朝。
朝が来る。
目を閉じているから分からないけれど、暖かなものが当たる感じがする。
これが光、なのかしら。
「おはようございます。今日も良い天気ですよ」
いつもの声が聞こえる。
慣れているせいか、この声が一番聞き取りやすい。
おはようございます、は朝の言葉。
今日も良い天気、も。
そういえば、昨日も天気が良いと言っていた。
天気とは何だろう。
暖かいから良いのだろうか。
「さぁて、今日も一日がんばりましょうか」
そう言って、私の頭部をぽんぽん、と叩いた。
痛くはない。
だから、不快じゃない。
これも、いつものこと。
私は人形で、朝の声は『テンシュ』だと誰かが言っていた。
私が人形なのは知ってる。
母さまが言っていたから。
『テンシュ』は朝の声。
でも、全部の声が店主ではないらしい。
よく分からない。
でも、たぶん自分には関係のないことで、知る必要も無いんだと思う。
バタン。
今日が終わる音。
夜が来る。
「今日も一日お疲れさま。明日はいいご主人様に出会えると良いね」
朝と同じように頭を叩かれて、いつもと同じように声を掛けられた。
テンシュは毎日言う。
『ゴシュジンサマ』って何だろう。
そういえば母さまも言っていた。
『今から会う人が、あなたのご主人様よ』
そういって此処へ連れてこられた。
私を残して、母さまはいなくなった。
声が、しなくなった。
『良いこと?あなたは欠陥品なの。決して瞼を開いたり、口をきいたりしてはダメよ』
母さまが言っていた。
「おやすみなさい、ティーナ」
テンシュが私に何かを被せる。
これも此処へ来てからだ。
これは一体何なんだろう。
何故だか無性に気になった。
母さまはダメって言ったけど、どうしてダメなんだろう。
(決まってるじゃない、そんなの………)
知ってる。
私は知ってる。
でもダメ。
思い出しちゃダメ。
あぁ、頭が痛い。
頭が痛いよ、母さま。
どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして。
どうして知らないフリをするの………?
『ティーナ、忘れなさい』
あぁ……そうよ、私は何も知らない。
頭なんて痛くないし、知らないのは普通で、
ねぇ、朝はまだ?