無題5【むだいふぁいぶ】
「ほんっとにやだ」
小さく呟き子どもみたいに頬を膨らまして髪をわしゃわしゃと掻く、苛立っている時の彼特有の動き。
「なにイライラしてんすか」
横に座りなるべく周りに聞こえないように言ってみる。
「…謙二郎には関係ないから」
そう言ってぎこちない笑顔を見せてるけど、残念。僕はもうほっとけなくなりました。
「かわいいっすね瑛士さん」
頑張りすぎる所、みんなより年上だからという理由からか感情をあんまり出さない、たまには泣けばいいのに。
「俺に言いたくないっすか?」
気を配るのは苦手みたいだけど、彼なりの優しさでいつもみんなは笑顔になっている。甘えてくる後輩、みんな可愛い後輩だから、この人は全力でいつも後輩と向き合っている。
「…ごめん、まじで全然関係ない事だから。なんかさ、いたずらメールがすごくて、」
やっぱモテる男は辛いよ、なんて下手な嘘を並べる。こういう所、可愛いな
「…ふーん」
「でね、その…んー、メールが、」
「もういいから」
無理しないでいい、俺に全て言ってほしい。頼りにならないかもしれないけど
「後輩に甘えてもいいと思いますよ?」
そう言うと目の前にいる先輩は俯き小さく震え、ごめん、と小さな声で言った。
「瑛士さん、見られちゃまずいですね。トイレ行きましょう」
彼の手を強く引っ張りながら僕らだけの空間へ足を運ぶ
後ろに鼻をすすりながらひょこひょこついてくる先輩に、笑みがこぼれた。
後ろに鼻をすすりながらひょこひょこついてくる先輩に、笑みがこぼれた。