yariba @ ウィキ

オレンジ色に染まる空

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
だれでも歓迎! 編集
オレンジ色に染まる空【おれんじいろにそまるそら】



「水本さんって、崚行君の何なの?」

凜が一番訊きたいよ



「ねぇ水本さん、ちょっといいかな?」
そう呼び出されてノコノコ付いていった凜もどうかしてたと思う
人気の無いとこらへ言って訊かれた事

凜って崚行の何?
何だろう

「…友達?」
「本当?それだけ」
「うーんー…K-POP好きでマルモリコンビな友人、かな?」

「付き合ってはいないの?」

何故崚行の事なんか凜に訊いてくるんだろう、と思っていたらなるほどそういう事か

「うん」
「お願い!崚行君に好きな人居るか訊いて欲しいの!」
「あーうん」
「本当!?ありがとう!あ、あともし居なかったら好みのタイプも!」
「分かった。訊けたら報告するね」

彼女は何度もありがとうと言うと去っていった

(へぇ…崚行の事好きな子なんて居たんだ)

珍しい、と思った
崚行とは普段からノリの良い好みがよく似た友人として接してきた

(崚行に好きな人、か)

そういえばそんな話した事無いな



「でなー稜駿がー」

お昼休み、寿々歌と教室でお弁当を食べていた
今日も寿々歌は少し前から付き合い始めた大好きな大好きな彼氏❤の稜駿の話をしている

「お、ウインナー1個もーらい」

凜のお弁当からサッとおかずが1つ姿を消した

「あー!凜のかにさんウインナー!」
「へっへーん」

崚行はパクリとそれを一口で食べてしまった

「あー!食べちゃったー!」
「ごちそうさま!あー美味しかった!それにしてもかにさんウインナーって難しない?どやってやるん?」
「えー簡単だよー足をこうやってこうやって切るだけだもん」

もう1つ残ったかにさんウインナーで説明をする
崚行はふんふんと頷いた

「なるほどー今度俺もやってみよ!」

崚行はそう言うともう1つのかにさんウインナーも奪って去っていった

「あーあ…かにさんウインナーが…」
「…凜さ」
「うん?」

二個あったかにさんウインナーがどちらも奪われてしまい、ガッカリしながら唐揚げを食べていると崚行が来てからずっと黙っていた寿々歌が口を開いた

「崚行と付き合わへんの?」

ゴフッ

「大丈夫?」

寿々歌のまさかの発言に思わず唐揚げをつっかえてしまう
ゲホゴホと胸を叩いてからお茶を飲んで何とかする

「な、なにをいきなり」
「え?だって、好き同士やろ?」

彼女は何を言い出すのやら

凜と崚行が好き同士?
無い無い無い

「それは無いってば」
「えー?でもお似合いやのに」

最近やっと寿々歌を諦められたところだと言うのに
誰かを好きになったから諦められたのでは無く、失恋からの寿々歌と稜駿のノロケ話を聞きながらの諦める努力を重ねた結果、やっと諦められたと言うのに

そんな状態で誰かを好きになるはずがない

「大体、崚行が凜の事好きなわけないじゃない」

だって崚行は一部には有名なソッチの人で
今でも好きな年上の人を口説いていると言う噂だ

(あ、これをあの崚行好きな子にも伝えれば良かったかな)

あくまでも噂なのだが


「そうかなぁ?うちには凜の事好きやからちょっかいかけてるようにしか見えへんけどなぁ」
「無い無い」
「稜駿のところ来るんも、隣の席の凜のそばに少しでも長く居たいからなんとちゃうかなぁ」

無い無い
実際は稜駿が嫉妬心丸出しで凜と寿々歌が喋るのを見るから、稜駿の目を逸らすために稜駿の元へ来ているのだ
勿論凜が寿々歌とゆっくり話がしたいのに目障りだから崚行にそうして貰っているのだが

「そういえば最近崚行に好きな人居るのかって訊かれたよ」
「えっホンマに?」
「どんな人が好きかも訊いて欲しいってさ」
「そっかー崚行優しいし気遣えるもんなー。で?」
「で?…って?」
「凜はどないするん?」
「崚行に好きな人居るのかと好みのタイプ訊く」
「ええの?その子に協力なんかして」
「いいよ別に。めんどくさい事に巻き込まれなければ」
「えー…?『崚行は私のやから』って言ったってええと思うんやけどなぁ」
「だから別にそういうんじゃないってば」

寿々歌は鈍感だ
自分の事に関しても、周りの人の事に関しても

凜が崚行との事をそういう風にからかわれるのが嫌だからあからさまに嫌そうな表情浮かべてるのにも気付かないんだから


「なぁなぁ!」

放課後、図書室にでも行こうとしていると、屋上に続く階段の近くで崚行の声が聞こえた

「俺、言いたかった事があってん」
「ん?何?」
「何やったかなぁ…」
「何だよ忘れちゃったの?思い出したらいつでも言って」

そこには崚行と、色んな所で見かけた事のある先輩が居た

「あ、思い出した」
「ん?」
「…なぁ、キス、してもええ?」

…なるほど、崚行が今狙ってると噂されてるのはあの人か

2人の会話をそこまで聞くとその後2人がキスしたのかどうかどうでもよくなったのでサッサと図書室に向かった


「それにしても、同性愛ねぇ…」

凜も寿々歌が好きだったから、同性愛を気持ち悪いだとかは思わないし偏見も無い
ただ

「…崚行に訊きにくい、な」

『好きな人居るの?』
『好みのタイプは?』

崚行は何て答えるだろうか

『んーおらへんかなぁ』
『笑顔が可愛い人!』

とか?

「…想像出来る」

もし実際違っても例の子にはそう伝えてあげてもいいかも知れない

(…好きな人が居る、ってだけでも傷つきそうなのに、まさかそれが男だなんて知ったら、)

きっと、彼女はぶっ倒れるか学校に来なくなるかも知れない

でも、適当に考えた事を教えたとして、もし嘘だとバレたら

『どうして嘘を教えたの!?』
『やっぱり水本さん、崚行君の事好きなのね!』

なんて事になるかも知れない

(…ああ、どうしよう)

引き受けなければ良かった、と今更後悔した



「あれー凜今帰り?」

図書室で考え事をしながら勉強をしていたが、やはり集中できなくて考え事を止めた
が、やはり考え事は止められなくて結局勉強を中断して帰る事にした

下駄箱まで来た時、崚行に会った

「…崚行こそ、今帰り?」
「うん、さっきまで一緒におった人が用事があるからって帰っちゃったから」

途中まで一緒に帰らへん?と言われて断る理由も無かったので途中まで一緒に行く事になった


「…ねぇ」

オレンジ色に染まった空が、少し綺麗で
凜と崚行の影を作った太陽が、沈みかけていた

「んー?」
「…崚行ってさ、好きな人居るの?」
「え、なになに?凜俺の事好きなん?」
「そんなわけ無いじゃん。訊けって言われたの」
「へー。俺の事好きな人おんねや。女の子?」
「うん」

凜に訊いてくるくらいだから、女の子に決まってるじゃない

「んー…おる、かなぁ」

やっぱり、と思った

「…どんな人?」
「それも訊けって言われたん?」

返事はせずにただ頷いてみると、崚行は「凜も大変やなぁ」と苦笑した

「年上の可愛い人、やな」
「男の人?」

訊いてから、しまった、と思った
崚行は少し驚いたような顔をしたが、すぐに微笑んで下を見た

「凜やから、言うけどな。…そう、や」

やっぱり
今日会っていたあの人の事なんだろう

「ま、まだ全然相手にされてへんねやけど」

これからもっと頑張らななーなんて言いながら、崚行は笑った

「…崚行に好きな人居るかって訊いてきた子にね、『水本さんって崚行君の何なの?』って訊かれたの」
「何て答えたん?」
「K-POP好きでマルモリコンビな友人、って」
「なるほど正しいな」

崚行は笑って何度か頷いた


「…凜って、崚行の何なの?」

立ち止まって、ずっと歩いている崚行の背中に問いかける
崚行は振り返って立ち止まると凜を真剣に見て、優しく笑った

「付き合いたい、って言われたら付き合ってもいいかなって思える存在。親友やな」

それは凜にとっての崚行に対しても当てはまっていた

「付き合ってもいいかなって何で上から目線なの?気に食わなーい」
「やって俺の一番は、」
「はいはい、今口説いてる年上の可愛い人でしょ。分かってますよーだ」

歩いて崚行の隣に並ぶ
崚行は凜が隣に並んだのを見ると一緒に歩き出した

凜は、崚行にとってこうやって肩を並べて隣を歩ける気を許した存在で
崚行は、凜にとってもこうやって肩を並べて隣を歩ける気を許した存在だ

(親友、か)

友達以上で、恋人未満

それが一番しっくりくる凜と崚行の関係だった


(そういえば凜、俺と一緒にこうやって帰ってるとこ見られても大丈夫なん?)
(…しまった、めんどくさい事に巻き込まれるかもしれない)

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
ウィキ募集バナー