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俺の物語第二話

メールで友達に「ミクが家に来た。」と伝えてもよかったのだが、急に会わせて驚かせることにする。どんな反応をしてくれるか楽しみだ。
制服に着替えて家を出る。うん。ブレザー姿のミクも良い。
途中、二人の友達の家へよる。こいつらはミックミクにされていない。
チャイムを押して、まず一人目、三村を呼ぶ。
玄関が開いて三村が出てきた。「よっ」と声をかける。ここではまだ無反応。
だが、奴の目がミクを捉えた瞬間。やつは目を見開いた。
正直「リアクション薄っ」と思ったが気にしない。
「お前…どうしたのこれ?」
ミクを指差した三村。
「これ呼ばわりは無いんじゃないんですか?ボーカロイドですけど、心だってあるんですよ。」
全くだ。張り倒すぞ三村。次にミクを これ だの それ や あれ と呼んだらどうしてくれよう。とりあえずお前の好きな漫画本を焼いてやろうか。
俺とミクが白い目で三村を見ていると奴は目をそらしながら。
「勇司のところ行こうぜ。」
そいつの家は50mほど離れたところにある。
ふと良いことを思いついた俺は三村にこう言った。
「俺たちは隠れててさ、ミクにチャイム押してもらおう。」
三村はニヤッと笑って乗ってくれた。ミクにそのことを言うとミクも微笑んで
「良いですよ」
と言ってくれた。
ミクが細い指でチャイムを押す。勇司が「うーい」と「はーい」の混ざった返事をよこした。これからどんな反応をするかな。
勇司が玄関の扉を開けた。
彼の目の前にいるのは女の子。それも髪の毛が青緑のロングツインテールで、とても良い顔立ちでスタイルも良いミク。
普段は無表情の勇司くん。状況が理解できていないようで目を丸くしている。
玄関開けたまんま硬直。
「おはようございます。」
ミクが挨拶をすると彼は
「え?あ…………おはよう。」
アクションを起こせと言いたい。動け勇司。

しばらく勇司が動かないのでミクが
「いきましょうか?学校」
後ろを向いて歩き出すと勇司が付いていく。
そのまま隠れている俺と三村に気付かず歩いていった。後ろから近づく。
おい、三村足音がでかいぞ。歩くの下手すぎだろ。
「おやおや、勇司君。どうしてそんなにミクをチラチラ見てるんだい?」
ニヤニヤしながら彼を見る。やぁこれは、二次元に興味ないとか言っておきながらミクをチラチラ見る勇司君じゃありませんか。
「チラ見何かしてない。」
おかしいな。俺の目にはミクを気にしている君が映っているんだけどな?
「勇司、なんでこのロボットを気にしているのかな?」
三村の言葉。でもな、お前にその言葉をそっくりそのまま返してやるよ。しかもミクをロボットって言うんじゃねえ。傷つくだろ。
それといいか二人ともミクは俺のだ。手を出すなよ。
ところで今ミクは奴らの巧みな歩行テクによって三村と勇司の間に挟まれていた。二人して痴漢みたいなことするんじゃねえよ。
 ミクにアイコンタクトを送るとさり気無く俺の隣に移動するミク。ミクのもう片方の隣は壁。入り込む余地はない。いいぞミク。
「最近の学校では何を勉強しているんですかね?」
俺が口を開きかけると
「今は二年の復習やってる」
素早く勇司が答えた。普段のキャラクターが崩壊している。お前は自分が話す以外には特に口を動かさない人間だろ。
俺はあえて空気を読まずに三村に聞いた。
「お前って二次元に興味ないって言ってるけどさ、何でミクが気になっちゃってるの?」
「気になってなんかねえよ。第一俺が興味あるのは銀魂だけだ。らき☆すたとかそっち系ははっきり言って邪道だ。俺は健全だからな。」
いや、お前は健全じゃねえ。健全な男子だったらアニメイト行って目を輝かせたり、好きだからってポスターやグッズを集めたりしないと思うぞ。現実を見つめろ。
ここでミクが口を挟む。

「三村さんは口でそう言ってますけど、私のサーモカメラの映像では三村さんの体温が平熱よりも0.8℃高いです。ちなみにこの場合の平熱は貴方が貴方の家の玄関から出てきた瞬間の体温です。私と目が合った瞬間から体温が上がってます。勇司さんもです。」
お前らときたら……俺もおそらくそうだろうが、下らない嘘はつくなよ嘘は。
「だ、そうですが?三村君どんな説明をしてもらおうか?」
そっぽを向いて三村が答える
「あーそうですよ、俺にだって興味があります。」
歩いて30分ほど、谷を下り、また上るという運動を終えると学校についた。到着時間は、7時半早いほうだ。
 それでもちらほらと中二、中一が来ている。皆見慣れないミクに目が釘付けだ。
 俺とミクは二階にある自分たちの教室――三年四組――に走って入室。俺の鞄を投げるように机の上におき、人の出入りが少ない管理塔へ行く。
この学校は管理塔と教室塔に別れていて、教室塔には普通の教室が、管理塔には特別教室や職員室などが入っている。
人が集まったころに入室するために管理塔の階段に座って時間を潰す俺とミク。時間が7:50前後になると先生たちが一気に登校する。その7:50になるまで俺たちはノートに落書きをする。
 7:50になった瞬間に校長室へ走る。扉の前に立ってノックを三回。校長先生はいらっしゃいますか?
 中から「どうぞ」の声が聞こえてくるのを確認すると扉を開けて入室する。
「あぁ、山口君か。」
いつも思うんだが校長先生はなぜ生徒の名前を覚えているんだろうか? 俺だってポケモンの名前やアイテム、技を大体覚えているがそれは楽しいことをしているうちに自然に覚えたことだ。まさか生徒の名簿と写真を見ながらニヤニヤしているわけではないだろう。
「この書類を先生に渡せと言われたので来ました。」
鞄をあさって例のFAXを差し出す。校長先生はそれを受け取るとざっと目を通した。
「『初音ミク』と言うのはその彼女ですか?」
校長がミクを見ながら言う。それにしても校長室と言うのは実に緊張するね。

「はい、そうです。」
「うん。転入を認めるよ。ところで私も彼女に応募したんだがね……ご覧のとおり当たらなくてね。でもこの学校に手に入れた君がいて良かった。またミクにあわせてくれ。」
苦笑いしながら「はい」と答える。まさか校長も我が同士だったとは……。
校長の判子を押してもらった書類を教頭と学年主任に見せに行く。教頭も学年主任も特に何も言わなかった。
 そうこうしているうちに時間が8:00になっていた。職員室にいる担任にも書類とミクを見せに行く。ちなみに担任である田村先生はオタクであることが広く知られている。田村先生は「朝の会に紹介しよう」と言った。
 俺は教室に戻る。教室では我が校の朝のイベント「朝読書」が始まっていた。自分の席に着き「へんないきもの」と言う題の本を読む。本来は8:00~8:20やる朝読書だが、田村先生によって8:10で終了する。
「ちょっと連絡することが多いから朝の会やろー。」
日直が二人前に立って棒読みで朝の会を進行させていく。そして先生のお話と呼ばれる連絡コーナーが始まった。
「えー、まず今日の理科と英語の授業が入れ替わりました。それとこのプリントを親御さんに渡して。」
 プリントが配布されるその内容はボランティア募集のお知らせ。こいつは家に帰ったらすぐにゴミ箱行きだ。ぐしゃぐしゃにして鞄に突っ込む。
「それと、皆に知れ渡ってないはずだけど、今日は転入生が来てます。」
それを聞くとクラスメイト全員の顔が一気に明るくなった。
「男ですか?女ですか?」とか「聞いてないよー」とか「仲良くなれるかな?」とか「気に食わないやつだったら〆るか」とか言う声があちこちから聞こえてくる。ところで最後の言葉を言った柳沢君。ミクを〆られるものなら〆てみろ、学年でミックミクにされてるやつら全員がお前を殴ると思うぞ。
「じゃあ、入ってきて」
ミクが扉を開ける。クラス全員の目線が集中した。視線の集中砲火を受けながらミクは先生の横に立った。後ろを向いて確認すると我が同士たちが死にそうなほどビックリしているのが手に取るように分かった。

「名前書いて自己紹介」
先生がチョークを渡す。ミクはとても綺麗な字で「初音ミク」と書いた。俺には一生かけそうに無い綺麗な字だ。
「読めば分かると思いますが、初音ミクって言います。「ミク」でも「初音」でもどちらで呼んでも構いません。敬称も何でも良いです。好きなように呼んでください。知らない人も多いと思うので言います。私はアンドロイドです。その中のボーカルアンドロイド略してボカロと呼ばれるジャンルに分類されます。名前の通り歌が得意です。ほかの事は興味があれば聞いてください。」
 もう一度後ろを向くと「アンド……ロイド?」となっている連中が少しいたでも大体のやつらはミクが何者なのかを分かったようで一安心だ。
「先生!ミクはどこに座るんですか?」
 このクラスで一段とミクが好きな早瀬が聞いた。
「ミクは健の所有物だ。いや、すまん所有物以外に適当な言葉を思いつかなかった。だから、健の隣が良いだろうな。でも、隣は空いてないからプチ席替えだ。健の前のどうせ高田は不登校で学校に来ない。だから高田の席を後ろにおいて、ミクの席にする。はい朝の会終わり。」
 学級委員の「起立、気をつけ、礼」で朝の会が終了した。同時に田村先生は隣の使っていない教室から机と椅子をパクって来て高田の場所におき、高田の席を後ろに移動し、教室から出て行った。
 それが合図のように一斉にクラスの皆が俺とミクを囲む。
 「得意な教科って何?」とか「好きなものは何?」とか言うテンプレのような質問に混じって「アンドロイドってマジ?」みたいな独特の質問がある。
 それに対して俺とミクは「とりあえず全部苦ではないです」「葱」「マジ」「うん、そう」と答えていった。友達になるためのテンプレ質問をした奴らは気が済むと散っていった。友達になりたいなら気分を害さない程度に適当にやってね。あまり粘着すんなよ。
 その後にオタクの仲間たちが寄ってくる。
「うおぉー!ミクだミクだ!これは夢じゃないか? 何でお前のところへ行くんだよ。」
うおぉーの部分は本当に言っている。馬鹿だ。いや、俺もだが。
「夢だったら俺が困る。何で俺のところに来たのかは知らないぞ。」

「私は健さんのところで嬉しいです。とりあえずヘンなことをされないし、優しくしてくれますからね。」
その言葉を聞いてすぐに俺は周りをとりかこむオタクの顔を確認した。反射的に。
「ヘンなこと絶対すんじゃねえぞ!」
「そういう疑惑かけられてるんだ……」
「ミクに無理させてるんじゃないかコイツ」
誓ってもいい。俺はヘンなことをしないぞ。好きだからこそミクを汚したくないぜ。
「そう言う意味じゃないんです、ヘンなことをするために私に応募する人もたくさんいると予想されていましたので、しない健さんのところで良かったなって意味ですよ。」
フォローありがとう。ところでお前ら自己紹介しろよ。
「俺は早瀬。」
「私の名前は木村。」
「上島。」
「橋本です。よろしくね。」
とりあえずと言った感じで名前だけ紹介する四人。ミク好きの中で特に熱狂的なのが俺ら五人だ。とりあえず今はそうである。
 早瀬はさっきの「うおぉー」の奴。木村は「そういう疑惑……」で上島は「ミクに無理……」。橋本はまだ何も言ってない。
「皆さんはどう言う仲なんですか?」
とミク。それに対して
「友達……かな。一番簡単な答えは。」
と答える橋本。それに頷くミク。
 そしてまたミクが口を開きかけたときだった。

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最終更新:2008年10月08日 14:06
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