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モノクロ

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モノクロ【ものくろ】



(あ、居た居た)

私の日課



気付いたのは、本当偶然
こんな場所からあの人の姿が見えるなんて

(今日も寝癖ついてる…)

私が今居るのは写真部の部室
何故そんな所に私が居るのか?答えは簡単、私が写真部部員だから
活動が不定期で部長も誰か分からないという適当な部活なために、部員は殆ど幽霊部員
私が入ってから一度だけ、しかも一人だけ先輩を見かけたぐらいで、後は他の部員も見ないし顧問すらも姿を見せないため誰かも知らない

あの日此処に来たのは一人になりたくてだったのだが、風景でも撮ろうと気が向いたため窓を開けた時に、此処からあの人の姿が見えたのだ

(一人になれるだけじゃなくて好きな人の姿まで見れるなんてラッキー)

それに気付いてからというもの、毎日授業後此処へ来ては窓を開け、時々カメラを構えて風景を撮っているフリをしたりしながら、あの人の姿を見つめる

あの人は全く私に気付いて居ない
それが嬉しくもあり悲しくもあり

(気付かないかな…)

そうは思いながらも気付かれて気持ち悪がられるのは容易に考えられるので気付かれたくないとも思っている


「…あ」

また現れた
最近あの人の周りによく現れるこの学校の生徒

私の1つ上の、前田先輩
前田先輩はあの人の寝癖を指摘して笑っている
あの人は手でぐしゃぐしゃと寝癖を直そうとしているからそれが分かる
そしていつも結局直ってなくてまた笑われている

私があの人を見始めてからしばらくしたある日から現れるようになった前田先輩は、いつもこの時間帯にあの人の部屋に現れては楽しそうにあの人と話をしているのだ

(…いいな)


私は今までずっと、大好きなあの人を見る事しか出来ないで居る

挨拶しようと思って居たのだがいざとなったらなかなか出来なくて何も言わずにすれ違ってしまっていた
他の人が挨拶しているのを見た事があるためにあの人の声は少しだが聞いた事があるのだが

(…そういえば、知らない事だらけだ)


いつも白衣を着ているので化学か物理か生物を教えて居るのだろうという事(常にだから化学かなぁ)
教師で、2年と3年のそれぞれのクラスで授業をしている事と名前は加藤だという事(前に見かけた時、前田先輩と水本先輩が「加藤さん、教科書忘れたー」って話しかけていた覚えがある)

年齢も、住んでる場所も、乗ってる車も、既婚かどうかも、知らない
他の先生と話してる所も見ないが、仲良いのだろうか

「話してみたいな…」

一度で良いから、なんて私が勇気を出さなくてはいけないのだけれど



「あれ?」

少し目を離しただけなのに、いつの間にか2人揃って姿を消していた

「…どういう関係なのかなぁ」

ただの仲良い教師と生徒なのかも知れないが…気軽に話しかけれる前田先輩が羨ましかった



「あんな風になれるのって男同士だからなんだろうなぁ…」

そう呟いた時、扉が開く音がした

「あ、ほらやっぱり此処じゃん」
「別に疑ってなかっただろうが」

そこに現れたのは、驚く事に少し前まで今居る場所から私が見ていた前田先輩と加藤先生だった


「でも来て良かったっしょ?」
「さぁな」

「あの…え?」

2人が私の存在を無視で話続ける

「あ、ごめん。初めましてー写真部部長の前田です」
「顧問の加藤だ」


「えっ?…え!?」

嘘、前田先輩が部長で加藤先生が顧問!?

「ほらやっぱり驚かれたー加藤さんが顧問なんて」
「仕方ねーだろ何も顧問持って無かったから任されたんだよ。お前だって2年だからってのと顧問の俺と仲が良いってだけで任されただろうが」
「そうだったんだ…」

ずっと話してみたいと思ってた人が、顧問だったなんて…

「いつも部室に居る部員の存在に気付いたから、顔出そうって事になったんだよ」
「えっ!?」
「ずっと気になってたんだ。こんなおっさんの居る部屋なんか見て何が楽しいんだって」
「えっ…知ってたんですか?」
「あれだけ毎日見られてりゃな…」

加藤先生は困った様子で頭をぐしゃぐしゃ掻いた

恥ずかしい
気付かれてたなんて

「で?君の名前は?」
「1年の…細川、藍です」
「細川か、…写真部へようこそ」
「…よろしくお願いします!」


私の日課
放課後は必ず写真部に顔を出す事

end


(ようこそって…え、何加藤さんそういうキャラだっけ?)
(うるせーよ)

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