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sexfriend

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sexfriend【せっくすふれんど】



「俺を抱いてみてよ」

そう言ったのは、まぎれもなく俺。恋人のいる俺は、求めても求めてもたまっていくのは性欲だけだった。

「でも、恋人さんいんじゃん」
「あいつは応えてくれないから…。嫌ならいいよ瑛士」
「…しよっか。」

瑛士が優しいのは知ってた、いつも俺を元気付けてくれて、…きっと我が儘だって聞いてくれる。

「───っはぁ、瑛士」

初めて瑛士と体を重ねた。瑛士は慣れない手つきで俺を抱いてくれて、だけど…今までにないくらい、気持ち良くて。恋人とは違うやり方、女の子にこうやってやってるんだって思うと、瑛士がかわいく思えて。

「…斗真、痛かった?」
「んーん、平気」
「良かった…」

何かを確かめるようにキスをして、この日は瑛士の腕の中で眠った。

「…学校行かないの?」
「んぅー…遅刻します」
「駄目、一緒行こ」

叩くように瑛士を起こすと瑛士は目を擦りながら風呂場へと向かった。

「あぁ、スッキリ」
「あと30分で用意できんの?」
「8時30分までに行きゃいいんでしょ?余裕、」

瑛士がシャワー10分、その間俺は、瑛士の部屋を物色した。広い部屋にはつまらないほど何もなくて黒と白の物でまとめられた広い部屋にひとりで。

「お兄ちゃーん、入るよー?」

「…あ、ども」

ちっちゃくて可愛い女の子がひとり。

「お兄ちゃんのお友達ですよね?どうも、こんにちは」
「あ、はい」

うわー、妹かよ。可愛い…。似ても似つかない真面目そうな子、
瑛士の家には何回か来てるけど妹がいたなんて。

「あれ?お兄ちゃんは?」
「お兄ちゃんお風呂だと思うよ」
「そっかぁ…、じゃこれ渡しといてください」

そう言って俺に何かを預けパタパタと出て行った。

「天使…だ、」

そして

「あぁ、スッキリ」

パンツ一丁で部屋へ入ってきた瑛士に呆れた。

「あと30分で用意できんの?」
「8時30分までに行きゃいいんでしょ?余裕、」

そういって髪を豪快に乾かし始めた。なんだか見たことない瑛士ばっかり

「今日はどんな髪型?」

髪をいじる瑛士の後ろへ立つと、白い透明な肌。

「んー…今日は、」

鏡越しに目があってドキッとした、瑛士ってこんなに色気あったんだ。

「斗真いるから…1、9分け」
「いや訳分かんないし」
「いーくー、た」
「…くだらない。」

うるせー、と微笑む顔、俺髪セットしてない瑛士が好きかも。でも2回連続で同じ髪型で来ない瑛士の髪型は学校で結構人気で。

「あ、そうだ…妹さんが、コレ」
「ネクタイでしょ、ありがと。そこらへんに置いといて」
「分かったー」

妹さんから預かったネクタイをベッドの上に置くとまた瑛士の後ろへ行く。

白い肌にぎゅっと抱きつくと、「どうした甘えん坊」と笑ってくれた、

──────────

「おはよーう」
「それ何分け?」
「決まってんだろ、1:9。」
「まぁ悪くないよねー。」

門を通ると、女の子がウジャウジャ寄って来て瑛士に群がる。俺は前に恋人を見つけ、走ってそっちへ向かった。

「公輝、」
「あ、おはよう」

驚いたように声を裏返しながら挨拶をする恋人、公輝。

「瑛士と一緒じゃなかったの?」
「アイツの周り女の子ばっかなんだもん、一緒にいて疲れるから…」
「そうなんだ」
「…待って、なんで瑛士知ってんの?」
「有名じゃん、しかも俺同じ幼稚園で、同じ小学校、同じ中学校」

公輝の答えに愕然とした、知らなかった…ずっと同じなんて、一個違いだから安心しきってた。

2年の瑛士と俺、1年の公輝。
「仲、良かったの?」
「しょっちゅうじゃないけど、よく喋ってた。瑛士が中2の頃まで」
「…中3からは?」
「瑛士の悪い噂しか聞かなくなったから関わるのやめた」

今でも瑛士には悪い噂はたくさんある、…だけど、なんかちょっと嫌だな。

「いい奴だけどね」
「知ってる、けど本当か嘘か分からないから。」
「……………」
「瑛士に何もされてないよね?」

うん、と言えばいいのに、言葉が出なくて。

「されたんだ?」

返事のない俺に公輝は答えを出した。

「アイツと関わんないで。」



あれから一週間、公輝の一言でがらりと変わった。
瑛士は避けてる俺に近付こうとはしなかった、だけど気になって見つめてしまう。瑛士は俺を気にしてない、そんな事を考えると寂しくて。

「…公輝、今日」
「ごめん忙しい」

1年側の下駄箱でのやりとり、毎回毎回、バイトで忙しい、家の用事がある。もうずっと。

「いつになったら俺に構ってくれるの?」
「ごめん」
「…もういいよ、いつもいつも構ってくんないくせに…期待させて」
「ごめん、好きだよ、斗真」

言葉なんていらない、

子供のような触れるだけのキスもいらない。俺は、確かめ合える事をしたい。

「…もういいよ、もういい」
「斗真、」
「行っておいでよ、忙しいんだよね?」

涙を堪えて笑顔で言ってみる、本当は泣いてしまって、抱きしめられたい。

重荷にはなりたくなくて。

「…おう、連絡する」
「うん、待ってる」

大嫌いな子供のようなキス。手を振り大好きな恋人を見送る。

そろそろ帰ろう。

「雨、」

廊下の窓から見えた曇り空と、予想してたように傘をさして帰る生徒。

公輝、大丈夫かな。

「あ…」
「お…斗真」

湿気で崩れた髪型、低い声で名前を呼んでくれた。今一番会いたくなくて、一番近くにいてほしい。

「瑛士…帰らないの?」
「傘なくてさ、雨やまないかなって」

へへっと笑いながらそう言う彼に、思い切り抱きつきたい。

「斗真、傘あるんでしょ?早く帰った方が、」「一緒にいて」

「瑛士、教室…教室行こ?」

手を繋いで、誰かに愛されていたいから。

───────
教室へ行くと真っ先に自分の机に跨る。

「瑛士、抱いて。」

両手を広げ彼を誘う、何も言わずいつもの笑みで抱きしめてくれる。

深い、溶けるようなキス。舌を求めては絡めてくれる。

俺、今愛されてるんだ。って気付かせてくれる。

「瑛士…す、きっ…。」

ちゃんと名前を呼んで、優しすぎる彼への愛。彼からの愛は、胸が苦しくなるくらい、優しく抱いてくれる事。


本気で瑛士を好きになりたい。


──────────

「俺斗真の事好きだよ」
「はい、うーそ」
「いや本当だって!」
「あはは、俺も好きだよ」

瑛士が恋人だったら良かったのに。帰り道、雨が止んで二人で歩いた。

携帯がポケットの中で震えた。

「斗真明日さ、」「わり、呼び出し」

公輝から『今から会える?』メール。俺は嬉しさに心弾ませながらメールを返す。

「瑛士、ごめん、俺」
「恋人さんでしょ、良かったじゃん、行ってきなよ」

背中を押してくれる手がなんだか寂しくて、バイバイと口付け俺は恋人の元へ走った。

「斗真、」
「あ、公輝」

案外近くにあった公輝の家、そこで愛しい恋人へと飛びつく。
久しぶりの感覚に首筋に噛み付く。

「こら斗真、それは家でしようか」

こんな会話も今は愛しい、早く、早く愛してほしい。

「…斗真これ、誰につけられた傷?」

赤くなった傷に触れられると体が跳ねた、怖くて、今にも逃げ出したくて
瑛士との油断が生んだ、愛の印。

「まだ…関わってるんだ。」

怖いくらい冷静な声が、胸の鼓動を速めた

「ねぇ、斗真、」

何を言ってほしいんだろう、何かを求めるような口調が俺を責める。

「…瑛士が、ね」

なんて俺は酷い奴なんだろう。

「瑛士が、俺を無理矢理」

一度嘘をつけば、後は簡単に言葉が出てくる。こんな自分に笑けてくる。

「瑛士とは、もうしないから…お願い公輝、捨てないで」

今ここに瑛士がいたらなんて思うかな、そう思うと涙が出てきた。


───────────

次の日、俺は瑛士を呼び出した。

「お、斗真」

俺はこの人を巻き込んで…、俺は昨日嘘をついた。
胸が痛くなって、何も言い出せない俺に、そっと胸を貸してくれた。

「斗真…なんかあった?」
「終わりにしよ」

緩んだ腕から離れると、寂しさから涙が出た。

「斗真?なんで泣いてんの?」「ごめん、」
「俺斗真の恋人さんに謝るよ。じゃないと気がすまない」
「…へ?」

瑛士は悪くないんだよ、勝手に巻き込んで、勝手バイバイして…。行かないで瑛士。




今でも心配になる、斗真に構ってやれないから、悪いのは僕。

分かってるけど。

"アイツと関わんないで。"

アイツ…、瑛士なんか大嫌いだ。斗真を汚すな、バカがうつる、

頼むから、斗真の前から消えてよ。
斗真に無理矢理、ふざけんな。
なんで?なんで斗真なの?


言ったよね?
好きだよって。

君は、優しかったよ。

「ごーうき!一緒に飯食お」
「…一人で食べる」
「先輩の俺が誘ってんの、ね、屋上行こーよー。」

ムッと頬を膨らましては、無邪気な笑顔を見せる。元々一人が好きなのに、よりによってうるさい奴がいつもいて。

「いただきまーす」

コンビニの袋からおにぎりを出し豪快に食べる。一口が大きくて頬に溜め込む姿を何度見ても飽きない。

「いいなー、いつも手作りで」
「…買った方がお金かかる、自分で作ってんの。」
「これ公輝の手作りなの?すげー。」

目をキラキラさせて言う姿も大好きだった。

「玉子焼きって性格で味変わるよね?」
そう言って玉子焼きを俺から奪って
「初耳だけど、」
「…んまい!やっぱ性格で変わるんだよ」

愛しかった、ずっと近くにいてほしかった。

「ご飯粒ついてる」
「…ん?」

顔を上げた瞬間にキスをしてみた、ドラマみたいでベタだけど俺のファーストキス。

きっと瑛士はこんな事。

「瑛士、俺瑛士が好きなんだよ」
キョトンとした顔で俺を見るけど
「…公輝、好きだよ」

すぐにまたキスをしてくれた。
なのに、どうして。

好きだと打ち明けた次の日。

昼に屋上へ行くと、瑛士と、俺と同い年の俊輔がいて、

「なに、してんの?」

俊輔は驚いた表情を見せその場から俺の横を走って逃げて行った。

「俺、来ちゃ駄目だった?」
「…公輝」
「なんで?」

なんで、好きだよって…言ってくれたのに。

「なんで、キスしてたの?」

誰にでもすんのかよ、嘘の好きなんていらないんだよ。


「違う、待って公輝」
「離して」

強く腕を掴まれ、抵抗しても離してくれなくて。

「俺の話聞いて」
「聞きたくない、もう瑛士の事嫌いだし」

その言葉をきっかけに、あっさりと手が離れた。

「バイバイ」

黙ったままの瑛士を残して、走って教室へ戻る。

それと同時に悪い噂が出始めたんだっけ、

「聞いた?3年の…」
「あぁ、あの水本先輩でしょ?」

どいつもこいつも、一番出してほしくない名前を毎日毎日…。

「1年の女子ナンパしたらしいよ」
「それでそのままお持ち帰りー」

…くだらない、全部くだらない。話題尽きないのかアイツ。

「いいよなぁー…瑛士先輩。ね、公ちゃん」
「…なんだよいたのか翼」

このチビはこう見えて俺と同じクラスの翼。前の席で何かとうるさいチビ、

「ずーっと目の前にいるじゃん!」
「悪いな、」

女好きと高らかに唱っているけど、女子にビビるお調子者。

「なんで?なんで俺じゃ駄目なのかな、女子の見る目って分かんなーい」

陰口は達者だけど、本人を目の前にするとガッチガチになる女子は俺も分かんなーい。

「ハーフ顔だから?」

そんな単純な理由なのか?

「雰囲気?」
「まぁそれが妥当な答えだろ。」
「あーあ…女好きは一緒じゃないのかよ…。」

何が違うんだろうなぁ翼。


そして、アイツが卒業の日。

「瑛士先輩、ボタンください」「あ!私も」「私もくださーい!」

賑やかな正門、帰りたいのに、翼が『先輩との思いで作りに話したい』とか。

「いやー、公ちゃん、瑛士先輩人気だねぇ。」
「早く思い出作ってこいよ。」
「…分かってるってば」

翼のお目当ての人は誰なのか、全く興味はないが早くしてほしい。

「よっしゃ…じゃ、行ってきますわ」

小走りに向かった先は女子がわいてる場所。

…アイツかよ。

笑顔で話す二人、たまに女子に邪魔されて。

小走りに戻って来て。

「…公ちゃん、見て!」

デカめのブレザーに顔を赤らめながら俺に見せ。「もらっちゃった」なんてはにかみ。

「もう満足だろ、よし帰ろ」
「うん!」

嬉しそうに目を垂らして笑いながら後を付いてくる。

こいつはなんのためにアイツと思い出作りを?



「はぁ?先輩と?」
「うん!」

だって一回くらい話してみたいじゃん?

「…待ってろと」
「うん!」

楽しみだなぁ、でも緊張する。ごめんね公ちゃん。

「瑛士先輩、ボタンください」「あ!私も」「私もくださーい!」


「いやー、公ちゃん、瑛士先輩人気だねぇ。」
「早く思い出作ってこいよ。」
「…分かってるってば」

深呼吸。
「よっしゃ…じゃ、行ってきますわ」

頑張れ俺!

「あ、あの!」
「…ん?」

眩しい!スターだ、やべー!

「あの…卒業おめでとうございます」「あー、ありがとう」

うわー…顔見れねぇ。

「ちょっと翼、邪魔しないでよ!」「瑛士先輩写真撮ってくださーい。」

女子こえー…、いつも先輩の悪口言ってるくせに…。

「翼って名前なんだ?2年?」「え?あ、はいっ!」

女子ほったらかして、頭ポンポンされて「ちっちぇー」って…これが噂のイチコロスマイル!

「あ、あの…なんかもらえませんか?」

思い切って言った。言ったよ公ちゃん!公ちゃん!

「瑛士先輩!何もあげなくていいですよ。こいつなんでもすぐ壊しちゃうから。」

うるせーな、女子は黙ってろ。ね、瑛士先輩。

「そんな訳にはいかないっしょ、別に俺いらないし何でもあげるよ?」

キャー…。瑛士先輩、格好いいー。

「何がいい?ボタンとかいらないっしょ?」

瑛士先輩、その笑顔反則です、イエローカードもんです。

「えーいじっ、あと一個のボタン、まながもらうね。」

腕についてるボタンを口で、いっ…伊倉さーん!エロい!エロカワイイ!ブーブー言ってる女子とは比べもんにならん!

「愛美ちゃん急すぎ。」
「瑛士のボタンもらったし…次は…あ!アミッフィー!」

お似合いだこの二人…保養になる、走り去る姿も可愛い…、恋かしら、僕。

「ムカつくー…」「何アレ。」「超やな感じー。」

うるせーな、ひっこんでろ女子。

「あ、あの。」
「お、何か欲しいんだったよね。」

何がいー?と首を傾げる姿が、おーう、キューンだぜ!

「じゃ…その上の」
「あ、これ?」

こんなんでいいの?なんて言わないでください先輩!キュン指数が!

「はい、どーぞ。」




「んふふっ」

後ろで嬉しそうに笑いながらしてるそいつを見ると、ブカブカの思い出のブレザーを見せてくる。

「…うぜぇ」

翼を置いて早歩きで家に向かう、なんたってうざいですから。

ただいま、と家に入ると母親がニコニコしながらおかえりと声をかけた。

「あ、そうだ公輝。今日母さんね、帰り遅くなるから。」
「はいはい」
「ご飯、買って食べてね。」
「はいはい」

お金をテーブルの上に置き、早々と用意を始める母親に、呆れたように部屋へ向かう。

制服から着替え、そのままベッドへ。ぼーっと天井を見つめ時間が流れた。

震えた携帯に手を伸ばし画面を見ると新着メール1件。

「愛美さん、か」

別に仲良い訳でもないけど、アイツとつるんでる時に。

メールの内容は、
愛美でーす。卒業したって事でアド変、登録よろしくー。
と今時の女子には珍しいカラフルじゃない文面。

下を見ると
愛美、ブログ始めました。コメ絶対ー。

ブログを覗いて見ると今日更新されたであろうタイトル『卒業したー』を見る。

瑛士、瑛士、ハーフ君、瑛士瑛士瑛士…。
なんだろう、イラッとするこの感じ。

記事の一番下には、朝から元気なまなとえーじ、と題された写メ。

二人同じポーズをしてお得意のキラキラスマイル。

度々、なんだろう、イラッとする。

コメントは30件。『まな可愛すぎー』『お前ら付き合ってんの?(笑)』

イライラ、なんなんだよこれ。アイツからのコメントはないのかと期待した自分に苛立つ。

「…………腹立つ。」

嫌い、大嫌い。全部、…嫌いだ。

そしてつまらない毎日を過ごし、アイツと同じ高校に行く事になって、無事卒業。

「うっ…うぅ…公ちゃーんっ!」
翼は親の都合で関西へ。
「ありがとな、翼。」

そしてつまらない色気のない毎日におさらばした。



「はい…もしもし」
『あ、夜分遅くにすいません。斗真の恋人さんですよね?』
「…え?」
『俺、水本瑛士って言います。斗真から聞いてますよね?』
「あの、なんすか?」
『えーっと、明日…えっと何時がいいかな、…夕方の6時に、谷里公園に来てください!じゃ』
「あ、え、ちょっと…」

切れた電話に呆れながら、深くため息を吐く。
あいつが何のようだよ、あいつの事知らなかったら怪し過ぎて誰も行かないだろ。

…明日の6時。絶対行きません

――――――

時間が過ぎるのが遅い、早く過ぎてくれればいいのに。

「6時40分…」

流石にもういない、よね。頭でそう繰り返すと買い物ついでにと外に出る。

谷里公園に入ると遠くに見えたベンチにスーツ姿の中年と…若い男の姿。

「まだいたのかよ」

小さく呟きながら二人を見ていた。スーツ姿の男は俯いているあいつにべったりと引っ付き下半身に手を伸ばしていた。

不釣り合い、不自然。

静かに近付いていくと、男の荒い息が聞こえた。

「痴漢だー!」

大きな声で言うと、男は焦ったように逃げて言った。

「…痴漢?どこ、どこだ、痴漢!」

バッと立ち上がるこいつの様子に、寝てたのか、とさっきの男を蹴飛ばさない理由を勝手に理解した。

「…あの、斗真の」
「あ、来てくれないのかと思ったー…。水本瑛士です!」
「知ってます。」
「…あれ?」
「公輝です」
「…え、」

まじまじと顔を見られて、顔が赤くて、目がとろんとしていて…こいつこんなにエロかったっけ?

「…ほんとだ、公輝、だ…」

へらへらと笑うと気が抜けたように俺に倒れ込んできた。

「…え、ちょっと」

体を小さく震わせながら、荒く息をしているこいつに、まさかと思い額に手を当ててみる。

「…まじかよ」

98%熱。…どうしようか、こっからだと、俺ん家の方が近いな。

連れて帰るか。こいつをおんぶして。

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