない間は命を危
険にさらし、それで仲間を失うのだからやりきれない。それでも「白い羽根なんぞ渡しやがって」と愚痴れる間は生きているのだから
マシかも知れない。次の記事の男性は愚痴ることさえ出来なくなってしまった……。

The Toowoomba Chronicle and Darling Downs Gazette 1940年8月14日
WHO WAS THE COWARD?
SOLDIER GIVEN WHITE FEATHER
Driver William Charles Cross, aged 24 of Swansea, was last home on leave from France in April, before the German push
began, says the London "Daily Herald." In exercise of his right as a B.E.F. man, he wore civilian clothes. While he
was riding on a bus a young woman presented him with a white feather. Recently news was received that Cross had been
killed in action. He leaves a widow and baby daughter.

本当の臆病者は誰なのか? 兵士が白い羽根を渡される
ロンドンの「Daily Herald」紙によると、スウォンジー出身の24歳の運転手、ウイリアム・チャールズ・クロスはドイツの攻勢が始ま
る前の4月にフランスから休暇で帰国していた。[ ドイツ軍の攻勢開始は5月10日 ] 彼はBEF[ イギリス海外派遣軍 ]の兵士としての
権利に基づいて私服を着ていたところ、バスに乗車していた際若い女性から白い羽根を渡された。最近になってクロスが戦死したとの
知らせが届いた。彼は妻と赤ん坊の娘を遺している。


追い詰められる若者たち

このように白い羽根を送る行為が悪質になっていった結果、ついに自殺者までが発生してしまう。
Daily Mercury 1943年6月11日
WHITE FEATHER Caused Youth's Suicide
LONDON, June 9.――The fact that he twice received a white feather by post was probably the underlying cause of
Cyril Wray, aged 18, of Oxford, gassing himself, said the Coroner at the inquest. He added that the sending of white
feathers was always done under the cloak of anonymity by persons of a cowardly disposition. Wray's mother said he had
been in the Home Guard and previously was in the ATC. He was not called-up for the army because he was an apprentice.

白い羽根が若者の自殺を引き起こした
ロンドン・6月9日――オックスフォード出身のシリル・レイ(18歳)がガス自殺を図った根本的な原因は、白い羽根を2度にわたって
郵便で送りつけられたためであろう、と検視官は述べた。彼はまた「白い羽根を送る行為は、常に匿名という隠れ蓑を用いた臆病者に
よって行われる」と付け加えた。レイの母親によると、彼はホームガードに所属しており、それ以前にはATC[ 航空訓練軍団 ]所属だっ
た。彼が軍隊への招集を受けなかったのは徒弟だったためだという。[徒弟・見習いとして働いている人は徴兵を猶予されていたらしい]

この事件は非常に衝撃的なニュースであったためか、さまざまな新聞に同じ記事が掲載されている
だがしかし、羽根を渡された若者が自殺するニュースはこれ以前にもあった。

The Evening Advocate 1942年1月20日
WHITE FEATHER VICTIM'S SUICIDE
There is a family in Britain called "The Fighting Sills." The father is a last war veteran, the mother a member of
the Women's Volunteer Services; the eldest son is serving in the Middle East; the second son is an R.A.F.
flight-sergeant who has won the D.F.M.; and the third son is an R.A.F. gunner. The youngest son, Bernard, aged 17,
wanted to fight, too. He joined the army at 16, but was sent home when his age was discovered, and joined the cadets.
Bernard was to have been promoted to the rank of second lieutenant, but he shot himself because he had received
a card with two white feathers from an anonymous person.

白い羽根の犠牲者が自殺する
イギリスには「戦うシルズ一家」と呼ばれる家族がいる。父親は前大戦の退役軍人であり、母親は女性義勇奉仕団の一員。長男は中東
で従軍中であり、次男は空軍の曹長で殊勲飛行章の受章者、三男も空軍の機銃手を務めている。末っ子で17歳のバーナードもまた戦い
たいと望んでいた。彼は16歳で陸軍に志願したが、年齢が発覚したため家に送り返され、その後は士官学校に入った。バーナードは少
尉への任官が決まっていたが、ある日匿名の人物から白い羽根が2本入ったカードを受け取り、自ら命を絶った。

訳注:各軍の階級に対応する日本語訳を行うのは非常に難しいため(上記flight-sergeantはNATO階級符号でOR-7に相当するが、大戦
中の日本に空軍はないので陸軍式に曹長としても海軍式に上等兵曹としても微妙に正解とは言いがたい)かなりの意訳が混じることに
注意されたい。

大戦中とあって軍人一家の末っ子に掛けられたプレッシャーは並大抵のものではなかっただろう。年齢を偽って志願したのはあふれん
ばかりの勇気だけが理由だったわけではあるまい。そうした十代の若者が、白い羽根を受け取りとうとう心が折れてしまう……。あり
えそうな話である。こちらも上記のシリル・レイの自殺同様、多くの新聞に記事が掲載されている続報ではカードには攻撃的な内容
が書かれていたことが記されており、また別の記事にはバーナードは羽根を送ってきた少女が誰だったか知っていたに違いない、と送
り主が誰なのかが内々では特定されていることを示唆する内容も記載されている。これだけでも十分ひどいニュースだが、話はそれだ
けでは終わらなかった。

The Newcastle Sun 1942年10月10日
SUICIDE AFTER FRIEND'S DEATH
LONDON.―― The "white feather mystery." which bewildered Wood Green, London, has found another victim, says the
"Daily Express." Wilfred John Bateman, 22-year-old lorry driver, ex-soldier, hanged himsell in his father's kitchen
in Cookley (Worcester). In his pocket, it was said at the Kidderminster inquest, was a news cutting, which told the
story of the suicide of his friend Bernard Sills. Bernard Sills, 17-year-old Wood Green cadet, shot himself after
telling how he had been sent white feathers anonymously. Bateman, who had served in France in this war, was invalided
out with neurasthenia 18 months ago, said his father at the inquest. The verdict was "Suicide while the balance of
his mind was disturbed." Bernard Sllls's father said subsequently: "I heard my son talk of a John Bateman, but
I never knew him."

友人の死を追う自殺
ロンドン発:ロンドンのウッド・グリーンを困惑させた「白い羽根の謎」にまた新たな犠牲者が出たと「デイリー・エクスプレス」紙
が伝えている。トラック運転手で元兵士のウィルフレッド・ジョン・ベイトマン(22歳)が、ウースターのクックリーにある父親の家
のキッチンで首を吊って自殺した。キダーミンスターでの検視によると、彼のポケットには新聞の切り抜きが入っており、それは友人
であるバーナード・シルズの自殺について書かれた記事だったという。バーナード・シルズはウッド・グリーン出身の17歳の士官候補
生で、匿名の人物から白い羽根を送られたことを語った後、自らを銃で撃って命を絶った。検視におけるベイトマンの父の証言による
と、ベイトマンはこの戦争中にフランスで従軍していたが、18か月前に神経衰弱のため除隊となったとのことである。検視の評決は
「精神の平衡を失った状態での自殺」とされた。バーナード・シルズの父は後に「息子がジョン・ベイトマンという人のことを話してい
るのを聞いたことはあるが、私自身は彼について知らない」と語った。

あまりにも無残な話である。友人の自殺がきっかけとなって、白い羽根の望むとおりに従軍した経験のある人物までもが自殺した。こ
の一件で白い羽根はドイツ兵・イタリア兵を一人も倒していないがイギリス兵は2人も殺している。こうなってくるともう誰が敵で誰
が味方かなのか分かりやしない。次の記事のように徴兵年齢を下回る少年や障害者にまで渡す事例さえあった。もし彼らが恥辱のあま
りシリル・レイ、バーナード・シルズ、ウィルフレッド・ベイトマンのように自殺したら、羽根を渡した女性は何を思うのだろうか?

Barrier Miner 1940年1月11日
WARNING TO "WHITE FEATHER" WOMAN
SYDNEY, Thursday.――The police are seeking a woman who has been distributing white feathers to young men in
Martin Place. They threaten to, arrest her for offensive conduct. A seventeen-year-old youth, Don Welsh, was given
one feather. The stem was painted yellow, apparently to represent a yellow streak. Welsh, who has been a militia
man since he was 15, is the main support of his widowed mother. One youth who was given a feather has a twisted spine.

「白い羽根」の女に警告
シドニー、木曜日:警察はマーティン・プレイスで若者たちに白い羽根を配っている女性を捜索しており、迷惑行為として逮捕する可
能性があると警告している。17歳の若者ドン・ウェルシュも羽根を1本受け取った。羽根の軸は黄色に塗られており、臆病さを象徴し
ているものと考えられる。[yellow streakは直訳すると「黄色い筋」だが、臆病者・卑怯者を意味する慣用句でもある] ウェルシュ
は15歳から民兵として活動しており、未亡人である母親の重要な支え手である。彼とは別の若者も羽根を受け取ったが、この人物は脊
椎が曲がっている障害を抱えていた。


誰も彼もが巻き添えを食らう

ここまでは男性なら勲章を受けた兵士から負傷兵、未成年までが対象となって贈られてきたが、女性が女性に白い羽根を渡す事件さえ
もあったことが報じられている。前述の通り女性も後方支援のため軍やそれに類する組織に志願することが出来たので、「志願しろと
嫌がらせする」という意味では白い羽根の「送りがい」があったのかもしれない。しかしむしろ、同時期の日本で国防婦人会に所属す
る「下流」の女性が良いとこのお嬢さんを吊し上げるために贅沢取り締まり運動をやっていたような「叩き棒」としての意味も含まれ
ていたように見える。

The Daily News 1942年8月8日
Woman Gets A White Feather
Women now are not safe from the senders of white feathers.
A Perth girl, assistant in a big store, received one this week through the mail.
The featner was stuck through a "Join Now" advertisement. The sender was, of course, anonymous.
The recipient in this case is a trained first-aider, attached to the first-aid squad of the store, a blood donor and
a camouflage net maker. Six members of her family are in uniform, five in the A.I.F., one overseas with the R.A.A.F.

女性が白い羽根を送りつけられる
いまや女性さえも白い羽根を送りつける者たちから安全ではない。今週、大型店で働いているパースの女性が郵便で白い羽を受け取っ
た。その羽根は「今すぐ入隊しよう」という広告に貼り付けられていた。差出人はもちろん、匿名だった。今回羽根を送りつけられた
この女性は、救急訓練を受けた店舗の応急処置隊の一員であり、献血者でもあり、さらには迷彩ネットの製作にも携わっている。彼女
の家族のうち6人が兵役に就いており、5人がAIF[ オーストラリア帝国軍 ]に所属し、1人はRAAF[ オーストラリア空軍 ]所属で海外にいる。

Sunday Times 1942年7月19日
Woman Given White Feather
Probably the first case in South Africa of a white feather being handed to a woman occurred recently when another woman
handed her a white feather, saying: "If you can drive a car like that you should be in uniform, like my daughters."
The victim has one son in a military hospital, and another up North, who has lost the use of his arm. She is a widow
who offered her services to the Red Cross at the beginning of the war, but she was turned down on account of her age.

女性が白い羽根を渡される
南アフリカで初と思われる、女性が白い羽を手渡される出来事が最近起きた。ある女性が別の女性に白い羽を手渡し、「そんなふうに
車を運転できるなら、私の娘たちのように軍服を着るべきだ」と告げたのだ。この被害者女性の息子の一人は軍の病院に入院しており、
もう一人は北部で戦い、腕の機能を失っている。[この記事に前後して北アフリカではガザラの戦い第一次エル・アラメイン会戦
発起。南アフリカ軍も英連邦軍に加わり枢軸軍と激戦を繰り広げている] 彼女は未亡人で、戦争が始まった際に赤十字への勤めを申
し出たが、年齢のために断られていた。


白い羽根運動、その帰結

老若男女問わず、軍人負傷者未亡人問わず羽根を送りつけられ、自殺者が出ようが当局がコメントを出そうが白い羽根は止まらない。
第一次大戦のサフラジェットのように組織だった行為ではなかったためだろう。実際ここまで見てきてもイギリス、南アフリカ、オー
ストラリアと各地で白い羽根は送られていた。検索するとニュージーランドでも起こっていたようである。戦時下の市民は我慢の限界
に達し、とうとう白い羽根運動に対し最終手段に出る。

Guinea Gold 1944年7月2日
Reward Offered For White Feather Crank
The Buckinghamshire town of Slough has a woman who is so persistent in distributing white feathers that £20 reward
has been offered to anyone detaining her. Middle-aged, and usually wearing black, she rushes up to men in the crowded
High street, sticks a feather in their hand or coat, and then disappears. Two men invalided after Dunkirk, and one
who was wounded at Dieppe, have been among recipients of her white feathers.

白い羽根の変人に懸賞金
バッキンガムシャー州の町スラウにはあまりにも執拗に白い羽根を配って回る女性がおり、その身柄を確保した者には誰でも20ポンド
の懸賞金が与えられる。この女性は中年で普段黒い服を着ており、人通りの多いハイ・ストリートで男性たちに駆け寄って手やコート
に羽根を押しつけ、そのまま姿を消してしまう。ダンケルクの戦いの後負傷のため除隊になった二人の男性や、ディエップの戦いで戦
傷を負った男性も、この女性から白い羽根を受け取った人々の中に含まれている。

とうとう懸賞金がかかる騒ぎにまでなってしまったのである。こうなるともう誰も得をしない。喜びもしなければそれで何が達成でき
るわけでもない。戦争に勝てるわけでも誰かを勇気づけもしない。コロナの頃の他県ナンバー狩りから現在のウクライナの徴兵にまつ
わる事件まで、似たようなケースは今この瞬間も起こっているだろう。白い羽根を手渡し、それで何かを成し遂げた気になっている人
のように、自分が正義中毒になっていないかを我々は厳しく省察しなければならない。

(WW2における白い羽根運動全体の振り返りは気が向いたら執筆予定です…。話が話だけに適当なこと書くわけにもいかないので
こういう本とかこういう本とかちゃんと読まなくちゃねぇ。)



最終更新日 2025-07-20
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最終更新:2025年07月20日 22:17