仕事の順番、間違っちゃいけない ◆NIKUcB1AGw
B-6、廃墟が広がるエリア。
そこで二人の警察官ががれきの上に腰を下ろし、言葉を交わしていた。
オールバックの細身な警官は後藤喜一警部補。
角刈りのずんぐりむっくりした体格の警官は両津勘吉巡査長である。
「いやー、お互い大変なことになっちゃったねえ」
「本当ですよ、まったく……」
後藤の言葉に、両津は渋い表情を浮かべてうなずく。
「で、君はどうするんだい、両津巡査長」
「わしも素行の悪さには自信がありますが……。さすがに殺人はいかんでしょう。
警官としての誇りなんてもんはありませんが、一介の人間として人殺しをする気にはなれません」
「なるほどねえ」
両津の返答を聞くと、後藤はにやりと不気味な笑いを浮かべた。
「ならばけっこう。両津巡査長、俺に協力してもらいたい」
「この殺人ゲームを停止させる手伝いをしろ、というわけですか」
「そっ。こう見えても俺、けっこう怒ってるんだよねえ。
こんな違法行為全開の催しに警官を二人も呼ぶなんて、なめた真似してくれるじゃないの」
後藤の顔には、笑みが浮かんだままだ。だが両津は、その笑みに言いしれぬ迫力を覚えていた。
「まあ、断る理由はありませんな。二人で、あのタヌキの着ぐるみを着たふざけた野郎をお縄にしてやりましょう」
「頼りにしてるよ、両津巡査長」
「お任せください! わしは始末書の枚数と犯人検挙率では、そんじょそこらの警官には負けませんから!」
「前半は誇るもんじゃないでしょう……」
自信満々に吠える両津に対し、後藤はあきれ顔で頭をかく。
「さて、こっちの話が一段落したところで……。そろそろ出てきてもいいんじゃないかな、君」
ふいに後藤は振り返り、後ろにあった廃ビルに向かって声をかける。
少しの間を置いて、その影からやや目つきの悪い小柄な少女が顔を出した。
「おや、ずいぶんかわいらしいお嬢さんじゃないの。隠れて俺らを不意打ちする気だったのかい?」
「そ、そんな! 私はただ、あなたたちがどんな人なのか観察していただけで……。
いきなり殺し合えなんて言われたら、他人を警戒するに決まってるじゃないですか!」
「まあ、それはたしかになあ……」
少女の言葉を、両津が肯定する。
「それで、俺たちは君のお眼鏡にかなったのかな?」
「えっと、あの……。お二人は警察官なんですよね?」
「ああ、そうだ」
「私、この場で役に立ちそうな技術とか能力とか持ってないただの女子高生なんですけど……。
私のこと、守ってくれますか?」
「もちろん。市民を守るのが警察の仕事だからねえ。こんな非常事態でも、それは変わらないよ」
「おねがいします、私のこと、守ってください……。人殺しなんてできないし、かといって殺されるのもいやだし……。
私一人じゃ、何もできなくて……」
少女の目に、うっすらと涙が浮かぶ。後藤は彼女に歩み寄ると、その肩に手を置いた。
「おじさんたちに任せておきなさい。必ず君を、無事に家に帰してあげるから」
「はい……」
「というわけで両津巡査長。この子を一緒に連れて行くけど、いいよね」
「まあ、置いていくわけにはいかんでしょうよ。この状況で、どこまで守れるかはわかりませんが……」
「コラコラ、不安にさせるようなこと言わないの」
失言とも言える両津の言葉に対し、後藤は再び頭をかいてみせた。
◆ ◆ ◆
その後、三人は改めて自己紹介を行った。
それにより、少女の名前は「規制出できない子」であり、高校2年生であることが明らかになった。
「それでこれからどうします、警部補殿」
「あの着ぐるみくんを逮捕するにしても、俺たちにはまだ何の情報もないわけだ。
となれば捜査の基本として、足で情報を集めるしかない。
まずはこの島を歩き回って、着ぐるみくんの居場所とか物騒な首輪の外し方とかにつながる情報を探そう」
「なるほど……。あまり性には合いませんが、それが無難なところですか」
「開始状況はこっちが圧倒的に不利だからねえ。慎重にいくほかないよ」
そうつぶやきながら、後藤は胸ポケットからタバコの箱を取り出す。
しかし、そこにはもう1本のタバコも入ってはいなかった。
「あれ、切れてる……。両津巡査長、タバコ持ってない?」
「いえ、自分はだいぶ前に禁煙しましたので……」
「あっ、そう……。こんなことになるなら、昨日のうちに買っておけばよかったなあ」
煙の代わりに溜息を吐き出すと、後藤は空箱を握りつぶして無造作に投げ捨てた。
「それじゃ、そろそろ行こうか。いつまでもこんな廃墟にいたんじゃ、気が滅入ってくるしね」
「わかりました」
「各自、ちゃんと武器は持っておくんだよ? さっきの場に、少なくとも一人は殺しに肯定的な人間がいた。
それ以外にも、殺し合いを受け入れてしまった人がいる可能性は高いからね。
自衛はしっかりしないと」
幸いと言うべきか、三人にはいずれも最低一つは武器になるものが支給されていた。
両津には「ショックガン」。
後藤には「無限刃」。
そしてできない子には、「名状しがたいバールのようなもの」。
三人はそれぞれ、いつでも使えるよう武器を手にしておく。
「警部補殿。他の人間が襲いかかってきた場合、死なない程度にぶちのめしてかまいませんね?」
「んー……。まあ、正当防衛の範囲内ならね。向こうも殺し合いを強制されてる立場なんだから、やり過ぎないように」
「了解です! せめてそれくらいのストレスのはけ口がないと、やってられんからなあ……」
「うちの課の暴れたがりを思い出すねえ……。そういや、顔もちょっと似てるかも……」
何かにつけて銃を撃ちたがる部下のことを思い出しながら、後藤は黒い表情を浮かべる両津に対して複雑な思いがこもった視線を向ける。
「それじゃ……改めて出発しますか!」
◆ ◆ ◆
(とりあえず、今のところは安泰かな……。警察官っていうなら、一般人よりは頼りになるだろうし……)
前を行く二人の警官を視界に収めながら、できない子は心の中でつぶやく。
彼女は、本人が言ったように何の力もない女子高生である。
だが、彼女には「覚悟」があった。
それはどんな卑劣な手段を使ってでも、生き残るという覚悟だ。
(味方は徹底的に利用する……。敵は後顧の憂いがないよう、息の根を止める。
生き残るためには、それを徹底する必要がある。
あの人たちが殺し合いを止めてくれるなら、それでよし。無理なときは……)
バールのようなものを握るできない子の手に、力がこもる。
(私は生きてやる……。人殺しに成り下がってでも、プライドをどぶに捨ててでも……。
命以上に大切なものなんてないんだから……)
少女の目に宿る暗い炎に、まだ男たちは気づかない。
【B-6 廃墟 初日 深夜】
【後藤喜一@機動警察パトレイバー】
[状態]健康
[装備]無限刃@るろうに剣心
[道具]支給品一式、不明支給品(0~2)
[思考]
基本:「タヌキの着ぐるみ」を逮捕し、殺し合いを止める
1:島中をまわって、情報を集める
[備考]
※漫画版・最終回後からの参戦です
【両津勘吉@こちら葛飾区亀有公園前派出所】
[状態]健康
[装備]ショックガン@ドラえもん
[道具]支給品一式、不明支給品(0~2)
[思考]
基本:後藤に協力する
【できない子@やる夫派生】
[状態]健康
[装備]名状しがたいバールのようなもの@這いよれ!ニャル子さん
[道具]支給品一式、不明支給品(0~2)
[思考]
基本:どんな手段を使ってでも生き残る
1:後藤と両津に同行
※支給品解説
【無限刃@るろうに剣心】
志々雄真実が愛用する、殺人奇剣。
あらかじめ刃を一定の間隔で欠けさせておくことで刃こぼれを防ぎ、半永久的に使用できるようになっている。
【ショックガン@ドラえもん】
空気砲と並ぶ、大長編常連の武器系ひみつ道具。
放った光線に当たった相手に対して強いショックを与え、動けなくする。
【名状しがたいバールのようなもの@這いよれ!ニャル子さん】
邪神連中御用達の鈍器。
できない子に支給されたのはニャル子が使うノーマルタイプで、特殊能力はない。
最終更新:2013年03月12日 01:21